
グループホームの仕事は大変?認知症の人と上手く話せるか心配。50代未経験でも働ける?働きながら資格は取れる?面接で聞きづらいことや介護士の本音が知りたい。
グループホームで働く介護士のひまわりさん(仮名・53歳女性)。離婚することになり、無我夢中で無資格・未経験ながら飛び込んだ介護業界。
認知症の方々への支援ってどんなこと?50代未経験でも通用する?など、セカンドキャリアをスタートさせた介護士の本音に迫るインタビューです。
- 50代の主婦から介護士へ
- グループホームでの1日の流れ
- グループホームで大変な仕事とは?
- グループホームは働きやすい?
- 50代未経験でも通用する?
- 今後のキャリアプラン
離婚して生活が一転、主婦から介護士へ

どうして50代で介護士を目指したのでしょうか?
まずは、ひまわりさんの自己紹介をお願いします。介護士を始めてどれくらいが経ちますか。

気が付くともう介護士歴は4年目に突入していました。
私には高齢の母と大学生の子供が1人いて、離婚して自分で生活費を稼ぐ必要がありました。仕事をするなら今後の役に立つ仕事をしたいと思い、介護の仕事を選びました。
介護歴は3年が経過しパートとして働いています。
職場は家から割と近く、週4日で早番が多いです。健康には自信があり、大きな病気はしたことがありませんが、最近少し腰痛があるのが悩みです。
趣味は物作りで料理やDIYが得意です。以前は飲食業で働いていました。その経験が不思議と今のグループホームでの働き方に役に立っています。
認知症について詳しくなりたい

グループホームを選んだ志望動機を教えてください。
介護施設には有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、デイサービスなど様々な形態があるかと思いますが。
どうしてひまわりさんはグループホームを選んだのでしょうか。

将来役に立つ仕事がしたかったからです。
50代未経験でもOKと書いてある求人で探していました。実は離婚して、経済的な理由でパートに出ることになりました。パソコンを使って働いたこともなくて、急に何が出来るかなと・・・。
調べるうちにグループホームという施設があることを知って興味を持ちました。料理や家事も得意な方だったので、この歳で未経験でも役に立てるかもしれないと思いまして。
介護業界は人手不足だと聞いたことがあり、色々調べるうちに資格を取れば将来性もあるし、高齢の母も居たので認知症に詳しくなりたくてグループホームを選びました。
すぐに駆け付けられるようにと、職場は自転車で行ける範囲のところに絞っていました。見学した際、アットホームな雰囲気が自分に合っていると感じて決めました。
グループホームの朝は慌ただしい?!

1日スケジュールはどんな流れですか?
グループホームの朝はやることが多くて大変とよく耳にするのですが、実際はどうなのでしょうか。
午前中の働き方や施設の様子をお聞かせください。

日々、時間との戦いですよ。
早番は8時からです。
出社したらまず連絡ノートや介護記録に目を通して、自分が休みだった時のことを一通りチェックします。
朝食を食べ終わり、配膳の片づけや朝のトイレ介助、歯磨きなどのお手伝いをしながら、居室の掃除をしていきます。
ある程度自立している方には掃除道具をお渡ししますが、掃除が難しい方にはテーブルを拭いてもらうなど、出来る事をお願いしています。
居室が9室あるので同時進行しないと時間が足りなくなります。状態を見つつ夜勤スタッフから申し送りを受け、メモを取ります。

臨機応変さが求められますね。
朝から頭をフル回転ですね。グループホームの朝の慌ただしさが伝わってきました。

スケジュール管理の徹底と利用者一人ひとりに目を配らせています。
そうですね。後にずれ込む程大変なので、時間は意識しています。トイレ掃除では排便跡があるかチェックしています。
朝の洗濯物もどなたかお誘いして一緒に干し、掃除が終わったらほっと一息、皆さんと紅茶を飲んで過ごします。
その後、外出日に当たる方と近所のスーパーへ徒歩で出掛け、帰ってきたら調理にかかります。皆さん長年主婦だったので、お料理の能力が残っている方が多くて驚きました。
人によっては動作が危なっかしいことがあるのでケガのないよう見守っています。包丁が問題ない方に切りものをお願いして、盛付なら出来る方に副菜を取り分けて頂きます。
やりたいことを尊重しつつ、出来る工程を其々お願いしています。

ちなみに、料理は上手くないと働けないですか?
グループホームは利用者の生活に密着した生活支援、介助が必要だと思いますが、朝、昼、晩の料理はどの程度求められるのでしょうか。
あまり料理が得意ではない方も多いかと思います。

料理上手は求められない事がほとんどです。
いえ、そんなことはないですよ。ただ、もし作れない程苦手なのであれば先に言っておいた方がいいです。
シフト上の配慮も受けられるかもしれないですし、周囲のスタッフも手伝ってくれると思います。
と言うのも、不味いとご飯の時間が重苦しいものになり、利用者の方々から不満を言われかねません。何かあった時のために、料理手順は知っておく必要がありますね。
利用者は女性の方が多いですが、男性は年代的に「男は料理はやらないもの」と決めている方が多かったです。
でもご飯やお味噌汁はご自分でよそってもらえるように声をかけますし、お茶の準備をお願いするなどしてもらっています。全員が揃ったらスタッフも間に座って頂きます。

生活支援だけでも業務が多岐にわたりますね。
想像以上に、利用者の方と接していることが分かりました。
生活支援だけでも業務が多岐にわたり、長く生活空間をともにしているので、自分の家の炊事、洗濯、掃除の延長線上で仕事をしているように感じました。

求められるのは生活支援です。生活と直結した仕事が多いです。
はい。家庭の様に細々した事が多いです。しかも、急がすことは出来ませんので時間がかかります。買物も歩行スピードを合わせています。
車椅子で買物にお連れすることも多いので、体力は使いますね。食事中は皆さんの様子をさりげなくチェックしながら食べています。
使った食器の除菌などはスタッフが行うので、キッチンの片付けだけでも結構大変です。
食事の時間が休憩に充てられていて、30分は休憩スペースで自由に過ごしていますが、正直ぐったりすることもあります。
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支援の仕方によって変わる働き方、過ごし方

午後はどのようなスケジュールですか?
利用者の生活に密着した仕事という事が分かりました。
スケジュール管理が非常に大事で、一人ひとりに丁寧に向き合う事が、この仕事では大事なのだと分かりました。

生活支援がメインですが、のんびり過ごすことが多いですよ。
洗濯物を取り込み、おやつを準備します。基本的に、洗濯物はご本人に畳んでもらいます。タオルだけ畳んでもらったり、運んで箪笥へしまってもらったりとか、色々ですね。
一息ついたら、午後のティータイムです。水分補給にもなるので、飲みたいものを選んで用意してもらいます。水分量は毎食チェックしています。お砂糖を沢山入れてしまわないように、スティックシュガーには気を付けています。
その後は入浴や買物等、様々です。手が空いている時には介護記録も記入します。
外出も支援のうちなので、近所の喫茶店にはよく出かけますよ。皆さんが楽しめる様なプランを計画して、車で出掛けることもあります。
その日に外出や入浴されない方は、リビングでスタッフとのんびりされることが多いですね。
認知症の方々を上手く誘導することは至難の業?!

グループホームでの大変な仕事はありますか?
グループホームは認知症高齢者にとっての第二の家とも言われていますが、今まで経験した中で大変な仕事はどのような仕事でしたか。

はじめは利用者との会話に一番苦労しましたよ。
会話で上手く誘導することが本当に出来なくて、初めは泣きそうになりました。ストレートに伝えてしまうのが癖でよく失敗していました。
例えば、すぐに「お風呂入りましょう」というと高確率で断られます。皆さん「何で?」「まだ明るいじゃない」「昨日入ったので結構です」とか次々と言い訳をされます。
グループホームは、認知症でも歩ける方も居て、皆さん自分は元気だという自負があります。私は雰囲気作りの会話が中々続かなくて。
他のスタッフの言葉を真似しても、どこか不自然なのか見破られてしまって、私だと聞いてくれないことも(笑)
認知症の症状や排便コントロールに悪戦苦闘

今までで辛かったことはありますか?
認知症の高齢者をサポートについて伺うと、必ず苦労話や辛い話をよく聞きます。
利用者の生活の質を低下させないためにも、介護士の努力は並大抵のモノではないと思います。

日々の気づきや刺激が多く、自分自身の鍛錬だと思っています。
認知症の症状が進行している方への介助では、大声を出されることがあり正直怖かったです。
それも認知症の症状なので、研修などで勉強していくうちに慣れていきました。
車椅子の方だったのですが、力いっぱい腕を掴まれるとずっと離さないのでもう痛くて大変でした。
オムツ交換だけでも2人介助で行っていました。排便の話になりますが、一時期食欲が落ちることがありましたね。
薬で出す便など、体調によって量が多く軟便の時があります。トイレで陰部洗浄しても毛にべっとり付いていると綺麗に取れないので、風呂場でよく洗浄していました。
それが食事時と重なると気分的にお昼が食べられなくて…。排便コントロールが難しい方の介助が増えると気が重くなります。
地域に根付いた支援が魅力

グループホームのいいところはどんなところですか?
利用者にとって、グループホームは住み慣れた地域から離れなくて良いというメリットがありますが、働き手としてどのようなメリットがありますか。

アットホームな雰囲気があります
認知症になっても自立を目指しつつ、穏やかに過ごしていけるところですね。
家族が来ると嬉しそうに外出する人が多いです。四季折々の行事やお誕生日などもちゃんとお祝いするので、アットホームな雰囲気があります。
地域密着型サービスの特徴ですが、介護が必要になっても、住み慣れた地域で生活出来たら、ご本人もご家族にとっても安心ですよね。
50代未経験でも介護士として通用する

どんな時にやり甲斐を感じますか?
認知症を患う利用者を相手にすると「暴れたり、徘徊しようとしたりしないか心配」と不安に思うはずです。
苦労や大変な事が多いと思いますが、どんな時にやり甲斐を感じますか?

私でも役に立てる存在になれたという充実感がありました。
よく残す食の細い方が、味付けしたおかずを気に入っておかわりしてくれた時は嬉しかったですね。
得意な料理で「美味しいね」「ありがとう」「あなたでよかったわ」等と言われることが救いでした。
またある日は、とてもお風呂嫌いな方の入浴介助をした後、髪を乾かすと穏やかな表情で気持ちよさそうにされていて。
私でも役に立てる存在になれたという充実感がありました。出来ることが増えていけば、未経験でもやっていけると思います。
初めは誰でも初心者です。年齢より、順応性ではないでしょうか。
会社の補助金を活用して賢く資格を取る

今後のキャリアプランはありますか?
50代から介護士としてセカンドキャリアをスタートしたとしても、何のハンデもないという事が分かりました。今後、どのようなキャリアを目指す予定ですか。

介護福祉士の資格を取り、訪問介護にチャレンジしたいです。
会社の補助金制度があると知り、実務者研修や介護に関する講座なども受けてみようと考えています。
その後は介護福祉士資格を取得したいです。将来的には訪問介護なども経験してキャリアアップを目指したいと考えています。
これからも介護士として活躍するために

介護業界を目指す読者へのメッセージをお願いします。
未経験で介護職を目指す方にとって、グループホームで働くという事は、非常にハードルが高いと思っている方がほとんどではないでしょうか。
ここまで、読んで頂いた方は少なからず、グループホームで働くことの良さを知って頂けたかと思います。ぜひ、介護業界を目指す方に何かメッセージをお願いします。

未経験だからこそ、色々なことを今まで吸収出来ました。
私はホームヘルパー2級も持っていなくて、初めは不安でした。でも、講座に通っていたら「こんなことは出来ない」と挫折していたかもしれませんし、現場を早く知ることが出来てよかったです。
きっと施設ごとにメリットやデメリットはあるし、訪問介護が好きな人もいますから、一度働いてみるといいと思います。
また、無資格・未経験の方でしたら、働きながら学べて資格が取りやすい会社の方がいいですよ。
認知症の方の支援は辛いこともありますが、認知症だから介護者が救われることもあります。介護士は特に体が資本です。頑張り過ぎず、自分も労わってあげてくださいね。
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