介護歴11年目の私が感じる、重度認知症棟で働く介護福祉士のやり甲斐と苦労とは?

教えて!介護士ってどんな仕事?
※画像はイメージです。
重度認知症棟に興味がある介護福祉士
重度認知症棟に興味がある介護福祉士

重度認知症棟で働くことは大変なのだろうか。認知症状のある方とあまり接したことがないから、仕事でどう向き合えば良いか不安。仕事の苦労話や、やり甲斐を知りたい。

はじめまして、私は福祉専門学校を卒業後、老人保険施設、介護療養病院、福祉系専門学校、特別養護老人ホームで介護福祉士として働き11年目になります。

私が今まで多くの施設入居者と関わりを持ってきた中で、一番大変だったと感じている事は認知症入居者の対応です。

その中でも、初めて就職した老人保健施設では重度認知症棟に配属され、認知症レベルの高い方のケアを6年間勤めてきました。

この記事では、私が感じた重度認知症棟に対する想いや、働く介護福祉士のあり方について経験談をベースにお話ししていきたいと思います。

記事のテーマ
  1. 重度認知症棟で経験した苦労とは?
  2. 重度認知症棟で働くやりがい
  3. 介護福祉士としてのあるべき姿

質問があれば気軽にコメントください

重度認知症棟ってどんな施設?

重度認知症棟とはどんな施設?

ここでは、私が実際に現場からみた重度認知症棟の定義を私の言葉でお伝えし、現場に就いた時に感じた事などもお伝えしていきます。

重度認知症棟とは

文字通り認知症状の強い方が入居されている棟です。認知症の初期症状では物忘れや理解力、判断力の低下が見られますが、ある程度であれば問題なく他の入居者と一緒に生活していく事は可能です。

しかし、進行した重度の認知症患者の症状は周囲への影響が強く、認知症ではない入居者と一緒に生活する事が困難になってくる為、専門棟が必要になってきます。

認知症患者は理解能力や適応能力が低下している

認知症患者は理解能力や適応能力が低下している事が多い為、周囲の環境変化(職員や入居者など)に大きく影響されてしまう特徴もあります。その為、対応する職員がしっかりと認知症の特性を理解し、その方それぞれの個別な対応が求められてきます。

私が初めて重度認知症棟に配属された日に感じた事は、『衝撃』の一言でした。

その棟にはご飯を食べる時以外ずっと徘徊(ウロウロと歩き回る事)している方や、昼夜問わず大声で叫び続けている方などが多く『こんなところで続けられるかなあ?』と不安を感じたのを今でも鮮明に覚えています。

重度認知症棟で経験した苦労

重度認知症棟で経験した苦労

認知症患者の症状は多種多様であり、疾患一つでも病状も違ってくる為、『これをすれば良い!』といったマニュアル的な対応はなかなかないのが現状です。

ただ、色んな方の対応をしていくうちに、症状の現れ方やこうしたら改善するのではないか?などが分かるようになってくるのも事実です。

ここでは、私が実際に経験した体験談を事例検討形式でお伝えしていきたいと思います。実際に現場で働いている方の参考に少しでもなればと思います。

昼夜逆転される方が多く、夜勤が大変

認知症の周辺症状は日中よりも夜間のほうが現れやすく、その理由としては、心身の不調や加齢による機能低下、認知症により脳が萎縮し機能が低下することにあると言われています。

しかしながら、対応する職員の数は日中より夜間の方が圧倒的に少ないのが現状であり、認知症の夜間対応には多くの介護士の方が頭を抱えています。

苦労話①:介護拒否が強く、這ってトイレまで行こうとしたY氏の夜間対応

ここでは、実際に私が夜勤で経験した大変な入居者の事例について紹介させていただきます。

Y氏が入居されたのは、私がこの施設で働き始めて3年ほど経った頃でした。

Y氏は以前、自分で歩けていた方でしたが、自宅で転んで骨折をしてから車椅子での生活がメインとなり、食事以外はほとんどこちらの介護が必要な方でありました。

最初の内は『穏やかでおしとやかなおばあちゃん』という印象でした。

しかし、月日が経つうちに少しずつ怒りっぽくなったり、夜間途中で起きたりする事が増えていきました。

日中のうちはフロア職員が何人かいるので、Y氏の隣でゆっくり訴えやお話しを聞いていると、少し落ち着く様子も見られていたのですが、夜間は基本的に1フロアに1人でありましたので、常にその方だけに付き添う事は難しく、対応に困っていました。

Y氏の問題点

Y氏はほとんど自分でトイレに行くことができない方でしたが、手すりに捕まると立ち上がる事ができ、トイレで排尿する事が可能な方でした。

夜中もトイレがしたくなるとコールボタンを押して知らせてくれていたのですが、認知症の進行が進んでいくにつれてボタンを押す事(ボタンという事を忘れてしまったのか)ができなくなってしまい、尿意を催すと自らベッドから床に降り、トイレまで這っていくという事が次第に多くなっていました。

入居者の方が転んだり、怪我されたりした時は、事故報告書といい、その事が起きた経緯や何故そうなったのかを、今後の予防策などと一緒に記す書面を書かなければいけないのですが、その方がベッドから自分で降りる事についても、転落(ベッド落ちた)となり夜勤の職員は毎回書類を書かされる羽目になっていました。

また、降りる前に発見して介護職員が駆けつけるのですが、介助しようとすると『あんた触らんといて!』『私できるから大丈夫!』と言って手で振り払われる始末。無理に手伝おうとすると興奮して余計に眠らなくなる為、手が付けられませんでした。

そして、夜間がそのような状態ですので、日中はウトウトと傾眠状態になる事が多くなり、余計に夜寝なくなる『昼夜逆転状態』になっていってしまいました。

Y氏への対応策

そんなY氏への対応は、フロアミーティングにて話し合った結果、床に降りる前に発見できるように、センサーマット(一定の荷重がかかると受信機から音が鳴るという仕掛けのマット)をベッド足元に置く事になりました。

そして、何か捕まるものがあればゆっくりと歩く事ができたY氏だったので、居室トイレまでの道のりにソファの背もたれや椅子などを簡易スロープとして見立て、職員見守りのもと自力でトイレに行くということに決定しました。

そして、拒否のあるY氏に対して過剰に関わる事なく、夜間トイレを行う事ができるようになっていきました。

また、そのような状態を常に記録していき、Y氏のケアカンファレンスなどで、他職種と話し合い、日中の活動を活発化して頂くためにレクリエーションやリハビリの内容、内服薬の調整、変更を行なっていきました。

そのような取り組みから、少しずつY氏の精神状態も安定してきて、夜間覚醒、頻尿の回数減少、日中にウトウトする事が少なくなり、夜間良眠される事が多くなって行きました。

Y氏の事例での学び

私はこのY氏の事例を通して、難しい事例ほど、介護士はしっかりと利用者の能力や残存機能を的確にアセスメントする必要があるという事を学ばされました。

Y氏の件では、「もう歩けない、トイレに行こうとすると危ない」と決めつけて接していたので、介護拒否するY氏に対して、危険行為を防ぐ為に必要以上に接していました。

しかし、しっかりとアセスメントをすると、「何捕まるものがあればゆっくりと歩く事が可能」と知った事で、Y氏の残像機能を活かし少し離れた距離で見守る事が出来るようになったのでした。

また、介護士が利用者の能力をしっかりとアセスメントし、他職種へ伝えていく事で利用者へのより良い対応や可能性が広がっていくのではないかと感じました。

苦労話②:意思疎通が図れない方も多く、対応が難しい

次に紹介する事例は、私がこの老健施設の重度認知症棟で、6年間勤めていた中で1番印象に残っている方のお話です。

認知症状が進行していくと、こちらの話が理解できず、コミュニケーションが困難になっていくケースがあります。

その方と出会ったのは、僕が入社してから5年目の頃でした。その頃には先輩職員が退職や異動などもあり、僕もフロアでは後輩の方が多いくらいになっていました

話が噛み合わないN氏

N氏は自分で歩くことができ、食事やトイレも自分で行く事が可能でした。

そう聞くと一見介護も楽なのではないかと思いますが、認知症症状が強い方であり、N氏とのコミュニケーションのやりとりはほとんどかみ合わず、こちらの質問にも『なんわからんちや(Y氏の出身は富山で、方言でわからないという意味)』とばかり言われたり、『わかった』と言いつつも、違う行動をとられたりという事がほとんどでした。

N氏の問題点

N氏の食事は、自力で食べようとされるのですが、スプーンや箸は使わず手掴みで溢したり、食事をちらかしたりと毎回職員がN氏の周りを掃除する羽目になっていました。

その他の事も、自分である程度は出来るのですが、失敗して余計に手がかかってしまうという事がほとんどで、こちらからお手伝いをしようとしても『かまわんといて(関わらないで)』と言われ拒否される事が多く、職員一同でN氏の対応について深く考えさせられました。

N氏の行動のほとんどに問題点があった中で、一番課題として考えさせられたものが、他の入居者に危害を加えることでした。

自由に歩ける方であったので、ふらふらと他の入居者に近づいていき、いきなり『何け、あんた』と言い、理不尽につねったりするのでした。氏も特に理由もなく危害を加えにいくので、なかなか対策を立てるのが難しく、はじめのうちは注意して見守る事しか出来ませんでした。

時には職員一人がN氏に付きっきりで対応せざるを得ない場面もあり、他の仕事が進まないという問題も起きていました。

N氏への対応策と学び

N氏に関しては、ミーティングで話し合った結果、アセスメントやケアで対応できるという類のケースではないと判断し、N氏の問題行動を記録し、随時看護師へ報告する事になりました。

N氏の問題行動について看護師から担当医に報告され、N氏には抗精神薬と認知症状を抑える薬が追加される事になりました。

それから数日して、N氏の問題行動が少しずつ落ち着いていき、ウロウロと歩き回る事も少なくなっていきました。

私はこのN氏の一件で一番学んだ事は、全ての事例が介護士のケアでどうにかなるわけではなく、利用者の状態や行動によっては、看護師や他職種に頼ると言う事も大切なのだという事を学びました。

その為には介護士としてしっかりと現場(利用者)の様子を記録し、他職種へ情報共有していく事が必要になってくる、と言うことを知りました。

重度認知症棟で働くやりがい

重度認知症棟で働くやりがい

認知症患者の対応は簡単ではなく、多大な労力と精神力が必要になるため、認知症棟を嫌がる声も多く耳にします。

しかし、その反面大きな学びや得る事がたくさんあるのも事実。ここでは私が実際に現場で働いてみたやり甲斐をお伝えしていきます。

その①:認知症について深く学べる

重度認知症棟では、前章で述べたように他の施設ではなかなか経験できない認知症利用者のケアや事例は、身をもって体験することになります。

その経験から、認知症患者の様々な症状や対応方法を学ぶ事ができ、数々の事例を通して他職種の意見やアドバイスを参考にし、1人の利用者に対してチームアプローチを行なっていくという事の経験値を養う事ができます。

また、解決策が難しい事例や、解決に時間のかかる事例も多くあり、その分さまざまな職種と試行錯誤しながら多くの時間を共にする為、他職種の専門知識も学ぶ事ができます。

私自身も、初めて就職したこの老人保健施設の重度認知症棟での経験が、福祉専門学校教員の時や、今の特別養護老人ホームでの現場仕事で多いに役立っていると日々感じています。

その②:大変な認知症対応を多く経験できる為、その後の仕事のキャパシティが広がる

これは完全に私の経験談と、結果論になりますが、介護福祉士として現場で働いてきて11年目になり、今もなお施設現場で働いていますが、今思い返してみても、この重度認知症棟で働いていた時に経験した入居者対応を超えるほど大変な方とその後出会ったことがありません。

それだけ、重度認知症棟での入居者対応は稀なケースも多く、経験する事でほかの介護士にはない能力と知識が広がると思っています。

現に、重度認知症棟から他の施設や病院に転職してから、私は介護が大変と思ったことが、今思い返してみてもないくらいです。

重度認知症棟で求められるスキル・経験

重度認知症棟で求められるスキル・経験

ここでは、重度認知症棟で働きたい、挑戦したい!という方に向けて、実際に経験していた私の目線から必要であろう能力やスキルをご紹介していきます。

その①:精神力が必要

前章でも述べた通り、解決策が難しい事例や、解決に時間のかかる事例が多くある為、1度や2度上手くいかない場合でも、すぐに諦めずに新しい考えや対応を考える事ができる粘り強さが必要になってきます。

また、認知症患者はふとした事でも機嫌が悪くなったり、怒鳴ったりするように容赦無く職員へ暴言を吐く方もおられます。

そのような、一語一句を真に受けてしまっていては心が持たないので、聞き流す能力が必要となります。

その②:体力勝負

私の今までの経験では認知症患者のケアは、総じて体力勝負な面が多々あるも感じています。

今回紹介した事例のような、夜間入眠できずに徘徊や失禁、汚染などは毎日のようにあることなので、夜勤ではほとんど寝ずに朝まで働いていたということが多くありました。

また、介護拒否やそれに伴って暴力を振るってくる入居者も多くいて、腕や身体にアザができることも多々ありました。

そのような環境下でのお仕事であった為か、私が働いていた重度認知症棟で働いている職員の平均年齢は20代後半と、他の施設に比べると若い年齢の職員が多かったです。

まとめ

今回私の記事では、自分の経験談での出来事を中心に書かせて頂きました。

この記事を読んで、『重度認知症棟で働くのって大変そう』『はたして自分にできるのだろうか?』と思う方もおられるかもしれません。

私自身も、正直な話、重度認知症棟で働き出したはじめの1年目は、辛い事や辞めたいと思った事がたくさんありました。

しかし、今になって思うと、その時の経験値が後に幅広く役に立ち、少し大変な事があっても『あの時に比べたら今はだいぶ楽だな』と楽観的に感じる事も多くあります。

苦労はお金を払ってでも買えという言葉もあります。

私はこの記事が、今現在福祉業界で働いている方や、これから介護士になろうと思っている方にとって少しでも励みになる事を願っています。

この記事を書いた人

カフェフリーカー

県内の福祉系専門学校に入学し、卒業と同時に介護福祉士の資格を取得。

その後県内の老人保健施設、介護療養病床、福祉系専門学校教諭を経験し、現在は県内の特別養護老人ホームにて勤務。さらなるスキルアップの為新しい専門資格にも挑戦中。

経歴

  • 2007年4月~2009年3月:福祉専門学生
  • 2009年4月~2015年3月:老人保健施設 介護福祉士
  • 2015年4月~2017年3月:介護療養型病院 看護助手兼ケアマネジャー
  • 2017年4月~2017年11月:福祉系専門学校(母校) 介護教員
  • 2017年12月~現在:特別養護老人ホーム 介護福祉士

資格

  • JSFCAコーヒーソムリエ
  • 介護福祉士

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