
介護の仕事をしてみたいけど、初めてだから不安。介護って実際のところ1人でする事の方が多いのだろうか?初めての自分がいきなり介護の世界に入ったら、迷惑をかけるのではないだろうか。利用者様の急変時など対応が出来るのだろうか。
介護に携わっていない人達からの介護のイメージは、「大変そう」や「自分には無理」という声を良く耳にします。介護の仕事に興味があっても、大変そうなイメージや初めての事への不安から、介護の仕事を諦めてしまう方は多いのではないでしょうか。
また、現在介護士として働いているが「もっと1人1人にしっかり向き合って介護したい」そんな方にお勧めなのが『訪問入浴』です。
何故、訪問入浴がお勧めなのか、『メリットやデメリット、やりがい』を紹介していきます。
- チームで行動する安心感
- 医療的な分野は看護師が対応
- 1人の利用者様へ手厚い介護提供
訪問入浴ってどんな仕事?
介護の仕事をされている方はご存じかもしれませんが、介護の経験が無い人にとっては訪問入浴って何?と思う方は多いのではないでしょうか。
そんな訪問入浴の仕事内容をご紹介していきます。
その①:訪問入浴とは
訪問入浴とは、入浴車と呼ばれる訪問入浴専用の車に、専用の組み立て式浴槽を積んで、利用者宅まで訪問します。
利用者宅に到着したら、自宅内に浴槽を設置し、入浴して頂くサービスです。準備から片付けまで合わせて約1時間の支援になります。入浴時間としては約10分程度を目安に入浴して頂きます。
その②:3人1チームで行動
看護師1名、介護士2名の計3名体制で行動します。基本的な役割としては看護師が入浴前後のバイタル測定、身体観察、入浴可否の判断を行います。介護士2名は中仕事、外仕事の二手に分かれます。
中仕事では浴槽の組み立て作業を行い、外仕事では入浴車のボイラーのスイッチを入れ、自宅内に設置した浴槽と入浴車を繋ぐ給水ホースや排水ホースの準備等を行います。
3人が共通して行う業務としては利用者様の更衣介助、浴槽までの移動介助、浴槽内での入浴介助です。
その③:どんな方が利用するの?
様々ではありますが、いくつかの例を挙げてみました。
- 高齢による筋力低下の為、自宅の浴槽をまたぐ事が出来ず、入浴出来ない方。
- 上記等の理由で入浴が困難だが、人前に出るのが恥ずかしいなどの理由で、デイサービスに行くのが苦手な方。
- ベッド上に寝たきり状態で、体力的にも移動の制限があり、デイサービスに行けない方。
傾向的には何らかの理由でデイサービスに行く事が難しい方が多く利用されています。
初心者でも大丈夫?訪問入浴勤務に向いている介護士
初めての介護なので不安だらけ。そんな自分が務まるのだろうかなどの不安や疑問について。
また、挑戦してみたいけど、どんな人が訪問入浴勤務に向いているのかを事前に知っておきたい等を紹介していきます。
その①:1人ではなくチームワークを発揮して働きたい人
訪問入浴は「初心者だからこそ、訪問入浴がお勧め」です。先程紹介した通り、「3人1チーム」で行動する訪問入浴。それぞれの役割がありますが、困った事があれば、その場ですぐに相談する事が出来ます。
3人1チームの為、常にコミュニケーションを取りながら仕事を行います。そういった面から、初心者の方でもチーム内での会話に参加しやすく、常に確認、指導を受けるといった事が出来ます。
他の介護の仕事でも、チームとして働く事は当たり前ではありますが、状況に応じて働く人や人数が違う事もあれば、1人で行動する時もあります。訪問入浴では常に3人で行動するので、安心感を持って働く事が出来ます。
その②:体力に自信がある人
まずは、体力に自信がある方。数件の自宅を回り、訪問入浴介護をこなすと1日はあっという間に過ぎます。訪問入浴介護は、とても体力・気力を必要とする仕事です。
浴槽を運んだり、組み立てたりなど、体力は沢山使う事が多いです。夏場や冬場の中での外仕事はいつも以上に体力が減ります。
その③:周囲に気配りが出来る人
そして、常に周りに気を配る事が出来る方。当たり前と思われるかもしれませんが、これはとても重要です。自宅の中で支援させてもらうという事は、家族様がいる中での支援になります。
家族様は支援内容だけでなく、家での何気ない行動も見ておられる事があります。自宅に上がらせて頂いているという気持ちをいかに意識するかが大切になります。
訪問入浴で働く介護士のメリット・デメリット
メリット、デメリットは必ず知っておきたいですよね。
初心者の方にもお勧めだと、先程申し上げましたが、現在介護士として転職を考えており、訪問入浴に興味がある方で、訪問入浴だからこそ出来る事、感じる事などのメリットや、体力が必要になってくるなどのデメリットを紹介していきます。
メリット①:医療的観点、緊急時の対応は看護師が主体
介護の現場でも医療に関する対応は必要になってきます。ですが、介護士は看護師ではないので、判断に困る事や判断出来ない事は沢山あります。
夜勤がある施設など、場合によっては緊急時でも1人で対応しなくてはならない事もあるでしょう。
その点、訪問入浴では看護師がチームの一員としていますので、医療的な視点や、緊急時の対応などを相談する事が出来ます。
介護士は緊急時の事をあまり意識しなくて良いという事ではありませんが、より専門的な立場で判断できる看護師が常にいるのは心強いですね。
メリット②:チームで相談し合える
「3人で1チーム」何度もお伝えしていますが、このチーム感は他にはない良さだと思っています。3人という少人数だからこそ、コミュニケーションが密に取れるのです。コミュニケーションが密に取れる事により、仕事の質が変わり、利用者様により良い介護をする事が出来ます。
また、3人で同じ状況下での仕事なので、1人で悩むというよりも、3人で悩みを共有し合えるのも訪問入浴の良さだと思います。
メリット③:1人に手厚く対応。10分にかける想い。
集団施設の場合はなかなか1人に手厚く介護する事は難しい事があります。
その点、訪問入浴では1人に対して3人で対応するので、利用者さん1人1人としっかり向き合いたい方にはお勧めです。1人につき1時間の援助の中で、利用者様の身体状況や精神的部分の色々な側面からアプローチをかけていきます。
入浴時間が10分という中で、大好きな音楽を入浴中に流したり、自宅でお風呂に入ってリラックスしている時だからこそ、本音や悩みを聞き出せたりと、この10分はとても大切です。
単に入浴だけではないところも魅力の1つです。
デメリット①:体力勝負
1日の内に何件も訪問に行き、重たい組み立て式浴槽の準備や片付けを行うので、体力消費は多いです。
また、自宅によっては冷暖房の設備が無い家もありますので、夏場は常に汗をかきながら、冬場は寒さの中での援助など、身体的にも健康でいる事、体力をつける事が大切です。
対策としては、夏場は熱中症や脱水症になるのを防ぐために、車内にクーラーボッスを積み、移動中に飲み物を飲んだり、冷えたゼリーなどを食べたりしていました。
デメリット②:家族様がいる中での援助
施設等の介護現場では家族様に見られながら介護というのはほとんどありません。
ですが、訪問入浴では支援中に、家族様が援助風景を見られる事は多くあります。慣れない内は緊張すると思います。
利用者様に対する言葉かけや対応、援助側は良かれと思って行った事も、家族様にとっては好ましく思わない事もあります。
また、自宅に訪問させてもらっているので、浴槽を運ぶ際に家の中で浴槽をぶつけてしまったり、援助後の片付けが不十分だったりと、色々な視線があるという事は常に頭の中に入れておく必要があります。
訪問入浴で働く場合の給与と福利厚生
働く上で気になるのが給与と福利厚生ですよね。就職したのは良いけど、長く続ける為にもしっかりと確認しておきたい。介護なのに夜勤なし、働きやすさも1つの魅力です。
あくまで参考として見て頂ければと思います。
都会と田舎での給料の違い
都会では20万~28万、地方では15万~20万くらいではないでしょうか。
訪問入浴単体で営業している事業所もあれば、他の介護事業と並行している事業所もあり、それぞれの会社や法人によっての違いがあります。
しっかりとした福利厚生
社会保険完備、資格取得支援、賞与あり、退職金制度がありと会社によって様々ですが、十分に充実している所も多くあります。
また、年間休日数も多く、夜間はなし、年末年始休み、土日休みの所もあるので変形労働制がある介護の中では働きやすいと思います。
訪問入浴で介護士に求められるスキル
訪問入浴で介護をする上で、気を付けなければならない事があります。日頃から利用者様の状態を把握する事や介護士として求められるスキルを一部紹介していきます。
スキル①:入浴温度は細目に調整する
その日の気温、天候、体調によって、入浴温度の感じ方が違う事があります。
また、利用者様の好みの温度もあります。基本的には利用者様の自宅の水道を借りて湯を沸かすので、その時の水温によっても温度設定は変わってきます。
入浴温度は体に大きく影響を与えるので、入浴温度の設定には常に気を配る必要があります。
スキル②:入浴前、入浴中、入浴後の変化に気づく
入浴前、いつもと違う様子はないか、顔色はどうかなど、些細な変化に気づき、入浴可否の判断をする看護師に助言する事も可能です。入浴という行為は非常に体力を使用します。
入浴可否の判断結果で、利用者様の状態を大きく左右する事もあります。また、入浴中も変化がないか常に意識します。顔色が優れないなどの変化があった際は入浴時間を早めるなどの対応が可能です。
そして、入浴中、後は特に血圧が下がりやすく、意識消失を起こす事があるので、気を付けて見る必要があります。もちろん看護師も専門的に判断してくれますが、変化に気づく目はたくさん合った方が良いと思います。
スキル③:状態に合わせた支援を意識出来る
身体状況、病気等によって支援内容を細かく考える事も必要です。胸水が溜まっている方にはあまり上半身をお湯につけない、体が斜めに傾いたまま硬直している方にはお湯の中でクッションを敷く等、状態に合わせた支援が出来ると介護の質が変わります。
基本的に資格は無くても働く事が出来ますが、面接の際に資格があれば、就職も有利になりますし、重度の方も利用されるので、スキルや資格を取りながらステップアップを目指すのも、良い支援をするには大切です。
資格①:介護職員初任者研修
この資格は介護の資格の中で入り口と言っても良い資格です。以前はヘルパー2級とも呼ばれていました。介護の基本的な知識を学ぶ事を重点とした資格になります。
現場で学ぶ事も多くありますが、知識として学ぶ事も大切です。
資格②:介護福祉士実務者研修
先程紹介した、介護職員初任者研修よりも更に深く学び、医療的な知識も学ぶ事が出来ます。
そして、介護福祉士を取得する上で必ず必要になってきます。医療的な場面に携わる事が多い、訪問入浴では大事なスキルになります。
資格③:介護福祉士
こちらは国家資格になります。介護の現場では非常に戦力となる資格です。現場のリーダー的存在としても活躍出来ますし、無資格で出来る訪問入浴の中に1人でも国家資格を有した職員がいる事は心強いです。
訪問入浴の1日のスケジュール例
訪問前には必ず訪問入浴車の灯油残量を確認します。私の経験上、この確認を怠ると、訪問中に湯が沸かせなくなる事も。
また、夏場などは体力勝負になってきますので、必ず飲み物、軽食は訪問入浴車に持っていき、移動の間に細目に摂取します。
- 08:30出勤事務所に集合後、1日のスケジュール確認、各利用者様の支援内容を確認後、巡回入浴車で訪問先へ向かいます。
- 09:00経鼻栄養チューブをしている方への訪問支援後に良く家族様からゴーヤジュースを頂きました。
- 10:30100歳を超えた子宮頸癌の方への訪問本人さんと娘さんの2人暮らしで、2人がコントの様な会話を繰り広げていたのを覚えています。
- 11:45事務所に帰り、支援後の入浴車内の片付けや午後からの準備ほっとする瞬間です。
- 12:00昼休憩近所のコンビニでお昼ご飯を買う人や、お弁当を持参する人がいます。しっかりと1時間、休憩が取れることが訪問入浴の仕事のメリットでもあります。
- 13:15デイサービスに行く事が嫌な方への訪問デイサービスには行きたくないと毎回言われていました。
- 14:30寝たきり状態の方への訪問家族様が看護師をされており、少し緊張しながらの支援でした。
- 15:45脳梗塞後遺症により右半身麻痺の方への訪問女性の方で、旦那さんと仲が良く、旦那さんがいつも微笑ましい笑顔で、支援を見守って下さいました。
- 16:45事務所に戻り本日業務の記録上長への報告、当日の仕事内容や利用者さんの状況など、業務日報へ記載します。
- 17:15退勤基本的に、1日のスケジュールが決まっているので、定時で退勤することがほとんどです。
訪問入浴でやりがいを感じられる瞬間
訪問入浴だからこそ感じられるやりがい、面白さ、これがあるから訪問入浴はやめられない、頑張って支援して良かったなと思える瞬間を紹介していきます。
やりがい①:仲間との時間
チームとして動く訪問入浴では、常に助け合いです。
1人では大変でも3人なら「笑いあり」「涙あり」です。どんな仕事も大変ですが、チーム内で冗談を言い、些細な事でも共有し合える大切な時間です。
やりがい②:各自宅での様々なエピソード
自宅でのエピソードは本当に様々で、冬場に水道が凍ってお湯が沸かせなかったり、利用様と家族様の漫才が始まったり、訪問先で蜂の襲撃にあったり、入浴中に人生相談が始まったりと予想がつかない事が沢山あります。
そんな沢山の事柄を経験できるのも、訪問入浴の魅力です。
まとめ
ここまで、訪問入浴について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
訪問入浴の仕事の魅力は、
- 初心者にとってはチームで行動する事の安心感
- 緊急時や医療的な面は看護師が対応
- 1人の利用者様に対する様々なアプローチ
だと思います。
何度も伝えているチーム力、是非その温かさを実感してみて下さい。
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