現役介護士の深イイ話
インタビュー実施日:2019年07月30日
現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。祖父の在宅介護をきっかけにヘルパーの道へ。
出産や転居でブランクを挟みながら、デイサービス、訪問介護での勤務を経験。
働きながら介護支援専門員、認知症ケア専門士を取得、認知症介護者実践者研修を修了。
現在は訪問介護事業所でサービス提供責任者として勤務。中学生と小学生の兄弟の母として、休日は部活や習い事の送迎で忙しい。
訪問介護ヘルパー 工藤さん
あなたにとって介護職とは?
ヘルパーとして働く以上、心を満たす「癒者」でありたい。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
私はこんな介護士です。

ご自宅で生活する認知症の方の生活を支えるのが専門です。
そのため、認知症に関する研修や資格取得に1年間みっちり取り組みました。働きながらの資格取得でしたが、現場での経験が生きるのであまり苦に感じませんでした。
一人暮らしで認知症となると、周囲は施設を考え始めます。住み慣れた自宅で、自分の好きなものの中で生活することが一番良い環境と考え、そのためにはどんな支援が必要かを常に考えるようにしています。
相手の大切にしているものを尊重して、少しでも笑顔の時間を提供していきたい、そんな風に考えて仕事をしています。
編集部
どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?
大好きな祖父が脳梗塞の後遺症で、要介護5の寝たきりになったのがきっかけです。
四肢麻痺となり手足を動かすことができず、食事や排泄などの介助が必要になりました。食事は家族と同じものを食べていましたし、幸い認知症もなく自分の気持ちはハッキリ伝えられる状態でした。
ただオムツ交換だけはどうしたら良いのかさっぱりわからず、訪問介護のヘルパーさんに教えてもらいました。担当のヘルパーさんがとても親切で、わからないことを聞くといつも丁寧に教えてくれました。
それだけではなく、孫の私が介護と仕事を両立できるか、主介護者である父がストレスをためていないかどうか、常に気にかけていてくれる素晴らしいヘルパーさんでした。
その時に、こんなに人のために行動できる素晴らしい仕事があるんだと思ったのがきっかけです。それからヘルパー2級の資格を取り、訪問介護のヘルパーとして働き始めました。
編集部
介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

お風呂で背中を流し、浴槽に浸かった瞬間の「あぁ~気持ちいい!」という表情を見るのは最高です。どんなに頑固な方でも、そんな時は本当に良い表情をされるんです。
その表情を見るためにこの仕事をしていると言っても過言ではありません。やはり日本人は、浴槽で肩までつかって温まるのが好きなのだなと感じます。
シャワーで汗を流すだけでは、体はきれいにはなるかもしれないけど、温まった気がしない、そう話される方が多い気がします。体が思うように動かず、ひとりで浴槽がまたげないけれど、福祉用具を使ったりヘルパーが介助をすることで安全に入浴ができるということは、在宅で生活する上でとても意義のあることだと思います。
そういうお手伝いをして、良い表情を見せてもらった時が、一番やり甲斐を感じる瞬間です。
編集部
印象に残っているご経験はどのようなことですか?
ALSという病気を持った利用者さんの担当になったことがありました。近年アイスバケツチャレンジというのが流行したこともあり、今ではだいぶ知られてきている病名ですが、当時の私には全く知識がありませんでした。
先輩ヘルパーや同僚の看護師に聞きながらの介護でしたが、眼球の動きや表情のちょっとした変化で意思の確認をするという方法が、最初はとても難しく感じました。
ある時娘さんから「毎年お花見に行っていた場所に、今年も父を連れていきたい」という相談がありました。
始めはそんなことができるんだろうか、と心配でした。お花見の公園は砂利道なので、車椅子では移動できません。
ケアマネージャーや訪問看護やヘルパーが何度も相談して、どうしたら体に負担がかからず移動できるか考えて、最終的には6人でストレッチャーを持ち上げて行くことになりました。
大人ひとりの体重にストレッチャーの重さでかなり大変な作業でしたが、途中で休憩をしたり、痰の吸引をしながら公園に行きました。
満開の桜の下に着いた時、大きく目を見開いて、しっかりと桜を見ていた利用者さんの表情が忘れられません。
その後もお花見の話をするたびに目がキラキラと輝いているように見えました。利用者さんにとって素晴らしい体験だったことは間違いないですが、私にとっても非常に勉強になる経験でした。
編集部
仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
訪問介護という仕事は、利用者さんのご自宅を訪問する仕事なので、方向オンチの私には最初はとても大変でした。
地元ではない土地勘のない場所で道順を覚えるのはとても大変でしたが、今はスマホでもナビが使えますので、うまく活用しています。
最初は道に迷ってしまい、約束の時間に遅れそうになって慌てることが何度もありましたが、今は休みの日にドライブを兼ねて走り回り、道を覚えるようにしています。
あとは高齢者の方が話す方言に慣れるのが大変でした。方言の強い方が何を話しているのかさっぱり分からないこともあり、何度も聞き返して相手を怒らせてしまったこともあります。
今では少し聞き取れるようになったので、会話がスムーズになりました。コミュニケーションは介護には大切な要素ですので、その方の話す言葉というものを大切にしようと思っています。
編集部
日頃から大切になさっていることはなんですか?
笑顔が何より大事と思っています。高齢になると体のあちこちが痛くなったり、思うように動けなかったりすることが多くなり、そのまま表情が暗く険しくなってしまいがちです。
自分の未来に悲観的になり、早くお迎えが来ないかな、などと話す方もいます。せめてヘルパーと一緒に過ごす時間くらいは、心からの笑顔を見せてもらいたい、いつもそう思っています。
そのためには、相手の心と体の状態を見きわめて、常に気持ちに寄り添った介護者でありたいと思っています。
中には頑固な方や、なかなか心を開いてくれない方もいますが、焦らずに誠意をもって向き合おうと心がけています。
時間をかけて向き合った方が、初めて心からの笑顔を見せてくださった時は本当に嬉しいです。医者は体を治しますが、ヘルパーは心を満たす「癒者」でありたい、いつもそう思っています。
編集部
今後やりたい事や目標などありますか?
介護の仕事をこれから始めようと思っている方の、お手伝いになる仕事がしたいと思っています。
大変なイメージがつきまとう仕事ですが、後輩ヘルパーに聞くと「思ったよりも楽しい、奥深い」という答えが返ってきます。
実際にやってみると、イメージとは全く違う印象を持つことが多いようです。私にとって介護とは、高齢者の人生の後半部分をより良いものにプロデュースする、大変クリエイティブな仕事だと思っています。
自分の経験したことや学んだことを、介護士を目指す人たちに伝えて、同じようなやり甲斐や楽しさを感じてもらいたいと思っています。
漠然とした目標かもしれませんが、そのためには自分の引き出しを増やすことが必要ですし、人に教えるには自分も学ばないといけませんので、これからももっと精進していかないといけないと考えています。
編集部
これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

訪問介護という仕事は、主婦の方にピッタリな仕事だと思っています。
小さいお子さんがいてフルタイム勤務はちょっと、という方でも、週に3日とか1日1時間とか、フレキシブルな働き方ができる仕事です。
急にお子さんが熱を出して仕事を休まなくてはいけない時、普通の職場なら肩身の狭い思いをするかもしれませんが、ヘルパーさんは子育て経験者が多いのでお互い様精神が強いので、そんな思いをすることはありません。
さらに全国どこでも働けるので、旦那さんが転勤族だったとしてもすぐに仕事が探せると思います。
毎日家でやっている食事作りや掃除が生かせますし、人生の先輩からいろいろ教えてもらうこともできます。
施設やデイサービスのように時間に追われることもなく、ひとりの利用者さんにしっかりと向き合えるのも魅力だと思います。
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