障がい者支援グループホームの世話人として40歳の新たな挑戦。この笑顔を絶やさないために

障がい者支援グループホームの世話人として40歳の新たな挑戦。この笑顔を絶やさないために

現役介護士の深イイ話

インタビュー実施日:2019年08月14日

現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。
プロフィール

看護師資格をとり、医療機関に勤務していたが結婚を機に退職し10余年子育てに専念。

40歳を前に、知的障がい者の入所施設の看護師として働く。

介護保険制度が導入されたのを機にケアマネージャー・ヘルパーの資格を取得。在宅障がい者の支援に携わる。

障がい者も施設から地域へという流れの中でグループホームができると同時に、世話人とての業務を選択。

現在、7名の知的障がい・精神障がいを持つ女性のグループホームに勤務。

介護職 安藤さん

あなたにとって介護・福祉とは?

毎日同じことの繰り返し、と思われがちな支援や介護業務ですが、その中での発見や気づきの積み重ねが、人として成長させてくれます。

障がい者支援という選択

障がい者支援という選択

編集部

なぜ障がい者支援に携わろうと思ったのでしょうか?

20代後半で看護師資格をとり医療機関で働いていましたが、思うところがあり、結婚・子育てと現場を10余年離れる結果となってしまいました。

ある時、知人に「うちの子供が世話になっている施設で看護師募集をしているのだけれど働いてみない?」と誘われたのを機に、深く考えもせず知識もないままに「精神薄弱者更生施設」に勤務することになりました。

そのころは知的障がいと言わず精神薄弱者と呼んでいたのです。余談ですが、その後精神発達遅滞と呼ばれる時期を経て現在の呼び方にわりました。

初めて接する人たち、看護学校の実習でも経験したことがない施設。ほんの少しの支援で自立できる人から、生活のすべてを支援者に委ねている人まで様々です。

言葉を理解できる人・できない人、しゃべれる人・しゃべれない人、多動であったりパニックを引き起こしたりする人、てんかん発作が日常的に起きている人。

40歳を目前に踏み入れた世界、果たして自分にこの人たちに関わるスキルがあるのだろうかという不安が大きかったですが、とにかくこの場から逃げないということを自分の目標にしました。

それを支えてくれたのはスタッフの優しさです。「何もわからなくてもいい。利用者のことを一緒に考えてくれればいい」と年下の上司に言われ温かいものを感じました。

また、利用者の屈託のない笑顔、「こんにちは」としか言葉が出ない人の「こんにちは」、職員の名前が覚えられない人にとって職員はみんな先生。

「先生、こっちに来て」と自分の居室に招き入れてくれる人。とてもきれいな目をしている人が多く、何もできない外部の人間を温かく迎えてくれました。

時が経過して、業務も何とか表面的にはこなせるようになったころには気づけばすっかり彼らの虜になっている自分がいました。

障がい者を取り巻く制度も措置制度から利用制度にと移り変わり、また介護保険制度が導入され、三障がい(身体・知的・精神)や高齢者の線引きがゆるくなり、業務の中でかかわる人たちの範囲が広まってきます。

ケアマネージャーやヘルパーの資格も取り、法人が訪問介護の事業を手掛けるようになり、在宅の人の支援や介護業務にも従事する経験もしました。

時を同じく障がいを持つ人も「施設から地域へ」というスローガンが掲げられ地域にグループホームを設立し、少しずつ入所者が地域の中へと出ていきます。

職場においても職員の配置を本人の希望を加味する方向で人員配置を決めることとなり、私には施設看護師・生活支援員・ケアマネージャー・ヘルパー・グループホーム世話人という選択肢があり、迷わず世話人を選択しました。

実際には世話人業務とは身の回りのお世話に明け暮れることがほとんどです。

入所施設で大きな集団の中で暮らしていた人たちが「新しい自分の家」として暮らしていくのがグループホームです。

障がいが重く、少し前までは一生施設暮らしと思われていた人が小さな集団の中で、個を尊重されながら生活ができるのです。それぞれが自分の部屋でだれにも邪魔されず好きなことをして、家庭的な食事ができ、落ち着いた生活を送るのが目的です。

数年の業務の中で私を成長させてくれたこの人たちの最も近くでその声を聞き、安心して暮らせる場になるように見守っていきたいと思いました。これが私のこの仕事を選んだ理由です。

編集部

障がい者支援に携わって苦労したこと、大変だったことは何ですか?

最も苦労し、大変だったのはコミュニケーションです。言葉にあまり頼れない人たちとのコミュニケーションは今でも不安になることはあります。

訴えが理解できず「うん、うん」とごまかして済ませたこともありました。きっと伝わらないもどかしさがあったでしょう。

そういうときにあきらめる人、攻撃してくる人、失禁することで抵抗する人、表現方法は様々です。

「仕方ないよ、ちゃんと言ってくれないとわからないよ。」と自分に言い訳をした時もありました。

しかし、相手に興味を持って関わっているとその人なりの表現の仕方がわかってきます。彼らは私の観察眼を育ててくれました。

最も困るのは体調を崩し、医療機関を受診するときです。一般的には医師はまず主訴を聞きます。そして、経過や他の症状を聞くでしょう。

しかし実際には主訴がわからない場合も多く、ただご飯を食べないのですとか、嘔吐が続いているのですとか、そういう報告しかできません。いつも傍にいるからこそわかる小さな変化もあるのです。そんなことを報告をしながら医師に原因を探ってもらいます。

スタッフによっては「言えないのだからわかるはずないよ」と言い切ってしまう人もいます。かつて自分にもそういう時期がありました。「もっと相手のことを好きになろう、わかろうとしようよ」と声を掛け合い、情報を交換しながら支援しています。

そして、最も悔いるべきは不調に気づいてあげられなくて手遅れになってしまうことです。そのような悲しい別れも経験してきました。

編集部

障がい者支援に携わって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

障がい者支援に携わって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

現場で働いていて一番うれしいのはやはり「ありがとう」の言葉と笑顔です。その「ありがとう」は障がいのある人本人だったり、家族の方だったり、他のスタッフだったり、その内容も様々です。

また、朝一番に顔を見たとき笑顔が見られると「今日も一日この笑顔を守ろう」という気持ちになります。

もう一つ、私の大好きな表情があります。どうせ何も理解できないし、何もできないだろうと思っていると大間違い。不自由な体でもちょっとしたいたずらをして「やっちゃったよ」と言わんばかりの表情を見せてくれる、あの顔大好きです。

言葉がしゃべれなくて、理解してもらえないもどかしさから暴力に出る人もいます。表面では制止しながら「もっとどんどんやっていいんだよ。我慢ばかりしなくていい」と心の中で思っていました。

誰かが中にたまったものを発散させるような行動に出た時が、よかったねと思える瞬間です。楽しくもあり、やりがいにもなっています。

大きな集団で生活していると、黙ってじっとしている人が「いい人」として評価されがちです。スタッフにとっていい人、つまり都合のいい人です。

いい人である必要はありません。どんどん思いをスタッフに向けて出してほしい、いやなことは嫌といえばよいと私は常日頃おもっており、自己主張をしている人たちを見るのが楽しみの一つでもあります。

やりがいは、一人一人がその人らしく生活するために必要な支援をしながら、その変化を近くで見ていられることです。

編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

一つは周囲の人たちとの「和」でしょうか。スタッフ間の空気が悪いとそれは必ず利用者に伝わります。「和」とは仲良しごっこではありません。

他のスタッフの支援や言動に対して疑問に思ったことは日常の業務の中で気軽に話し合える雰囲気を作ることです。

もう一つは自分で自分を表現しにくい障がいのある人たちの理解者、代弁者になることです。一人の利用者を見るのも多くの人の目で見れば異なった角度から見ることができます。

そうすることで多くの情報を共有しあえる、より理解が深まるということになるのでしょう。障がいのある人に対する偏見は地域で暮らしているとまだまだ根強いことに気づきます。

例えば公園で散歩をしているとき、そこに居合わせた子供に話しかけると違和感を覚えるのでしょうか、逃げてしまう子もいます。

もしくは近くにいる大人が呼び戻すこともあります。「障がいのあるこの人たちはあなたたちに危害を加えることもないし、少しお話したいだけなのです。」というニュアンスのことをつたえるのですが、うまくいかない事が多いのです。

そんなときアイテムとして、例えば犬を一緒につれて散歩に行くと子供たちが寄ってきて自然にかかわりが持てます。

一緒に来ていた大人も交えて共通の話題ができます。賛否両論ありますが、私は自分の飼い犬を連れて行きました。

もちろん最低限の訓練は受けています。またここで一緒に遊ぼうね、と言って別れることもあります。

編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

今、障がいのある人の支援にも様々なかかわり方の選択肢があります。多分、資格をもっていればそれを生かす仕事をすればよいと多くの人は思われるでしょう。

現在グループホームの世話人として一つのホームに主としてかかわっていますが、これから他のホームとも連携をとりながら、何らかの情報発信や交流の場を持ちたいと思っています。

地域で暮らすといっても、ともすると狭い範囲で生活しがちになるのですが、それぞれの特技などを生かした交流の場や作品の紹介などできればと思っています。

編集部

これから福祉業界で働こうとしている人へのメッセージをお願いします。

これから福祉業界で働こうとしている人へのメッセージをお願いします。

福祉というと非常に範囲が広くなるのですが、話は私のいる狭い範囲の福祉、障がい者・高齢者の介護や支援ということになってしまいます。

働き方にも様々な形があり、大きく分けて直接支援かコーディネート的な業務を選択するかということになります。

かつては直接支援の業務は3K(キツイ、キタナイ、キケン)の職場の一つと言われていました。加えて低賃金・慢性的な人手不足で悪循環。

現在ではその全てが改善されているかというと、そうは言い切れない部分もあります。

しかし、福祉も現在は利用者に選択される時代です。サービスの質の悪い事業所は選ばれない時代になってきています。

そのため資格取得、事業所内外での研修などに力を入れるようになりました。また給与面においても2012年より介護職員等特定処遇改善加算の制度ができ、一定の条件をクリアした事業所に対して支援金が支給され、それを給与に手当として加算されるようになっています。2019年秋からはさらにその制度が充実するようです。

介護・支援は直接人にかかわる仕事です。人のために尽くすという言葉もたびたび使われますが、その中で確実に自分が成長できる場でもあります。

時に自分に力があり、利用者を弱者と位置付けて「やってあげる」的な考えをしているスタッフも見かけますが、決してそうではありません。

良きにつけ悪しきにつけ必ず自分のとった行動がいつか自分に戻ってきます。そのことに気づくのは少し時間がたってからでしょうが。

どんな人が向いているかという話になりますが、自己顕示欲の強い人、協調性のない人には向かないのかもしれません。一方、学ぶ姿勢があればどんな人でも自分の長所を生かした仕事ができるのが福祉業界だと思います。

毎日同じことの繰り返し、と思われがちな支援や介護業務ですが、その中での発見や気づきの積み重ねが、人として成長させてくれます。そのことがまた自分なりの工夫やアイディアをとなり利用者に返すことができるのです。

どんなに制度が充実しても、環境が整えられても、資格やキャリアをもったスタッフが集まっても、かかわるのは人であり、人の心です。

障がいがあったり、年齢を重ねることで、自分でできなくなったことをお手伝いしたりするのが私たちの仕事です。それは入浴や排泄の介助かもしれないですし、外出や食事作りかもしれません。

それをどれだけ本人の希望に沿った形でお手伝いできるのかがサービスの質ということになるのでしょう。今、少し勘違いされているのではないかと感じることの中に過剰な手出しがあります。

利用者に心地よく過ごしてもらうことは大切なのでしょうが、先回りしての過剰サービスが多いことが少し気になります。「できないことをお手伝いする」ことは「できることは自分でやってもらう」ことなのです。そして手出ししないでじっと見守る辛抱強さが介助者には求められるのではないでしょうか。

介護施設や病院などで見かける光景ですが、自分で食事のできない複数の人を同時に食事介助している姿があります。人員配置上やむをえないのかもしれませんが、こういう光景がなくなることを願っています。

以前、勤務体制の関係で上司に「こういう形でかかわるのはどうかと思う」といった内容のことを言ったときに、その上司は「そう思うことが大切。しかしこれが現状。気持ちだけは忘れないで」と言われました。

実際に状況が変わるとは限りませんが、理不尽に思うことに直面した場合、上からそう言われるのだからよいのだろうとか、みんなそうして言うからいいのだろう、ではなく本当はこんなことは利用者にとってよくないことなのだという気持ちを言葉にし、改善されなくてもその気持ちを大切にしながら支援にあたることも大切です。

もう一つ、私の経験した中で発見したこと。業務の中で壁に当たって職場を去った人は多いのですが、再び戻ってくる人もまた珍しくはありません。

いったんやめた職場に戻ってくるなんて、という人もいますが。戻ってきた人たちは素敵な職員になっています。「忘れ物をしたので取りに戻ってきた」といった人の言葉が忘れられません。

それも働き方の一つです。見方によってはそんな魅力的な職場でもあるのです。

障がいのある人の支援も、高齢者の介護も共通する部分は多く、まだまだ人の手が足りていないのが実情です。

「人を支援・介護」することに関心を持ち、援助を必要としている人に向かい合ってみませんか。業務の中で、自分の知らない本当の自分を見つけることができると思います。

介護士ライター募集中
注意

当サイトはユーザー様の善意の書き込みによって成立しているサイトです。しかし口コミの中には意図しない内容が投稿される場合がある点を、予めご理解いただきますようお願い申し上げます。サイトに投稿された情報は必ずしも正確であるとは限りませんので、自己の責任と判断でご利用ください。なお、投稿頂いた内容に、主観的・感情的な表現、もしくは個人を誹謗中傷するような表現がある場合、運営側で掲載可否を判断させて頂きますのでご了承ください。