当たり前を当たり前として提供できる大切さ。介護美容が担う美容と+αの部分

介護×美容

訪問理美容分野で働く人の経験談

インタビュー実施日:2021年6月2日

プロフィール
  • 年齢・性別:40代女性
  • 仕事内容:美容師
  • 得意分野:ヘアメイク、美容全般
  • 介護美容歴:6年
編集部
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何がキッカケで訪問美容・介護美容に関わろうと思ったのでしょうか?

元々施設に勤務している人から「自分の勤務先にいる利用者さんをお願いしたい」という話を頂いたことになります。どうしても介護施設でオーダーする際には介護士さんやケアワーカーさんの手間を重視してしまうので、女性であっても男性的に仕上げてくれる理容師への依頼が多くなる傾向にありました。

その結果、女性でも男性老人のようになってしまうことに対して、ご家族からも不満の声が出ているという話をいただき、元々ドライヤーだけで仕上げていくスタイルを提案していたのでお話を受けることになりました。

実際にケアマネージャーさんやリーダーさんたちと事前に何度かお話をして、「NOブラシ」「NOブロー」「NOスタイリング剤」で作れる「女性らしいヘアスタイル」を目指しました。

介護士さんたちも女性利用者さんをもっと可愛く、美人にという考えが浸透しました。

ご家族からも「手入れが簡単なのがいいのはわかるが、できればもう少し女性らしい感じにしてほしい」などの声も頂くことも多かったです。

「介護=非日常」ではなく、「介護=日常の延長」という部分を考えるきっかけにもなりました。

また、家にいるときと同じヘアスタイルを作ることで、利用者さん本人の心もポジティブになるのでは?と考えるようになったのものこの時からです。

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編集部
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訪問美容・介護美容の社会的意義はどのようなものだと考えますか?

訪問美容、介護美容の社会的意義は「疎外されているという部分を作らない」ということだと思います。

これは、ケアホームや特老に入所することで便利なのはわかっていても、自分が世間から切り離された存在になるという感覚を持ちやすくなる人も多いからです。

入所後に手入れや衛生面などを考慮し、坊主に近いショートカットや刈り上げスタイルなどにされてしまい、「自分はもう女性ではない」と感じたという方もいらっしゃいました。

担当させていただく際に話をして、「女性はあくまで女性である」という部分を強く感じました。実際にヘアスタイルをフェミニンなものに寄せるだけでも笑顔になってくださる利用者さんが多く、介護の中に作れる日常だという部分を再確認できました。

また、訪問美容なども「いつでも自分はいつもの生活に戻れるようにしたい」「家で治療中だけどもおしゃれをして、社会と自分のつながりを残しておきたい」などの声を頂くことも多く、改めて利用者さんの気持ちを理解することの大事さ、社会とのパイプ役という部分を強く感じることになりました。

年齢を重ねても女性は女性であり、昨今では少なくなった「女らしさ」を美容面で出していくことで精神面の向上が非常に高いのも実際に感じました。

編集部
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どんな時にやりがいを感じますか?

利用者さんが鏡を見た瞬間や、自分ん顔を鏡を見て声を上げる前に笑顔になってくれる瞬間にやりがいを感じます。そのあとに「こうしたかった」「前はこんな感じだったのよね」などといってもらえることです。いつも通り、日常を作れた瞬間は表情でわかるのでとてもうれしくなります。

ヘアスタイルに満足すると今度は「パーマをかけたい」「白髪を少し染めたい」などの声も頂けるようになり、ご家族からも利用者さんの声や表情が明るくなったといわれると嬉しくなります。

再訪した際にも「この間みたいに」と声をかけてもらえたり、お若いころのお話などを利用者さんから話してもらえるようになると、信頼関係なども築けていると感じられます。

男性もただの坊主ではなく、長さを変えることでショートと坊主の間にすることで年齢を若く見せるようにすると、次回の施術の際にお話などを多くしてくださる方が出てきたりするときもうれしくなります。

利用者さん、ご家族、職員スタッフのみなさんとの一致点などができると、相応にとっていい結果になっていると考えています。

眉カットや軽い産毛そりなども一緒に行ってますが、初回は眉カットだけだった方が次回の訪問でヘアカットやカラーなどの希望もいただくことも多く、トータルでの仕上がりと美容面での効果を提案できることなどもやりがいを感じます。

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編集部
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施術中にもっとも気を付けていることはありますか?

施術中に意識していることは「カットは30分以内」「カットと別メニューは1時間半以内」になります。

長時間の拘束はどれだけ仕上がりがきれいであっても不満や不快感に繋がりやすいのでこの部分は普段のサロンワークと同じことを意識しています。

薬剤などの使用の際には短時間で効果の出るもので薬液ダメージの少ないものなどを選ぶことで短時間の施術にもつながります。特に、ホームや施設などの場合はこの目安の時間のマイナス10分を意識しています。

事前に体の状態がわからない部分もあるので、カットのみの場合には30分が限度だと常に意識しています。

薬剤などの選定もですが、あくまで「出張」「いつもの美容室」にいることを作れるように、カットクロスなどもサロンと同じものを利用しています。

1回の施術ごとにクロスなどは除菌してから使用することで、流れ作業ではなく「自分のための出張美容室」という感覚を作ることができるので、一つの空間を作ることを意識しています。

プライベートサロンの延長になる空間を作っていくことが今後も意識していく部分だと思います。

カラーやパーマはどうしても時間がカットよりはかかりますが、短時間を意識することで次回も同じメニューをという方が多いので、時間のオーバーには気を付けています。

編集部
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介護×美容分野が発展するために必要なことは何だと思いますか?

介護分野での美容とサロンワークは同じようで全く違います。

サロンであれば、ある程度時間を頂けるメニューであっても、介護美容の場合には短時間でおなじ仕上がりにしていくことが求められます。

サロンワークでのスピードと介護美容のスピードでは、介護美容のほうがシビアです。

美容師に求められるものは「スピード」「正確さ」「薬剤知識」「乾かすだけで完成するスタイル」になり、サロンワークと同じものをより短時間に作ることが課題になります。

美容師のメンタル面で必要なのが「介護者という感覚を持たない」になります。

「この人は介護施設にいる」「特老にいる利用者さん」という意識を持っていると、利用者さんにも悟られます。

あくまで「美容室を出張で持ってきた」「利用者さんのプライベートな空間にお邪魔している」という部分を作ることが必須だと思います。

介護施設に入ることで、自分と世間との関係が断絶されていると感じている利用者さんも多く、施術中の会話などで介護を意識させない、利用者さんに会話の主導権を持ってもらう、という形を作ることも必須になります。

本人の満足度もそうですが、ご家族から見た際にも満足してもらえるかも重要な部分になります。

編集部
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あなたにとって介護×美容とは?

  • 利用者さんが元の自分に戻るための工程
  • ご家族にも「以前と同じ利用者さん」を見せられる
  • 利用者さんの美容面、衛生面、精神面の向上

この3点になります。施術後の利用者さんの表情や「ありがとうね」という言葉はサロンワークとは違った嬉しさが生まれます。

サロンワークは日常と非日常の間にあるものであり、介護美容は利用者さんの日常を取り戻すという側面があることなども、介護美容の深さだと思います。

介護美容というとぼやける人でも、入院中に髪がぼさぼさになったことで「世間と自分が違う空間にいる」と伝えると利用者さんの気持ちもわかりやすいかもしれません。

介護施設は、自宅ではない空間になります。

この自宅ではない空間を家族が着た瞬間に自宅にするための要素が「介護美容」だと思います。

訪問美容と介護美容はこの空間の違いが非常に大きく、介護美容では日常をどこまでつくれるかで利用者さんの笑顔につながっていると考えています。

この一瞬の日常や自分を取り戻すための空間が病院内にある理美容所であり、それをより発展させた形が介護美容だと思います。

まだまだ発展と改善ができる分野でもあり、利用者さんの数だけ正解や答えがあると考えています。

編集部
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これから、介護×美容分野にチャンレンジする方へメッセージをお願い致します。

介護美容を必要としているかたは「自分たちの大先輩」になります。

その部分を意識することで会話や技術の向上やモチベーションの継続荷物がる部分になります。非日常の中に日常と「家にいるときと同じ感覚」を作ることが大事になります。

また、同時に利用者さんのご家族の満足度も大事になります。

とくに介護施設などに利用者さんがいる場合には、ご家族が毎日傍にいないこと、対面できる日が限られているなども意識することになり、サロンワークにおける「自宅に帰ってからの反応」とはまた違ったものを想定しての仕上がり、施術が大事になります。

最初のうちはサロンワークとの違いになれない部分が出てきます。

ですが、そのなれない部分はとても大事なものであり介護美容や訪問美容における根っこの部分にもなります。

「介護疲れ」という言葉がありますがこれは利用者さんのメンタルにも存在しています。介護施設にいることで気持ちがやんでしまう人は少なくありません。

その部分をケアできる仕事の一つが訪問美容にもなります。

サロンワークとは違ったスタイルの仕事にはなりますが、並行していくことで双方に良い部分を出すことができます。利用者さんとの関係の変化なども自分にとって大きなモチベーションになります。

そんな、楽しさ溢れる介護美容の世界にぜひチャレンジしてみてください。

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