現役介護士の深イイ話
インタビュー実施日:2019年9月15日
現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。
大学にて福祉系専門職課程卒業後に新卒でデイサービスセンターに入職。
レクリエーション担当として働き始めたにもかかわらず、実際は介護一色に。
ケアマネジャー資格取得後、1度一般企業に勤めるものの介護業界とのギャップに悩み、1年で介護業界へ戻る。
そこで介護業界が自分にとって転職であると気づいたことから、いつしか介護系のエキスパートを目指すようになる。
現在は、子育てをしながらどのようにキャリアアップしていくかを考える日々。
介護職 浅野さん
あなたにとって介護職とは?
介護する者、専門職、家族。介護の現場では、誰一人として欠けてはいけません。チームワーク、思いやりがない人には務まらない仕事だと思います。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 福祉系大学卒業高齢者デイサービスセンター入職レクリエーション担当職として採用されるも、実際は1介護職員として働く。
- 社会人4年目有料老人ホームに転職ケアマネジャー資格を取得した後に活かせる職場経験を積むために転職。夜勤も経験する。
- 社会人6年目介護支援専門員資格取得介護支援専門員試験を受験するために必要な実務経験年数をクリアしたことをうけて、介護支援専門員試験を受験し合格する。
- 社会人7年目一般企業に就職大学で取得した専門職資格を活かした職を見つけたために1度介護の仕事から離れ一般企業に専門職として入職。
- 社会人8年目居宅介護支援センターに入職前年度一般企業で働いたものの介護業界とのギャップに悩み1年で離職。ケアマネジャーとして働き始める。
- 社会人12年目結婚を機にデイサービス事業所に転職居住地が変わったことを理由に転職。デイサービス事業所のスタッフとして働き始め妊娠出産を経て現在に至る。
私はこんな介護士です。

デイサービス、有料老人ホーム、居宅ケアマネジャーを経験し、さまざまな高齢者やその家族とのかかわり方を学んできました。
またそれに加え、さまざまな研修に参加することで理論的なことについても見識を深めています。
そうすることで、個人によってさまざまな状態にある要介護状態の高齢者の方々にどのようなケアを提供することがベストなのか、またご家族にどのようなアドバイスができるのか、常に考えることができていると感じています。
介護するご家族を含めた介護に関わるスタッフがチームとしてタッグを組み、一丸となって、ときには情報を共有しあい、ときにはアドバイスしあいながらケアをおこなうことが、介護を受ける方にとってより良い環境を作ることができると思いそれを実行するのが私の介護士としての日常です。

どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?
福祉系の専門資格が取れる大学を卒業し、最初に入職したのが高齢者のデイサービスセンターだったことがきっかけです。
大学入学時は、介護士になりたいと思っていたわけではなく、その資格を取るための勉強内容に興味があったので、その大学を選びました。大学を卒業するとき、専門資格は取得したものの世間的には認知されている資格ではないため、同時に取得した社会福祉主事任用資格を活かして就職活動をおこないました。
そんな私が就職することができたのが最初に働き始めたデイサービスセンターです。
そこには専門資格を活かしてレクリエーション担当として入職しましたが、人手の足りない介護の現場ではレクリエーション専門職のみの人員としていられるはずもなく、徐々に介護職としてのウェイトは増していき、最終的には他のスタッフと同様介護士一本になっていきました。
そんなふうに、私はいつの間にか介護士として働くようになっていました。
他にも、やり甲斐や誇りを持って働く介護士がいます

介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
特に認知症のかたやそのご家族の支えになれたと実感できたときに、介護士としてのやりがいを感じます。
認知症のかたのケアは、知識や経験を積んだ介護士のほうがスムーズにできる場合が多くあります。
また、ご家族であれば1対Ⅰなど限られた人数でケアにあたらなければならないのに対して、介護士はチームを組んでケアにあたることができ、相談したりケア方法をシェアしたりしながら介護をすることができます。
介護士、特に介護福祉士の仕事のひとつとして、ケアの方法をご家族にアドバイスするというものがあります。介護のエキスパートとして、ケアの手助けをおこなうだけではなく、どうすればより良い介護ができるのかを伝えていくのです。
認知症という病気のせいでおこる症状への対処の仕方がわからずに悩まれるご家族はたくさんいます。
また、ご本人も得体のしれない認知症という病気と戦っておられます。その方々を介護士として支え、お礼を言われるなど支えになれたのだと実感することができたときに喜びを感じます。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
私が介護士として働き始めてまだ1年目。介護の専門的な知識もあまりなく手探りで介護をおこなっている中でであったのが、認知症を患うAさんでした。
Aさんの症状はそれまでに出会ったどの認知症のかたとも異なっており、百戦錬磨の先輩たちも戸惑っているほど。具体的には視覚的な障がいがあり、暴力的で、言語的にも意味不明な言葉を発するといった様子でした。
ただ、Aさんと私はなぜか波長が合い、心を通わせることができる時間を多く作ることができる関係になりました。
Aさんの独特な認知症の症状と介護拒否に苦戦するなか、それでも私はなんとかAさんに寄り添うことができるようになり、徐々にケアもおこなうことができるようになっていきました。
その後Aさんのケアについてチームで話し合いを重ね、ケアが十分にできるようになった時点で、Aさんのデイサービス利用は終了しましたが、このAさんとの出会いで私はかわったのです。
それまで「介護の専門家ではない」という思いが強かった私。「今まで勉強してこなかったからわからない」と内心では思いながら毎日いろいろなことを教えられるがままにこなしている状態でしたが、Aさんのことに関しては誰もがわからない。
そんな中で自分ができることは何なのかを考え、実行し、それがAさんに受け入れられるという経験をする。そのことが私に介護士としての自信を与えてくれました。
介護士の仕事は机上の勉強で身につくものばかりではないと気づかせてくれたのもまたAさんでした。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
「自分は介護士ではない。」という思いがいつでも付きまとう日々が数カ月間ありました。
専門職としての知識を活かして、レクリエーションを通じて高齢者と関わっていくはずだったのが、実際は介護士として働く日々。
そのため介護士としての勉強をして入職してきた同期との差を感じましたし、雇用のさいの話とは異なる現実にも不満がありました。
介護の仕事に関することを基礎もあまりわかっていない状態だったので、覚えなければいけないことの多さにも疲れていました。
介護士として働くことの楽しさを知るまでは、自分の立場が分からずに辛い日々を過ごしていたと思います。

日頃から大切になさっていることはなんですか?
利用者さんやそのご家族との会話の中にある重要な事柄を聞き逃さないようにすることを心掛けています。
重要な事柄というのは主にその方々の悩みです。介護されているご本人も介護しているご家族も何らかの悩みを抱えていることは多くあります。介護をはじめてまだ日が浅いご家族は、どのように介護すればいいのかわからずに悩んでいます。
また、介護生活が長くなりある程度安定した生活を送っていても、今後のことについて悩むご家族もいるでしょう。
介護される側の要介護者についても悩みはつきません。自分の状態が理解できずに悩まれる方もいます。ご家族に負担がかかることが心配で悩みとして抱えてしまう方もいます。
そんな数々の悩みは、こちらが聞く姿勢を示していれば聞くことができます。デイサービスの送迎の際にぽろっとこぼされる方や、老人ホームでの面会の際に相談されていく方、入浴中のリラックスしたタイミングでお話しされる方もいます。
聞き取った悩みについてはまず傾聴します。中には話を聞いてもらうだけですっきりしたと言ってくれる方もいます。そして必要であればアドバイスします。少しでも精神的な負担から逃れられることを目指しています。
会話の中には、ときには介護士に対する感謝を伝えてもらえることもあります。それはその後のモチベーションを保つ材料の1つにもなるので、聞き漏らさないようにして、他のスタッフにも伝えるようにしています。

今後やりたい事や目標などありますか?
以前は自分が生まれ育った地域で居宅のケアマネジャーとして働いていましたが、結婚を機に他県に移り住んだこともあり、仕事を辞めてしまいました。
現在住んでいるところでもケアマネジャーとして働きたいと思っていつつも、土地勘がないこと・子どもがまだ小さいことがネックになり、ケアマネジャーとしては働くことができていません。
今はデイサービスで働きながら土地勘を養っている最中ですが、いずれはケアマネジャーそして主任ケアマネジャーとして働くことが目標です。

これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

介護士の仕事は一般に言われているとおり、難しさや厳しさを感じる仕事ではあります。
しかしながら「この仕事が生きがいだ」「この仕事しかできない」という人が一定数いることも確かです。
介護の仕事が少しでも「自分にむいているかもしれない」と思えるのであればトライしてみてください。多くの介護士の先輩、そして人生の先輩方が助けてくれると思います。