現役介護士の深イイ話
インタビュー実施日:2020年4月8日
現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。
事務員を退職後失恋も経験し、ふと生涯結婚しなかった時のために年齢に関係なく仕事がある資格を取ろうと思い立ち、ホームヘルパー2級の講座へ通う事に。
キャラの強い先生や個性豊かな生徒の皆さんに圧倒されつつも、勉強していくうちに認知症に興味がわき、グループホームへ無事就職。入居者の方々やスタッフにも恵まれ介護福祉士の資格を取得し、以後4年間正社員として勤める。
介護職 メリーゴーランドさん
あなたにとって介護職とは?
さりげなく心にも寄り添えるのが介護士だと思っています。気を許してもらえるかが腕の見せ所。肌に触れる職業なので、まずは嫌われない事が大前提。
敢えて自分のキャラはあまり作らず、一歩引いて接しても安心感のある存在だと思って頂けるのが理想です。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 20代後半事務員事務員として5年程勤務。来客や電話対応といった一般事務をこなす日々。男性社員からもっと若い人がいい等と冗談で言われる事があり、特別な取柄もない自分に自信が持てない日々を過ごす。自分は何に向いているだろうと適職や天職について考える様になり、退職を決意。
- 30代グループホームの正社員採用ホームヘルパー2級の講座に通学。認知症は他人事ではないなと感じたことから就業先はグループホームに絞り就職活動。面接で見学すると目を覆いたくなるような施設もあったが、幸いすぐに希望の施設が見つかり正社員として採用される。
- 勤続1年目別施設へ異動異動があり、新施設へ。1人、また1人と続々入居者が増えて満室になる。認知症特有の、新しいことが苦手な方々ゆえトラブルが続出。中々住まいが変わったことが受け入れられず家に帰りたいと不穏になるため残業で疲弊が色濃くなる。
- 勤続2年目徐々に部下の管理を任されるスタッフのチームワークが整い、入居者の方々も日々小さなトラブルはあるがお互い顔なじみになることでささやかな絆が出来上がっていく。日常をのんびりと過ごしながら、入念に計画したお出掛けや旅行等でメリハリのある生活を送って頂けるようになる。
- 勤続3年目退職者が増え負担増死期が迫る方のケアを経験。夜勤も1人で対応するため精神的にも追い込まれていく。認知度が進み退所する方を見送ったり、お亡くなりになる方もいたりと厳しい現実が続く。退職者も増えていき、新人も定着しないため既存スタッフの負担として重くのしかかることになり、体調を崩すスタッフが続出する。
- 勤続4年目介護福祉士試験に合格入居者の認知度が進んでいき、元気な方でも緩やかに進行していく現実を感じるようになる。相変わらず忙しく毎日が過ぎていき、働きながら介護福祉士試験に合格。症状の進んでしまわれた方や介助の難しい方でもスタッフ同士協力して支援していく。認知症の講義や介護の外部研修にも参加し、より一層理解を深めていく。
私はこんな介護士です。

一言で言うと、親しみのある介護士です。中には、見た目からして元気で明るく声の大きい介護士も多いかと思いますが、自分は大してテンションも高くなく至って普通です。笑顔で接しますが、無理に繕うことはしません。
一概には言えない事ですが、入居者の方々には、キャラが強くない方が受け入れてもらいやすいのではないかと先輩スタッフを見て感じ、そうしていました。
グループホームでは認知症の進行具合も、症状もバラバラです。少人数と言えどタイプは十人十色。全員に対応するために、自分を出さない様にしていました。
有難い事に「細いわね」「素敵なお召し物ね」等と褒めてくださる方が多く、女性同士の会話を楽しむように意識していましたね。
それは今迄介護一色でなかったことが逆によかったのかもしれません。新人の時に、介助がスムーズな先輩の声掛け等を見学出来たのもいい経験になりました。
その時に他の介護士との決定的な違いとして感じたのが「さりげなさ」でした。
さりげなく自然体で接することで、入居者の方には比較的すんなりと受け入れて頂けた事が続ける自信につながりました。

どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?
事務職を退職後はオフィスで働くのではなく、直に人と触れ合い、手に職を付けたいという気持ちがありました。
歳をとっても働けることやこれからも必要とされ続ける職種ということでホームヘルパー2級の講座を受講した事がキッカケです。
通学講座だったのですが、20代~60代と幅広い年代の個性的な方々が居て、自分は介護業界では若い方だと実感したのも大きく、今のうちに飛び込んでみようと思いました。
後々、大切な人に介護が必要になったら役に立てるのも魅力的だと感じ、現場を知りたいという思いに駆られ、見学や面接に行きました。
他にも、やり甲斐や誇りを持って働く介護士がいます

介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
思い出に自分が加われたことですかね。入居者の方々にとっては最後の家みたいなものがグループホームなので、家族ではないですが非常に連帯感を感じ、やり甲斐につながりました。
自分もいずれこうなるのかな、なんて考えさせられる事も多く、悔いのない人生を送るヒントを先に見させてもらえるお仕事だと思いました。
介護を通じて、人間力が鍛えられましたね。「まだ若いから何でも出来るじゃない!」「いくらでも幸せになれるわ!」と逆に励まされる事が本当に多く、勇気づけられていました。
人生はいつでもやり直せるし気になる事にはチャレンジしようと思えるようになりました。
認知症故に、毎回新鮮な気持ちで褒めてくださるので、そういった何気ない心の交流には癒される事が多かったです。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
長い間寝たきりの方と初めてお会いした時は驚きました。骨と皮位やせ細って言葉は発せられず、全介助が必要な状態で・・・。認知症も最後には寝たきりになるとは聞いていたのですが、改めて残された時間の尊さ、命について考えさせられました。
新人の頃、初めて大家族分の料理を作る当番になった時、何度も見に来ては「美味しそうだね!」とだけ言って去っていく方や、今迄あまり参加していなかった方が急に無言で洗い物を始めたりするという不思議な現象が次々と起こりました。
認知症が進行しても私が新人だと分かっていて、出来る限りの態度で示してくださったのだと思いとても嬉しかったです。
お誕生日やクリスマスのプレゼントにすごく喜んでもらえたこともありました。異動後1年ぶりにお会いすると、すぐに「あの時のプレゼントだよ!」と嬉しそうに見せてくださいました。
私の事もプレゼントの事も覚えていてくださったなんて・・・!と思わず感動しましたね。
また、旅行を計画して付き添うと、生きていてよかったワ!と終始活き活きと楽しんでくださり「今迄こんなに人に喜んでもらえたことってあったかな」と胸が熱くなりました。
お亡くなりになった後でご家族に感謝のお手紙を頂いた事も、介護士冥利に尽きる忘れられない出来事でした。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
初めは同僚が居て、普通に楽しく話が出来たので心強かったです。
「上手くいかないのが普通」「終の住処であるグループホームでの介護は多岐にわたり大変な仕事」と期待に胸を膨らませることなく仕事をしていました。
強いて言うなら、男性の介助がしんどかったですね。介助中に触られたり誘われたりするのが続くと苦痛でした。
あとは、調理中どうしてもつまみ食いなさる方や盛付時に認知症の症状からつばを入れてしまわれる方がいるので、初めのうちは食が進まないこともありました。

日頃から大切になさっていることはなんですか?
入居者の方々にお会いした際には毎日ご挨拶することですね。出勤時は声を掛けるようにしていました。
また、スタッフ同士の助け合いがないとうまく回らない仕事なので、担当でなくても手伝うことも心掛けました。
いいなと思った声掛け等はスタッフ間で共有し真似することも多かったです。
ベテランや特別な資格を持っているスタッフがいい支援をするとは限らない世界なので、「初心忘れるべからず」を意識していました。
認知症の方々をそっとさりげなくフォローする様な支援は根気が要ります。
ご本人がやれることも介護士がやってしまうと、益々認知症が進んでしまうため、やり過ぎない事を意識していました。
言葉遣いや雰囲気もどこかゆっくりと、見た目にも温かみを感じて頂けるように黒い服は着ない様に心掛けていました。

今後やりたい事や目標などありますか?
介護士のケアに興味があります。介護士が疲れていたら、いい介護も出来ません。
ハードワークの介護士が病気にならないよう、いい介護士が辞めてしまわないよう、介護士向けのサービスがあったら嬉しいですよね。
マッサージのサービスやストレスケアのカウンセリングでもいいですし。介護士を増やすことも大切ですが、離職率が低くなるようにしていかないと何も解決しない様に感じます。
介護士を目指す方が今後増える様に、素敵な介護士をご紹介するメディアが増えるといいなとも思いますね。

これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

自分に合いそうか確かめる材料として、気になる事業所が見つかったら事前に見学した方がいいですね。
スタッフや入居者の様子など出来るだけ影からでも見させてもらい、活き活きとしているか確認するといいと思います。
少人数を相手にじっくりと向き合いたいという方にはグループホームをおすすめします。認知症の症状は人其々、本当に奥が深いです。
体力や精神力が必要になってくるので厳しい世界ですが、苦楽を共にすることでいい先輩や仲間に巡り合えるものこの職業の魅力ではないでしょうか。
心根が優しい方はきっとご活躍されると思います。時には死に直面する職業なので、頑張っていたとしても辛い出来事に必ず遭遇します。
失敗に落ち込んでも、立ち直りが早くないと引きずられてしまいます。自分が相手を観察するように、介護士も観察されている立場なので気が抜けません。
辛いことも多いですが、その分喜びや感動もひとしおです。私が言うのもおこがましいですが、豊富な知識や高い志より、目の前の困っている人をすんなり助けられる様な、日々のちょっとした優しさや行動力の方が大切だったりします。
ぜひ見学や面接など行かれる事をおすすめします!