現役介護士の深イイ話
インタビュー実施日:2020年6月18日
現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。
大学卒業、2年間のフリーターを経て無資格・未経験でデイサービスの介護士として就職。ホームヘルパー2級と介護福祉士を取得。「色々な介護事業に携わってもっと成長したい!」という気持ちからデイケアに転職。
8ヶ月務めた後、介護老人保健施設へ異動。ケアマネジャーの資格を取得。いつでも明るく聴き上手な性格を評価されて支援相談員へ異動となる。
2020年3月、ライターになるため退職する。
介護職 さわぽんさん
あなたにとって介護職とは?
私にとって介護職とは「人」について学ぶことができる職種です。
「健康」に関する知識やご利用者の「人生」に触れることで「人生色々」ということを学ぶことができたからです。介護職は、他の人の生き方に触れることができる素晴らしい仕事です。
様々な人生があることを知ることで、自分の人生を見つめ直すきっかけにもなります。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 2010年4月~2012年3月資格取得に励む日々大学卒業後、2年間フリーターをしていました。フリーターの期間を活用し、「認定心理カウンセラー」と「上級心理カウンセラー」の資格を取得しました。
- 2012年4月~2016年3月デイサービスに無資格・未経験で就職。その後、介護福祉士を取得東京都にある社会福祉法人が運営する高齢者の通所介護事業所(デイサービス)に無資格・未経験で就職しました。働きながら、週1回のホームヘルパー2級養成講座を受講して資格を取得しました。
その後、実務経験3年を経て国家資格である介護福祉士を取得。介護福祉士会に入会しました。介護福祉士会が主催する研修には積極的に参加し、研修で得た知識は施設内で共有するようにしていました。
その甲斐もあり、法人内で開催される研究発表にもデイサービスの代表として選出され、「稼働率を上げるための施策」を発表しました。ご利用者への介護の他、リスクマネジメント委員会、ボランティア担当、レクリエーションの企画・実施に携わっていました。4年務め、「他の介護事業にも携わってみたい!!」という気持ちから転職を決意しました。 - 2016年4月~2020年3月通所リハへ転職。その後、老健へ転職東京都にある医療法人財団が運営する高齢者の通所リハビリテーション事業所(デイケア)に介護福祉士として就職。
デイケアで8ヶ月務めた後、同法人が運営する介護老人保健施設(高齢者の入所施設)へ異動になりました。実務経験5年が経過したため介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得。
入所施設の介護福祉士として6ヶ月務めた後、人柄を評価されて支援相談員に職種変更となりました。介護福祉士と支援相談員の経験や、介護支援専門員としての知識を活かし、施設内の職員を対象に研修を開催してきました。
内容は、リスクマネジメント・ケアプランの視点と作成方法・介護老人保健施設に関わる介護保険制度と介護保険法などです。職員から「次はケアプランについて勉強会やってほしい!」とリクエストが出るほど好評でした。4年務めましたが、以前より興味があったライターとして活動するために退職しました。
私はこんな介護士です。

私は「ご利用者と職員の立場に立って考える介護士」です。同僚から「本当にあなたはいつもご利用者と職員の目線で答えてくれるから信頼できる」と言われていました。
介護の仕事はご利用者を中心に考えることが理想です。しかし、ご利用者の意思だけを尊重してしまうと、実際の業務では現場がうまくまわらなくなってしまいます。
たとえば、ご利用者3名に対して職員1名が配置されていたします。1名の職員が3名のご利用者にバランスよく対応していくには、お待ちいただいたり、時には我慢していただいたりすることもあります。
そうかと言って、「待たせておけば良い」「我慢してもらえば良い」ということではありません。このような場合には、ご利用者と職員とでしっかりと話し合って、お互いの希望の「間」を目指す必要があります。
私は、対応方法に困ったときには「お互いが歩み寄れる場所はどこだろう」と考えて行動していたため、ご利用者からも職員からも信頼される介護士になれたように感じています。

どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?
大学卒業後、2年間フリーターをしていました。フリーターをしているときに、興味本位で「認定心理カウンセラー」と「上級心理カウンセラー」の資格を取得しました。
カウンセラーの資格を活かせる職場を探していて、障害者の就労支援をしている法人に応募しました。障害者支援の方では不採用になってしまいましたが、「高齢者の方はどうですか?」と誘われました。
中学生や高校生くらいのときは、「介護なんて絶対無理!」と思っていましたが、「まあ、できるところまでやってみよう」と思い、デイサービスで採用していただいたのが、私の介護士人生の始まりです。
いざ介護士になってみると、目の前に困っているご利用者がいるので、「自分が手を差し伸べることで役に立てるのだ」という気持ちが芽生えました。できるところまでやるどころか、認知症のように「人間の未知」に迫るような仕事内容に魅了されて、8年も続けることができました。
他にも、やり甲斐や誇りを持って働く介護士がいます

介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
介護士になって良かったことは、様々な人生経験を積むことができたことです。これまで接してきた高齢者は、300名くらいでしょうか。300名分の人生や考え方に触れることができたので、大変刺激になりました。
90歳くらいになっても他の人と喧嘩したり陰口を言ったりしている高齢者を見ると、「人間の本質は何歳になっても変わらないのだな・・・」と思ったり、悟りを開いたようなご利用者もいたりして、介護の仕事はまるで「哲学」でした。
私もいつかは高齢者になります。様々な方の「老い方」を学ばせていただくことができたので、介護士になって良かったなと思っています。
1番やり甲斐に感じていたことは、認知症や失語症の方のケアです。認知症や失語症の方は、自分が伝えたいことを上手に表現できないことが多々あります。
私たち介護士が一生懸命考えて、ご利用者が求める支援を提供できたときは感動的です。ご利用者の笑顔を見ると、「この人の役に立てて良かったなあ」と、とてもやり甲斐を感じます。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
印象に残っている経験は、失語症の方の体重測定です。
失語症の方をAさんとさせていただきます。Aさんが「体重測定していない」ということを私たちに一生懸命伝えてくださっていたのですが、言葉が発せられないためになかなか伝わらなかったのです。
かなり時間がかかりましたが、私が「体重測ってない!!」と言ったら、満面の笑みで頷いてくださり、最後はAさんと職員みんなでハイタッチです。
このとき私たちが気をつけたことは、「イライラしないこと」「笑顔でいること」でした。Aさんのような失語症の方は、上手に伝えられないことでイライラしてしまうことがあります。Aさんがイライラしてしまったとしても、決して私たち支援者はイライラしないようにします。
そして、私たちが先にイライラしてしまうと、それはAさんに伝わってしまいますから、イライラしないように笑顔で対応することが大切です。
この事例は、まさに失語症の方の対応が上手にできた経験でしたし、何よりAさんの満面の笑みが今でも目に焼き付いているほど、良い笑顔でした。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
私が仕事に就いた当初苦労したことは、介護の知識や技術を身につけることでした。無資格・未経験で就職しましたが、私が採用されたのは職員の増員ではなく補充だったので実践で技術を身につけていきました。人が足りないながらも、先輩が丁寧に指導していただいたのが救いでした。
就職するときに、「資格を取ってから働く」か「働きながら資格を取るか」を選んで良いと言われましたが、私は「働きながら資格を取る」ことを選びました。「学び」と「実践」を同時にした方が早く成長できるのではないかと考えたからです。
休みが日曜日だけで、その日も勉強に費やしていたので大変でしたが、大成功でした。実践しながら教科書で学んだ方が、記憶に残りやすかったです。
資格を取得してから働くか、働きながら資格を取得するかを悩んでいる人は、仕事と資格取得の同時進行をオススメします。資格を取得するまでは大変ですが、早くスキルアップすることができます。

日頃から大切になさっていることはなんですか?
日頃から大切にしていることは、コミュニケーションです。具体的には、「相手の話を聴く」ことと「しっかりと伝える」ということです。
「聴く」ときには、「理解する」ことを目標にしています。私たちは、人の話を聴いていると言いながらも、音として聴いているだけで、話の主旨や意図を理解できていないことが多いと思います。
介護士はご利用者の相談にのることもありますから、しっかりと自分で理解できるまで聴かないと、後から「そのようなことは言っていない!」なんて言われて自分に返ってきますし、トラブルや苦情の原因になります。
また、「しっかりと伝える」ということもすごく大切です。「言ったつもり」になっていても、相手には正しく伝わっていなかったということが多々あります。
このようなこともトラブルに繋がりますから、相手が理解できたかどうかも確認しながら話を進めるようにしていました。「人と人」が交わる仕事ですから、コミュニケーションは大切です。

今後やりたい事や目標などありますか?
私は介護業界に8年務めた経験を活かして、ライターとしてたくさんの情報を発信していきたいです。また、ライターとして介護業界の情報を発信しながら、いずれはまた介護の現場に戻ろうと考えています。
介護士は転職する人も多いですが、1つの施設に長く務める人も結構いるのです。そうなると、支援の方法で悩んだり変化についていけなかったりする人も出てきてしまいます。
「こういうとき、他の施設の人はどうしているのだろう……」という声を、私は現場で良く聞きました。今はインターネットで何でも調べられる時代ですから、介護保険制度や施設の種類に関する情報だけではなく、体験談や考え方を発信していくことで、困っている介護士の方に読んでいただくことができると良いなと感じています。
介護の現場に戻るときは、施設長を目指したいです。ご利用者も職員もイキイキとした施設を作りたいです。同僚からはよく、「施設長を目指したら良いのに。施設長になったら呼んでね」と言われていたので、実現したときには声をかけてみようと思います。

これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

私がこれから介護士を目指している人に伝えたいことは2つです。
- 介護は「ありがとう」と言われることが多い仕事
- あなたもいつか介護を受ける立場になる
介護士という仕事は、「汚い」や「つらい」ということばかりがフォーカスされますが、直接人の役に立てる仕事です。
多くの仕事が「ありがとう」と言われるより言う方が多いと思います。しかし介護士は、「ありがとう」と言われる方が多いです。もちろん介護士からも感謝の気持ちを伝えますので、介護の現場はご利用者と介護士がお互いに感謝し合える素敵な場所といえます。
人は誰でも、介護をすることはなくても受けることはあるでしょう。いざ自分が介護を受けるときに何が起こるのか。それを知ることができるのは介護の仕事だけです。
「介護を受けるなんて今はまだ・・・」と思っていても、「そのとき」はいつくるか分かりません。介護の仕事をとおして、あなたが介護を受けるときにどのような介護を受けたいかを考えるきっかけにしてみませんか。