現役介護士の深イイ話
インタビュー実施日:2020年7月10日
現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。
学生時代はプロ野球選手を目標に部活に励んでいた。しかし、大学3年生の時に大きなケガしてしまい、病院へ通院することに。
そのときの体験した病院の雰囲気に魅せられ、医療、介護の仕事がしたいと決心した。その後、訪問入浴介護の仕事に就き、介護現場の経験を積み重ねつつ、通信教育で社会福祉士の資格を取得。
現在は、相談員として医療現場で仕事をしている。
社会福祉士 茶柱さん
あなたにとって介護職とは?
人はそれぞれの生き方を歩み、違う価値観を持っているため、介護士はその一人ひとり違う価値観を知り、どれだけ寄り添える支援ができるか、が腕の見せ所です。
介護士みんな、同じような支援をしていても、話の聴き方や何気ない言葉をかけることで利用者さんの満足度は全然違います。
私にとって介護職は「多くの価値観が学べる仕事」です。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 2010年(大学生)介護士になったきっかけ大学生のとき、部活動でケガをして大学病院へ通院することに。
その大学病院の雰囲気やスタッフの対応に魅せられ、「自分も病気やケガで困っている人たちを支える仕事がしたい」と思い、医療、介護の仕事に就くことを決心する。
祖母が介護サービスを受けていたため、まずはイメージがしやすい介護士になることした。 - 2011年4月~2014年3月初めての仕事。介護現場の実際を知る新卒で訪問入浴介護の仕事を始めた。
業務は大変だったが、仕事を続けて介護士の経験を積み上げた。
介護のことが少しずつ理解していくうちに、利用者さん、ご家族の「生活に対する強い想い」を学ぶことに。
利用者さんは、たとえ寝たきり状態でも、住み慣れた自宅で少しでも長く生活したい思いがあった。
介護者であるご家族は、自分の時間がなく、寝る時間を惜しんで介護をしている姿や、その想いに接することができた。 - 2014年4月~2019年3月念願の病院勤務。介護現場とは全く違う業務内容もともと病院で仕事することに興味があったため、介護士の仕事をしながら、通信学校を利用して社会福祉士を取得。
その後、病院で相談員の仕事に就いた。
相談員は、介護士のような直接介護する業務は違い、相談業務が主となる。
患者さん、ご家族から「退院するけど、生活が不安」「お金がない」などの相談がある。
その際は、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどと連携し、支援を進める。 - 2019年4月~現在働く場所が変わっても、支援に対する気持ちは変わらない現在は在宅医療の相談業務をしている。
先生と一緒に患者さん宅を訪問し、先生の診療サポートをしたり、患者さん、ご家族の相談事を聞いたりしている。
職場や立場が変わっても、支援に対する気持ちは大きく変わらない。
訪問入浴介護で学んだ、利用者さんとご家族の生活に対する強い想いは、数年たった今でも覚えている。
参考訪問入浴勤務に向いている介護士とは?未経験介護士に求められるスキル
私はこんな介護士です。

現在は、介護の経験を経て、社会福祉士として働いています。
これからお話するエピソードは、ある利用者さんの大切なものを支援した時のものです。
ある利用者さんは足が悪く、杖を突いて短い距離を歩くことがやっとの状態。
しかし、その利用者さんは健常者が歩いて10分くらいにある行きつけの喫茶店に通いたいという目標をもっていました。
転倒リスクを考えると支援者には頭の痛い目標です。
ただ、利用者さんにとってその喫茶店は特別なもので、行くまでの道のり、喫茶店スタッフとの会話など、利用者さんの大切なものがたくさん。
私はなんとかして、喫茶店に通わせてあげたいと思い、ケアマネジャー、訪問介護、訪問リハビリなどの多職種と連携し、喫茶店に通えるようになることを目標に支援しました。
結果、体調の良い日に片道20分くらいかけて喫茶店にいけるようになり、目標達成。大切なものを1つ叶えることができました。
このような「大切なものを大切にする」支援を続けていきたいと思っています。
関連記事【介護士転職】処遇改善加算を取得している優良介護事業所の見つけ方

どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?
小学生のことから野球を初め、プロ野球選手になることを目標に、ひたすら野球に打ち込んでいきました。
大学生の時、部活の練習中に、足の靭帯をケガしてしまい、大学病院へ通院することに。
その病院には、多くの患者さんがいて、小さい子供から高齢者まで様々な年代から必要とされていることを目の当たりにしました。
また、患者さんの対応をしていた病院スタッフがとても丁寧で、患者さんから頼りにされているのを見て、「病気やケガで困っている人を支える仕事がしたい」と医療、介護の仕事に興味を持ちました。
しかし、無資格、業界未経験者がいきなり医療現場で仕事をすることは難しいと思ったので、まずは介護士として経験を積み、病気やケガで支援を必要としている人たちのことを知ろうと思ったことが、介護士になろうとしたキッカケです。
その後、介護士の経験を積み、社会福祉士を取得して、医療現場で相談員の仕事をしています。
他にも、やり甲斐や誇りを持って働く介護士がいます

介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
介護士になって良かったことは、「人生が逆算できるようになった」ことです。
ほとんどの人は、いずれ病気なって介護を受ける立場に。
介護の仕事をしていると様々な病気と接し、その症状や進行を経験することになるでしょう。
その病気は他人ごとではなく、数年後に自分も病気になり、介護を受ける可能性が非常に高いので、病気になる前にしっかり準備をしておくことが必要です。
資産の準備をしたり、延命措置の希望を家族に伝える。また、健康予防に励むことも大事。
介護を受ける状態になってしまったら、自宅で過ごしたいか、もしくは施設で生活したいかも考えておくこともできます。
支援の経験上、みんなが自宅で生活したいと思っているわけではなく「施設のほうが身の回りの世話をしてくれるから楽」「家族に迷惑をかけたくない」という利用者さんも少なくないです。
介護の仕事をしているからこそ、具体的にイメージできるものだと思います。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
訪問入浴介護の仕事をしていたときの話です。この経験をするまでは、お風呂が特別なものとは思っていませんでした。
ある利用者さんに初回サービスを提供したとき、入浴中に泣き出したのです。当時の私は、なぜ泣いているのか理解できません。理由を聞くと、「こんな状態になってもお風呂に入れるなんて思ってもみませんでした」と。
その利用者さんは若いころから、お風呂入ることが大好きだったそうで、毎日しっかりと湯船に体を付けて、リラックスして、いろいろ考え事をされていたとのこと。
しかし、病気になってからは、浴槽が跨げなくなり、シャワー浴となりました。
シャワー浴でも何度か転倒してしまい、最近は清拭をしてもらっている状況に。
その利用者さんは、訪問入浴介護を利用し、何回も「ありがとう」と言ってくれました。
他にも数名の利用者さんが泣いて喜んでくれた経験があり、お風呂を特別に思っている人は少なくないと実感でき、病気前は当たり前だったことが、病気後には特別なものへと変化することを学びました。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
介護の仕事を始めて間もないのころの話です。
まじめに仕事をしていたつもりでしたが、利用者さんやご家族からご指摘やクレームを頂くことがありました。
「言葉に配慮が足りないと感じた」「なんかバカにされている気がする」など。クレームを聞いたときは、意味がよくわかりませんでした。一生懸命やっているのに。元気になってほしくて明るく接しているのに。
現在その時のことを思い返すと、クレームは当然だったと思います。
利用者さんの状況や性格を考えずに、誰にでも、とにかく元気に明るく接しており、相手に合わせた寄り添いができていませんでした。ただ、一方的に元気を押し付けていただけ。
その後、介護のテキストや職場の方々からアドバイスをもらい、「介護職はどうあるべきか」を学びました。
しかし、一番の学びを与えてくれたのは利用者さんです。今も利用者さんからはたくさんのことを学んでいます。
関連記事ブラックな介護施設を抜け出すには?しろくま介護ナビの評判・口コミ

日頃から大切になさっていることはなんですか?
支援する際、大切にしているのは「その行動は利用者さんのためなのか」と考えることです。
仕事をしていると様々なしがらみや葛藤があるものです。スタッフ間の人間関係、苦手な利用者さんのこと、売り上げなど、あまり得意でないことも考えなければなりません。
しかし、嫌いな人とはなるべく関わりたくないですし、利用者さんとの相性もあるので全員といい関係が作れるとも限りません。
売り上げを意識して働くことは、社会人として当然のことですが、売り上げを意識しすぎると適切でないサービスを提供してしまう可能性も。
その気になれば、利用者さんのことより、自分のやりやすいようなやりかたに変えることもできてしまいます。
しかし、それは本来、自分がしたい支援ではありません。
利用者さんのためはもちろんですが、自分自身が後悔しないよう利用者さん第一に考えた支援を心掛けています。
当たり前のことだと思いますが、実際は結構難しいです。

今後やりたい事や目標などありますか?
今後やりたいことは、管理者として人材育成に力を入れたいと思っています。
介護、医療の現場経験を積み、利用者さんの気持ちを知り、支援者の想いを学ぶことができました。
これまでの経験を踏まえて、「利用者さんへ良い支援を提供するにはどうしたら良いか」と考え、1つの答えが出ました。
「良いサービスを提供するには、スタッフが職場に満足していること」
スタッフは職場に満足していると、自発的に考えて、行動してくれます。
逆に、不満があるとどうしても仕事をやらされている感じが出てしまい、指示されたことしかやらないケースが多いです。
私が考える管理者は、支援者が働きやすく、学べる環境を整えることが役割だと思っています。
支援者は「この利用者さんを支援できてよかった」と。
利用者さんは「この介護士に支援してもらえてよかった」とお互いが思い合えるようなサービスを提供したいです。
働くスタッフに「介護の仕事は素敵だな」と思ってもらえることが、私の理想です。
関連記事【無資格・未経験OK】かいご畑は介護士を目指す未経験の方がおススメ

これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

是非、介護の仕事を経験してください。
特に、若い人におススメです。
介護は、他の業界と比べて、人生について考えることが多い業界なので、自分の最後がどうなるのかを知ることができ、人生の逆算ができるようになります。
ただ、「向き不向きがある」「給料が上がりにくい」などの声はあるため、1年でも良いので経験してみてください。
長く介護の仕事を続けて、スペシャリストになることはもちろん素晴らしいと思います。
無理して5年や10年介護の仕事を続ける必要はありません。
今は転職が当たり前の時代、介護×○○のキャリアを積んでいけば社会で価値の高い人間となれるうえに、視野が広がり、ほかの人よりも思考が深まります。
人は○○歳くらいになったら病気になる可能性が高いから、○○歳までにはこれくらいお金を稼いでおきたい。そして、○○歳までにあの経験を積んでおきたい。など人生設計ができるようになります。
ひとまず、介護職を経験しておくことをおススメします。