現役介護士の深イイ話
インタビュー実施日:2020年7月26日
現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。
田舎育ちで小さい頃から高齢者に囲まれて育つ。両親が共働きという事もあり、祖母によく可愛がられていたのも影響した為か、高校の進路決定の際に自然と福祉の道を志すようになる。
県内の福祉系専門学校に入学し、卒業と同時に介護福祉士の資格を取得。
その後県内の老人保健施設、介護療養病床、福祉系専門学校教諭を経験し、現在は県内の特別養護老人ホームにて勤務。さらなるスキルアップの為新しい専門資格にも挑戦中。
介護福祉士 カフェフリーカーさん
(ブログ運営:北陸カフェフリーカーラボ)
あなたにとって介護職とは?
私にとって介護職とは、【第3の家族】だと思っています。介護が必要な高齢者の方にとっては居なくてはならない存在であり、自然と会う機会も増えていく事になります。
その様な中で、少しずつ信頼関係を育み、その方のニーズ(要望)を引き出したり、察したりしながら、より良い余生を楽しんでいただく為の良きパートナーであるべき存在だと思います。
その為に私が心がけている事は、入所者の方が安心して、時にホッとする様な声かけや関わりはどの様なものか?を考えるようにしています。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 2007年4月~2009年3月福祉専門学生福祉専門学校に2年間通う。在学中はあまり勉強せず、遊んでいる事が多かった。その為福祉に対する思いや志しも、この頃はまだ少なかったように感じます。
成績も下から数えた方が早いくらいであり、赤点や再試験も度々受けさせられていました。卒業試験はなんとか合格する事ができ、無事卒業と同時に介護福祉士の資格を取得することができました。 - 2009年4月~2015年3月老人保健施設 介護福祉士専門学校卒業後、社会人として初めて就職した会社が、この県内の某老人保健施設でした。ここでは重度認知症棟に配属され、認知症状の強い入居者の方への介護を行なっていました。
従業員500名規模と県内の介護施設の中では、大きい組織の会社であった為、たくさんの介護職の方やその他の専門職の方と働かせて頂く事ができました。
社内外での研修なども多く、私の介護職としての基盤はこの施設で作られたと言っても過言ではありません。この施設で働いている間に、ケアマネージャーの資格に受験し、無事に合格。
その後、ケアマネジャーとしての仕事に興味を持ち、6年間働いた施設を退職する事を決めました。 - 2015年4月~2017年3月介護療養型病院 看護助手兼ケアマネジャー新人ケアマネージャーとしての転職に苦戦している中で巡り会う事が出来たのが、専門学校時代の先輩から紹介頂いた某介護療養型病院でした。
ここでは医療依存度の高い(主に中心静脈栄養や胃ろう)方達を対象に看護補助としてケアさせて頂きました。
ここでは、施設であまり関わる事ができないような患者の症状や状態を現場で見る事ができ、幅広い医療の知識を得ることができました。
一緒に働いていた看護師の方からの誘いもあり、少しずつ医療業界に興味を持ち始めていた頃、母校である福祉専門学校の元校長から『介護教員を募集しているのだけど、やってみない?』とお声を頂き、2年間勤めた病院を退職し、介護教員に挑戦する事を決める。 - 2017年4月~2017年11月福祉系専門学校(母校) 介護教員母校である福祉専門学校に介護教員として勤める。就任当初から一年の担任を任せられましたが、慣れない教員業務を覚えるのに時間がかかり、朝から晩まで働き、土日も持ち帰りの仕事で心が休まる時間が次第になくなっていくようになっていました。
その生活が半年程経った頃、疲弊していた私をみて友人が半ば強引に精神科に連れて行ってくれました。
結果、うつ病と診断され精神科に緊急保護入院となり、2ヶ月の入院生活を送る事になりました。
福祉専門学校はその流れで退職する事になり、精神科退院後、十分な自宅療養期間を経て就職活動を行う事になりました。 - 2017年12月~現在特別養護老人ホーム 介護福祉士自宅療養期間に他業界への転職も考えましたが、一度うつ病になってしまっていたので、精神的に不可のかかる他業界への転職は周りからも強く反対されました。
そのため、自分が今まで行ってきた施設介護での仕事を探す事になり、専門学校時代の友人が働いている県内の特別養護老人ホームに入職する事になりました。
この特別養護老人ホームが私の今現在働いている施設であり、今の状態が今までで一番楽しく働かせて頂いております。うつ病の症状もほとんどなくなり、今はさらなるスキルアップの為に『終末期ケア専門士』という専門資格取得に向けて勉強中です。
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私はこんな介護士です。

よく周りから言われているのは、『真面目』『介護士らしい介護士』と言われます。
自分ではあまり意識していませんでしたが、忙しい日々の業務の中でも、入居者の方としっかりコミュニケーションを図っているので入居者に寄り添っているね、という言葉をよく頂戴いたします。
私は入居者の方の毎日が明るく、楽しくあってほしいと常に思いながら業務にあたっていたので、その事についてはとても有り難く思います。
そのようなことをふまえて、私は入居者が常に明るくいられるように、入居者の暗いところや嫌な事も吹き飛ばして光を照らすような、太陽の様な存在、介護士でありたいと思っています。

どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?
冒頭でも述べさせていただきましたが、周りに高齢者が多い環境で育った事と、主に祖母に育てられた『おばあちゃん子』だったという事が一番の大きな要因だったと思います。
その事を当時から理解していたのかは覚えていませんが、中学生時代も職場体験で地元の老人ホームを選んでいました。
そして、高校生活での進路選択の時には自然と福祉の道を選んでいました。
他にも、やり甲斐や誇りを持って働く介護士がいます

介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
一番は色んな職種や世代の方々と一緒にお仕事ができているという事です。
私自身、仕事を通して多くの事を学びたいと思っているのですが、専門学校を卒業してからずっと福祉業界で働いていて、他の業界の仕事については全くの無知でした。
しかし、中途採用も多いこの業界だからこそ、他業種から介護へ転職される方も多く、他の業界での話や経験を教えて頂く事も多くありました。
そのおかげで、他の業界に比べてのこの業界のメリット、デメリットを把握する事ができ、客観的に自分の将来や方向性を決めて行く事ができているのではないかと思っています。
やり甲斐の1つに、多くの介護士の方が口を揃えるように言う『毎日のように頂ける、ありがとうの言葉』があります。
仕事とは言え、自分が行った事に対して、ご利用者の方から感謝の気持ちや笑顔を毎日のように頂けるのは、サービス提供者と利用者の距離が近くにある、この職種の特権でもあると思っています。
私は特に単純な性格でありますので、落ち込んでいる時や元気の無い時でも、入居者の方の笑顔をみるとついついこちらまで笑顔になり、逆に私の方が元気をもらう場面も多々あったりします。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
前述したように、介護の仕事をしていると素敵な出来事もたくさんありますが、やはり印象的に頭の中に残っているのは大変だった出来事が多いように感じます。
その1つに、排泄物関係のエピソードがあります。介護の仕事をしている中で、特に大変だと私が感じることは、入居者が自分の排泄物を触ったり、遊んだりする弄便(ろうべん)だと感じでいます。
初めて就職した老人保健施設で出会ったY氏(仮)という方はよくその弄便を頻繁にされる方であり、特に驚かされたのは、私がY氏のお部屋に入った時に自分のチェストに排泄物を詰めていたのを見た時は唖然とさせられました。
今まで自分で触って捨てる方や、服に付ける方は何人か見てきましたが、チェストに詰め込んでいるのは初めてでした。その時はその場にいた職員で氏の全身の清拭、チェストの掃除、洗浄とすべてを綺麗な状態に戻すのにかなりの時間がかかりました。
もう一つは、嬉しかった出来事です。介護士としての仕事に慣れてくると担当の入居者を持つようになります。
私が担当したある入居者の話ですが、男性の入居者でその方自体も小難しく、すぐに怒るような方でしたが、一番大変だったのがその家族(奥様)でした。毎日のように面会に来られ、いろんなものを持って来ていたので、その都度上司に置いておいて良いものかの確認を取ったり、あれをしてほい、これをしてほい、と要望されたりが日に日に増えていく方でありました。
その為、フロアの職員や上司もその方に対して【要望の多いクレーマー】の印象が強く、私自身もちょっと面倒くさい相手、と思うようになっていました。
しかし、月日が流れるうちにその入居者の状態(持病などの病状)も少しずつ悪化していき、ターミナルケア(看取りケア、終末期ケア)となり最期の時を迎える事になりました。
大変な方でしたが、私自身最期を目の前にしたケアについての思い入れが以前からあり、ターミナルケアになってからもこの方の好きだった果物などの汁を、ご家族と一緒に唇や口の中につけるといったケアも行っていました。
その事もあってか、最期を迎えた時に【面倒くさいクレーマー】と思っていたご家族が『ここで看てもらえて本当に良かった。◯◯さん(私の名前)本当にありがとう』と涙ながらに話された事は今でも鮮明に思い出される出来事です。
この時から私は、どんなに大変な入居者やクレーマーのようなご家族でも、こちら側が真摯に対応し続けていけば、いつか気持ちが届いてくれるのではないかと思うようになり、その思いを胸に日々の業務にあたるようにしています。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
私が介護士として働き始めた時に苦労した事は、認知症高齢者への対応です。認知症高齢者への対応は10年経った今でも頭を悩まされる事が多くあります。
新人介護士の時に出会ったある入居者、M氏は車椅子の方で歩く事ができないため、食事以外はほとんど全面的に介護が必要な方でありました。
女性の方でしたが大柄の方であり、男性でも一人でベッドや車椅子への移乗が大変な方でした。入居初日から職員への暴言、暴力が見られ、誰も近寄っていない時でも、大声で『バカー!』などと叫んでいてフロアの雰囲気が一変するほど。
お茶を渡しても機嫌が悪いと『いらん!』と言って投げ捨てたり、他の入居者がM氏をみていると『何見とるんや!』と怒り出したりするのは日常茶飯事でした。
そのような状態は夜中も続き他の入居者の方が寝静まった頃も一人で起きていて大声を出されていました。昼間は入居者の方も起きていて、職員も複数名おられるのでなんとか対応ができたのですが、一人で複数名を見なければならない夜勤帯が1番大変でした。
ベッドに横になってもらっても、寝るわけもなく自らベッドから降りてきてフロアまで這って出てくることも多く、
介護施設では入居者の方が転んだり、怪我(皮むけや内出血も含む)したりされた時は、事故報告書といい、その事が起きた経緯や何故そうなったか、今後の予防策などを記す書面を書かなければいけないのですが、その方がベッドから自分で降りるたびに、転落(ベッド落ちた)となり夜勤の職員は毎回書類を書かされる羽目になっていました。
結局、この現状を見かねた看護師の方が担当医にこの現状を報告してくださり、精神薬や睡眠薬を夜間に処方してくださり、薬が追加されてからは、少しずつ氏の精神状態も安定に向かってきたのか、意味のない大声や夜間に這ってでてくる事が少なくなってきました。
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日頃から大切になさっていることはなんですか?
やはり、日々の業務の中でいかに入居者の方を楽しませられるか?笑顔を引き出させられるか?を意識して取り組んでいます。
私自身、老健や病院、特養といった施設で働いて11年目になりますが、今まで勤めてきた中で『はぁ、はよ死にたい』『生きとっても楽しくない』という心苦しい言葉を何度か耳にしてきました。
私達、介護士にとって施設は職場であり、日常のほんの一部を過ごす場所にしか過ぎませんが、入居者にとっての施設は制約や行動が限られた空間の中で、一生暮らしていかなければならない場所でありますので、この中でいかに楽しみ、生きがいを見つけ出せるかが、【生きていたい】と思ってもらえる鍵になると思っています。
その為には日常業務だけ的確に勤められるだけではなく、その方にどのような声かけや話をすれば笑顔になってくれるのか?どのような事をすれば目が輝いてくれるのかを意識して、業務に取り組めるようになる必要があると思っています。

今後やりたい事や目標などありますか?
前述にも述べた通り、私はその方の人生の最期の最期まで充実して生きてもらいたいとの思いが強く、ターミナルケアについて学びを深く進めています。
その為、2020年から導入された終末期ケア専門士の試験に向けて、今は受験勉強に猛進しております。
この資格を取得した際には全国の終末期ケアに関わる他職種との繋がりやコミュニティに参加する事ができるので、さらなるスキルアップを図り、日々の現場でのケアや介護に活かしていきたいと思っています。
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これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

今回私は、介護現場での素晴らしい事も大変な事も包み隠さずに書きました。私自身この業界で辞めたいと思ったことやつらいと思った事もたくさんありました。
それでも今尚続けているのは、理屈や言葉では表せない何かを感じていて、やめられないのではないかと思っています。
どんな業界や仕事でも大変な事や辛い事は必ずあると思います。大切なのは今就いている仕事にちゃんと向き合えるか、考えられるかだと私は思って、それができるようになってから私はこの仕事が楽しく感じられるようになりました。
ですので、少しでもこの業界に興味があり、やりたいと思う方は是非歓迎します!辛い事や大変な事はもちろんありますが、その時は同僚や友達にしっかりと愚痴や話を聞いてもらったり、遊んだりしてストレス発散をしてください。
そんな中でいつか、貴方にもかけがえのない何かが心に芽生える日がくるのを私は願っています。