現役介護士の深イイ話
インタビュー実施日:2020年7月29日
現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。
現在は、小規模多機能事業所のケアマネージャー兼任介護職。夜勤もこなす。
30歳のころまでは、畑違いの研究職の仕事をしていたが、知人が入所していた特養を訪問したことをきっかけに介護業界に転職。その後、ホームヘルパー2級、福祉住環境コーディネーター2級、介護福祉士、介護支援専門員等の資格を取得し、現在に至る。
ケアマネージャー兼任介護職 みやあらやさん
あなたにとって介護職とは?
あくまで「人と人とのつながり」だと考えます。
介護職は、日々業務に追われ、人間関係の構築や、介護の知識や技術の取得も必要な職種です。その為、利用者様のことを症状で判断しがちです。
しかし、介護にとって必要なのは信頼関係。症状に目を向けるだけでなく、その人を見て、逆に自分を見てもらわないとそれは得られません。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 2006年4月~2012年3月研究職高校の時から研究職を目指し、大学院卒業後、研究職として働いていた。商品の開発や、製造にかかわる事をしていた。
しかし、そういったことは今でも好きなものの、好きなことと、向いていることの差を感じ始めていた。
そんな時、知人が入所している特養を訪問、そこで感じた人と人とのつながりに魅力を感じ、悩んだ末、異業種の介護職に転職を決意。 - 2012年4月~2013年9月特別養護老人ホーム介護の仕事は全く初めてであった為、まず特別養護老人ホームで、非常勤で働くこととなる。特養の仕事は、介護はもちろん、医療やリハビリの要素が含まれる為、知識や技術の習得に大変よい機会となった。
この間にヘルパー2級、福祉住環境コーディネーター2級を取得した。 - 2013年10月~2014年3月短期入所施設少人数での関わりをしたかったこと、正社員を目指していたことから、短期入所施設で働くも、経営状態悪く半年で閉鎖となる。
- 2014年4月~2016年2月一般病院 看護助手介護業界の不安定さを感じていた時期でもあり、病院の看護助手として働き始める。
給料は安かったが、3年の実務経験を得て、介護福祉士を取得するまで続ける。資格取得後は、再び、待遇面、仕事の内容の重視を求めて、別法人の老健に転職することとなる。 - 2016年3月~2018年8月老健、医療療養棟医療法人の老健で働き始める。ここでは、比較的介護度が高く、また医療依存度の高い利用者様を相手に仕事をしていた。
途中から医療療養棟に移った。そこでは、老健よりもさらに医療依存度の高い方が対象となった。トータルで5年の実務経験を積み、介護支援専門員の資格を取得。 - 2018年8月~2019年9月グループホームのケアマネージャー介護支援専門員の資格を取得後、外部から誘いをうけ、主に居宅、グループホームのケアマネージャーを経験。
地域密着型施設の管理者、計画作成者などをするための、研修を修了した。 - 2020年9月~現在小規模多機能事業所その後、小規模多機能事業所のケアマネージャー兼任介護職で現在に至る。
私はこんな介護士です。

私は単純に、利用者様から「なじみのある存在として思ってもらえている」介護士だと思います。
周りの職員の話では、利用者様が私にうれしそうに話しかけている場面をよく見ると言われます。利用者様は、笑顔で「あんたきとったんか」「まだおってくれるんか」と言ってくれたり、急に笑顔になって手をたたいたり、呼び止めてくれたりします。
私自身が気を付けているとすれば、介護する側とされる側にならないこと、捉えようによっては、上下関係にならない事。つまり、単純に人として対等に接することです。
偏った関係からは、してもらってばかりで申し訳ない、なさけない といった感情が出てきます。また命令されているような気分になられる方もおられます。
実際には介護をする以上、援助や介助をします。だけれど、普段からそういった関係、つまり信頼関係を作っていれば、利用者様は気が楽になると思います。
皆が私を人としてとらえてくれるのはきっとそのことが、繋がっているからだと思います。

どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?
私にとって、学生のころからやりたかった事は研究職でした。主にバイオ系の研究をしていました。
きっかけといえば、まずは第一にやりたかった仕事に就き、それを経験したこと。そしてその中だからこそ、自分に向いている仕事を考えるようになった事だと思います。
最初から、介護の仕事をしていれば、やりたかったことが気になり、きっとうまくいっていなかったでしょう。また民間の会社の事をしらずに、それをしった利用者様と接する時に、今よりも難しい対応をしていたかもしれません。利用者様の多くが、福祉の仕事とは違う仕事をされてきた方だからです。
二次的なきっかけになるかと思いますが、介護の仕事を始めてから、自分らしさを取り戻したような感覚になることがあります。
それは、利用者様のおかげもありますし、自らの元々の性格にあった仕事が出来ているからだと思います。今、この仕事を続けているきっかけになっていると感じています。
他にも、やり甲斐や誇りを持って働く介護士がいます

介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
利用者様やご家族のことで思うやりがいは、やはり、ご本人やご家族の笑顔が増えた時、介護やサービスの内容がそれに影響した時に感じます。
人と人とのつながりの中で、介護をしていますので、もっと単純に、利用者様やご家族が気さくに話しかけてくれたり、頼りにしてくれたり、逆にいろいろと教えてくれたりしたときにうれしい気持ちになります。会うたびにそうなっていくと、さらにその気持ちは強まります。
自分自身についてよかったことは、やはり自分らしく人と接し、その中で仕事が出来ていることだと思います。また、当初の目標通り資格を取得し、その役割につけていること。それ以外にも知識や技術の習得に努めてきたこと、あらゆる場所での経験が、繋がっていき、実際に身を結び始めていると感じる時です。
やってきたことは間違ってはいなかったし、それがこれから役に立っていくような気持になります。また、次への目標への糧にもなります。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
介護やケアマネをしているといくつか印象に残ることがありますが、グループホームでの出来事が、印象に残っています。
その利用者様は、認知症で、短期記憶力はかなりの低下がみられました。日常的に繰り返される訴えは、「物がなくなった」「窓の外を子供が走っている。あの子らがやったんやろか」といった事でした。もともと、繊細な方で、また理解力はおありでしたので、時に自分が忘れてしまうということを感じておられたようです。こうなると、性格や不安、認知症も相まって負の循環が繰り返されている状態でした。
よくある対策は、一通りやってみました。しかし、それをなくすことはできませんでした。
結局その方を救ったのは、大好きな歌でした。合唱団に所属していたことがより、自信になり、また一緒に歌う仲間もできました。歌によって笑顔を持つ時間が増えました。
結局のところ、症状が改善されるわけではありません。楽しい時間を持ち、不安を持つ時間を減らす。こういった形のケアもまた人とのつながりそのものに感じます。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
介護の仕事を始めた当初苦労したことを思い出してみると、収入や、人間関係、知識や技術不足などいろいろと思いつきます。
しかし、やはり介護をしたい、誰かの役に立ちたいと思っている方がつまずきやすいのは、いわゆる介護感の違いや、理想と現実とのギャップではないかと、今となっては思います。
私も最初に特養で働き始めた時は、排せつや入浴、食事の介助ばかりで時間が過ぎ、前向きなケアができない、楽しい感じがしなかったのを覚えています。利用者様が楽しそうに見えませんでした。
それに加えて、収入面も低く、夜勤や、中抜け勤務まであり、いったい何の仕事をしているのか、わからなくなる時期もありました。
私の場合、そういった経験から、少人数相手に、正社員で仕事ができるところを目指したいと思い、転職を経験しました。
今となっては、特養の様に、介護度の重い方を何十人もケアできるのは、助かるご家族が増えることも考えると、一つの大きな魅力だと思います。

日頃から大切になさっていることはなんですか?
介護職である反面、ケアマネージャーをしていますので、利用者様、ご家族、そして職員に向けての各方面で、大切にしている事が違っています。
まず利用者様にむけては、先に記載させていただいたように、人と人とのつながりです。一方的な援助関係ではなく、相互に助け合うといった感覚の関わりが理想です。利用者様から教えてもらうことも増えてきました。
ご家族に対しては、その人に合わせたやりとりをしています。普段から利用者様に接する方、接しない方色々おられます。
またご本人と、仲が良い方、悪い方がおられます。ですから、その人に合わせて情報提供したり、信頼関係を築くことで、ご本人のケアに少しでも協力してもらったりしています。
職員に対しては、一生懸命に仕事をされる方が多い中で、その方たちの意欲や楽しさがわくようにすることです。ケアの方向性からそのことが出てくると、よい循環が生まれ、なによりも楽しいと思うからです。

今後やりたい事や目標などありますか?
ステップアップも含めて、まずは管理者になりたいと思います。ゆくゆくは、福祉の研究者と言ってもらえるような屋台骨の立場になりたいと思います。
管理者になりたいのは、自分自身の目線から考えると、ステップアップ、屋台骨になるために、経験を積みたい想いがあります。
もう一つ事業所の目線から考えるのは、スタッフの育成に関わりたい想いがあるからです。これは、利用者様への良いケアをするために必須だと考えます。どんなによいプランがあっても、皆が違う方向を向いていては、その場その場でのケアになりがちだからです。
事業所としてのケアの目標に向かって何を学び、何をやっていくのか、それを少しずつ達成しながら、楽しさを知ってほしいと思います。職場の雰囲気は利用者様にすぐに伝わります。
管理者として、自分自身はいろいろな経験や知識をもって屋台骨になり、職員が楽しく仕事が出来るようにすることが、よいケアにもつながっていくと考えます。

これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

これから介護を始めようという方は、高齢者が好きだったり、ありがとうと言われる仕事にあこがれたりと、いろいろな想いがあるかと思います。
その想いを実現する為にまず、事業所としての方向性、ケアプランの方向性を重視してほしいと思います。
介護の仕事は、特養の様にずっと利用者様がおられる所もあれば、デイサービスのように、夕方には利用者様が家に帰られるものもありますが、それぞれに一日の業務内容が決まっています。
ですが、共通して言えるのは、介護の仕事は、人を相手にする仕事なので、ここまでやれば終わりというものがありません。
だからこそ、色々な介護感があるなかで、方向性がばらばらになり、忙しさのあまり業務中心の介護になりがちです。想いのある方ほど、恐らくそこでつまずく事があると思います。ですが、それを続ければ楽しい仕事にはつながらないでしょう。
楽しい仕事、よいケアをするために、スタッフが共通の方向性を持ち、共通の目標に進むという視点をもつのもよいかと思います。