介護から学ぶ命の重さ。最後の時まで寄り添う介護を

現役介護士に話を聞く「深イイ話」
※画像はイメージです。

現役介護士の深イイ話

インタビュー実施日:2020年7月30日

現役介護士にインタビューすることで、介護職として働くことのメリット、デメリットを伝え、これから介護職を目指そうとしている人達の背中を押すことが最終的なゴールです。

プロフィール

学生時代から接客を主とするサービス業を続けてくる。28歳の頃、昔から携わりたかった福祉の仕事に就くため、ホームヘルパー2級の講座を受講する。

資格取得後は知り合いの紹介を経て有料老人ホームに就職。そこではチーフ業務から新人育成までを経験。32歳の時に認知ケア指導管理士の資格取得、33歳の時に結婚。妊娠8か月頃まで現場で勤務をしながら実務者研修に通う。

34歳で介護福祉士を取得する。現在は家庭と両立がしやすい夜間の訪問介護と障害者施設の夜勤専属として勤務している。

介護福祉士 コトコト子猫さん

あなたにとって介護職とは?

あくまで「人と人とのつながり」だと考えます。

人生の締めくくりとなる場所が、人によって施設なのか在宅なのかさまざまだと思うのですが、場所はどこであれ、楽しく過ごせたと思える場所、幸せな思い出を作る手伝いが出来たらと思っています。

身体面の介護をする事だけが介護の仕事ではなく、いい人生だったと思ってもらえるような時間が提供出来て初めて自分は介護士と名乗れる気がしています。

どんなに波乱万丈で大変な人生だったとしても最後に残る思い出が楽しく幸せなものであれば、その方の人生は幸せだったと思ってもらえるのではないかと思っています。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2011年1月~2014年12月
    有料老人ホームに就職
     1年後に周囲の仲間に支えられチーフを任される。新人教育や施設全体のマネジメント業務も経験する。
  • 2014年1月~2016年10月
    人材派遣会社の営業兼介護職員
     昔からの友人に誘われて介護求人人材派遣会社の社員になる。
    そこでは営業兼介護職員として働き、介護施設への営業を行いながら、時には人員不足の施設に急遽臨時スタッフとして勤務する。
    いろいろな施設を回る中で、慢性的な人員不足の現実を実感する。
    休日は介護福祉士取得の為に実務者研修に通い始める。
    その後自身の結婚・妊娠があり、妊娠8か月まで現場で働きながら実務者研修に通い、出産を機に退職する。
  • 2016年12月~2017年8月
    人材派遣会社のアルバイトとして再就職
     出産後は前職の上司から、どうしても人員が足らないと連絡が来た時だけアルバイトとして働くも、まだ幼い子供が託児所に行くたびに大泣きしてしまう姿を見て、今後の働き方について考え始める。
  • 2017年8月~現在
    介護福祉士の資格を取得
     子供も授乳期間が終わり、主人が帰ってきて子供が寝ている間に働らける夜間の身体障害者訪問介護で働き始める。
    その後、知り合いの勧めで訪問介護をやりつつ、身体障害者施設の夜勤にも週に数回勤務を始める。現在は高齢者介護と障害者介護の大きな違いを感じながら日々業務に奮闘している。

私はこんな介護士です。

私はこんな介護士です。

特に特技があるわけでもなく、至って普通の介護士です。しいて言うのであれば入居者の方とはいい意味で近い距離間が持てていると思います。

入居者の方の中には自分の娘や孫のように接してくれる方もみえ、体調が悪そうな時は『大丈夫?私が洗濯畳んでおくから、あんたはちょっと休んでなさい!』と心配してくれたり、『なかなか自分の孫には会えない。でもあなたも私の孫みたいのものよ!』と言ってくれる方も見え、こちらが恐縮してしまうこともちらほら。

お裁縫1つにしても、分からない事を聞けば丁寧に教えてくれます。

子育ての話をすれば、自分では思いつかなかったアドバイスもしてくれます。日々の介護の中で、実は自分達介護者が入居者の方から教えられている事を実感する時も多くあります。

中でも、一番印象に残っているのは認知症で入浴拒否がある方と一緒にお風呂に入った事。誰が対応しても頑なに入浴を拒否される認知症の女性の方がみえたのですが、どうしていいのか悩んでいた時、ふと『家族でもない他人前で、自分だけ裸にされたら誰でも嫌に決まってる』と思い、一緒に入浴に誘ってみました。

そうしたら、今までの拒否が嘘のようにすんなり入浴する事が出来ました。この方法が正しいとは言えないと思いますが、その方はそれ以降、入浴拒否は徐々になくなり、最後には入浴の時間を楽しみにされるまでになりました。

相手の方にどれだけ信用し、安心してもらうか介護をしていくうえでとても大切な事に気付かされた出来事でした。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに介護士になったのでしょうか?

25歳の頃、某携帯ショップの店長として働いており、お客様からのクレームや売上の事でストレスがすごく溜まっていた時期がありました。やりがいはあり楽しい事も多かったので続けてきたものの正直しんどい毎日でした。

ある日、ふと将来ずっとこの仕事をしていくのか?と自分に対し疑問を持ち、そこから以前からやりたかった介護の仕事に進もうと決めました。

決めてからは早かったですね。翌月から有休を使い、ホームヘルパー2級の講座に通い始めました。

実は私自身、祖父母は私が生まれた時にはもう他界しており、おじいちゃんおばあちゃんと触れ合うという機会が全くありませんでした。

なので、スクールの実地研修では全てが未知の世界で、話しかけること1つにも緊張してしまい、始めは上手くコミュニケーションが取れなかったのですが、段々慣れてくると、一緒に何かをすることや会話をすることが本当に楽しくなり、この仕事に転職してよかったと本当に思いました。

他にも、やり甲斐や誇りを持って働く介護士がいます

介護職は適職。介護を通じて自分を知り、人間力をつける
転職してよかった。思い切って市役所事務職から介護職へ
クビ同然で会社を辞めた私が転職して介護現場の責任者になれた理由
介護職に対する世間のマイナスイメージを払拭したい
将来の夢は自分の介護施設を持つこと。資格取得で変わった介護職のイメージ
編集部
編集部

介護士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

『ありがとう』と言ってもらえる瞬間です。たぶん、この仕事をしていなかったら、人生の中でこんなにも人に感謝される事はなかったと思っています。介護をする側からは、やって当たり前の事でも本当に感謝される事が多く、こちらが恐縮してしまう位です。

以前ある入居者のご家族から『ここに来て母は明るくなった、会話も以前に比べて出来るようになった、とても感謝しています』と、とても嬉しそうに話してくださった方がみえました。

そのご家族は県外に住まれており、なかなか面会に来れない事をとても気にされていた為、施設で明るく元気に過ごされる姿をみるととても安心されていました。

それから1年後に、その入居者の方は亡くなってしまったのですが葬儀に代表として参列させて頂いた際に、ご家族様から『〇〇さんの事をいつも嬉しそうに話してくれていた。施設であんなにも楽しそうな顔を見ることが出来て本当に感謝しかありません。』と泣きながら感謝の言葉を頂いた時は、もう涙で言葉も出ませんでした。

遺影の写真も一緒に外出した際に撮った写真を『一番いい顔をしている』と使って頂けていました。介護をしていて入居者の方だけではなく、ご家族様の喜ばれる表情を見られる時、本当にこの仕事のやりがいを感じます。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

入社して半年ほど経った頃、夜勤で仕事をしていた時に急に容体が悪化し呼吸停止になってしまった方がみえました。

看護師さんが緊急搬送の手配をしている間、私は心マ(心肺蘇生法)を頼まれたのですが頭の中が真っ白。手も震えて何も出来ないでいると看護士さんに『何してるの!手遅れにする気?考えてないで手を動かしなさい!!』と言われ、ハッと目が覚めました。

そこからは、もう必死で救急隊員が来るまで心マを続けていました。ついさっきまであんなに元気だったのにと本当に衝撃を受けたのを今でもはっきり覚えています。

静かな夜の施設になり続けるAEDの音声はしばらく耳から離れませんでした。

これが高齢者介護の仕事、命を預かっているという事を実感し、それと同時に『今生きていること』が当たり前じゃない事、命の尊さを本当に感じました。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

当初は認知症の方の対応に苦労しました。入社してまだ間もない頃、先輩スタッフの方と同行している時、先輩スタッフには拒否がないのに、私が対応するとどうしても拒否されてしまって。同じ対応、同じ声掛けをしても全く駄目でした。

言葉遣いにも気をつけ、介助の仕方にも細心の注意を払い行っていたのですが、結果は同じ。どうしていいのか全く分かりませんでした。

先輩スタッフは『慣れてくれば拒否もされなくなるから大丈夫だよ』と言ってくれるものの、毎日毎日拒否される日が続くのは本当に精神的にもとても辛い時期でした。

どんなに努力しても拒否されてしまうのは自分が介護士に向いてないからなのでは?と思っていました。ただその数か月後、気付けば全く拒否されなくなっていました。その当時は先輩スタッフが言っていたように慣れてくれたのかな?と思っていたんですが、今思えば慣れではなく、信頼関係が出来ていなかったと思うんです。

私自身、相手の事をよく理解できていないのに、相手には理解してほしいと思うほうが無理な話だったと思います。

今でも介護をするうえで、その時のことは教訓になっています。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

1日の中で、1分でもいいので2人だけで話せる時間が持てるように心掛けています。雑談でもたわいもない話でも何でもいいので、1人の方と向き合える時間を大切にしています。

なかなか業務の手を止めてまでは難しいので、何か業務をしながらにはなってしまうのですが、2人だけで話せる時間にふと悩みを教えてくれる方もみえるので、そこをしっかりくみ取り日々のケアをしていくようにしています。

私が以前勤めていた有料老人ホームは、外観は高級ホテルのような作りで、エントラストには常に豪華な生け花が飾ってあり、とても老人ホームには見えないものでした。入居費用も高額でしたが、食事も栄養士が健康面に配慮したメニューが毎食提供されます。

傍からみれば、とても幸せな生活に見えると思います。ただ、実際は寂しい想いをしている方が多く見えました。素敵な場所で生活出来ているから幸せなのではなく、入居者の方はご家族の方が面会に来てくれる事の方が何倍も喜ばれます。

施設の管理や環境が整っているとご家族様は安心して頂ける分、面会に来られる方が本当に少ない印象を受けました。

自分にお金をかけてもらっている、娘達には迷惑を掛けたくない、そんな想いを持った入居者の方は必ずと言っていい程、自分の気持ちをご家族に隠されます。

そんな時、その気持ちに寄り添い、時にはご家族様との橋渡し役になる事が私はとても重要だと思っています。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

『看取り士』の資格を取りたいと思っています。看取り士とは、住み慣れた自宅などで最後の時を迎えることを望む方に、最後まで寄り添う職業です。

この資格を取得するには初級から上級までの講座を受講し、宿泊型研修を終わらせる必要があります。現在は、制度の改正により、この宿泊型研修は必要なくなり、また受講に関しても初級から中級まではオンラインでの受講も可能になりました。

私が当初、この資格を取りたいと思った時は、子供がまだ小さかったので泊りでの研修は不可能だった為あきらめていました。しかし、条件が緩和した事でもう一度やってみようと思っています。私も今まで施設では沢山の方を見送ってきました。

何度経験してもこればかりは慣れる事は今でも出来ません。

しかし、だからこそ人生の最後を1人で迎えるのではなく、楽しく穏やかな気持ちで旅立つお手伝いが出来るこの職業に携わりたいと思うようになりました。

将来的に、ステップアップし看取りステーションの開設を目指せれたらと今は思っています。

編集部
編集部

これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

これから介護の仕事を目指している人へメッセージをお願いします。

もし自分に出来るのかと悩まれている方がみえるのであれば、まず考える前に始めてみてもらいたいです。私自身、全く違う職業から介護の世界に入り、本当に始めは右も左も分からないところからスタートしました。

確かに仕事は大変な事も多いです。人員不足の環境の中で働く事も、人の命を預かる仕事をする事も勇気が必要になってくると思います。

しかし、高齢者の方から学ぶことはそれ以上に多く、必ずやりがいを見つける瞬間が訪れると思います。金銭的な面でもまだまだ改善の必要はあると思うのですが、それでも介護の仕事を続けていけるのは、お金では計り知れないものが介護の現場にはあるからだと私は思っています。

なので、まずは思いきって現場に飛び込んでみてほしいと私は思います。

介護技術は毎日行えば身体が覚えていってくれるので大丈夫です!次世代を担うよき介護士さんが増えていってくれる事を心から祈っています。

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