
介護士の仕事を活かしてグループホームのケアマネとして働きたい。認知症ケアに必要なスキルや考え方ってあるのかな?ケアプランを立てるのは大変なのだろうか。グループホームのケアマネについて色々と知りたい。
グループホームのケアマネージャーはいったいどんな仕事をするのでしょうか。
ケアマネージャーの仕事にもいくつかの種類があります。求人を見ていても、色々と出てきてイメージが湧きにくいですよね。ここではその中でも、グループホームのケアマネージャーに注目し、説明していきます。
入所施設のケアマネージャーの1つで、規模が小さいものといったイメージがあるかと思います。
まずは、それをもう少し突っ込んだ形でイメージしてもらうため、他の施設との違いや主な一日のスケジュールを紹介します。そしてその上で、ご自身の選択に役立つ様、求められるスキルや、私が実際に経験してきた内容をお伝えしたいと思います。
- 自身の事業所に利用者様がおられるので、様子が把握しやすく、ケアプランも立てやすい
- 家庭的で落ち着いた環境の中で、認知症ケアに取り組むことができる
- 急な仕事が入らなければ、基本的には落ち着いて業務ができる
- 他のケアマネと違って、毎月の家への訪問がなく、兼任業務がしやすい
グループホームのケアマネが他の施設より働きやすい理由
ここでは、グループホームのケアマネが他の介護サービス種のケアマネよりも働きやすいとポイントをご説明したいと思います。
利用者様の状態がわかりやすかったり、認知症ケアなどの手厚いケアに取り組めたりとグループホームならではのポイントがあります。実際にその職に就かれるということを念頭に置いて説明してみました。
理由①:自らの施設に利用者様がおられるので、適切なケアプランが立てやすい
ケアマネージャーをする上で、どこで働いても必ず出てくる大きな仕事内容の一つに、ケアプランを作成することが挙げられます。
この作成には、利用者様の様々な情報が必要になります。例えば、自分が担当している利用者様の、心や体の状態や、普段の生活や行動の様子、健康状態などを知る必要があります。
例として、居宅支援事業所のケアマネージャーと比べてみましょう。居宅のケアマネの場合、実際に介助をするのは、通所介護事業所だったり、短期入所の事業所だったりします。ですから、訪問などで様子を見に行くことはできるものの、グループホームの様に細かく把握することはやはり難しいと思います。私も経験がありますが、利用者様の状態の変化や日々の出来事など、居宅のケアマネをしているとどうしても間接的に情報を得ることの方が多くなります。
ケアプランを作成する上では、利用者様のニーズを的確に理解することが必要と考えますが、直接利用者様の状態を知ることが出来るのは大きなポイントです。
理由②:毎月の訪問がなく、兼任業務がしやすい
グループホームのケアマネージャーを常勤でされる場合、多くの場合で、管理者や他の施設との兼任が多いのではないでしょうか。1ユニットのグループホームの場合、最大で9人なので多くなく、利用者様が常に施設にて訪問等の業務が少ないことが、その理由です。
同じ地域密着型施設で、小さな規模、かつケアマネージャーの在籍が必要なサービス種に小規模多機能型居宅介護事業所があります。このサービスでは、居宅のケアマネージャー同様、毎月の利用者宅の訪問があります。またグループホームにくらべて他の事業所との連絡調整も多くなります。
私はどちらも経験がありますが、この差は兼任業務をする上で大変に大きなものになります。ケアマネージャーだけをパートなどでされるのであれば、大きな問題にはなりませんが、他の業務との兼任の場合、その業務をこなしながら、訪問日程の調整、実際の訪問をするのは時間的に余裕がなくなるものです。
同じ兼任でも、グループホームは仕事がやりやすいと考えます。
理由③:認知症ケアに取り組むことができる
グループホームの大きな目的の一つに、認知症ケアがあります。ケアマネージャーをする上でもそれは必ず念頭に置いておく必要があります。認知症は、多くの場合、脳の器質的変化が原因となります。水頭症によるものや、外傷によるものなど、その治療をすれば改善される方もおられるようですが、多くの場合、現在のところ、治ることはありません。
だからこそ、グループホームの認知症ケアが重要になってきます。本質的には治ることのない認知症ですが、認知症ケアによって、いわゆる周辺症状と呼ばれる徘徊や不安などをいかに抑えるか、よりよい精神状態ですごしてもらうかがポイントになります。
グループホームは、1ユニット最大9人までという他の施設と比べて、手厚い人員配置になっています。これは認知症ケアをするためです。
私も経験がありますが、認知症ケアは難しいです。完全に症状が抑えられるといったことは見たことがありません。しかし、とてもやりがいのある仕事です。
グループホームでの1日のスケジュール
ここでは、グループホームでの主な1日のスケジュールを2例に分けて説明したいと思います。おそらく兼任業務となることが多いため、一番メジャーな介護職としての兼任を説明しています。例①は、通常業務の日の場合、例②は、退院など大きな動きがあった場合を説明しています。
では少し具体的に見ていきましょう。
例①:閑散期:新規の受け入れなどの急な仕事がない時
利用者様の上限が限られるので、新規や病院からの退院、トラブル等がなければ以下のような流れになることが多いです。
ケアマネ自体の業務としては、閑散期といえるでしょう。なお、ケアマネ業務は兼任が多いので、ここでは介護職と兼任する場合を記載します。
- 8:30出社夜勤者からの申し送りを受ける
- 8:45バイタルチェック利用者様の血圧や体温等を測定し記録
- 9:30掃除利用者様と一緒に掃除をする
- 10:00お茶一緒に水分摂取を兼ねて休憩 *合間に書類業務
- 10:30自由時間散歩や休憩など。利用者様の選択に任せる
- 12:00昼食出来るだけ利用者様と一緒に食事準備、下膳
- 13:00昼寝昼寝をされることが多い *こちらも休憩
- 14:00入浴3人前後入浴されることが多い
- 15:00おやつ利用者様のおやつ休憩 *合間に書類業務
- 16:00レクリエーションや自由時間利用者様に合わせて、レクリエーションや外出をする *合間に書類業務
- 17:30退社夜勤者に申し送り退社
この通り、介護職と兼任される場合は、合間にケアプランなどの書類作成業務をこなす形となるでしょう。
例②:繁盛期:新規の受け入れなどの急な仕事が入った時
新規の受け入れや、病院から退院される時の退院カンファレンス、それに伴ってご家族と今後の調整をする場合などは普段とは違った動きをする必要があります。
ケアマネの業務としては、繁盛期といえると思います。期限があるために忙しい時期です。
- 8:30出社夜勤者からの申し送りを受ける
- 8:45バイタルチェック利用者様の血圧や体温等を測定し記録
- 9:30病院へ行く退院前のカンファレンスに参加する
- 12:00昼食出来るだけ利用者様と一緒に食事準備、下膳
- 13:00昼寝昼寝をされることが多い *こちらも休憩
- 14:00連絡調整家族様と退院時の情報を受けて今後の事を話し合い。必要に応じて、必要な用具を検討したり、あるいは別の施設につなげる
- 16:00自由時間利用者様に合わせて、レクリエーションや外出をする
- 17:30退社夜勤者に申し送り退社
この様に、退院時などの場合、病院やご家族との連携、調整が必要になります。またこういった時でも、介護業務の兼ね合いをみて動く必要が出てくることがわかります。
入退院の時期や、新規入所者との面談、突然の見学など場合などは、こういった合間合間の動きになることが多いです。
グループホームのケアマネに求められるスキルとは?
ここでは私の経験をもとに、グループホームのケアマネに求められるスキルを紹介したいと思います。
私自身が実際にケアマネージャーと介護職を兼任して経験してきたことを基に、必要なスキルだと感じたことを挙げていますので、実際に働かれる際のイメージになればと思います。中にはどこへ行っても必要なことも含まれています。
スキル①:認知症ケアに取り組んでいける力が必要
グループホームが他の入所系施設と異なる大きな点として、グループホームが認知症のケアに特化した入所系の施設である点にあります。たしかに、認知症の方を対象にするという点では、居宅介護支援事業所や特別養護老人ホーム、老健、また有料老人ホームなどでも同じです。しかし、グループホームは施設への入所条件が認知症の診断を受けている事であるため、すべての利用者様が認知症となります。
当然、ケアの内容としては、認知症のケアが求められます。これはグループホームの法的な目的でもあります。
私も経験してきましたが、認知症ケアは簡単なものではありません。一時的に効果がなかったり、時期によって違ったり、対策を考えている間に病気自体が進行したりします。
日ごと、下手をすれば時間ごとに変化する利用者様の状態に対して、あらゆる角度から状態を把握し、対応し続けるスキルが必要といえるでしょう。非常に根気のいることですが、少しでもうまくいくと記憶に残る位の達成感があります。
スキル②:利用者様やご家族と信頼関係を作ること
私は、ケアマネージャーの仕事は信頼関係を作ることが大切と考えています。これは利用者様だけに限らず、ご家族様とも同じことが言えると思います。
しかし信頼関係を作ることの難しさがグループホームにはあります。まず、上記でも触れましたが、認知症の利用者様ばかりであることがあります。そして、入所系の施設であるがために、ご家族と定期的にお会いする機会がないことが挙げられます。
利用者様については、日々の関りの中でたとえ、言葉が通じなくても、非言語的なコミュニケーションで、感情に訴えかけたり、行動で示したりするなどのスキルが求められます。逆に利用者様の訴えを読み取る力も必要になるでしょう。
また、ご家族様との対応については、普段なかなかお会いする機会が少ない中、お出会いした時や、電話連絡などで、信頼関係を維持することが必要なります。この積み重ねの信頼関係が、実はご家族と利用者様をつなぐ橋渡しにもなります。
スキル③:兼任業務の中、時間調整をして動くこと
上記の一日のスケジュール例②でも触れましたが、グループホームのケアマネージャーは、おそらく兼任業務でされることが多いと思います。
なぜ、兼任業務が多いのかについて少し触れておきます。グループホームは、1ユニットが9人で、仮に2ユニットを対応しても18人が主な対象であまり多くない事。
そして、その全員が入所されており、自事業所のケアが主になること。さらに、ほかの事業種のケアマネージャーに比べて、自宅訪問や書類作成、給付管理などの事務が少ないことが挙げられます。
私がこれまでに見てきた兼任の形態としては、介護職兼任、管理者兼任、あるいは隣接する小規模多機能事業所のケアマネと兼任などがありました。
そうなると注意しないといけないのが、意外と時間調整をすることがあります。ケアマネージャーの仕事はご存知の方もおられると思いますが、突発的な仕事があります。
その中で、毎月の定期的な仕事、ケアプランの作成、担当者会議などをうまく組み合わせ、優先順位を立てて物事を進めていくスキルが必要になります。
【実体験】グループホームのケアマネの仕事内容
ここでは、グループホームのケアマネージャーの仕事内容について、3つのエピソードを紹介しつつ伝えたいと思います。いずれもケアマネージャーとしてご家族や現場と連携しながら対応する必要がある話になります。
良いことばかりではありません。こういったことを積み重ねてよい方向を模索することが大切です。では、エピソードを見ていきましょう。
Aさん:地域交流によって地元の知り合いとの再開、意欲の向上
普段から、居室で「なんもしたいことがない。仕事をしてお金を儲けるんやったらよいけど。」と、レクリエーションや、簡単な仕事、散歩にすら参加されないAさんのエピソードです。
認知症や心身の状態の低下もさることながら、仕事を主に頑張ってきた男性にとって、やはり家とは違う所での生活、家族以外との生活はなじまなかったのかもしれません。
しかし、その方の在宅での生活は様々な理由から困難です。このような生活を続けられれば、より心身の状態が低下していくことが危惧されました。
そんな時、他のグループホームと交流する機会を設けることが出来ました。
なんとその時に、昔からの知り合いの男性がおられ、普段見られない笑顔で会話されたり、レクリエーションに参加され始めたりされたのです。
これは大きな一歩でした。普段から直前の事を忘れてしまう方でしたが、その時の事はなんとなく覚えておられ、活気が見られる時があるようになりました。グループホームの一つの大目的である地域交流が生んだ大きな結果でした。
Bさん:利用者様同士で悪循環の相互作用が起こる
普段から、物とられ妄想や幻覚の症状がみられるBさんのエピソードです。
この方は、ひどい時には朝起きてから、夜寝られるまでずっと「物が取られた。」「知らない人が入ってきて取っていった」と不安そうな表情で職員を呼びに来られ、何度も対応している内に、布団で寝こんでしまう方でした。
ある時、新規の入所様が入られました。その方は、Bさんの横の部屋で、Bさんの話をよく聞いてくれていました。笑顔も見られ安心していました。利用者様同士の助け合いはよい効果があることもあるのですが、この場合は実は違いました。
実はこの入所者も、物とられ妄想をもっておられました。そうなると、Bさんとの兼ね合いでどうなるか。しかし、片方の症状が出ている時は、もう片方を引きずりこんでしまい、不安の症状が一瞬にして復活、悪化してしまうという流れを生んでしまったのです。
利用者様同士の関わりについて考えさせられるエピソードとなりました。
Cさん:夜間の不眠が改善方向に向かった
最後に、不眠傾向があったCさんのエピソードです。この方は、日中は尿回数が多くはないのに、深夜から朝方にかけて尿回数、尿量ともに増えてしまう。結果、失禁や衣類の汚染があり、多い時は深夜帯だけで5回は着替えをされたこともありました。
通常、オムツやパットの厚さなどで調整もするのですが、自ら外される為、それを超えての難しさがありました。介護だけでは対応が難しい状態でした。
この件については、ご家族と何度か連絡調整し、受診の際に書面にて医師に情報提供をしてやり取りを続けました。結果として、医療面からも、利尿剤を服用するタイミングの変更、夜間の頻尿を抑える薬の処方につなげることができました。
もちろん利尿剤が処方されているだけあって、ただ、止めてしまえばよいというものではありません。その辺りの状況を常に把握、ご家族と情報共有しながら、できるだけ状態を維持していくことを並行して進めていました。
ケアマネとして他業種連携がよい方向にむかったエピソードとなりました。
まとめ
ここでは、グループホームのケアマネージャーの仕事についてみてきました。
他の施設との違いからの視点でいうとやはりキーワードは認知症ケアになるかと思います。
ここでふれた仕事内容や一日のスケジュール、エピソードなどの紹介を通じて、どういった形でグループホームのケアマネージャーの役割を果たしていくのかが伝わっていると幸いです。
この記事を書いた人
