就職支援金貸付20万円給付は、失業中や休業中の人が介護士になるきっかけとなるのか?

介護職の働き方を考える
業界未経験で介護士に興味のある人
業界未経験で介護士に興味のある人

 コロナのせいで仕方ないけど、急に倒産と言われても困る。 転職しようにも、どこも新しく募集をしていないし、違う業界も考えないと・・・国が、介護業界に転職する支援をするらしい。介護士がエッセンシャルワーカー?興味があるな。私でも、介護の世界で働けるのかな?

新型コロナウイルス流行の影響が長期になり、今後もすぐに収束する様子はありません。この影響で、倒産や規模縮小の動きが企業で早まり、退職や休職を余儀なくされている人が、増加の一途を辿っています。

今年、厚生労働省から「介護職就職支援金貸付事業」制度を、来年度(令和3年度)からスタートするとの発表がありました。

参考失業中、休業中の方は介護福祉に転職しませんか? 動く厚生労働省 20万円の条件付き支給制度も予定

元々人材不足に悩んでいる介護業界、とりわけ介護士への転職を支援する制度で、業界内外から注目を集めています。

ここでは、転職先を探している皆さんの参考にして頂けるよう、この制度について内容や、介護士として働くためのノウハウをまとめていきます。

記事のテーマ
  1. 制度の概要と注意点
  2. 介護士は社会のインフラであり、エッセンシャルワーカーであるということを再認識
  3. 未経験で介護士に転職するメリット、デメリット
  4. 介護士になるために必要なスキルとは?
  5. 転職するならココ!おすすめの施設は?

質問があれば気軽にコメントください

介護職就職支援金貸付事業のニュースを受けての感想、気づき

介護職就職支援金貸付事業のニュースを受けての感想、気づき

冒頭のニュース記事を読んで、これまでの介護業界の流れなどを思い起こし、いろいろと考えさせられました。まずは導入として、このニュース記事を読んだ感想や思ったことや、改めて気付いたことなどを書いていきます。

その①:介護業界は不況に強い

コロナ禍でのダメージは、人命はもちろん経済にも大きく出ています。10月2日の日本経済新聞で、完全失業率が3年3ヶ月ぶりに3%に達したとありました。

完全失業者200万人超、このうち39万人が勤めていた会社都合での失業。その中でも非正規雇用者の失業が目立ち、逆に正規雇用者の数は増加しています。

コロナ禍のダメージを、会社が正規職員だけでなんとかしよう、パートやバイトの人には辞めてもらおうとする動きが顕著に出ています。

その中、介護業界でも倒産が相次ぎ、2020年1~9月の倒産数は94件と、歴代最多を記録しています。

ただ、コロナの影響による倒産はわずか3件。残り91件は、コロナの影響ではないと判断されています(東京労働リサーチより抜粋。同月、同集計で日本の総倒産数は500件を超えています)。

元々介護業界の倒産で一番多い理由は「人材不足」です。 人手が賄えている事業者は、不況でもつぶれにくいという、介護業界独特の特徴が出ているからこそ、こういう施策が出てくるのだと感じました。

その②:エッセンシャルワークって?

この記事の中に「エッセンシャルワーク」という言葉が出ました。恥ずかしながら聞きなれない言葉でしたので、注釈の「社会生活を営むうえで必要不可欠な仕事」という言葉とともに改めて調べてみました。「エッセンシャル」が「必要不可欠」「非常に重要なこと」という意味です。

「ワーク」は仕事なのは分かります。エッセンシャルワークで必要な仕事、それをする人を「エッセンシャルワーカー」と言うことになります。

このコロナ禍騒動の中で、「自宅待機できない労働者」「生活するうえで欠かせない仕事をしている人達」ということで、このエッセンシャルワーカーがクローズアップされました。

警官や運送業、一次産業(農林水産業)、行政、教育、医療、そして福祉介護業界など、ということになります。

実際、私を含めて介護業界で働いている人で、コロナの影響で自宅待機を余儀なくされた人は、感染者、および濃厚接触者に限られます。

その分しんどい、という面もありますが、待機がないということは、変わりなく働いて給与を得ることができている、ということでもあります。

これまで医療従事者は、事あるごとにエッセンシャルワーカーとしてクローズアップされてきましたが、今回福祉介護業界、特に介護士がクローズアップされてきています。

その③:仲間作りがやはり大事になる

この記事の最後には、次のような文章があります。

介護業界で働く際は必ず労働組合加入を

この記事の元になったのが、2020年10月19日に発表された報道です。

参考介護処遇改善へ50万筆署名 労組が厚労相に提出

介護士は決して給与の良い職業ではありません。でも、高齢者や障碍者の日常を支える重要な仕事、まさにエッセンシャルワーカーです。その待遇改善を求めて、全国の労働組合組織が政府に訴えた、という内容の記事です。

話は少し変わりますが、他の産業と同じかそれ以上に、介護業界はチームワークが大事になります。仕事そのものでもそうですが、愚痴を言い合える仲間、切磋琢磨できる仲間の存在はとても大きなものです。

労働組合という「仲間組織」だからこそ、50万人もの署名を集めて政府に訴えることができた。そのためにも、労働組合に加入しましょうという内容で記事が締めくくられている。これはとても介護業界らしいまとめ方だと感じました。

ニュースの記事という短い文章の中に、これだけのメッセージが込められており、この制度への期待度が現れているように感じます。

介護職就職支援金貸付事業制度の概要と注意点

介護職就職支援金貸付事業制度の概要と注意点

さて、具体的に制度について解説していきます。まだ100%内容が発表されているわけではなく、来年度からということでこれから様々な情報が出てくる(厚労省の介護保険関係の発表はいつも直前ですから)と思います。

今後の情報をより理解できるように、今分かっている情報をまとめていきましょう。

制度概要

コロナ禍で大量の失業者が出ている状況下で、その対策の一環として、以前から人材不足が続いており、エッセンシャルワーカーとして再評価されている介護士への転職をした人に、20万円の支援金を出す「介護職就職支援金貸付事業」制度を、来年2021年度厚生労働省が創設する、他業界からの転職を対象とする。

「貸付制度」ですので、返さないといけないんでしょう?と思う人も多いと思いますが、「2年間現場で働くと返済免除」となっています。

貸付目的で転職してすぐ辞めることを防止するための措置ですが、逆に言えば最低2年間は働く前提で、採用側も考えるということですので、職の安定という面ではメリットと言えるでしょう。以下、注意すべき点をまとめます。

注意点①:介護士の未経験者が対象

転職支援の制度ですが、対象者は「介護士未経験者、無資格者」となっています。無資格であれば、今介護の仕事をしている人も該当するかというと、そうではありません。

元々、復帰をする介護士には、資格取得を前提に最大40万円を援助する制度があります。

参考再就職準備金のお知らせ(厚生労働省)

来年後から始まる制度では、「介護業界以外で、コロナ禍の影響などで職を失った人」を想定しています。

資格を持っているけど他業界で働いている人、が該当するかどうかは、現段階でははっきりしません。今後の情報を待つ必要があります。

注意点②:資格取得が前提

では、他業界の人であれば、介護士へ転職しさえすれば支援金がもらえるかというと、これもそうではありません。

ハローワークを通じた職業訓練などにおいて介護職員初任者研修を受講し、高齢や障害分野に就職することなどが条件

引用元:福祉新聞(2020/10/19)

資格を必ず取得することが条件となっています。

「介護職員初任者研修」の概要ですが、介護の基礎を学ぶ研修を合計130時間受け、試験に受かると取得できます。全く介護をしたことがない人には特に効果的で、介護の基礎が分かります。昔、「ヘルパー2級」と言われていた資格と同格で、介護資格の入り口となるものです。

通常は受講料等で10万円前後かかりますが、この制度が適用されると無料になります。また、130時間の講習を受けて試験ですので、日数がかかりますが、訓練期間は月10万円の給付金が出ることになっています。研修中の職場体験もあり、至れり尽くせりという感じです。

それだけ、エッセンシャルワーカーとしての期待が介護士にされている、ということにもなるでしょう。

注意点③:正職員とは限らない。介護士だけとも限らない?

この制度ですが、対象者は「高齢や障害分野に就職した人」です。

まだ具体的な文言が出てきていないので何とも言えませんが、現時点で分かるのは、介護分野に就職した人というだけで、正規、非正規の区切りはありません。

また、就職した人というだけの表記ですので、介護分野であれば介護士でなくても構わないのかもしれません。事務員、運転手(デイサービスやショートステイの送迎専門)でも出るのかもしれません。

これだけでは分かりませんので、参考までにすでに運営されている「再就職準備金貸付事業」を例にとりましょう。こちらの制度でも、正規非正規の表記はありませんので、新しい制度でも同様にないものと思われます。

再就職の制度では「介護職員等」という表記があります。また、一定の実務経験が求められますが、その要件では「介護職員」と明記してあります。

このため、基本的に介護士を想定しているが、介護との兼務(生活相談員等)も含まれる範囲だろうと想定できます。

新しい制度では、初任者研修の受講が必須となっていますので、想定しているのは基本的に介護士で、非正規、非常勤(パート等)も含んだ範囲が適用になる、ということになります。

介護士への転職という点では目標が定まりますが、例えばこれまで非正規だったがためにコロナ禍で転職を余儀なくされた人の場合、再就職先も非正規の可能性があるため、転職での自分の希望をきちんと伝えることが大事、ということになるのです。

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未経験で介護士としてのメリット、デメリット

未経験で介護士としてのメリット、デメリット

ここからは、制度を活用した前提で、未経験で介護士として働くメリットとデメリットを書いていきます。

転職自体にメリットデメリットがありますが、未経験で全く違う業界で働く決断をすることはかなり勇気がいることだと思います。参考にしやすいように、両方とも3つに絞ってそれぞれ解説していきます。

メリット①:年齢性別関係なく、ほぼ100%就職できる

一般的に転職は、年齢が若いほど有利と言われます。理由は、転職してからの期間が長いほど、転職先に利益があるからです。長い期間働いてくれる職員は、労働力はもちろん将来的な幹部候補としての期待もできますし、若いうちにいろいろと学んでもらって将来は、と考えるのは当然です。

ただ、介護業界は他の業界と比べて、年齢性別関係なく採用する企業の比率が多いのです。

年齢については、ある程度年齢を重ねている=人生経験があるとみなされます。高齢者や障碍者という「人」相手の仕事ですので、人生経験がある人を即戦力として積極的に採用する企業が多い。仕事の経験というよりは、他の企業で働いてきた時間そのものが、人と接するにあたって役に立つと考えます。

男女については、元々女性主体の業界なので女性は大歓迎です。男性については、20年ほど前、介護保険が始まった当初は、「女性の職場に男が来た」と煙たがれるケースも多くありました(私もそうでした)が、最近は男手ということではなく普通に歓迎されます。

力があることはもちろんですが、夜勤や宿直など、子育て中の女性職員にはしづらい業務も任せることができるため、男性を好んで採用する企業も増えています。

私が採用担当として接した一番高齢の方は70代でした。定年退職後しばらく遊ぼうと思ったがやはり仕事がしたいと意欲があり、人と接する物腰が柔らかく、すぐに採用になりました。

このように、他業界では不利と言われる年齢性別の方でも、転職の成功率が高いのが介護業界、特に介護士なのです。

メリット②:希望に応じた働き方が選べる

介護士のイメージというと、「きつい、汚い、給与が安い」の3つがまず上がります。仕事の基本として、自分では生活しづらい利用者のお世話をしますので、当然排泄などの汚い仕事と言われる業務もあります。

ただ、一口に介護士と言っても働く職場は様々で、業務もかなり違います。

一例を上げましょう。特養(特別養護老人ホーム、介護老人福祉施設)の夜勤を含む介護士と、割と元気な方が通う小規模のデイサービスの場合です。

特養の場合、入所者の大半は重度者です。寝たきりの方、認知症で自分では何もできない方などが主体で、基本的に要介護3以上の重度認定者が生活しています。

介護士の業務は、直接利用者の介護をする身体介護が中心。排泄、食事、入浴、移乗、移動等を、一部から全介助します。具体的には、オムツ交換、トイレ介助、食事を食べさせる介助、ベッドから車いすに移す介助、車いすを押す介助などです。

一方で、小規模デイサービスの場合、利用者は要支援~要介護1の軽度者が中心です。大半の人は、自分で歩き、自分でトイレに行き、自分で食事を食べます。

介護士の業務は、移動時の付き添い、見守り、コミュニケーションが中心になります。身体介護を行う場面は少なく、事業所によっては一切ないところもあるでしょう。その代わり、送迎の運転や家族との相談など、特養の介護士にはない業務が入ってきます。

給与的には特養の方が上です。体力に自信があって稼ぎたければ特養を選べばよいし、まずは軽い利用者から接したいと思えば小規模デイサービスなどを選べばよいのです。

転職先を選ぶのは皆さんです。希望に応じた働き方が最初からある程度選べるのは、介護士のメリットと言って良いでしょう。

メリット③:仕事が安定している上に、エッセンシャルワーカーとして再評価されている

最初の感想で、「介護業界は不況に強い」と書きました。一般的な民間企業の場合、不況時には仕事のスピードや内容が変わってきます。企業として稼がないと倒産しますので、社員の働き方も変わらざるを得ません。ところが、介護士の仕事内容は好景気不景気に関わらず一定です。

訪問介護(ヘルパー)を例にとりましょう。

事業所から車やバイクで出発し、利用者の自宅に行って、決められた時間内であらかじめ決められた支援をします。利用者によって、家の掃除、調理、買い物、オムツ交換、食事介助など非常に幅がありますが、内容は利用者の状態や希望によって変わるだけで、景気には左右されません。

日によって仕事の時間が違うということもほとんどありません。

介護保険制度で一定の収入が約束されていますので、企業、法人の側も、なるべく稼働率を上げようとする動きはありますが、都度の景気を反映した対応まではしません。そのため、介護士の仕事の内容は安定しているのです。

また、冒頭でも述べましたが、このコロナ禍の影響で介護士の重要性、エッセンシャルワーカーとしての評価が上がってきています。

感染防止のため、施設に泊まり込んで介護をしている介護士、などのニュースをご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

特に高齢者介護において、介護士の重要性と、それぞれの法人、介護士が行った献身的な介護の影響で、これだけ全世界的に広まったコロナの影響を最小限に留めることが出来ました。この実績が、介護士のエッセンシャルワーカーとしての地位を向上させました。

一昔前、介護保険制度がスタートした平成12年頃は、介護士というと、「男がやる仕事じゃない」「姥捨て山のように入れられた年寄りをほったらかしにする」などの悪評が非常に多かったのですが、制度開始から20年経過した現在、介護士に対する評価は上がり続けています。その分、介護業界への転職をする人も増えてきました。

実際私の周りでも、全然知らなかったけどあそこのご主人も介護士だったんだ、と後で知ることが増えてきました。

評価される仕事を安定してできるのが、介護士の最大のメリットかもしれません。

人気記事無資格・業界未経験で介護職は無謀?介護士が働く際の注意点を解説

デメリット①:給与は安い

メリットばかり書いても参考になりませんので、ここからはデメリットを書いていきます。公平を期するために、メリットと同じ3つ書いていきます。

デメリットの一番大きな点は、ずばり給与が安いことです。これは事実ですので、この点だけは覚悟して転職を検討してください。

さらに適切な書き方をすれば、「初任給が低い」ということになります。新卒の場合、地域によってばらつきはありますが、特養など夜勤があるところで20万円、デイなど夜勤等がないところでは15万円が平均となります。私の住んでいる地域は田舎ですので、特養でも20万円はいきません。

そのため、夫婦の場合は共働きが普通です。私の妻もパートで違う業界で働いています。

ただ、転職の場合は、前職の仕事内容や給与、面談時の評価がかなり考慮されます。私の場合、正確な数字までは載せませんが、直近の転職時には十の値が1つ多い金額で始まりました。

また、介護業界でもスキルアップ、経験、取得資格などによって、昇給する流れが確立してきています。最初は給与が低くても、努力次第で昇給できるので、他の業界と同じような流れになって来ているのです。逆に福祉の世界ですので、福利厚生は一般的にしっかりしています。

介護業界の特徴として、就職する部署(サービス)は同じでも、地域性、法人の規模、民間の場合母体企業の規模などで、給与はかなり変わります。ある程度稼ぎたいと考えている人はこの点を考慮しながら転職先を探すべきでしょう。

デメリット②:慣れるまでが大変

どの仕事でも慣れるまでが大変なのは変わりませんが、介護士、介護業界独特の苦労があります。結局慣れることができずに辞めていかれる方もいらっしゃいますので、参考までに2つ例を挙げましょう。

まず1つは、介護業界独特の「常識」です。

介護士の仕事、特に特養などの施設での仕事の場合、一般的な社会ではまず無いような常識を踏まえながら仕事をしないといけません。

例えばオムツ交換。主にベッド上で交換をしますが、赤ちゃんのお世話以外でオムツ交換をする機会はそうそう無いと思います。

臭い、便や尿をグローブ越しとはいえ触ることなど、嫌なことは多々ありますが、利用者に不快な思いをさせないように、嫌な顔はしてはいけません。もちろん声に出して「臭い!」なんて言うのは論外です。

交換する前には必ず利用者に声をかけ(「○○さん、今からオムツを変えますからね」)、体の向きを変える時は、利用者の負担にならないよう介護技術を使って体を動かします。

当然換える前にはカーテンを閉めるなどして、プライバシーを守ります。利用者を第一に考えて行動することが、ケアの大前提となります。

これが、慣れるまではなかなか普通にできません。つい忘れて先輩介護士に注意を受けることになります。

もう1つは、「言葉の壁」です。

高齢者の場合は方言、障碍者の場合は発声が上手く出来ないこと等により、その地域で普通に聞く言葉ではない話を受けて、返さないといけません。

高齢者ばかり、障害者ばかりの集団の中で仕事をすると、この言葉の壁を強く感じることになります。介護士は直接利用者の介助をするため、黙って対応することがほぼできません。

重度の寝たきり利用者しかいない施設でもない限り、利用者とのコミュニケーションはとても大事になります。相手の言葉が聞き取りにくいのが悪い、という考えも、介護士では通用しません。何が何でも、こちらが合わせる必要があるのです。

これは、得手不得手こそあるものの、誰しもぶつかる壁です。慣れるまでは時間がかかります。

ただ、先輩介護士の皆さんも経験してきていることですので、慣れるまで時間がかかることも分かっています。自分たちも苦労した分、親切にいろいろと教えてくれます。

利用者の側も分かっている方がほとんどで、親切な方だと「方言講義」的に1つずつ、それこそ孫にでも教えるような態度で教えてくれるでしょう。分からないからダメ、ということはないのです。

時間がかかるのは仕方ないと覚悟して、こつこつ取り組むことができれば、いつか普通に会話ができるようになります。

デメリット③:人付き合いそのものが仕事

慣れるまでが大変、のところでも書きましたが、介護士は直接利用者の介護をする職種です。当然そこには「人付き合い」というニュアンスが含まれます。

これが苦手という人は多いですし、かくいう私もどちらかというと苦手な方です(こういうと身近の大半の人が「嘘つけ!」と言いますが、本当です。しゃべらずに済むのであればそれに越したことはない・・・)。事務仕事やレジの仕事などでも、同僚との付き合いやお客様との会話がありますが、介護士の場合はより深く付き合いをするようになります。

高齢者の場合だと1年未満で亡くなられる方もいますが、大半は数年から数十年の付き合いをすることになります。若い障碍者、障害児の方々であればなおさらです。

利用者本人とだけではなく、その家族とも付き合いをしていくことになります。業種や事業所の組織的に差はありますが、人と付き合いながらする仕事である点は変わりません。

ただ、付き合いを上手くする必要は、実はないのです。この点を勘違いしている人は、実は介護業界にも多くいます。

営業職というわけではありませんので、話す内容は雑談や利用者の状態の相談と言った、限られたものになります。

深く付き合いをする反面、付き合い方そのものは実に限定的です。利用者本人との場合、介護をする短時間の間だけです。せいぜい数分。「痛くない?」「しんどくない?」などの確認作業も入りますので、一言二言くらいしか話をする時間はありません。

軽度の利用者との場合も、最終的には相談員やケアマネジャー、管理者と言った、相談業務担当の職員に引き継ぐことになりますので、話すよりも聞くことが主体になります。

家族との話の場合も同様。世間話は少ししますが、込み入った話は相談業務担当職員に引き継ぐことになるので、こちらも少ししか話をしません。人付き合い自体が仕事ではありますが、重要なのは相手への真摯な態度であって、上手くしゃべる必要はないのです。

実際に、口下手な人、内気な人の割合は、介護士は案外多いのですから。

未経験で介護士に必要なスキル

未経験で介護士に必要なスキル

ここからは、実際に他業界から介護士へと転職するにあたり、最低限必要なスキルについて書いていきます。通常ですと、「まず初任者研修を受けてから」とお勧めするところですが、今回の厚労省が20万円を給付する制度では、初任者研修受講が手順の中に入っていますので省きます。

逆に言えば、まずお勧めする研修がすでに入っている制度ということになり、この点でも、今回の制度にはかなり期待が持てます。きちんと、エッセンシャルワーカーとしての介護士を、しっかり基礎を付けてから増やしていこうというニュアンスが強くあります。

他の、どんな業界で働いていたとしても、介護士を目指すにあたって必要なスキルは、実は2つだけです。

スキル①:聞く力、姿勢(傾聴ができる)

ネットや本で調べると、「倫理観」などの価値観を挙げているところが多く見られますが、実際に仕事をしてきた側から言うと、「最初からそれを身につけるのは無理」が結論です。

倫理観は、ごく柔らかく言い換えると「常識」ということになります。常日頃生活しているからこそ、現代社会、その地域での常識が身に付きますが、例えば来年からインドに住むからと日本でいくら勉強していても、実際にインドに住むと細かい常識が多々あることを実感することになります。

同様にコミュニケーション能力を挙げているところもありますが、それこそ口下手な人がいくら勉強しても、いきなりコミュニケーション能力が上がるわけがありません。

まずは「聞く力、姿勢」を心掛けましょう。「傾聴」という言葉で日常的に使いますが、「相手の言葉を、否定せずに、耳も心も傾けて聞くこと」は、介護士の基本姿勢です。

この「否定せずに聞く」ということが、日常的にはかなり難しいことです。仲間だとつい反論しますし、商売だと言葉では否定しなくても心の中では「こんちくしょう」と思いながら聞くことが多々あると思います。

介護士は絶対に否定しないわけではないですが、「耳も心も」傾けて聞く姿勢を取ることで、「そうじゃないけど、まぁ仕方ないか」くらいの柔らかい対応ができるようになります。さらに慣れてくると、これが無意識に発動するようになり、仕事中はもちろんプライベートでも何かと役に立ちます。

私は特に認知症の利用者に対して無意識に発動するようで、気が付くと隣で利用者が寛いでいることが、割と日常的にあります。

特別な訓練は必要なく、必要なのはまず心構えなので、日頃から誰かと話をする時に、「ちょっと待て、ここで否定せずに聞いてみよう」と考えながら話をするようにしてみましょう。

ちなみに「否定する」のは、言葉だけではありません。表情、仕草、目線、言葉と言葉の間など、人は様々な方法で自然に自分の気持ちを発信します。言葉だけ丁寧になっても意味がありません。

一番良いのは、現役の介護士、あるいはともに介護士を目指す仲間と一緒に試してみることです。いなければ、家族や同僚などに事情を説明した上で試してみましょう。

これは、考えるだけではなかなか難しいので、実際にやってみることをお勧めします。

スキル②:健康なカラダ

カラダは全ての基本です。どんな仕事でも、健康であることは最低条件となります。介護士が体力勝負だから、ということではなく、健康を保っていないと結果的に利用者や職場の同僚先輩方に迷惑をかけ、仕事を続けられなくなるからです。最終的には自分に跳ね返ってきます。

どの程度健康であれば良いか。

病気やケガで転職を決意された方は、まずは治療に専念しましょう。体が弱っている段階で無理をしても、良い結果がついてきません。十分に治して、自分で「介護士になろう」と思えるようになれば、その時点で健康と言えます。

元々持病があるという方は、主治医に相談しましょう。自分で大丈夫と思っても、専門家から見れば違う意見が出るかもしれません。

目安としては、「勤務表通りに働けるかどうか」ということになります。例えば腰痛のある方は、コルセットや腰痛ベルトなどの使用を前提に、一日無理なく働ける程度は痛みを自制できるくらいの健康さが求められます。

体力がない、という人も多いかもしれませんが、介護士と言っても朝から晩まで休まずずっと動き続けているわけではありません。一番労働力が多いと思われる、特養や老健(老人保健施設)の介護士でも、朝ミーティングをして、チームで手分けしてオムツ交換をして、入浴介助をして・・・途中途中で必ず一息入れる時間があります。昼休み、昼食の時間ももちろんありますし、介護だけではなく記録(ケース記録、経過記録等)の時間もあります。

これがデイサービスやヘルパーなどだと、もっと合間の時間がありますので、「1時間くらいは連続して介護し続けられる」体力があれば大丈夫です。私の感想として、半日レジ打ちをするほうが、よっぽど足腰に堪えます。

介護士は決してスーパーマンではないのです。

少し話がずれますが、介護士の中には障害を持つ人もいます。事故で半身不随になった後も車いすで介護士を続けている人、生まれつき喋れない人、脳梗塞の後遺症で左手が利かない人なども、介護士を続けることができています。

介護士の仕事はチームプレイですので、1人の介護士に全責任や全業務が乗っているわけではありません。

逆にチームプレイであるからこそ、協力して業務にあたるために、個々人の健康さが大事になるのです。

未経験で働きやすい施設は「特定施設入所者生活介護」

未経験で働きやすい施設は「特定施設入所者生活介護」

これまで、制度の概要や介護士になるために必要な物について書いてきました。それでは、制度を利用し、必要なスキルも身に付けた上で、どこを転職場所として選ぶべきか。

私は敢えて、「特定施設入所者生活介護」のサービスをしている、有料老人ホームやケアハウスなどをお勧めします。その理由を解説していきましょう。

理由①:特養に比べて軽度者が多い

この記事を書くにあたって、ネットや本を改めて調べてみましたが、お勧めの施設としてはダントツで「特養」を挙げているところが多くありました。 これには、実は私も賛成です。理由を簡単に書くと、

  1. 介護士の中で一番給与が良い
  2. 多種多様な利用者がいるので、スキルアップにもってこい
  3. 職員が多く、教育体系もしっかりしているので勉強しやすい
  4. 特養は滅多なことでは倒産しない

ということになります。訪問系はお勧めしません。各家庭に赴いて、基本的に1人で介護をする訪問サービスは、実は施設系サービスよりも個々の能力を問われます。初めてだから、未経験なのでという言い訳が通じません。

他業界からの転職でヘルパーを選ぶのは、かなり無謀だと思っています。

通所系サービスはある程度お勧めしますが、施設サービスよりはお勧めしません。理由は、施設系より給与が安く、施設系より潰れやすいからです。介護業界でも、様々な事情で規模の縮小を行う時がありますが、大きな法人で真っ先にやり玉にあがるのがデイサービスなどの通所系サービスです。

理由は、語弊があるかもしれませんが「無くなっても、一番利用者への影響が少ない」サービスだからです。

施設系は無くなれば、居場所そのものが無くなる利用者がいます。 訪問系は、無くなれば今日のご飯に困る利用者がいます。

通所系は、数も多く、利用目的の「入浴」「交流、活動」「家族がいない時間の安全」いずれも他のサービスで代替えできます。施設系よりも業務的に楽ですが、転職したあとすぐに勤務先がなくなるのは避けたいですよね。

ただ、訪問系に比べて、一緒に仕事をする仲間が多いこと、チームケアのため補いあえる点から、通所系もある程度はお勧めします。

さて、長くなりましたが、ここからが「特定施設入所者生活介護」をお勧めする理由です。その前に、「特定施設入所者生活介護」について少し説明すると、「有料老人ホームなどに入居している高齢者に、日常生活上の支援や介護を提供すること」となります。

実は、特養など「施設の名前」ではなく「サービスの名前」を指すのです。具体的には、ケアハウス(軽費老人ホーム)、有料老人ホームなどになります。ケアハウスを例にとると、特定施設入所者生活介護を算定するケアハウスと算定しないケアハウスに別れるが、算定しているケアハウスをお勧めします、ということです。

その理由の1つめですが、同じくお勧めする特養よりも、特定施設入所者生活介護算定の施設(以後、「特定施設」と呼称します)のほうが、利用者の介護度(介護の必要性)が低い利用者が多いのです。

軽度者が多いということは、それだけ介護士の負担が大きい排泄や入浴などの直接介護が少なくて済む、ということになります。

少ないのが良いだけであれば、デイや一般的なケアハウスの方がより少ないのですが、それだと経験する介護の種類が少なくなりますので、スキルアップ等は望めません。(一般的なケアハウスだと、要介護1まで、要介護2までなどの厳密な規定があり、そもそも重度の方が全くいません)。

逆に特養だと、前述したように要介護3以上の重度の利用者しかいません。軽い認知症の人、麻痺があるけど自分で歩ける人など、介護保険を利用する人は多種多様です。

せっかく初任者研修を受けて介護士になるのですから、軽度の人から重度の方までお世話できる特定施設がベストではないかと考えます。

転職後の自分の目標、どういう働き方をしていきたいか、を考えるためにも、幅広い利用者と接する特定施設はとても良いのです。

理由②:特養並みに研修制度がしっかりしている

1つめでスキルアップということを挙げましたが、特定施設の良いところは、特養など他の介護保険施設並みに研修制度がしっかりしている点も挙げられます。普通のケアハウスは?と思われる方もいると思いますが、介護士が働く介護保険業界では、「介護保険適用の施設かどうか」という一線がとても重要です。

ちょっと難しい話になりますが、ケアハウス(軽費老人ホーム)、有料老人ホームは、介護保険ではなく「老人保健法」由来の施設です。特養も「老人保健法」由来の施設ですが、料金体系は完全に介護保険法適用となっています。ケアハウス、有料老人ホームは適用外です。

何が違ってくるかというと、「職員の人員配置と研修要件」が最も違います。理由①で述べたように、ケアハウス、有料老人ホームともに、元々特養よりも軽度の利用者が多い、あるいは軽度利用者しか想定していない施設です。

そのため、まず人員配置が全然違います。特養よりも圧倒的に少ないのです。法的な配置数が少ないので、「より良い介護を提供するために」特養並みの人員を配置しているところは、まずありません。あったとしても、費用がとても高額になるので、今度はお金に余裕のある利用者しかいない、ということになります。

配置が少ないため、介護士に求められる研修や勉強会などの規定も、無いかかなり曖昧です。その分、「なんとなく、今までこうしてきたから」と独自の介護を展開するところが多く見られます(怒られそうですが、実際に特養などの研修体型を見て頂くと、納得いただけると思います)。

特定施設の場合、「特定施設入所者生活介護」自体が介護保険サービスです。これを提供する施設ということで、人員配置、研修体型をしっかりすることが求められます。つまり、特養並みに学びやすい環境、先輩方が揃っている、ということになるのです。

理由③:特養並みに給与体系がしっかりしている

以上、2つの理由についてはお分かり頂けたかと思います。最後のこの理由が、特定施設をお勧めする一番の理由かもしれません。なぜ給与体系がしっかりしているか。それは、「特定施設を運営するために、他のサービスより法人の力が求められるから」ということになります。

特養もそうですが、ある程度大きな施設を運営するためには、経営母体である法人の力が必要になります。力のある法人は、その地域のある程度大規模な法人ということになりますので、給与体系が法人内で統一されています。もちろん部署ごとに違いはありますが、特養に比べても特定施設の給与体系は引けを取りません。

プラス、特定施設は独自の利用料金設定があるので、収益が他のサービスに比べて安定しやすいという利点があります。 元々の「軽費老人ホーム」「有料老人ホーム」などの家賃や光熱費。これは利用者が実費負担します。プラス「特定施設入所者生活介護」の介護保険利用料。2つとも月いくらと決まっているので、合わせての収入×人数で、月の利益予想が比較的簡単にできます。

加えて軽度者がある程度多い利点として、利用者(入居者)の入れ替わりが少ない、部屋が空く率が少ないという点があります。空きが少ないということは、それだけ満額に近い利益が毎月あるということです。

重度者が多い特養などでは、どうしても利用者の入院や逝去、あるいはショートステイ(短期間だけ泊まるサービス)の予定変更などで、毎月の「稼働率」がある程度変動します。特養ではこれを踏まえて経営を行う必要がありますが、特定施設の場合は変動が極端に少ないのです。

その理由は、軽度者が多いことに加え、「介護保険が適用されている、きちんとした施設」と、施設の評価自体が高く、入所待機者がある程度いるという面もあります。

待機者がいれば、入れ替わりの後迅速に次の利用者に入所してもらえます。特養でもこの動きはしますが、変動が多い分特定施設よりもすぐに対応しづらいのです。

元気なうちから入居できて、ある程度重度になっても面倒を見てくれる。そういう安心感もあり、特定施設の入居率は全国的に高い傾向があります。全国の平均でも85%以上と言われますが、私が住んでいる自治体ではほぼ100%です。

逆に一般的なケアハウス、有料老人ホームですが、特に有料老人ホームは設置基準が緩やかなこともあり、全国に乱立しています。その分「お客の取り合い」が発生していて、入居率100%近いところもあれば、50%程度でどうしようと悩んでいるところもあり、差が大きいのです。

大規模法人で有料老人ホームを経営しているところは、「他の部署で補えるから」経営しています。単独で運営しているところは、本当に死活問題です。削れるところは極限まで削って経営努力に励まれているところも多いと思いますが、その分給与面でも反映されてしまいます。

また特定施設には、元々綺麗に作ったケアハウスや老人ホームを特定施設に変えているところも多くあります。こういうところは、収益はもちろんですが、「法人の顔」としてさらに職員の給与、教育、その他待遇等に力を入れていますので、余計に介護士の給与体系が良くなるという、とても良い循環をしている法人も多くあります。

エッセンシャルワーカーとして評価が上がっている介護士ですが、こういう特定施設へ配置する介護士は、元々その法人内で礼節がきちんとしていたり、あるいはきちんとするように教育に力を入れている法人が多く、その分給与にもきちんと反映させています。

以上の点から、「特定施設入所者生活介護」を算定している施設をお勧めします。ただ、注意点が1つだけ。一般の施設、サービスに比べて、特定施設は少数派です。

一例として、私が住んでいる自治体では、特養9ヶ所、老健7件、デイサービス50件以上に対して、特定施設は3件。うち1件は今年できたばかりという状況です。待遇が良い分、職員の入れ替わりも少ないので、狙うとすればかなり狭き門、ということになります。

募集があればラッキー。なければ、特定施設を運営している法人へ就職。そういう法人は、特養を始めとして他のサービスも運営していることがほとんどなので、より待遇の良い特養などへの就職後、移動先として特定施設を希望しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。来年度から始まる新制度。これは十分に検討する価値があると思いませんか?

介護業界で働いている私としても、今回の制度には非常に期待をしています。介護業界の人員不足の背景に、介護士への悪いイメージが先行していることがありました。

これがこの数年で徐々に解消されている最中、今回エッセンシャルワーカーとして再評価されましたので、介護士はまさに追い風の最中にあります。
今、新型コロナウイルス流行で苦労している方が多数おられます。将来への転機として、この制度を活用して介護士として働いてみませんか?

この記事を書いた人

ひろ父
さん

建設業界で3年働くも挫折。帰郷し、新聞で「介護保険制度スタート」の記事を読み、一念発起して専門学校で介護福祉士資格を取得。老健施設で介護職として6年間勤務後、ケアマネジャーを取得しケアマネジメント業務へ。

経歴

  • 1998年4月~2000年3月:建設業界挫折後、福祉の専門学校に通う
  • 2000年4月~2010年3月:最初に働いた老健施設。ここで働く姿勢や考え方を学んだ
  • 2010年4月~2016年2月:異動や転職など、とにかく動きの多かった時期
  • 2016年3月~現在:居宅介護支援事業所のケアマネジャー

資格

  • 介護福祉士
  • 介護支援専門員
  • サービス提供責任者

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