専門職として誇り。「その人らしく生きる」を支援する、わたしの作業療法

現役PT・OT・STに話を聞く「深イイ話」

現役作業療法士の深イイ話

インタビュー実施日:2020年4月20日

現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。

プロフィール

4年制大学を卒業後、作業療法士免許を取得。田舎町にある、在宅医療・介護に力を入れている小さな診療所に就職し、12年目となる。

同一法人にて、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、介護療養型医療施設(現 介護医療院)、介護老人保健施設に従事し、在宅から施設、予防から看取りの現場を経験する。

慣れない管理職の仕事と、人手不足による過労が重なりバーンアウトを経験し、心身ともに健康な状態で働くことの大切さを思い知る。現在は、介護老人保健施設にてやりがいを感じながら勤務中。

作業療法士 mume1さん

あなたにとって作業療法士とは?

その人らしく生きる、を支援するプロフェッショナル。

病気や障害を負っても、これまでの人生を尊重し、これからどう生きていくかを一緒に考えていく、一人ひとりの人生に寄り添う専門職です。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2009年~2010年
    通所リハビリテーション勤務
    すべてがわからないことだらけで、無我夢中で働く。利用者からの信頼が厚く、よく相談されている介護士を見て、自分もいつか何でも話してもらえる作業療法士になりたいと思う。
  • 2011年
    訪問リハビリテーション勤務
    一人ひとりの利用者の生活に密着して支援できることに大変やりがいを感じる。
  • 2012年~2016年
    通所リハビリテーション現場と管理職、介護療養型医療施設兼務
    利用者のことだけを考えているわけにもいかず、私よりも歳もキャリアも長い介護職も含めてマネジメントすることをとても荷が重く感じる。さらに人手不足から、通所リハビリテーションの現場と管理者、介護療養型医療施設の兼務となり、心身ともに極限状態ではたらく。
  • 2017年
    転職を考える
    心身のストレスが限界を迎え、転職を考える。職場見学したところが大規模な法人であり、改めて現職場がいかに利用者と家族に近い存在でいられ、何かあれば自宅訪問したり、ゆっくりと話を伺ったり、臨機応変に対応できる恵まれた環境であるかに気づく。現職場での勤務継続を決める。
  • 2018年~2020年
    介護老人保健施設、介護医療院兼務
    長く経験してきた在宅を離れ、入所のみの現場となる。通所リハビリテーションで担当していた人と再会することもあり、住み慣れた地域で、最期までその人の生活を支えるということにやりがいを感じながら働いている。

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私はこんな作業療法士です。

私はこんな作業療法士です。

その人が、生き生きと望む生活を実現できるよう、全力で応援します。

そのためには、信頼関係の構築が不可欠と考えています。人の生活は人それぞれ、大切にしてきたことも千差万別です。

だからこそ、自分の価値観で判断するのではなく、一人ひとりのこれまでの人生を知り、どのような価値観を持っており、これからどう生きていきたいかを一緒に考えていきたいと思っています。

歳を重ねると、「もう年だから」「家族に迷惑をかけるから」とあきらめ、思いを閉じこめてしまう人が多いように感じます。病気や障害を負ったり、自宅を離れて施設での生活を余儀なくされたりすると、身体だけでなく、心にも大きなストレスを抱えることとなります。

リハビリテーションといえば、機能訓練というイメージを持っている人も多いかと思いますが、そのような状態のときに、私は無理に何かをしようとはしません。

最初は何もしなくても良い。そんな毎日を積み重ねる中で、少しずつ自分の中で折り合いを付け、再び前を向いて納得した人生を歩んでいってほしい。生活は、日々の営みの積み重ねにより形成されます。

その人の「やりたい」思いを引き出し、実現できる方法を考える。「やりたい」を実現し、「できた」という経験を積み重ねていく。経験の積み重ねによりその人らしさが見えてきて、さらなる「やりたい」思いが湧いてくる。この好循環を通して、誰かとつながり、その人らしく生きることにつながっていく。

この作業療法の力を利用して、一人ひとりのよりよい生活の実現に向けて尽力したいと思っています。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに作業療法士になったのでしょうか?

小学校4年生のとき、祖母の自宅介護をしたことがきっかけです。祖母は胃がんの末期で、口からものを食べることはできず、点滴をしながら自宅療養をしていました。

両親と祖母との4人暮らしでしたが、その頃は介護を支える社会資源も乏しく、父は単身赴任で、母は働きながら、私を育てながら、祖母の介護をしていました。

いつも見方でいてくれた大好きだった祖母に何もできなかったという思いがあり、将来は介護に携る仕事をしたいと強く思いました。

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他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

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編集部
編集部

作業療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

作業療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

微力ながら人のためになることができ、人の人生に関わることができることです。

私たちが出会うのは、病気や障害を負ったとき、施設に入所するときなど、人生の転機にある人たちです。新しい環境で新しい生活を再構築していく必要があり、これまでのように思い通りの生活ができなくなる不安を抱えています。

そのような人たちが、自分自身の状況に折り合いをつけて受け入れ、再び自分らしく生きていく過程に関われることは、大変やりがいあることだと感じています。

いろいろな人の考え方、生き様を目の前で見ることができ、生きるとはどういうことなのか、自分自身も成長させていただいていると感じています。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

急に足に力が入らなくなったと、施設に入所した体格の良い高齢の男性がいました。5年ほど前から徐々に歩行困難が進行し、入所したときは、起きることも立つこともできない状態でした。

その方の希望は「歩けるようになり家に帰りたい」とのこと。家族の希望は「身のまわりのことが自分でできなければ、自宅は無理」とのことでした。私は、自宅復帰に向けて、まずはできる限り身体機能を高めるとともに、起き上がりやトイレなど、身の回りのことが自立できるよう支援していくこととしました。

大変努力家な方で、弱音も吐かず懸命にリハビリテーションに励み、とうとう歩けるところまで回復しました。

ここで自宅での生活に向けて課題が出てきました。確かに歩くことはできる。しかし、不安定で転倒する危険もある。介護をする妻は小柄で、もし転倒したら起こすことは不可能です。

車椅子での生活を提案しますが、本人は「歩けるから大丈夫、転んでも妻に起こしてもらう」の一点張りです。

私は実際に一人で歩行してもらい、ケガをしない程度に転倒しそうになる経験や、転んだ場合を想定して、床に寝転んでいただき起き上がることができない経験していただきました。本来は、不適切なケアでしょう。

しかし、この方が妻と一緒に自宅で生活するためには、どうしても妻に頼らずに生活することを理解していただく必要があったのです。

この経験を通し、この方は「今までは、妻に何とかしてもらえばよいと思っていた。これからは、負担をかけないように、安全な方法で自分のことは自分でするようにしたい」と考えが変わり、車椅子ベースで自宅へ帰り、もう一度妻と生活することができました。

一人ひとり、家庭環境や生活状況は異なります。その人の望む生活を獲得するために、何がより良い選択肢であるのかを考えさせられた経験でした。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

大学で学んだことと、現場にギャップがありすぎて、困惑しました。作業療法とは、活動と参に焦点を当てて、その人らしい生活を支援することと学んできました。

通所リハビリテーションでの最初の経験は、平行棒を歩くよう励ましたり、足に重りをつけて筋力強化を支援したりと、身体機能訓練ばかりです。

だからといって、自分には作業療法実践の技術はなく、どうしたらよいかもわかりませんでした。

今となれば、身体機能維持が生活の中のできることに繋がることも納得できますが、作業療法とはいったい何なのか、当時は理解できず大変悩みました。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

利用者や家族にとって、何でも相談しやすい存在でいることです。そのためには、自分の価値観で判断するのではなく、相手の価値観を尊重し、利用者と同じ目線でいることが大切だと思っています。

作業療法士は「先生」と呼ばれることもあり、現場においては、介護をする側とされる側という構図になりやすく、利用者は弱い立場になりがちです。

利用者は、介護される人ではなく、生活者であり人生の大先輩であります。尊敬の思いを持ちながら、よりよい人生を歩むパートナーのような気持ちで関わるようにしています。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

これから何がやりたいということはありません。

おかれた環境で、出会った人たちとのご縁を大切に、自分にできることを精一杯行っていきたいと思います。

編集部
編集部

同じ作業療法士として働く方へメッセージをお願いします。

同じ作業療法士として働く方へメッセージをお願いします。

作業療法は、作業を通して健康と幸福に貢献する専門職です。

しかし現場では、作業を基盤とした実践よりも、身体機能に焦点を当てた実践を求められ、理解を得られにくいことも多くあると思います。

活動と参加に焦点を当て、その人の経験を積み重ねていく。その経験が学びや自信となり、また新たな作業に繋がっていく。

その繰り返しから人との結びつきが生まれ、生活が拡がり、その人らしい生活が実現されていきます。

この素晴らしい作業療法を一緒に実践している仲間が多くいることを心強く感じます。

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