理学・作業療法士として、本当のニーズに基づいたリハビリを提案する

現役PT・OT・STに話を聞く「深イイ話」

現役理学療法士の深イイ話

インタビュー実施日:2020年04月19日

現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。

プロフィール

高校を卒業後、作業療法士の専門学校に入学。卒業後、地元の精神科の病院に就職し精神科の作業療法士として4年間働く。退職後、オーストラリアへ留学、現地の精神科デイケアで働きながらコミュニティサービスワーカーの資格を取得する。現地のビジネスビザを取得しようとした矢先、家庭内事情により急遽帰国となる。

帰国後、精神科作業療法の求人がなくクリニックで外来リハ、デイケア、訪問リハを担当する。楽に歩けるようになりたいと話す患者さんや利用者さんも多く、独学での限界を感じ、専門的に理学療法を学びたいと感じ理学療法士の専門学校夜間部に入学する。在学中に介護支援専門員の資格を取得し、介護が必要な患者のアドバイザーとしても働く。

卒業後は、理学療法士および作業療法士として医療や介護、スポーツの分野にも携わる。現在は地域医療を担うクリニックのリハビリテーション部門の責任者として勤務する。

理学療法士・作業療法士 もしもしさん

あなたにとって理学療法士・作業療法士とは?

理学療法士はよく歩行の専門家と呼ばれます。患者さんや利用者さんの移動手段を確保することが最も重要な仕事だと思っている人も多くみられます。

しかし、本当にそうでしょうか。人は移動手段だけを目標にすることはほとんどありません。

「先祖のお墓参り行きたい」「遊園地に行きたい」「海外旅行で思う存分買い物して回りたい」などと、移動はあくまでも手段でしかありません。

私は患者さんに目標を設定する際に、移動手段を用いて行いたいことを必ず聞いています。

理学療法士の真骨頂は歩行や立ち上がりなどの基本動作を獲得した上で、その人の本当の望みに対してアプローチができることだと思います。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2000年~2004年
    精神科で作業療法士として4年間勤務
    専門学校卒業後、精神科の病院に勤務。精神科作業療法士として集団療法プログラムの作成・運営、院内行事の立案、各種学会発表などを経験する。
  • 2005年
    西オーストラリアにて精神科デイケアで半年勤務
    コミュニティサービスワーカーの専門学校での実習先でスカウトされて就職。現地の精神障碍者と密なコミュニケーションを取りながら、プログラム運営、カウンセリング業務に携わる。家庭内事情のため帰国となる。
  • 2005年~2007年
    診療所で作業療法士として2年勤務
    外来リハ、デイケアセンター、訪問リハに従事する。歩行をしっかりと診てほしいという患者さんや利用者さんが多く、様々なニーズに対応できるように理学療法士となることを決意する。
  • 2008年~2011年
    介護老人保健センターで作業療法士として3年半勤務
    理学療法士の専門学校から通学圏内の施設を選択。理学療法士のみの職場であったため、今まで行われていなかった集団療法部門を開設する。利用者さんのニーズに合わせたクラブ活動も創設し、自室で寝て過ごす利用者が激減した。理学療法士の臨床実習が始まるため退職する。
  • 2012年~2018年
    急性期病院にて理学療法士として6年間働く
    理学療法士の専門学校卒業後、理学療法士として勤務する。某大学病院のサテライト的役割を持った病院で、一般整形外科疾患をはじめ、ハンドセラピィやスポーツ外来も経験する。リハビリテーション部のチーフに任命され、介護施設の立ち上げにも関与する。しかし、残業時間が増え続け体も壊してしまう。
  • 2018年~現在
    地域医療を担うクリニックに転職
    地域住民に長年愛されている整形外科クリニックに転職する。クリニックで理学療法士として勤務する傍らで、市の役所とも協力し医療介護連携を推進する委員として講演や勉強会などを開催している。地域の代表として地域ケア会議等にも積極的に参加している。

私はこんな理学療法士・作業療法士です。

私はこんな理学療法士です。

私は理学療法士でもあり、作業療法士でもあるという変わった立場にいます。時々「理学療法士」と「作業療法士」との違いについて聞かれることがあります。よく理学療法は「足」作業療法は「手」のリハビリと言われ、また、理学療法士は「基本動作」、作業療法士は「ADL動作」の練習を行う人とも言われます。

しかし、私自身は両者の違いは「視点」の違いだと思っています。作業療法士は、患者さんや利用者さんの想いや訓練の内容を非常に重視し、理学療法士は科学的根拠に基づいた動作や結果に重きを置きます。

同じような治療を行っていても、見ているものがまるで違うことが度々見受けられます。

どちらが合っている、優れているのではなくてどちらも患者さんにとっては重要な要素となっています。

患者さんの気持ちに寄り添うことも、治療者として結果を出すこととも必要で、どちらが欠けてもよりよい治療に結び付けることはできません。

私は、理学療法士、作業療法士および介護支援専門員の資格を取得することで、より深く患者さんや利用者さんの気持ちに近づけたのではないかと思います。

資格を取ることは就職に有利なだけでなく、様々な視点を手に入れ、自分の懐を深くすることだと思っています。新しい視点を手に入れることで今まで見えなかったものも見えるようになってきました。

現在の私のモットーは、「患者さんの本当に望むことを理解し、しっかりと結果を出すこと」です。いくら患者さんの気持ちに寄り添ったとしても結果が出せなかったらリハビリをする意味がありませんし、患者さんの期待を裏切ることになります。

目標が達成できると、患者さんは本当にうれしそうな顔になり、その場で泣いてしまう人もいます。自己満足にならないように患者さんのニーズを正しく理解し、達成できるように結果を出すことが今の私のモチベーションとなっています。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに理学療法士・作業療法士になったのでしょうか?

デイケアなど介護の現場でリハビリを行っていると、「楽に歩けるようになりたい」と話す利用者さんがあまりにも多いことに驚きました。

利用者さんにとって理学療法士も作業療法士も明確な区別はなく、自分の生活を豊かにしてくれる人や運動をさせてくれる人と捉えている人が多いようでした。

もちろん歩行については学校でも習っており、それなりに知識もありましたが、歩行訓練を行う度に私の中で「本当にこれでいいのか」と疑問を感じるようになりました。

歩行関係の文献を多く購入し、毎日勉強してもその問いの答えは出てきません。作業療法士としての視点で歩行を見るのと、理学療法士の視点で歩行を見るのとでは決定的な違いがあると気づいたのはある歩行の研修会で、ある理学療法士の考え方を聞いた時でした。

その時に理学療法士としての視点を持ちたいという思いが生まれ、理学療法士を目指すことを決意しました。

他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

ケアマネと兼務する理学療法士が語る、介護分野でのリハビリテーションとは?
理学・作業療法士として、本当のニーズに基づいたリハビリを提案する
通所と訪問リハを兼務する理学療法士が語る、介護業界が求める理学療法士とは?
リハビリ病院で勤務する理学療法士が語る、リハビリのやりがいや苦悩について
新卒から大学病院12年勤務の理学療法士が語る、命と向き合い続けるべきワケとは?
編集部
編集部

理学療法士・作業療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

理学療法士となり、より結果を意識するようになって明らかに患者さんの満足度が増えたような気持ちがします。患者さんの目標を達成した時の笑顔が今の私の原動力にもなっています。

病院や診療所で働いていると様々な目標を持った患者さんが訪れます。その目標が何であれ、患者さんと一緒に目標達成のために頑張っているとお互いに連帯感が生まれてきます。患者さんの喜びや悲しみが直に伝わってきます。

患者さんと様々な想いを共有し、患者さんの変化を一番身近で感じられる素晴らしい職業だと感じています。特にずっと頑張ってきた目標が達成した時の患者さんのうれしそうな表情を目の当たりにすると感動して涙があふれてくることもあります。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

特に印象に残っている患者さんは、当時70歳代の女性で、大腿骨警部を骨折し入院した方です。骨折の程度が大きく人工骨董という人工の骨が挿入されました。

何よりもゴルフが好きな方でしたが、歩くことすら困難な状態でした。最初にお会いした時に目標を聞くと、「ゴルフがまた出来るようになりたい」と話されました。

もともと努力家の彼女は、ゴルフに復帰したい一心で厳しいリハビリにも泣き言一つ言わずに努力し、無事に退院となりました。その後も外来リハビリに通い、人工骨頭に負担をかけないスイングフォームの改善、そのフォームをマスターするために安定した下肢と大観の筋力・柔軟性強化にも取り組みました。

努力の甲斐があって無事にゴルフ復帰することができ、しかも入院前より飛距離まで伸びたとのことです。今でもその患者さんとは年賀状のやり取りをしています。その患者さんを通して、理学療法士として大切なことを教えてもらったような気がします。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

作業療法士としては、最初上司の言っていることが理解できず衝突してばかりいました。私のことを考えて敢えてきつい言葉をかけていたということを知ったのは仕事を辞めてからずいぶん経ってからでした。

理学療法士として働き始めたばかりに苦労したことは、すでに作業療法士として10年以上のキャリアを持っていたので、周囲が遠慮して私の間違いを指摘出来なかったことです。

間違っていてもそれが間違っていることすら気づけず、患者さんやスタッフに迷惑をかけてばかりでした。慣れてくるにつれ、同僚や先輩たちから注意をしてもらえるようになりました。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

私が患者さんと接するときに大切にしていることは礼節です。親しき中にも礼儀ありと言われるように、たとえ患者さんと親しい間柄となっても言葉遣いや態度は変えるべきではありません。

態度のゆるみは治療にも少なからず現れます。「あの患者さんなら許してくれるだろう」という甘えにもつながります。

セラピストの態度は他の患者さんも見ています。あまりにも砕けすぎた態度を取っていると他の患者さんにも不快感を与えてしまいます。

患者さんが砕けた態度を示しても必要以上に突別扱いせず、他の患者さんと同じような態度で接する、実は意外と難しかったりします。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

現在私が特に力を入れたいことは、後輩育成です。当院にも新人や後輩が増え、みなそれぞれの悩みと葛藤を持っています。職場環境を整え、彼らが働きやすく相談しやすい雰囲気に職場内部を変えていくことが中間管理職としての私の役割だと思っています。

また、状況に甘んじず必要であれば、変えていける強さを持ってほしいと思っています。そのためには私自身もアンテナを張り巡らし、彼らの話を拾っていきたいと思います。そうすることで私自身の成長にもつながると思います。

編集部
編集部

同じ理学療法士・作業療法士として働く方へメッセージをお願いします。

同じ理学療法士・作業療法士として働く方へメッセージをお願いします。

少子高齢化が進む現代社会において、理学療法士の役割はますます重要になってくると思います。自分に出来ること、多職種に任せた方がよいことを明確にして一人の患者さんのために精一杯取り組んでほしいと思います。

初めは失敗の連続で落ち込むことも多いと思いますが、諦めずやり続けていればきっと結果として現れてくるでしょう。私もまだ勉強中です。お互いに切磋琢磨して患者さんのために取り組んでいきましょう。

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