通所と訪問リハを兼務する理学療法士が語る、介護業界が求める理学療法士とは?

現役PT・OT・STに話を聞く「深イイ話」
※画像はイメージです。

現役理学療法士の深イイ話

インタビュー実施日:2020年04月27日

現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。

プロフィール

地元の理学療法士の大学に進学し、地元に就職した理学療法士です。現在は通所リハと訪問リハを兼務しています。

更に通所リハ内の送迎や食事介助、地域の体操教室に参加する等、様々な観点から理学療法に携わっています。

長年地元に住んでいたので公民館やスーパー等、地域の情報を把握しています。外出等の利用者のニーズを達成するには身体機能だけでなく、地域の生きた情報が大事です。地域に根ざした理学療法士を目指しています。

理学療法士 匿名のYさん

あなたにとって理学療法士とは?

高齢化社会に一石を投じる存在です。長生きは素晴らしい事ですが、本人がしたい事、やりがいを最後まで持ち続けてこその長生きです。

理学療法士は皆を笑顔にする仕事であり、今の日本に必要な仕事だと思います。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2008年〜2012年
    学生時代
    子どもの頃に祖父が脳梗塞で倒れ、リハビリを受けた事をきっかけに理学療法士と言う仕事を知りました。地元の理学療法士の大学に進学したものの、在学中は理学療法士が飽和している現状や、学業の多忙さから一度は別の学科に編入する事も検討しました。
    同時期に友人に誘われて、在学中に地域の高齢者を集い、パワーリハビリをする部活に入りました。そこで地域の関わりに興味を持ち、そのまま理学療法士になる事を決意します。
    在学中は実習や卒論もギリギリだったものの、無事に現役で卒業。国家試験にも合格し、理学療法士となりました。
  • 2013年〜2015年
    老人保健施設に就職
    地域理学療法の分野に興味を持ち、通所リハを併設した老人保健施設に就職。理学療法の勉強だけでなく、介護士や看護師等との連携の大事さを学びます。2年半程働いていましたが、人間関係の悩みから転職を決意。当施設では入所、通所のリハビリを回っています。
  • 2015年〜現在
    通所リハ医院に転職
    通所リハ医院に転職後、程なく前の職場の介護士と結婚しています。
    当事業所の業務は理学療法だけでありません。送迎や食事、排泄介助等、多岐に渡ります。この環境で理学療法士はリハビリだけでなく、日々の生活全てがリハビリである事を学びます。更に訪問リハの開設も決まり、通所リハと訪問リハを兼務する事となりました。

    現在は通所と訪問での理学療法、前述した通所内の送迎等の業務、地域の体操教室の参加、リハビリテーション会議の予定調整等、様々な業務を並行して行っています。

    理学療法士の仕事にやりがいを感じつつも、理学療法士の飽和問題や給与の伸び悩み等、学生時代に危惧していた悩みは解決していません。空いた時間に理学療法士としての勉強をしつつ、情報発信等のライターの仕事もしています。

私はこんな理学療法士です。

私はこんな理学療法士です。

利用者からは『明るい』『話しやすい』と言われます。元々は人前で話をするのは苦手でした。不意に話しかけられると今でも声が上ずってしまいます。

理学療法士は技術だけでなく、信頼関係の構築が大事です。『この人になら相談できる』と思っていただける為に、皆が話しかけてくれるような人になれるよう心がけています。

私生活ではあまり几帳面ではありませんが、先輩や同僚からは細かいところにまで気がつく人だと言われます。理学療法士は書類業務も多く、更に通所リハでは利用者や家族、医師やケアマネを交えたリハビリ会議を開催します。毎月30件程の予定を組みますが、家族や他の事業所と連携を取れるように細かく日程を調整しています。

家族と話をする時は分かりやすく、同職種とは理学療法の観点から話をする等、状況に合わせて対応をしています。そういう部分が几帳面と言われる部分ですね。

動作分析や家族への動作指導等、理学療法士には僅かな違和感も見逃さない視点が必要です。普段よりも歩幅が小さい、トイレ時の介助量が多い等、利用者の違和感に気づいて対策を立てる事もあります。

生活期の理学療法士は長期的に利用者と関わります。目標を達成出来る方もいますが、杖から歩行器へ、そして車椅子へと能力が低下する方もいます。そんな中で利用者や家族と向き合い、出来る事を探しています。

私は他職種と連携して、利用者とその家族が最後まで笑顔で過ごしていけるよう、頭をフル回転させているそんな理学療法士です。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに理学療法士になったのでしょうか?

1回目に志したのは小学4年の頃で、祖父が脳梗塞で倒れた事でした。祖父は右麻痺と失語症の後遺症が残り、リハビリを開始します。

祖父は少しずつ歩行距離が伸び、食事やトイレ等、出来ることが増えていきました。この時に理学療法士の仕事に興味を持ち、志すようになります。

2回目に決意を固めたのは10年後の大学2年の時。この間に理学療法士の養成校は増大し、少しずつ待遇が悪くなっていく事を知り、将来に不安を感じる事も増えました。一度はやめようと思ったのですが、祖父からエールを貰ったのです。

そしてパワーリハビリを地域の人達に提供する部活に参加。皆がとても熱心にリハビリに取り組み、沢山の感謝をいただいた事で、この仕事に賭けてみようと思ったのでした。

後に理学療法士となった事を祖父はとても喜んでくれ、目指して良かったと感じたのです。

他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

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編集部
編集部

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

自分の担当する利用者が、掲げた目標を達成した時です。リハビリが楽しいと話す利用者もいますが、中には疲労や痛みを伴い、辛いと感じる人もいます。何年もリハビリが必要なケースもあります。それでも利用者が頑張り続けるのは、達成したい目標があるからです。

理学療法士が携わるのはリハビリや環境調整等であり、最後まで頑張るのは利用者とその家族です。私達はその気持ちに働きかけ、潜在的に持つ力を引き出すだけに過ぎません。

ただその力を最大限に引き出すのは理学療法士としての責任であり、やりがいの根幹に関わる部分です。

目標の達成は利用者の努力の結晶であり、そのサポートに携われたという事が、私のやりがいに繋がっています。大変な事もありますが、利用者やその家族から『ありがとう』と言われた時に理学療法士になって良かったと心から感じます。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

50代で脳梗塞を患い、重度の右片麻痺発症した男性です。全般的に介助が必要で麻痺も強く、立ち上がりや移乗も痛みが強くありました。家族のリハビリへの希望は強いものの、入院中は本人のやる気はあまりありませんでした。

退院後に当事業所を利用。目標は家の中を杖で歩ける事。リハビリの他、歩行介助の方法を介護職員に指導。ズボンの上げ下ろしのスムーズな方法を介護士から教えていただく等、職域を活かして関わりました。

能力の改善はあるものの意欲はあまりなく、ケアマネや家族の意向により、環境を変える為に他の事業所に移りました。別の事業所では早々に利用中に車椅子を使わずに移動は杖に変更。どんどん能力が向上したのです。

やる気がないと思っていたのは私の主観であり、非常に申し訳ないと思いました。この経験をバネに、利用者のモチベーションを如何に上げるか、その為に自分に何が出来るかをとても考えるようになりました。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

各利用者の予後予測と、最初の評価です。私は新卒から老健という生活期の分野で働いていました。

最初の通所リハでは、退院後に在宅生活を始めた人、徐々に認知面や体力の低下が見られた人、既に何年も利用を続けている人と様々な背景の人がいました。『どの程度良くなりますか?』と退院後間もない利用者から問われた時に、言葉に詰まった事を覚えています。

理学療法ではメニューの立案以上に、何故その動作が出来ないのかを評価する事が大切です。筋力や関節可動域等の基本的な部分から、家族や自宅環境の確認を分かる範囲で評価を行なってこそ、利用者の予後予測やリハビリのメニューが立案出来ます。

働いて間もない間は、とにかく評価をみっちり行なっていました。少しずつですが、必要な評価や予後予測を立てられるようになりました。その経験が今に活かされています。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

歩ける、起き上がれる等の基本的な目標ではなく、具体的な目標を決める事です。利用者の皆様はそれぞれが違う生活背景を持ち、譲れないものがあります。

『料理』『買い物』『旅行』等、今まで生き甲斐にしていた事が出来るようになれば、どれだけ素晴らしい事でしょうか。

とは言え私は通所リハでは20人、訪問リハでは5人の担当がいるので、全ての利用者に具体的な目標を決めるのは難しい現状があります。

認知面の低下した利用者や、家族と折り合いが悪い利用者もいます。そんな時は利用時の会話、送迎時の家族とのやり取り、リハビリ会議等で、きっかけになる事を探しています。

具体的な目標を定めると本人だけでなく、通所リハの職員やケアマネ等、皆さんの共通目標もはっきりし、より連携が強まります。その人らしさを見つける為にも目標設定は大切にしています。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

地域の介護予防運動に積極的に参加して、健康寿命を延ばす事です。筋力や体力が低下し転倒して大腿骨頸部骨折になると、その後の生活だけでなく医療費も莫大です。

私達の市では町内ごとに体操教室等の様々な取り組みがされています。私も招かれる事があり、腰痛体操や転倒予防の体操等を伝達してきました。

体操がうまく出来ない、休みがちになった人等、転倒予備軍に気づく事があります。彼らは要支援要介護の区分でない事も多く、私の所属する通所や訪問リハの対象ではありません。地域包括支援センターの職員に状況を伝えています。

現状は通所や訪問の業務が忙しいので、そこまで手は回っていませんが、転倒予備軍の方々にも積極的に関わりたいです。私の法人は地域包括支援センターを抱えているので、実績を積んでから異動希望も考えています。

編集部
編集部

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

理学療法士はとてもやりがいのある仕事ですし、私も理学療法士になって良かったと考えています。しかし医療費が国を圧迫している現状や、理学療法士の数も増え続けている中、安定して定年まで勤められる仕事ではなくなりました。

お給料も30代を過ぎる頃から、他の職種に追い越されてしまいます。不安に感じている人も多いのではないでしょうか。

理学療法士が今後も必要とされるには、実績を残す事、そして職域を広げる事です。私はまだまだ実績を残すに至っておらず、日々勉強の毎日です。

『目の前の人を笑顔にする』のが理学療法士の仕事の根幹であるならば、それは病院や施設だけではないでしょう。

行政職や一般企業等、まだ働き手が少ない業種で、私達を必要とする人が必ずいます。『皆さんと理学療法士として頑張っていきたい』そう考えています。

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