「厳しいけど優しい」身体と心に寄り添う理学療法士が考えるベストな理学療法とは?

現役PT・OT・STに話を聞く「深イイ話」
※画像はイメージです。

現役理学療法士の深イイ話

インタビュー実施日:2020年5月13日

現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。

プロフィール

理学療法士12年目のyasuoです。30代の男性で二児の父です。

現在は整形外科クリニックに勤務しています。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当しています。また、入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行なっています。

プライベートでは元々身体を動かすのが好きでフットサルやマラソンをやっています。マラソンは5年以上続けていますが5kmや10kmの短距離の大会ばかりでした。しかし2019年に職場の仲間と初めてフルマラソンを完走しました。

その経験からさらにマラソンへの熱が高まりました。目標は30代のうちにサブスリー(フルマラソン3時間以内で完走)達成。かなり厳しいですが・・・。

他にも読書が好きです。職業柄医学書や論文は読みますが趣味として心理学やビジネス書なども読みます。理学療法士は患者さんとお話することはもちろん、医師や看護師など他職種とのコミュニケーションは必須です。そこでボキャブラリーが増えたり、理解力を深めたりする上で読書はすごく役に立ちます。

理学療法士 yasuoさん(ブログ運営:リハブロ

あなたにとって理学療法士とは?

人間力が試される職業です。

理学療法士は患者さんの疾患、症状だけでなく社会的な背景まで考えて治療・訓練を行い、動作回復を促します。

そのためには高い知識・技術、コミュニケーション能力が必要です。その人の人格も含めた全体像を捉える人間力が重要だからこそ難しくやりがいのある職業です。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2009~2013年
    一般病院
    理学療法士になって初めて勤務したのは内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院でした。
    1年目で回復期病棟の担当になり脳卒中や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを経験しました。わからない、慣れない、患者さんとも上手く話せない。思い出すとダメダメな1年目でした。
    3年目で一般病棟と外来に異動となりました。整形は手術もしている病院であったため急性期の患者さんを見ることができました。手術後で痛みや炎症が強い中で何を行うか、荷重制限しながら動作を計画的に作っていく過程を学びました。外来では高齢者だけでなく仕事をしている現役世代や主婦の方、学生さんなど様々な年代の方のニーズがあるに応える難しさを学びました。この経験が現在の整形外科クリニックに繋がっています。
  • 2013~2020年
    総合病院
    5年目で整形以外の急性期、特に脳血管障害や呼吸器疾患の患者さんを経験したいと思い急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院に転職しました。
    発症早期から心電図モニター、点滴、酸素、ドレーンなどたくさんの管で管理されている中でのリハビリを初めて経験することになり、何から手をつけてよいか途方暮れたこともありました。特に挿管されて人工呼吸器を装着した患者さんには身体に触ることさえ恐怖を覚えました。自分に足りない知識を再発見でき、リスク管理を改めて学ぶきっかけになりました。経験豊富な先輩と一緒に患者さんを診てもらい、理学療法士としても一人の人間としても成長できたと感じます。また、9年目で人工呼吸器や呼吸器疾患の知識をもっと深めたいと3学会合同呼吸療法認定士の資格を取得しました。
    ガン患者さんのリハビリにも携わり、残された時間が少なくできることが減っていく中で
    理学療法士として行えることは何か考える難しさも知りました。
  • 2020年~
    整形外科クリニック
    12年目で病床数19床の整形外科クリニックに転職しました。3回目の転職は学生時代に整形クリニックに実習に行ったことと繋がります。実習先では現役世代やスポーツ外傷の患者さんをみさせていただき、そこで出会った理学療法士の先生方がとにかく知識と技術の量が豊富で純粋にかっこいいと思ったのです。その経験が忘れられず私ももっとしっかり治療できる理学療法士になりたいと思い転職しました。
    転職したことで自分が経験したことのない疾患や年代の患者さんに携わることができ、理学療法士としての幅が広がりました
    現在の職場でも私より経験年数は少ないのに知識・技術が豊富で学ぶべきところがたくさんある理学療法士が多いので刺激があり向上心が高まります。

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私はこんな理学療法士です。

私はこんな理学療法士です。

私は患者さんからよく「先生は厳しいけど優しいね」なんて言われます。

特に厳しくしよう、優しくしようと意識しているわけではありません。でもこの言葉はなんとなく自分の中でも腑に落ちています。

優しさとは何か考えたときに「甘やかす」とは違います。

理学療法士は患者さんの人生の一部に関わる仕事です。医師の指示のもと理学療法を実施しますが内容の裁量は個々の理学療法士に委ねられることが多いです。どんな理学療法士にリハビリをしてもらうかで患者さんの回復は変わります。

人間だれしも楽をしたいもの。まして骨折して手術をした後や脳梗塞になった後のつらい時期になぜ無理して動かないといけないのか不満に思われる患者さんもいらっしゃるでしょう。

しかし、患者さんの動作を回復させるためにはつらい時期でも動かないといけない場合もあります。つらい時期に患者さんに協力していただくには信頼関係を築くことが重要です。そこで大事なのが説明です。

なぜ今この運動を行うのか、なぜ体重をかけてはいけないのか、なぜ安静にしていてはいけないのか。一つ一つ説明します。説明しながら理解を深めていただき少しずつ動作が回復してくると信頼関係が築けます。

そして、最終的に退院する時期になると「厳しいけど優しい」と言われます。厳しいと思うか優しいと思うかは患者さんそれぞれの感性で自由です。大事なのは患者さんの人生の一部に携わっているという自覚と責任をもって理学療法を提供できるかだと思います。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに理学療法士になったのでしょうか?

高校1年で友達に誘われてハンドボール部に入部しました。

ハンドボールは未経験で練習について行くだけでやっとでした。入部して3ヶ月ほど経ったときジャンプシュートして着地した際に膝がガクッとして激痛とともに動けなくなりました。すぐに病院に行ってMRIを撮り膝前十字靭帯断裂と診断されました。

膝の怪我が元でリハビリを受けることになり、そのことが理学療法士を知るキッカケになりました。

夏休みを利用して靭帯再建の手術をしました。手術後は今までにないほど膝が腫れて、松葉杖で歩くときに足を垂らすだけで膝が脈打つように痛かったです。荷重は許可されていましたが痛くて地面に足がつけられませんでした。このまま歩けなくなったらどうしようと不安が強くなりました。

担当の理学療法士さんはとても熱心で丁寧な説明と指導で私の不安を解消してくれました。その後は順調にリハビリに励み運動ができるまでに回復しました。

それまで全く医療系の仕事には興味はなかったのですが、この経験を活かして「私も理学療法士になりたい」と強く思い目指しました。

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他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

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編集部
編集部

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

歩けないところから歩けるようになって感謝されることにやり甲斐を感じます。

患者さんがよくなることでこちらも元気をもらえます。人と関わる仕事はたくさんありますが自分のしたことで相手が心から感謝してくれる、またそれをお互いに喜び合える職業は貴重に感じます。理学療法士になって良かったと思う瞬間です。

また最近では、少しずつに知識と技術が身についたことで家族や友人など身近な人のちょっとした不調もみられるようになってきました。

先日、妻が立ちっぱなしで忙しく仕事をしていたら「土踏まずが痛くなった」と言われました。そこで疲労した筋肉をマッサージとストレッチをして、アーチサポートのテーピングをしました。翌日の仕事は足が楽だったと感謝されました。

自分の持つ能力で身近な大切な人たちの不調もみられるのは理学療法士ならではだと思います。また家族からの感謝はなによりも励みになります。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

総合病院で勤務していたときにガン患者さんのリハビリにも携わっていました。私が担当していたのは手術ができて回復していく方ではなく、末期ガンで緩和ケアを中心としたガン患者さんでした。

回復して退院していくよりも悪くなっていく方が多いため患者さんとのコミュニケーションが非常に大事になります。言葉の一つ一つに注意を払って発言していました。

特に印象に残っているのは仕事を定年退職して、これから趣味の登山を楽しもうと考えていたところで脊柱の骨転移からガンが見つかった患者さんです。その方はいつも前向きにリハビリにも積極的に取り組んでいました。必ず登山できるまで回復するのだと・・・。

しかし、ガンが全身に広がり日に日に体力は低下しできることがなくなっていきました。理学療法士としてもできることが少なくなっていく中でお話だけはしっかり聞くように心がけました。身体だけでなく心もしっかり見られる理学療法士になりたいと強く思った経験でした。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

とにかく学校と臨床の違いを思い知らされました。自分で言うものなんですが私は学校の成績はよいほうでした。だから理学療法士として臨床に出てもなんとかやっていけるだろうと思っていました。

しかし、それがいかに甘かったかすぐに痛感しました。学校は国家試験の勉強をするところで、臨床で通用するには現場でしか学べない知識・技術・経験が必要だったのです。

何もかも手探りで患者さんの動作を改善させるために何がよくて、何がよくないかわからないまま苦悩する日々でした。

あってはならないことですが患者さんの歩行介助で転倒させてしまったことがあり、介助の仕方もわからないで専門職として報酬をもらっているのが恥ずかしくなりました。毎日失敗を繰り返しなんとか食らいついていったのが1年目でした。

また、私はコミュニケーションもあまり得意な方ではなかったので患者さんに問診するときも苦労したのを覚えています。読書をするようになったのも元々はコミュニケーション能力を上げたいからでした。今ではその甲斐あってコミュニケーションで悩むことは少なくなりました。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

患者さんのお話をよく聞くことです。自分の症状や訴えを適切に伝えるのは難しいものです。医療職者を前にすると緊張してしまう方もおられます。また患者さんの中には気を使って「こんなこと言っていいのかな」なんて思われる方もいます。

それを汲み取って本当の訴えや悩みを聞くことが大切です。そのために理学療法士が求められることは怪我や病気を見るのではなく、一人の人間として全体を見るという意識です。

実習のときにも指導者からよく言われる「全体像を把握する」ということです。自分でも自分がどんな人間か完全に把握することは難しい。

まして、他者の全体像の把握はさらに無理難題に思えます。そのヒントになるのがやはりたくさんお話をすることです。話すなかで全体像が少しずつ見えてきます。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

現在、整形クリニックに勤務する傍ら、副業としてブログやライターも少しずつ始めています。病院に来る患者さんそれは病院内に留まらず広く情報発信することで病院に来る患者さん以外でも不調を抱える方々に貢献したいと考えるためです。

さらにパラレルキャリアを積むことで収入面にも差が出ると考えます。

理学療法士は人の役に立てていると実感でき、やりがいもある素晴らしい職業です。また、将来的にも社会に必要な職業であり理学療法士をやめたいとは思いません。

しかし、収入面を見ると同じ医療職である看護師や検査技師よりも決して高くありません。

また動けない身体を動くように訓練していくため、介助量の多い患者さんを全介助で車椅子に移乗したり、自分よりも体重の重い人の歩行介助をしたりと肉体的にキツイ仕事です。年齢を重ねても同じように行えるか不安があります。

収入面、体力面を考えると今から様々な経験値を積むことが重要です。

編集部
編集部

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

理学療法士は医学の進歩とともに一生勉強が必要になる職業です。勉強して知識が増えるほど新たな疑問が生まれ、終わりがありません。でも終わりがないのは成長にも終わりがないということでもあります。

大変ですが知識・技術に伴って患者さんにできることも確実に増えます。少しでも患者さんを良くすることができると感謝されやり甲斐に繋がります。そしてまた学ぼうと意欲が湧きます。

何より「先生のおかげで楽になったよ」「歩けるようになって嬉しい、ありがとう」と感謝されるのはこの職業の醍醐味で、また頑張ろうという気持ちが強くなります。患者さんという人生の先輩から学ぶことはたくさんあります。

経験が浅い方は特にわからないことばかりでプレッシャーも大きいと思いますが、責任と誇りを持って仕事をしていただきたいと思います。

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