現役理学療法士の深イイ話
インタビュー実施日:2020年9月3日
現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。
理学療法士7年目のkoheiです。20代の男性で一児の父です。
理学療法専門学校卒業後は、整形外科クリニックに入職し、変形性疾患やスポーツ傷害のリハビリテーションを経験しました。その後リハビリテーション特化型デイサービスに施設長として転職しました。
整形外科クリニック入職後から、スポーツトレーナとして、学生からプロチーム、年代別の県代表などに帯同し、現在もスポーツ現場に関わっています。
小学生からサッカーを始め、高校生のときの怪我をきっかけに理学療法士という仕事を知り、志すきっかけとなりました。現在は趣味としてフットサルを楽しんでいます。
理学療法士 koheiさん
あなたにとって理学療法士とは?
私にとっての理学療法士とは「利用者にとって、生活の礎となるべきもの」です。利用者さんや家族の求めている課題に対し、専門職として機能訓練や適切な介護サービスの提案をする必要があり、臨床技術や知識だけでなく人間力が試される職業です。
病院ではコメディカルスタッフは医療的な知識を持っていますが、介護現場では職員と関わるときに、理学療法士の持つ医療的な知識を相手の立場に立ってわかりやすく伝えなければいけません。
利用者、利用者家族、介護職員に専門的な言葉や見解をそのまま伝えてしまっては上手く伝わりません。利用者の中には認知症の方もおり、医学的な知識を持ってコミュニケーションをとる必要もあります。
医学的な知識を持ち、相手の立場に伝えるという点では、高度なコミュニケーション能力が必要な仕事だと感じます。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 2010年~2013年理学療法専門学校時代理学療法士を志したきっかけがサッカーで怪我をしたこともあり、卒業後はスポーツ疾患に関わる理学療法士になりたいと思っていました。そのため、解剖学や整形外科などのスポーツ疾患に関わる講義は特に熱心に受講していました。
サークルにも所属し、サッカーサークルの部長として積極的に活動していました。また、小学生のときに所属していたクラブチームにアシスタントコーチとして関わらせてもらい専門学校でもスポーツ漬けの毎日でした。
実習先ではバイザーと意気投合し、実習後もバイザーが主催する勉強会へスタッフとして関わることで無料参加させてもらい、学生の頃から現場の理学療法士の考え方を知ることができました。 - 2013~2018年整形外科クリニックに就職学生時代から目標としていた、スポーツ疾患を多く受け入れている整形外科クリニックに就職しました。1年目は高齢者の変形性疾患を中心に対応していましたが、休日には高校生のサッカー部にアシスタントトレーナーとして先輩と一緒に帯同していました。
2年目からはスポーツ疾患も多く担当するようになり、ACL再建術や野球肘などのリハビリテーションも経験しています。
3年目からは高校のサッカー部でメイントレーナーとしてチームに帯同し、全国大会や年代別の県代表にも帯同しました。
また、母校の実習生をケースバイザーとして担当し、教育や指導にも関わっていました。5年目からはトレーナー活動にて新人の指導を担当し、後輩の育成に勤しんでいました。 - 2018年~現在リハビリテーション特化型デイサービスに転職卒業後もお世話になっていた実習先のバイザーが独立し、リハビリテーション特化型のデイサービスを立ち上げました。元バイザーからの熱心な勧誘もあり、デイサービスへの転職を決意しました。
転職後は施設長として勤務し、機能訓練指導員として利用者様の個別訓練を行うとともに、職員のマネジメントや請求などの事務作業も行っていました。
今までの整形外科クリニックでは体育会系の環境であったため、臨床で結果を出していれば後輩がついてきてくれましたが、介護施設では臨床の技術力だけでは有能性を感じて貰えず、苦悩の連続でした。
女性の介護職員が多いこともあり、とにかくコミュニケーションを積み重ね、目の前の様々な課題を解決していくことで、少しずつ介護職員との信頼関係を築くことができました。
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私はこんな理学療法士です。

利用者からは「話していると元気をもらうよ」「朗らかで話しやすいね」と言っていただけます。元々人と話すのが好きなため、利用者の家族のことや昔やっていた仕事のことなど話を聞くのが苦になりません。
優しい方やリハビリテーションに一生懸命な方ほど理学療法士に気を使ってしまい、はっきりとものを言えないケースも多いと感じます。
何気ない日常の会話に、患者や利用者が本当に求めている主訴や要望があると考えているので、問診として情報を聞き出すよりも雑談の中から生きた情報を聞き出そうと意識しています。

どのようなことをキッカケに理学療法士になったのでしょうか?
高校生のときにサッカーの試合中に怪我をしてしまいました。高校生活での最後の大会が差し迫っており、メンバーに入れるかギリギリだった私は焦りもあり、怪我をおして試合に出場しようとしていました。
そのときに担当理学療法士から「無理に復帰しても本来のパフォーマンスは出せないよ。状態を完全に戻して復帰した方が、自分のためにもチームのためにもなると思うよ」と諭してもらい、リハビリテーションも熱心に付き合ってくれました。
結果、無事に復帰した私は大会にも出場することができ、体のケアはもちろん、心のケアもできる理学療法士という職業に感銘を受けました。この経験が、理学療法士を志すきっかけとなりました。
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他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
私の親族が脳卒中で倒れ、片マヒが残ってしまいました。
その際に、入院中のリハビリテーションのアドバイスや予後についての話、退院後の回復期病棟の紹介やその後の介護保険利用の手続きについてなど、身内が本当に困っているときに、理学療法士として知っている知識や経験から手助けすることができました。
自分の身の回りの人が困っているときに手を差し伸べられることがセラピストなってよかったと思える瞬間でした。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
整形外科クリニックに勤めていたころ、帯同していたチームの3年生が全国大会の前に手術をするような大怪我をしてしまいました。
選手の最後の大会に出場したいとの思いを受け、術後から心肺機能を落とさないための患部外メニューを積極的に行い、リハビリテーション室に最後の2人になるまで残って励んでいました。ドクターとも協議し、何とか全国大会ギリギリで復帰ができましたが、スターティングメンバーは外されてしまいました。
全国大会では、後半1-0で負けている場面でその選手が出場し、得点をアシストする瞬間に震えるほど感動しました。結果試合にはPK戦で負けてしまいましたが、試合に出場し、チームにも貢献できたことで、選手が卒業するときに感謝の手紙を貰いました。
自分が関わったことで、患者や利用者の人生を左右するようなやりがいがある仕事だと感じた出来事でした。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
元々、コミュニケーション能力には自信があり、問診から患者の求めていることや目標設定はうまくいっていましたが、患者をより良くするための技術力が追い付いておらず、相手が求めている期限までに目標を達成できないことが多々ありました。
初めて入職したのが整形外科のクリニックということもあり、初回のリハビリテーションで結果を示せなければ、次回来院して頂けないことも多く、就職当初は予約がキャンセルになる度に落ち込んでいたのを覚えています。
技術力の向上には日々の積み重ねしかないと思い、先輩方にアドバイスを貰い、研修会への参加を繰り返すことで、少しずつ結果が出るようになり、患者の反応が変化することで、自身を持つことができました。

日頃から大切になさっていることはなんですか?
セラピストとして患者や利用者と関わる上で、自分が担当するメリットを感じて貰えるように意識しています。いくら高い技術を持っていても、患者や利用者が求める方向でなければ意味がありません。
技術や接遇、コミュニケーションも含め、全ての面で満足してもらえるような対応を意識しています。
理学療法士は医療保険や介護保険など、保険下で仕事をする場合、病院や自分で料金設定をすることができません。理学療法士1年目の新人が担当しても、20年目のベテランが担当しても患者や利用者が支払う料金は一緒です。
保険下で相手をみるということは大きな責任を伴うことだと考えています。

今後やりたい事や目標などありますか?
理学療法士として、目の前の患者や利用者のサポートをするだけでなく、情報発信を通して目の前以外の多くの人に気づきを与えることができると思います。
健康に対する情報や理学療法士や介護職員にできることなどを積極的に発信していきたいと思っています。
また、理学療法士は国家資格保有者にも関わらず、給与水準が低いと感じます。理学療法士の価値を高めるために情報発信をしていくのはもちろんですが、働いている病院や施設からの給与に収入を依存するのではなく、自分自身の価値を高める行動をしていきたいと思っています。

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

理学療法士として働いていく上で重要なことは、患者や利用者にとってなにが最適か考えることだと思います。理学療法士はどうしても患者や利用者のできないことに目を向けてしまい、できないことばかりを改善させようとしてしまうことも多いです。
それだけでなく、現在できていることをもっとできるようにすることや継続してできるようにすることも患者や利用者にとっては大切なことです。
多角的な視点で相手を捉え、リハビリテーションを提供し、一緒に目標を達成することが理学療法士にとって必要なことです。