急性期病院から生活期デイケアに飛び込んで見えた新しい私の働き方

現役PT・OT・STに話を聞く「深イイ話」
※画像はイメージです。

現役理学療法士の深イイ話

インタビュー実施日:2020年9月19日

現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。

プロフィール

理学療法士4年目のCHALです。20代後半のごく普通の理学療法士です。現在は内科クリニックに併設されているデイケアで勤務しています。介護認定を受けている方々の、身の回りにまつわる様々な問題を包括的にサポートしています。

身体機能に直接アプローチするだけでなく、一人一人の目標に合わせてADL・IADL、さらには環境に至るまで、幅広く手がけています。

元々体を動かすのが好きで、学生時代は長年バスケットボールをしており、インターハイや国体にも出場経験があります。怪我をきっかけにリタイアしましたが、その後しばらくは小学生が所属するミニバスケットボールクラブのコーチとして選手教育に携わっていました。

それと同時に、高体連の医科学会にも所属しテーピングや応急処置などを学んでいました。転職を機に、そちらは疎遠となってしまいましたが、現在は見る専門としてスポーツを楽しんでいます。

それに関連して、海外旅行も好きなので、旅行を兼ねて海外のプロバスケットボールリーグを現地まで観戦しに行った経験もあります。一人での海外旅行も経験し、言葉が十分に伝わらなくても、人と接することのできる楽しさや嬉しさ、さらには行動力や問題解決方法を学びました。このようなプライベートでの経験が、仕事にも生かされていると実感します。

理学療法士 CHALさん

あなたにとって理学療法士とは?

「目の前の患者さんは、必ず誰かにとってかけがえのない人」という、自分の座右の銘があります。仕事とは言え、他人相手にできることはその人のプロ意識に集約されると考えています。

私にとって理学療法士とは、その人の人生にとって何が一番幸せかを、その人の目線に最も近いところに立って考え、適切なサービスの選択から提案、そして提供ができることであると考えます。

試行錯誤を繰り返し、決してうまくいくことばかりではありませんが、他の職業ではなかなか感じ得ない達成感を味わえる職業だと思います。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2016~2018年
    急性期病院
    理学療法士になって初めて勤務したのは、病床数400床の2次救急を受け持つ急性期病院でした。学生の頃の実習先が大学病院であったこともあり、急性期病院への憧れが強かったため、希望する病院に就職が決まり喜んだのを覚えています。
    1年目は、新人教育担当のプリセプターとともに、半年間は整形疾患を、残りの半年間は脳神経系疾患の患者さんを担当しました。この一年を通して、骨折、人工関節置換術、脳梗塞、脳出血など、ある程度症例を絞って担当させていただきました。
    実際にリハビリを提供した患者さんの数は少なかったですが、文献を読んだり、新しい手技を学んだりと、とにかく疾患に対する知識を深める一年間となり、喰らいつくのに必死だったのを覚えています。そして、学生の頃に勉強したことはわずか一部分でしかないことを痛感させられました。
    2年目からは、神経内科や血液内科、糖尿病内科など内部疾患系の患者さんも合わせて担当させていただきました。そこで、血液内科の患者さんを担当することが徐々に増え、がんのリハビリテーションに興味を持ち、がんのリハビリテーション研修会に参加しました。そこでの経験を生かし、2年目の後半では担当患者さんの1/3ががんの患者さんとなりました。入院されているほとんどの患者さんは高齢者の方々でしたが、20〜40代の比較的若年層に該当する方のリハビリを行うこともあり、メンタルケア、ターミナルケアなど、今まで出会ったことのない問題に次々と直面しました。
    また、1年目では経験することの少なかった集中治療室でのリハビリも徐々に増えました。主に脳梗塞超急性期、心筋梗塞など循環器疾患の患者さんを担当しました。集中治療室でのリハビリは、心電図モニターや人工呼吸器、ドレーンやルート管理など、リハビリの傍それぞれのリスク管理を行うというマルチタスクの連続です。さらに、患者さんは意識のない方が多く、漠然と「怖い」「不安」という感情が常につきまといました。そういった感情を払拭しよう、自信を持ってここに立つのだと自分自身を鼓舞し、がむしゃらに勉強しました。
    この頃、この仕事をしていて初めて人の「死」に直面する機会がありました。昨日まであんなに元気に会話をしていた患者さんが急変し、一夜明けた今日にはすでに亡くなっていた…そんな経験を経て、改めて目の前の患者さんと過ごす時間がいかにかけがえのないものかを実感しました。
  • 2019~2020年
    クリニック併設のデイケア
    新卒で病院勤務を始めてからというもの、私には同期という存在がいません。40人前後の組織の中で仕事をしているうちに、自分の中の悩み事を誰にも相談できずにいました。それが積もり積もって、転職に踏み切ることになりました。
    転職に至った理由としては、自身のキャリアアップです。急性期病院での勤務中、何度か同じ患者さんの再入院があり、少し疑問に思いつつありました。病院から直接自宅に帰った人達は一体どのような生活をしていたのか?本当に切れ目のない医療なのか?急性期病院では立ち入れない部分を自分の目で確かめたかったのです。
    また、長期実習で病院併設のデイケアに行ったこととも関係し、生活期でもこんなに人の体は変えられるのだと非常に感銘を受けました。自分もそのように、人を変えてみたいと思ったのです。
    ここで勤務を初めてからもうすぐ2年が経とうとしていますが、最初の頃はとにかく急性期での知識をそのままぶつけてしまい、うまくいかないことばかりでした。しかし、今では一歩引いてその「人」を見ることができつつあるのではないかと自負しています。生活期のリハビリは、ICFの図に則り身体機能やADLのみだけでなく、環境や個人要素も包括的に考慮しなければならないため、そこに難しさを感じます。急性期病院とは全く新しい知識を学ぶきっかけとなり、刺激のある毎日を送っています。

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私はこんな理学療法士です。

私はこんな理学療法士です。

私は、経験年数相応のリハビリは提供することができますが、特別な手技がたくさん出来るセラピストではありません。患者さんとの良好な関係性を築くことや、コミュニケーション能力には比較的長けているのではないかと思います。

しかし、第一印象はあまり良い方ではありません。そのような自覚があるからこそ、言葉遣い、立ち居振る舞い、表情など人一倍配慮しています。

常に、私が患者さんの立場だったら嬉しいなと思うことは積極的に行動に移すようにしています。専門的な知識の提供はもちろんですが、このような些細な気配りも信頼関係を築くために必要ではないかと思います。

良好な関係の上に、科学的根拠に基づいたリハビリテーションを提供することができれば、効果は格段にアップすると考えます。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに理学療法士になったのでしょうか?

高校3年生の頃、私のバスケットボール人生において、まさにピークを迎えた頃でした。インターハイ出場をかけた予選で、アキレス腱を断裂。

インターハイへの切符はもちろんのこと、今まで積み上げて来た努力が水の泡になったと言っても過言ではありませんでした。緊急手術の後、理学療法士の方とのリハビリが開始され、復帰するまで6ヶ月間に渡りお世話になりました。

その方もスポーツ経験者であったこともあり、長いリハビリテーション期間の不安に対していろんな側面からサポートしていただきました。

さらに、私の所属するチームの帯同トレーナーとして加わって下さり、関係性はさらに深いものになりました。その頃、ちょうど進路を決める時期でもあり、「私もこんな理学療法士になりたい」と思い始めるようになりました。

もう一つは、私の母親が若くしてリウマチを患い、現在も手術を繰り返しています。そこで、いつか自分も何か力になりたいと考えていました。

今思うと、リハビリ職を志す前から関わる機会が多い職業であり、私もなるべくしてこの仕事に就いたのではないかと思えるようになりました。

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他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

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編集部
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理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

「人」を変えられたときに一番やり甲斐を感じます。一口に変えると言うと、仕事柄、その人の悪いところばかりを治そうとしてしまいます。もちろんそれが私たちの仕事なのですが、私はそれだけが全てではないと考えています。

今まで担当した患者さんの中で、治療成績が伸びやなむ患者さんがしばしばいました。現在4年目となり、様々な方向から物事を考えられるようになった今、全体像を捉えるということがいかに大切かを実感します。

学生時代の実習で、たまたま付かせてもらっていたセラピストの方に、「リハビリは人を変える仕事だからね」と言われたことがあります。

その日、ある患者さんが送迎中に事故に遭いそうになったと、気を動転させて来院されました。相当な恐怖だったのか手足が震え、冷や汗をかいた状態でのリハビリ開始となりました。

当時、実習生だった私は、当然その方のリハビリに入らせていただくことはできませんでしたが、とにかく安心してほしい一心で、手を握ってそばを離れませんでした。

すると、「この人のおかげで落ち着いたのよ」と言われ、セラピストの方に褒められたことを覚えています。当時は、その意味を深く理解できませんでしたが、つまりは、「その人が今望んでいることが何かを見極めることが大切である」ということが分かりました。

これは今でも常に頭の片隅に置いて、患者さんと向き合うようにしています。その人にとっての「痛い」は「話を聞いてほしい」かもしれない。「大丈夫」は「早く気づいてほしい」かもしれない。

私の手で変えることはもちろん、私の一言で人を変えられるということにやりがいを感じます。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

急性期病院で末期のがん患者さんを担当した時のことです。その方との関わりは、ICUで意識がない状態からの始まりでした。容体が安定して一般病棟に移ったまでは良かったが、比較的若年だったこともあり、がんの進行は瞬く間に全身に転移しました。

余命宣告も行われた上で、ご家族を含めその方を取り巻く医療スタッフ全員でカンファレンスを行いました。その方の希望は、「死ぬまでに一度家に帰りたい」ということでした。

そこで、私たちは帰るための方法を列挙し、優先順位の高いものからプログラムに取り入れました。座る時間を増やす、立つことに慣れる、そして歩く。ICUから離床に到るまで数ヶ月かかったため、ここからは毎日が余命との勝負でした。

そこで、その方が一言「できるなら自分の足で歩いて帰りたい」とおっしゃったのです。スタッフ全員でその目標を達成できるよう、ありとあらゆる方法を試しました。

結果的に、容体が安定せずストレッチャーのままご自宅に帰ることになってしまいましたが、ご家族との時間を自宅で過ごすことができました。その方と対面して交わした最後の言葉は、「家は最高だったよ」の一言でした。

その数日後、静かに息を引き取られましたが、私にとって忘れられない経験となりました。自分の無力さに落胆し、悔しさが何度も押し寄せましたが、この経験が一回り私を成長させてくれたのではないかと思います。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

勉強したこともない、ましてや聞いたことのない名前の症例が突如目の前に現れたことです。学生の頃のように、何日も調べる時間などありません。

その人に起こっている現象を評価することで精一杯でしたし、臨床では同時進行で治療まで行わなければならず、苦労した経験があります。

また、ベッドサイドでのリハビリを実施することが多く、比較的早い段階から一人で患者さんの元に向かうことも多かったため、現場で困ったことや疑問に思ったことをリアルタイムで聞くことができなかったのも辛かったです。その分、自分で調べる力も身につきましたが、やはり心細かったです。

意識のない方の離床に関わることも多く、体位変換や移乗の大変さを痛感しました。実習で関わる患者さんはほとんど車椅子に乗ることが出来る状態の方でしたので、臨床で初めて経験することになりました。

実際には、尿カテーテルや点滴などのリスク管理も同時に行わなければならず、手一杯だったのを覚えています。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

一人一人と関わる時間を大切にすることです。リハビリは、必ずしも楽しいことばかりではありません。故に、リハビリがしんどいものと認識されている方からは拒否されることもあります。

しかし、拒否されたから終わりにするのではなく、角度を変えてできることを探します。少しお話しすると自然に体が動いたり、意識が向いたりすることも多いです。そのため、しっかりとその人との会話の中で情報を集め、自分のことも知ってもらう。体に直接触れることの多い職業ですから、敵対心を取り払って初めてリハビリのスタートラインに立てると思っています。

その方の人生が左右する一関係者であることを忘れないよう、人間関係の構築には時間と労力を使うようにしています。

また、リハビリ職は、他の職種と比較して1対1の時間が密であるからか、家族も知り得ない話を聞くことも多いと思います。その些細な情報こそ、問題解決のきっかけであることも多々あります。

そのため、他職種への報告、連絡、相談はしすぎるぐらいにするよう心がけています。そうすることで、私では成し得ないことでも、他の職種からその方に還元されると考えるからです。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

現在勤務しているデイケアにはホームページがなく、見学などの際は実際に足を運んでいただく必要があります。ご家族の方やケアマネージャーさんのご協力があれば問題ありませんが、ネット上で簡単な情報収集ができればもう少しハードルが下がるのではないかと思います。

そのため、今後はインターネットでの情報発信を実現したいと考えています。施設の紹介だけでなく、簡単なホームエクササイズ、ブログで日常の出来事などを掲載することで、たくさんの方に情報を伝えられるのではないかと思います。

現在は、このコロナ渦ですので、オンラインツールを利用した集団体操など、遠隔でのリハビリもニーズが高まるのではないかと思います。

時間の制限、人数の制限など枠に捉われるものが減るため、そのメリットを活用して新しいリハビリのスタイルを確立したいです。

編集部
編集部

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

私は理学療法士4年目で、まだまだ一人前と呼ぶには程遠い、長くなるであろう理学療法士人生の途中です。

たった4年間の中でも、理学療法は様々な変遷をたどりました。医療保険や介護保険の見直しにも大きく左右される職業です。たくさんの医療職が働く中、理学療法士として出来る仕事は限られているかもしれませんが、働くフィールドは無限大だと考えています。

私が言える立場ではありませんが、お互いに自分を表現し、より良いリハビリ業界を築き上げて行きましょう。

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