未来への危機感から「行動する」理学療法士へ。入力と出力を繰り返す大切さ

現役PT・OT・STに話を聞く「深イイ話」

現役理学療法士の深イイ話

インタビュー実施日:2021年5月18日

現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。

プロフィール

理学療法士9年目のらふき(男性)です。山梨県内で新卒時点から介護業界で働き続け、通所系・訪問系・管理など様々な経験をし、現在はショートステイ併設の介護老人福祉施設に勤務しています。

主な仕事は、重度の要介護認定を受けている方々の生活の支援です。一人職場であるため、管理の仕事も多く、他職種との連携の難しさを感じ続けています。

理学療法士として業務に加え、新たに最近ではwebライティングやブログといった文字による発信活動を始めました。発信活動を開始したきっかけは、管理に携わる機会が多いことがきっかけとなっています。

趣味はダンスや読書です。趣味を含む毎日の生活の全てが仕事を含めた生き方に関連すると思い、日々試行錯誤しながら過ごしています。

理学療法士は、患者さん・利用者さんが理学療法を求めている場にいなければなかなか活躍できません。人が求めるモノを提供するからこそ、そこに価値が生まれると感じています。

管理に携わると、理学療法を求めていない方々と接する機会が多くなります。理学療法を含め、チームケアが真価を発揮するためには他職種の協力が必須といっても過言ではありません。そのために理学療法士としてだけでなく、人として成長し、魅力的な存在になることが大切なのだと日々感じています。

理学療法士 らふきさん

あなたにとって理学療法士とは?

患者さん・利用者さんと一緒に人生のひと時を並走する仕事だと思っています。専門職として仕事をする以上は、専門領域を学び続ける姿勢を持つのは当然のことです。

自分自身の人生を良いと感じることができるのは自分自身しかいません。同じように患者さん・利用者さんの人生を良くすることができるのはその人自身になります。

関わる人たちの人生のひと時を理学療法という価値を用いて豊かにしていく。深く、素敵な職業です。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2012年~2013年
    通所介護(デイサービス)で初のリハビリ業務
    理学療法士として初めて勤務したのは、就学していた大学関連施設の医療法人所属のデイサービスです。大学で所属していたゼミの先生の斡旋もあり、その医療法人に就職を決めました。
    医療サービス事業や介護サービス事業を多数行なっている法人であり、私はリハビリを主に行うような部署への配属がされると勝手に思い込んでいたのですが、私が初めて配属されたのはデイサービスでした。大学の授業や実習では、病院に関連する教育を主に受けており、介護業界のことをほとんど分からない状態で仕事をし始めることになります。
    しかし、希望をもって働き始めたにも関わらず、当時の私は介護業界で働くことになかなか前向きになれません。
    たしかに、介護士の方々と一緒に利用者さんと関わり、実習等で学んできた環境とは違った、生活に近い環境を経験できたことは貴重です。しかし、入職当時の自分では、理学療法士としての価値を利用者さんに提供することがなかなかできませんでした。利用者さんへ申し訳ないという気持ちが生まれると同時に、私も私自身の価値を感じられずに過ごしていました。
  • 2013年~2014年
    通所リハビリテーション(通所リハ)へ異動
    デイサービスで理学療法士の価値を上手く提供することができない私に下されたのは、2年目で異動という辞令でした。私は、成果を出せないことによる異動だと思い、落ち込んでいました。しかし、異動によって個別リハビリを主に行い、担当利用者を持つことができる環境で仕事をさせて頂くようになり、理学療法士として利用者さんと一対一で関わることができるようになったのです。
    「大学で勉強してきた理学療法士の環境」で大変ながらも納得しながら職務にあたることができ、多くのことを学ぶことができました。
    ここで、理学療法士という専門職におけるプロ意識がようやく芽生え始めます。その中で理学療法士の仕事の難しさを感じることが増えていきました。
  • 2014年~2016年
    再びデイサービス、そして中間管理職へ
    3年目で再びデイサービスに異動となります。再び、理学療法士として大勢の方を対象に集団リハビリテーションを行うことが中心になりました。しかし、今度は落ち込むことはありません。通所リハで学んだことにより、理学療法として成長でき、利用者さんに価値を提供できるようになっていたからです。
    そして自分の成長を実感しつつ、5年目に差し掛かったところで、上司から「中間管理職にならないか?」というお話を頂くことになります。私は、「5年目で管理職?」と驚愕して最初は断ることを考えていました。しかし、上司の励ましもあって中間管理職を受けることにしました。
    管理職としての業務は、理学療法士のスキルとは全く違う能力が求められます。私はそこでまた、どうしていいのか分からない状態になりました。誰かが管理を教えてくれるわけでもなく、理学療法士としてもまだ自信がかったということも一因だったでしょう。
    管理職を通して新たな学びは、他職種との指示や管理を含めた関わりの難しさでした。
  • 2016年~2018年
    訪問リハビリテーション中間管理職
    6年目~8年目の時代を訪問リハビリテーションの管理職として勤めました。訪問系の仕事が初めてであり、その業務を覚えるのと同時に管理を行なっていくのは非常に骨の折れることでした。
    他にも入職時から継続している研究に加え、行事、委員会などを管理することも増え、残業をする時間が更に増えました。
    そして、段々と体調を心配されることが増えます。仕事上で医者や看護師と関わることも増えました。往診やカンファレンスの調整に気を使い、自宅に帰ってからも仕事のことを考えるようになります。自分では気づいていませんでしたが、負担だったのかもしれません。
    しかし、医療と介護が深く連携をする環境の中で、医療専門職と触れ合うことで得られる学びが多くありました。その中で論文も良い評価を頂けるようになってきました。医療専門職の方々と信頼関係を作りながら仕事をし、理学療法士としての能力が非常に高まった時期だと感じています。最終的には体力面の悩みから、転職を決意しました。
  • 2018年~現在
    介護老人福祉施設部門管理(一人職場PT)
    元々、理学療法士のいない職場であり、理学療法士がほとんど認知されておらず、理学療法に価値を感じていない人たちが多い環境で働くことになりました。新たに驚きの経験をすることになります。
    理学療法が認知されていない環境では、連携を取ることが非常に難しくなるのです。また、勉強会等でエビデンス等の情報を交えながら話を進めても全く活用されないという状況に驚愕しました。
    他職種の方々も理学療法士をどう活かして良いのか分からないし、私の情報提供の価値も伝わらないという中で職務が始まったのです。
    私個人として、利用者さんに理学療法の価値提供をすることは大いにできるようになりました。集団リハビリであっても、個別リハビリであっても、その以外の書類管理や環境調整もある程度スムーズにこなせるように成長していました。
    初めてデイサービスに勤めた時に上手く価値提供ができなかったのは私自信の未熟さにあると改めて感じました。
    勤め先の介護老人福祉施設の入居者は、50人を超えます。また、ショートステイが併設されており、20人程度の利用者がいます。全ての方々の機能訓練を一人で担当するのが今の私です。
    この状況で、他職種の協力なくして効果的なリハビリテーションを行うのは非常に困難を伴います。私個人の力ではどうにもできない状況でした。しかし、理学療法士がほとんど知られていない環境では当然、信頼度も低いです。
    勤め始めた頃は、「理学療法を知ってもらおう」という気持ちで会社内勉強会を自主開催したりしていましたが、なかなか受け入れてもらえませんでした。その失敗から学び、徐々に「他職種を理解しよう」という気持ちに転換し、他職種の業務をできる範囲で手伝うことを増やしました。
    そうすると、徐々に意見を受け入れてくれるようになりました。理学療法士として私ではなく、私そのものが受けられてきたことによって、理学療法の価値を少し感じてもらえるようになったのです。その信頼度の高まりから、私の意見が通りやすい環境に変化していきました。今では、新しい委員会を立ち上げ、それまで無かった事業所内のマネジメントチームを率いています。
    マネジメントを行う中で、理学療法士のみでなく、専門領域の理解や多職種連携の重要性、管理のあり方や教育等、さまざまな取り組みを拙いながらも行なっている途中です。

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私はこんな理学療法士です。

私はこんな理学療法士です。

私は、「行動する理学療法士」です。私一人の力も理学療法という一要素の力も大きいものではありません。大きな力を生み出せるのは、いつだってチームです。同じ目的を持って行動する仲間がいて、初めて良いモノが生まれます。

自分は、「何かの一部」であるという感覚をもっていることを大切にしています。利用者さんの人生の一部であり、事業所の一部であり、チームの一部であるということです。

一部であるということは、全てに関連しているということになります。私の行動が、誰かの人生を、法人を、チームに影響を与える可能性があるのです。

私ひとりの力は非常に小さいです。大きな実績もなければ、高い能力があるわけでもありません。だからこそ、行動をします。考えているだけでは何も影響を与えません。

より良いチームになるような影響を与えられる存在になること。これが理学療法士にとっても、チームにとっても、利用者さんにとっても良いことです。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに理学療法士になったのでしょうか?

私の母親が介護職だったことから、理学療法士という職業を教えてくれました。それがキッカケです。

私は、高校時代に特に仕事に対して強くこだわりを持つことがありませんでした。ただ、母親の勧めに従って理学療法の道を目指しました。大学に入るまで、詳しく理学療法のことを知らない状態でした。

「そんな理由で」と思われることもあるかもしれません。しかし、母親を信頼して進んだ道に後悔はありません。大学時代の実習や新入職員時代を含め、辛いことはありました。しかし、今となっては理学療法士になって母親と同じ業界の仕事に関われて良かったと思っています。

私にとって大切なことは、私自身の想いでなく、家族の中だったり身近な人との関わりの中にいたりする自分であると、当時に何となく気づいていたのかもしれません。

人というのは、関係性で成り立っているものだとつくづく感じます。

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他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

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編集部
編集部

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

ある人の人生に関わることができるということにやり甲斐を感じられます。その関わりが、深くなりやすいのが理学療法士の魅力です。

仕事をする以上、どんな内容であっても誰かの人生に関わっていると思います。例えば、webライターであっても、コンビニの店員であっても、誰かに価値を提供し、人生の一部として関わっています。

理学療法士は、20分や40分とまとまった時間を患者・利用者さんと共に過ごします。しかも、病気やケガから立ち直る時であったり、自宅に帰ることを目指す時であったり、人生の最期を過ごす時であったりと重要な局面で関わりを持ちます。

これほどに幅広く人生の重大局面で関わりを持たせて頂ける仕事は、そう多くないのではないでしょうか。

関わる方の人生がより豊かになったり豊かに感じられたりするように努力することは、きっと自分の人生も豊かにすることにつながるでしょう。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

末期ガンの緩和ケアに関わる中で「人生の最期に寄り添う」という経験をしたことが印象に残っています。その経験が、理学療法士は、患者・利用者さんの人生の大切なひと時を共に過ごす存在だと強く感じさせてくれました。

その利用者さんは、ほとんど寝たきりの状態で病院を退院し、献身的な奥様と一緒に最期を自宅で過ごすと決めていた方でした。私は、緩和ケアを中心とした訪問リハビリで最後まで関わりをもち、葬儀にも出席させていただきました。奥様に感謝の言葉をいただいたことを覚えています。

緩和ケアを中心とした関わりの中で、リハビリをすることは大切だけれども、共に過ごしている時間こそが重要だと感じました。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

大学卒業後、すぐにデイサービス配属になり、集団を対象にリハビリを行う環境に対して、ほとんど個別リハビリの実習しか受けてこなかった私は「何をすれば良いか分からない」ことに恐怖を感じていました。リハビリをするよりも介護に携わる機会が多く、「なんのために理学療法士の資格をとって、今働いているのだろう」と辛くなる時もありました。

通所リハビリへ異動後、個別リハビリをする環境になれば、今度は理学療法士としての能力が足りないと自覚している中で利用者さんを担当することへのプレッシャーを感じるようになり、苦しくなりました。

しかし、苦労と感じる全ての原因は自分自身にあったのです。本当は、デイサービスであっても、理学療法士として力を発揮できる機会はあったはずでした。

たとえ、能力が足りなかったとしても、日々誠実に真摯に理学療法と目の前の利用者さんに向き合えば、その時にできることが見つけられたはずでした。

理学療法の本質を考える姿勢やプロフェッショナルの意識が足りていませんでした。技術や知識といった部分ではなく、心が未熟だったのだと思います。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

「サービスを提供する側と提供される側」といった関係以前に、「人と人」として関わっているという感覚を大切にしています。特に理学療法士として患者・利用者さんと関わる時間は、ある程度長くなることが少なくないでしょう。その時、単純に「サービス提供する側と提供される側」いう関係より深い関係性になりやすいです。

仕事上フォーマルな表現が必要でありながら、カジュアルな表現も必要になってくる場面が出てくる時があります。

だからこそ、患者・利用者さんとして関わるのではなく、「その人」として関わることが大切になってきます。そうすると、自然とプライベートに踏み込みすぎることもなく、かといって距離感が遠すぎることもない関係を探すことができます。

コミュニケーションにおいても、技術は大切です。しかし、心や考え方が根本にあってこそ活かすことができると思います。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

目標は、理学療法士・管理職として、介護業界にリハビリや管理、そして行動することの重要性が伝わるような活動をし、自身の務める事業所を含め、介護業界に価値提供できる存在になることです。

そのために、求める人へ価値提供をする活動を大事にしています。また、興味を持ってもらえるような存在になれるように、少しずつ成長できるように毎日を過ごすようにしています。

日々変化し続ける世の中です。新型コロナウイルスの蔓延によって、世界はまたたく間に変化しました。

日本は超高齢化社会になり、介護業界は業務改善に追われる時代に入りつつあります。厚生労働省も「業務改善の手引き」を介護業界に向けて発信しています。

世界は、常に変化し続けていて、私たちはそれに適応しながら生きていかなければなりません。しかし、介護業界の一部は、変化に取り掛かれていないであろうと感じる場面がありました。

老人福祉協議会研究総会で、論文発表者として参加した時のことです。開催回数が10回を超えており、10年以上活動している総会です。しかし、ほとんどの発表は、参考文献が全くなく、エビデンスや統計という要素が含まれない発表内容でした。参加者の中には、理学療法士を含めたリハビリ職の参加者はほとんどいません。

介護業界において、理学療法士の提供できる価値はまだまだ大いにあります。理学療法に価値があると感じてもらうようなことから始めなければならないこともあるでしょう。しかし、視野を広げて、より良いチームケアを考えられるような環境を作り上げていくことがきっとできるのではないかと感じています。

編集部
編集部

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

私は理学療法士の未来に危機感を抱きつつ、さまざまな行動を起こし始めています。それは、自分自身の成長のためです。リハビリと同じように入力と出力を繰り返すことで人は変化し、成長するのだと知っている理学療法士だからこそ、さまざまな出力が必要だと感じるのです。

危機感を抱く理由の一つに厚生労働省の見解があります。厚生労働省は、2040年頃にはリハビリ職の供給数が需要数の1.5倍になることを指摘していることは周知の事実でしょう。

つまり、理学療法士という資格の希少性は低下し、「資格を持っていれば安心」という時代は終わりを告げようとしているのです。

理学療法士は、素敵な職業です。

しかし、価値を高めるのは理学療法士という資格ではなくなってくるでしょう。付加価値を付けるには個人の能力が必要になってきます。

理学療法士のみでなく、日本全体が苦しい時代に突入しています。少子高齢化により医療費・介護費は国の財政を更に圧迫し、医療福祉サービスに割けるお金は減少していく可能性は否定できません。自分自身で生き抜く力を身につけなければならない時代が近いうちに訪れるかもしれません。

理学療法士としてプロフェッショナルであると同時に魅力のある存在になることが大切と感じます。まだまだ理学療法士が活躍できるステージは存在しているでしょう。

そして、理学療法士だからではなく、「あなただから」という存在になることが大事になってくるものと思います。私も道なかばです。適切な努力をして、関わる多くの人たちが豊かに過ごせるよう貢献していきたいと考えています。共に走る仲間が大勢いることを心強く思っています。

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