現役機能訓練指導員の深イイ話
インタビュー実施日:2021年9月15日
現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。
高校を卒業した後、柔道整復師の資格を取得できる専門学校に入学。
学校を卒業した後に、整形外科、接骨院と転職をしましたが、転職した先の接骨院はデイサービスも併設しているところでした。
機能特化型のデイで、利用者様が元気に動けるようになり、自分の好きなことが再びできる喜びに満ち溢れている姿を見て今後もデイサービスに携わりたいと思いました。
今は機能訓練指導員兼主任として現場に立ち、介護の魅力を語れるようにライターとしても活動しています。
機能訓練指導員 tubo1115さん
あなたにとって機能訓練指導員とは?
利用者様が今後も元気に過ごせるように利用者様の背中を後押しできる職業だと思います。
身体や運動を指導するだけでなく、その方がどのように生きてきたのかをリハビリの中で話を聞くので、人生観も垣間見えます。
激動の時代を生き抜いてきた方々ばかりなので、人生の辛さも沢山あります。しかし、楽しさについても教えてくれるので、私の考え方を色々と改めてくれる仕事が機能訓練指導員だと思います。
私のざっくり変遷記(職務経歴概略)
- 2008年4月~2015年3月柔道整復師の資格を取得柔道整復師の資格を取得し、沢山の症例に関わりたく整形外科に就職。
個人病院の整形外科リハビリテーション科に就職。骨折や脱臼の整復、治療の他に慢性期疾患の治療に携わります。毎日リハビリテーション科には300人の患者が来院し、スタッフ5人で対応していました。 - 2015年4月~2020年3月接骨院へ転職ここの職場で、介護の魅力に気づきました。
自由な治療を求めて接骨院に転職しました。ここの接骨院では、デイサービスもあり、午前午後それぞれ15名の方が利用する機能特化型のデイです。
朝はデイでマッサージや運動指導、その後は接骨院に戻りマッサージや治療を行いました。午後も同じ内容を行い、デイと接骨院合わせて1日1人で約100名近くの方を診ていました。
激務でしたが、整形外科では味わえない魅力がそこにはありました。
それはデイで頑張った方が元のように動けるぐらいまで回復し、好きなことができるようになった喜びの姿がありました。その姿を見たときに、デイで今後も頑張って行こうと決意しました。 - 2020年4月~デイサービスの機能訓練指導員現在は、グループで運営しているデイサービスで、機能訓練指導員として利用者様の運動指導に携わっています。
ただ運動指導をするだけでなく、その方がどのように生きてきたのかを聴取し、その方の人生観に合わせた運動指導を行っています。お互いに幸せに暮らしていける二人三脚の介護を目指し、日々奮闘している機能訓練指導員です。
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私はこんな機能訓練指導員です。

私はモノマネや冗談を言って相手を笑わせるのが好きな機能訓練指導員です。
笑いはどんな薬よりも体を元気にしてくれるものだと感じているからです。
笑いはお互いの心を開き、コミュニケーションを取れる一つの手段ではないでしょうか。
中には心を閉ざし、家の事情でやむを得ず利用している方もいます。
そのような方には、最初は笑顔で挨拶を行い、運動指導を通して少しずつお話を聞き心をオープンにできるようにしています。
そのような方から「ありがとう」と感謝の言葉を頂いたときに、この仕事をしていてよかったなと感じます。私も「ありがとう」と言うときもありますが、お互いにありがとうと言える関係性になれるように努めています。

どのようなことをキッカケに機能訓練指導員になったのでしょうか?
もともとは考古学者になろうと考えていたのですが、高校の社会体験という授業がありました。
授業内容は、興味がある仕事にアポを取り、1日密着取材をしなさいという内容です。
私がいたところは田舎だったので考古学に関する仕事がなく、部活の先輩に相談したところ、「介護はどう?」と言われたのがキッカケでした。
その先輩は作業療法士を目指していた方で、違う分野を見てみるのも悪くないかなという思いで介護施設にアポイントをとりました。
対応したのが柔道整復の資格を持つ方で、運動指導をしていました。
1日だけの体験でしたが、高齢者と楽しそうに会話をし、一緒に運動をして元の状態に戻れるように頑張っている姿を今でも覚えています。
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他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

機能訓練指導員になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?
機能訓練指導員になって良かったことは、些細なことでも利用者様から「ありがとう」という言葉を頂いたときです。
こちらは当たり前のことをしたつもりでも、利用者様にとっては、家ではこんなにしてもらうことはないと言っていたのを覚えています。
相手のことを思いやり、お互いに支えていくのが介護です。
支えていく過程の中で信頼関係も自然と芽生え、笑顔も増えていく。
その先にあるのが「ありがとう」という言葉ではないかなと思います。
この言葉があるからこそ仕事も頑張れるし、更に沢山の笑顔を作れるのでとてもやり甲斐も感じます。

印象に残っているご経験はどのようなことですか?
私は北国出身で、学校の関係で上京しました。
利用者様の中で同じ雪国出身で、子供と同居するために上京した女性がいました。
その方とは、同じ北国出身ということもあり、会話をするときは方言でよくお話をしていた記憶があります。
リハビリは元々好きな方ではないのですが、墓参りで戻れる足腰作りをしてほしいと頼まれ一緒に頑張っていました。
少しずつ動きもよくなっていき、いつもどおり「今日もありがとね。また明日ね。」という挨拶を最後にお別れをしました。
結果的には、その方はその日の夜自宅で心不全で亡くなりました。
この業界にいれば、突然亡くなるというケースは多々ありますが、同じ雪国同士で方言でお互いに励まし合っていたこともあり、余計印象に残っていたのかもしれません。
その方がいつも言っていたのは「私と同じ地方出身で寂しい思いをしている人がいると思う。その人に私と同じように接してあげてね」とよく言われました。
地方で一人暮らしは危ないからと子供がいる地域に引っ越して同居する人は数多くいます。
その方たちは友達もいない土地で寂しい思いをしているので、先程話した女性との会話やリハビリの中で得た経験を、他の方にも同じように接して温かみのある環境作りを意識しています。

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。
介護の世界を全く知らない状態で入った当初、リハビリをしようとしたところ、「お前にはやってもらいたくない」と言われたことがありました。
理由を聞くと、体を良くするために来ているのに、余計駄目になるかもしれないからと言われたのを覚えています。
確かに新人には触られたくないという思いは誰にでもありますよね。
月日がたてばそのようなことは無くなるのかもしれませんが、その言葉でめげるわけにはいかず、いかに利用者様に認めてもらえるか?ということを考え、技術だけでなく、挨拶も頻繁に行い、何気ないことも話しかけるように意識しました。
時間はかかりましたが、少しずつ信頼関係も築き、一緒にリハビリをしてくれるようになりました。
その時の思いを今も忘れず、積極的に話しかけ、相手の様子も感じ取れるようになっています。

日頃から大切になさっていることはなんですか?
日頃から大切にしていることは「挨拶」と「ちょっとした声がけ」です。
1つ目の挨拶では、目と目を合わせて挨拶をすることで、その人の健康管理状態もわかります。
認知症の方も挨拶をしっかり行うことで、とてもいい笑顔をしてくれます。
逆に軽い挨拶だと認知症の方はうんともすんとも言ってくれません。
それだけ挨拶は大切なことなのではないでしょうか。
2つ目のちょっとした声がけは、少し困った様子を行動や表情を見て感じたときに直ぐに声をかけることです。
常にアンテナを張り巡らせ、声がけを行うことで相手の安心感が生まれます。
このような安心感を常に与えられることでサービスの質も上がると考えています。
挨拶と声がけを徹底的に意識することで、どんな方でも対応できるようになりました。
この2つは今後も介護の世界で生きていく上で大切なものだと思います。

今後やりたい事や目標などありますか?
今後やりたいことは、機能訓練指導員として、今できなくなったことを昔のようにできることを一緒にリハビリを通してやっていきたいです。
そのように言う理由として、カート歩行だった方が杖歩行で散歩ができるようになり、とても喜んでいる姿を見たからです。
またライターとして、機能訓練でできなくなったことを再びできるようになった喜びを世の中に発信できるようにしたいと考えています。
介護に対する考え方は以前より良くなりましたが、まだ良く思っていない方も中にはいます。
そのような方にも介護や機能訓練の魅力や大事さを伝え、世の中全体が手と手を繋ぎコミュニケーションが取れる世の中になれればいいなと感じます。
実際に働いていて感じるのは、人間1人ではできることに限りがあるということを痛感します。
自分ができないことを、他の人にも手伝ってもらうことで、できるというのが大事なことなのではないでしょうか。
お互いの手と手を結び付けられる架け橋の一つとして、ライターで手助けできたらと思います。

同じ機能訓練指導員として働く方へメッセージをお願いします。

介護の世界は、自分がしたことがそのまま返ってくる世界です。
例えば、挨拶でも適当にしていると適当に返ってくる。
対応も適当だと、相手の反応も適当という具合にです。
しっかりと目と目を合わせ挨拶を行い、対応をすることで「ありがとう」という言葉を頂けます。
いろんな方から「ありがとう」といただける仕事は中々ないのではないでしょうか。
人対人なので、時には嫌になるときもあると思います。
そんなときもくじけずに頑張っていれば、心も成長し、自分が一回り大きくなったように感じます。
他の業界では味わうことができない介護の魅力を感じ取っていただければと思います。
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