在宅介護を経験したママ理学療法士が考えるリハビリテーションの形

現役PT・OT・STに話を聞く「深イイ話」

現役機能訓練指導員の深イイ話

インタビュー実施日:2021年9月29日

現役で働くリハビリ職のインタビューを通じ、医療介護従事者として働き続けるモチベーションの源泉に迫ります。周囲の考えに目を向けることで、この先にどうありたいか、自分の将来を考えるキッカケになれば幸いです。

プロフィール

理学療法士のゆみっぺです。中学生と小学生の母もやっています。育児で休んでいた時期が数年あるので、臨床経験としては15年くらいかと思います。現在は訪問看護で週4日、パートとして勤務しています。

担当している利用者さんは、要支援の方から要介護5の方まで幅広く担当させていただいています。特に私がいる事業所は神経難病の方や、終末期の方も多く訪問させていただいています。

理学療法の知識や全身状態の観察はもちろんのこと、本人家族との対話や多職種連携などコミュニケーションの部分を意識して日々の業務を行っています。

プライベートでは、基本インドア派のオタク気質です。映画が好きなので、子供が寝たら夫に留守番を頼んで、1人でレイトショーに行きます。スキマ時間を見つけては、漫画や小説を読んだりしていますね。

子供も成長してきたので、少しずつ自分の時間も持ちやすくなったかなと思います。

あとは、2021年の2月から犬を飼い始めました。その子が3人目の子供同然でほんとに可愛くて毎日癒されています。

訪問させていただいている利用者さんのお宅にも、自分と同じように子育てを経験された方や犬と生活されてる方もいて、共通の話題があると会話も楽しくなります。

理学療法士 ゆみっぺさん

あなたにとって理学療法士とは?

その人らしく、今を生きるためのお手伝いをすることだと思います。経験が浅い頃は、純粋に患者さんが良くなって退院していくことが嬉しく、やりがいを感じていました。

ですが、その一方で在宅復帰できない方や良くならない方も少なくないことを知りました。

私が小学生の頃、同世代の従兄弟を病気で亡くしました。そして、20代の時に祖母の在宅介護をして看取りました。

そういった経験から、心身の健康、病気やケガ、介護は、自分にとっても身近な問題であり、自分の人生にも確実に訪れるものだと意識するようになりました。

その人らしく今を生きるためにはどうすればよいか?を考えながら、利用者さんと日々接するようにしています。

すると、利用者さんとの関わりを通して、自分がどう生きたいかを考えるきっかけにもなるのです。

自分だったら、どんな人に支援してもらいたいか。自分の親をどんな人にお世話してもらいたか。

そういった視点をもつことで、セラピストとして得た経験が、自分の人生の中に溶け込んでいく感覚があります。

私にとって理学療法士は仕事でもあり、自分の人生や生き方を考えるための勉強でもあります。

私のざっくり変遷記(職務経歴概略)

  • 2002年~2006年
    総合病院に就職

    理学療法士としてはじめに就職したのは、地方の総合病院で、外来、急性期、回復期、慢性期と幅広く受け入れている病院でした。高齢者の方がほとんどで、脳卒中や大腿骨頸部骨折、圧迫骨折などの方が多かったです。

    また、特殊疾患療養病棟を持っている病院だったので、パーキンソン病やALSの方など、難病の方も1年目から多く担当させていただきました。田舎独特のゆるさというか、マイペースで面倒見が良くて、面白い患者さんが多かったです。孫のように接してくれたので、嬉しかったですね。

    3年目の時に、系列病院へ異動になりました。ほぼ立ち上げの状態で、主任として管理職も経験することになりました。自分の中では、こんなに早く管理職になるなんて思っていませんでしたし、どのように部署を回していけばいいのかもわからず手探りの毎日でした。

    今思えば、舐められてたまるか!みたいな気持ちがあったので、刺々しいオーラをまとっていたかもしれません・・・。がむしゃらに臨床と管理業務をこなしていましたね。21時まで残業とか当たり前でした。

    2年程勤務した頃、プライベートではパートナーと遠距離恋愛になってしまいました。交際期間も長くなっていたので、結婚するか?別れるか?という両極端の選択を迫られることになりました。

    私は結婚して子供が欲しという気持ちがずっとあったので、退職して結婚することに決めたのです。

  • 2007年
    結婚、祖母の在宅介護

    私が結婚する少し前から祖母の体調が悪くなっていたので、実の娘である私の母が引き取って在宅介護することにしたのです。

    私もすぐには就職せず、週末は実家に戻って祖母の介護をサポートすることにしました。

    リハビリ職として働いてきたのだから、役に立てるだろうと張り切っていましたが、いざ在宅介護がはじまると想像以上の大変さで、自分が臨床で経験してきたことが全く活かせなかったのです。

    約6か月の在宅介護を経て祖母を看取りました。この経験から、次は訪問リハビリに携わって在宅介護に関わりたいと強く思いました。

  • 2008年~現在
    訪問看護ステーションに勤務

    結婚後は、現在も勤務している訪問看護ステーションに、パートとして就職しました。2人の子供を授かり、仕事と育児を両立しながら、現在も働いています。

    在宅に携わるようになって大切だと感じることは、コミュニケーションと利用者様とご家族の両方の生活を支えるということです。身体状況の説明やアドバイスなど日頃多く対話をする相手は、家族や他職種です。介護職やケアマネなど医療職ではないスタッフも多くいます。

    例えば、「痙性麻痺」「弛緩性麻痺」などという言葉を使っても、どう違うのかあまり理解されません。いかにわかりやすく言葉で伝えるかを考えなければなりませんでした。

    これは、プライベートで子供にも理解できるよう説明することを日々行っていたことが、仕事にも活かせたかなと思います。そして、自分が祖母の介護で感じていた、家族を支えることの大切さも改めて感じました。

    当事者であるご本人を支えるのはもちろんのことですが、介護を担っている家族をいかに孤独にさせないか、しんどい疲れたと弱音をはける環境を作ることだと感じています。

    そのためには、傾聴やコミュニケーションのスキルも必要になってきます。また、在宅介護において日常生活の基盤は、食事・排泄・睡眠・清潔です。それらが安定していないと、運動だ訓練だとやろうとしてもうまくいきません。

    ご家族の意向を聞き、他職種と連携しながら、まずは食事・排泄・清潔に伴う動作の検討や、介護負担を軽減できる環境設定・介助のアドバイスを最優先に考えるようにしています。その上で身体機能の維持や改善に向けてのトレーニングを組み立てています。

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私はこんな理学療法士です。

私はこんな理学療法士です。

私はよく友人セラピストや同僚の看護師からPTっぽくないねといわれます。利用者さんの内面や性格から、対応を考えたりすることが好きなので、OTさんっぽいとか言われます。

それは、下の娘が発達障害の診断を受けていることも影響していると思います。今も騒がしい場所や集団行動が苦手なので、先生に配慮していただきながら学校に行っています。

娘の振る舞いは、一見すると「問題児」です。しかし周囲の理解を深め、対応を工夫すれば、娘の行動も変わってきます。

認知症の方や対応が難しいと言われている方も、問題行動にみえることがあります。しかし、本人の中には独自の感じ方やこだわり、考えや想いがあっての行動だったりすることもあるのです。

その人が感じている世界観を大切にしながら接するようにしています。

編集部
編集部

どのようなことをキッカケに理学療法士になったのでしょうか?

実家の向かいに住んでいた近所のおばあちゃんが認知症でした。1人で歩いて外に出てしまうので、娘さんはご近所さん達に道に迷っていたら助けてやって欲しいと話していました。

私もそのおばあちゃんと会うとお話したり、一緒に帰ったりしていました。

数分前のことも忘れていますし、私と会っても同じ話を何回もするんですよね。でもなんだかかわいらしいなぁと感じて、将来は高齢の方と接する仕事もいいなぁと思うようになりました。

そして、私が小学校5年生の時に、祖母が交通事故にあって大腿骨頸部骨折の手術を受けました。歩けるようになっても杖が手放せないと言われていましたが、最終的には独歩できるまで良くなり、ひとり暮らしに戻ることができました。

付き添いで近所の整形外科に一緒に通っていて、その時にリハビリの仕事を知りました。

高校の進路指導で、介護として関わる道とリハビリテーションの専門家として関わる道があると教えてもらいました。当時はまだリハビリ職が不足していると言われていた時代でしたし、身体の仕組みにも興味があったので、理学療法士目指すことにしました。

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他にも、やり甲斐や誇りを持って働く人がいます

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編集部
編集部

理学療法士になって良かったこと、やり甲斐は何ですか?

やはり、患者さんや利用者さんが良くなることや笑顔で日常生活を送ってくれると嬉しいですね。

あとは、ご家族さんに「気持ちが楽になりました。」とか、「介助が楽になりました、教えてもらってよかった。」と言っていただけるとやりがいを感じますね。

私は人見知りで内向的な性格です。訪問リハビリの依頼してこられる方の中にも内向的な方がいらっしゃって、人が集まるようなデイサービスは苦手で・・・という方もいらっしゃいます。自分が内向的だから、その気持ちがちょっとわかるのです。

世間一般の意見としては、子供だったら、元気よく外で遊びましょう!って言われますし、高齢の方だと引きこもってないで、外に出ましょう!っていわれるじゃないですか。

色んな方と交流を持つことはとても大事なことですが、1人でマイペースに過ごしたい子供や高齢の方もいるはずなのです。

訪問リハビリだったら、人が集まる場所が苦手な人手も、マイペースに運動できる環境をつくることができますよね。

若い頃は自分の内向的な性格が嫌だったのですが、今は内向的な性格だからこそ見えてくるものがあるので、自分の性格を素直に受け入れることができるようになりました。

編集部
編集部

印象に残っているご経験はどのようなことですか?

祖母を在宅介護したことです。祖母は重度の糖尿病と糖尿病性腎症を患っていました。長年患っていたこともあり、コントロールがうまくいかず、体調も安定しませんでした。

少し運動しようと離床させても、血圧が乱高下して起立性低血圧を起こしたり、低血糖を起こしたりして頻回に意識消失を起こしていました。そして、透析も始めることになり、倦怠感からか食事量も減ってしまって、みるみるうちに寝たきりになってしまったのです。

食事の管理、インスリン注射、血糖測定、食欲不振、便秘、透析の送迎・・・もうやること悩むことが多すぎて、母も疲弊していました。

しかし、母は責任感が強く人に任せるのは申しわけないと、介護サービスをあまり使おうとしませんでした。母は介護ストレスから、祖母に暴言を吐くようになったのです。

病院にいた頃は、退院することがゴールだと思っていた私は、在宅介護の大変さを身にしみて感じました。

体調が不安定で、いつ息が止まるかもわからない祖母。
介護ストレスでギリギリの精神状態で介護している母。

祖母も母も助けられない自分が、情けなくて悔しくてたまりませんでした。そして、約半年の在宅介護生活を続け、祖母を看取りました。

もっとフィジカルアセスメントができていたら
介護保険の制度を知っていたら
母をうまく説得して負担を軽減できていたら

あの時感じた悔しい気持ちを胸に、介護をされる側と介護をする側の両方の支援ができるようになりたいと思いました。理学療法士を目指したきっかけも、訪問リハビリをやりたいと思ったのも祖母の存在があったからです。本当に感謝しています。

編集部
編集部

仕事に就かれた当初苦労されたことなどありましたらお願いします。

当時はまだ理学療法士の人数自体が多くなかったので、とにかく朝から晩まで忙しくて余裕がないという感じでした。

しかも、地方に建てられた病院で、リハビリが受けられる病院があまりなかったこともあり、外来患者さんも多かったです。あまり良い表現ではないですが、流れ作業みたいになってしまっているような気がしていました。

自分の技術も未熟だし、患者さんとじっくり向き合えていないのではないかと悩みましたね。

あとは経験年数が浅いうちに管理職になったことは、いい経験になりましたが、正直とても苦労しました。

異動先の病院は、元々は別法人の病院で、後から同じ傘下に入ったという経緯がありました。ですので、半分以上のスタッフが以前の体制から残っているスタッフだったのです。

そういう状況で、ぽっと表れた20代前半の若い娘が主任として配属される・・・。

医療介護業界では珍しいことではないかもしれませんが、リハビリテーション科の後輩や部下にあたる人の大半が自分より年上だったのです。

体制を整えるためには、年上だろうがハッキリと言わなければいけないこともあります。ベテランのスタッフさんにめちゃくちゃ文句言われて、トイレでこっそり泣いたことが何回もありました。

やっぱり、新しい体制になじめなくて、辞めてしまった人もいたし、信頼関係がうまく築けたスタッフもいました。

学校を出て臨床しか知らなかったので、マネジメントに関しては、本当に苦労しました。

これからの人達には、マネジメントを学ぶ機会がしっかりあるといいなと思います。

編集部
編集部

日頃から大切になさっていることはなんですか?

「頑張ってください」と言わないことです。仏教では、この世に生きることは苦に満ちているという教えがあるそうです。病気やケガ、お金、人間関係…色んな不安と戦い、色んな感情に振り回される・・・。

この世に生きているということは、それだけでもうすでに頑張っていると思うのです。

だから私は「いつも頑張ってくれていますね。ありがとうございます。」と声をかけるようにしています。

もうひとつ大切にしていることは、利用者さんやご家族の良いところをみつけて、言葉にして伝えることです。

医療職はどうしても問題思考型になりがちです。問題点を指摘されてばかりでは、自己肯定感が下がってしまいます。

苦しいことも多い現実の中で、生きる勇気を少しでも持ってもらえるといいなと思っています。

編集部
編集部

今後やりたい事や目標などありますか?

認知症医療の第一人者である長谷川和夫先生は、ご自身も認知症になったことを公表されました。自らの姿を見せることで、認知症とは何かを伝えたいとおっしゃっており、その姿にとても感銘を受けました。

私は将来、自分や自分の親しい家族が医療や介護を受ける立場になった時に、何を考えどう思うのかを、発信していきたいと思っています。

もし、自分の親を介護するようになった時に、祖母の介護で感じた悔しさや無力さは、訪問リハビリの経験を得てどう変化しているのか。

そういったことを理学療法士として働いてきた自分を通して、発信できたらなと考えています。

ですので、今はWebライティングなど情報発信をするためのスキルを学んでいます。

編集部
編集部

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

同じ理学療法士として働く方へメッセージをお願いします。

近年、理学療法士の数も増えて給料が低いとか、将来が不安だとかネガティブな意見をよく耳にするようになりました。

理学療法士は、患者さんや利用者さんの人生をよりよくするためのお手伝いができる素晴らしい仕事だと思っています。将来性のない仕事だなんてと思ったことは一度もありません。

リハビリテーションの概念や知識は、形を変えていろんな分野で活かせると思うのです。直接患者さんに触れることだけが、リハビリテーションではないと思います。

もしかしたら、通りすがりにかけた一言が、患者さんに生きる勇気を与えるかもしれないのです。

ですので、基礎である臨床の知識や技術は日々学びながら、それ以外にも広い視点を持っていろんな知識を学んでいって欲しいと思います。

そうすることで思いがけないものとかけ合わされ、新しいリハビリテーションの形が産まれるのではないかと思っています。

それと、自分を大切にしてください。自分自身が心身の共に健康で幸せでなければ、目の前の患者さんや利用者さんを幸せにすることはできません。

自分のライフステージも大切に考えながら、より自分に合った働き方を見つけていって欲しいと思います。

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