
デイサービスで中間管理職になるとしたら、どんなスキルや価値観が求められるのだろう。中間管理職になると、さまざまな職種との関わりも含めてマネジメントしなければならないのだろうか。デイサービスでの中間管理職になる上で、求められる要素について知りたい。
デイサービスで管理職に就いたは良いが、どのようにスキルを磨いて、どのような価値観でマネジメントしていけば良いのか、情報も少なく悩む方もいるでしょう。
デイサービスの中間管理職として重要な能力は、マネジメントスキル・情報精査スキル・システム作りのスキルになるではないでしょうか。
管理職において大切とされるスキルは幅広く、個人の思想によって重要なポイントは変わります。デイサービスという多数の専門職が協働する環境において重要だと考えられるものを、今回はピックアップしました。
デイサービスの管理職の経験を持つ私の実体験を交えつつ、その立場に求められるスキルや価値観について解説します。
- デイサービスにおけるマネジメントスキル
- 他職種協働環境での教育の難しさ
- 標準化のメリットと弊害
デイサービスの中間管理職に求められるスキル3選
デイサービスは、専門職が協働する環境になります。
管理者は、セルフマネジメントスキルは勿論のこと、多数の専門職の仕事をマネジメントしなければならない立場になり得るでしょう。
個人の能力だけでなく、教育の背景が違う方々をまとめるのは難しいことです。情報を適切に判断した上でマネジメントをしていくスキルが求められるでしょう。
その①:マネジメントスキル
デイサービスの仕事は多岐にわたります。急遽、トラブルが発生した場合などに管理者が対応できないという状況をなるべく避ける必要があるでしょう。そのため、管理者は自らの時間的余裕を作り出すセルフマネジメントが重要になります。
また、自身が管理者であっても、組織をマネジメントし、適切に教育された職員がいることによってトラブルを回避しやすい環境を作るという対策も良いでしょう。
セルフマネジメントをし、管理者が業務に追われて動けないという状況を避けつつ、職員をマネジメントし、質の高いサービス提供を心がけるという価値観を共有することが大切になります。
セルフマネジメントと職員のマネジメントによって、管理者の固定業務がある程度コントロールできている環境になれば、『権限の譲渡』をすることによって、より組織が安定しやすくなるでしょう。
副管理者というポジションを設け、可能な範囲で『権限を譲渡』することで、管理者の責任を分散でき、管理者不在時の対応もスムーズになります。
権限を譲渡するのであれば、価値観をすり合わせ、適切な能力を持った職員を育てる必要があるでしょう。
セルフマネジメントをした上で、組織や職員をマネジメントするスキルが重要になるのです。
その②:情報精査スキル
管理者であれば、トラブルなどが起きた場合に限らず、職員から現場の状況を聞くという場面は多々あるでしょう。重要なのは、それが『二次情報』であり情報の信頼度がどの程度なのかを精査する必要性があるということです。
『二次情報』とは、直接的に自分自身が体験して得た情報ではなく、他人を介して得た情報のことを指します。
他人から得た情報の場合、事実情報のみが得られるとは限りません。意図的に情報を捻じ曲げてしまったり、個人の意見や予測を事実のように話したりする人もいるのです。
間違った『二次情報』を信じてしまうと、間違った判断をしてしまう可能性があります。
得られた情報が事実なのか、意見なのか、情報を集めて適切に判断していく必要があるでしょう。
また、管理者の専門外の専門職領域については判断しにくい分野が存在します。そのような分野においても適切な情報精査が必要になるのです。1つの視点からの情報のみで判断するのではなく、さまざまな視点からの情報を集めて判断してくことが大切になるのでないでしょうか。
その③:システムを作るスキル
人の能力に頼り、属人化するのではなく、システムをうまく活用して標準化するスキルが大切になります。
属人化とは、特定の限られた人が業務担当者となり、担当者以外に業務の内容が把握できていない状態を指します。
人を育て、成長をするまでには時間がかかります。中間管理職が人事を担当していないのであれば、さまざまな人材が部下になる可能性があるでしょう。
人を育て、より優秀な人材に成長していくことで、労働集約型である介護組織は良くなっていくことが一般的に予測されます。
しかし、成長を望まない人材がいたり、成長速度は人それぞれ違ったりします。そのような環境では、根性論で人を動かそうと思っても難しいでしょう。よって、誰が行ってもある程度の同じ質の仕事ができるように標準化することが大切なのです。
属人化を避け、標準化する必要性は環境によって変わります。
それぞれ職員が成長し、判断が適切に行える職員が多い環境であれば標準化せずとも各々の良識に任せるような管理方法でも良いでしょう。
しかし、人材採用のコントロールが行えない中間管理職の立場であれば、必要性に応じて標準化を考え、システムの調整を要することがあるのです。
デイサービスの中間管理職の難しさ、苦労
デイサービスの中間管理職は、決裁権を持ち同時に責任を負うといった一般的な管理職の苦労に加え、専門領域の異なる方々をまとめることに難しさがあります。
特に教育や指導という部分においては、中間管理職の専門領域外の部分も存在するため、より難しく感じるのです。
スキルのみに固執せずに、考え方や思想などの共有も大事になってくるでしょう。
その①:責任を持つ立場の苦労
管理職は、物事の決裁権を持つ立場であると同時に責任を負う立場になります。
最終的な責任は経営者にありますが、顧客への謝罪の対応やミスに対するフォローが必要な立場になるでしょう。
特に謝罪の対応に関しては精神的なストレスを感じる方も少なくないのではないでしょうか。トラブルやクレームに対する謝罪対応は、私にとって苦労した経験の1つです。
決裁権のある立場であり、職場をマネジメントしていく必要性がある役割である以上、責任から逃れることはできません。
責任から逃れてしまうと決裁権に対する曖昧さが生まれ、指示命令系統に影響を及ぼす可能性があり、運営上のさまざまな弊害が生じることがあり得るからです。
しかし、責任は苦労ばかりではありません。クレームやトラブルの対応を適切にできる管理職は、部下に感謝され、信頼が厚くなります。
良い信頼関係は、助け合う精神を育て、結果的に人材の成長につながることがあるでしょう。適切に役割をこなすことは、運営のしやすい環境を作り上げていく土台となり得るのです。
その②:さまざまな専門職をまとめる難しさ
デイサービスは看護師や介護士など、さまざまな専門職が協働する環境になります。専門性の違いがあるということは、教育背景に差があり、同じ物事を見ても視点が変わり、意見が変わる可能性があるのです。
実際、私の専門外である看護師の領域や介護士の領域においての課題では、管理者の私が判断しかねる状況もありました。特に専門知識の面で不安のある職員の判断において困ることが多いです。
専門領域が違う方々の教育となると難しさが増します。管理職が教育できない領域に関しては自己啓発を要する状況もあり得るでしょう。
知識を共有するような教育の機会を設けるだけでは不十分になる可能性が大いにあるのです。
専門知識のみではなく、理念などの根本的な考え方を共有していく必要性を感じました。
事業所や専門職の理念を大切にし、それを理解した上で自己啓発に臨む人材になることが、専門領域が違えど信頼し合える関係性の土台になるのではないでしょうか。
その③:人材育成の難しさとシステム
人材育成に関しては、思うように上手くいかないことがあるでしょう。勉強会などの機会を設け、教育の場を作って実行したとしても、成長につながるとは限らないのが教育の難しいところです。
それとは反対に、教育の機会がなくとも勝手に自己成長していく人材も見てきました。
人の個性は千差万別であり、職員のことを理解することから始めて、ようやく育成のきっかけを得ることができるのではないかと感じる経験をしました。
しかし、人を理解して人材の成長を待つのみでは運営は上手くいきません。現場は、常に適切に営業しなければならないのです。
管理者としては、人材の成長を待たずとも適切に運営できるよう標準化されたシステムを作ることが大切になるでしょう。
しかし、システムを作りマニュアルを基本にした運営にはデメリットもあります。それは、人材の成長を妨げてしまうことです。
マニュアルによって、行動を縛り、マニュアル以外の新たな行動をする際には決裁権を持つ者の許可が必要な環境にしてしまうと、人は考えて行動することを止めてしまうでしょう。
人は、その環境に合った行動を取るように変化するものです。決裁権を持つ者に指示を仰がなければ動けない環境は、自分自身で考えることを妨げる環境になり得るのです。
管理者は、個人と全体の組織を見ながら、成長に応じてどの程度の裁量権を与えるべきなのか考えてマネジメントしていく必要があるため、そこに難しさがあるでしょう。
理学療法士としてキャリア・現場で役に立ったこと
実際に体験することで得られる情報は、キャリア形成の上でも大きな価値となるでしょう。現場で役に立つスキルや価値観は、やはり現場にいてこそ身につきます。
現場に身を置きつつ、勉強し、トライアンドエラーを繰り返すことが成長するために必要ではないでしょうか。
以下に私の実体験から得られた、『役に立つ考え方』を示します。
その①:情報精査を意識して判断ミスの予防
『二次情報』の信頼度を誤った経験により、情報は多方面から精査しなければならないという考え方が身につくようになりました。他人から得た情報は、意見や意向によって改変される可能性があり、正確に伝わらないことがあるのです。
間違った情報を信じて行動してしまうと、トラブルをより大きくしてしまうことがあります。情報を集め、多角的に理解することや『一次情報』を得ることの大切さを実感しました。
『一次情報』とは、自分自身が直接得た情報のことを指します。
このように情報の正確さについての話をすると、『職員を信頼していないのか』といった批判を生むことがあります。
しかし、事実と意見は分けて考える必要があるでしょう。職員のことを信頼していても、他人からの情報は『二次情報』であることに変わりはないのです。
判断速度を要求される場面もありますが、どんな時でも冷静に、情報を正確に活用する能力が身についたことは、役に立つスキルを得たと感じています。
その②:システムで管理する大切さ
幸いにも、私がデイサービスの管理職に就いた時には優秀な職員が多く、助けてもらう場面が多くありました。
細かなマニュアルも必要とせず、大まかなマニュアルで職員の価値観や良識に任せることでうまく運営できていました。
しかし、現在の私が勤めている職場でのマネジメントチームによる運営は、職員の価値観や良識に任せる判断を下すと上手くいかないことが多いという現状に当たっています。
職員の価値観と良識に任せて運営が上手くいくのは、事業所内の教育が充実していたからこそ成り立っていることを実感しました。
人材育成が上手くいっていない環境の場合、マニュアル化してシステムを作って運営する方が、比較的に人は動きやすくなることを学びました。
個人の能力や全体の状態を見極めて、どの程度の裁量権を個人に与えるか、それを考える必要があることを経験から得ました。状況に合わせてシステムを変化させ、対応できるスキルは役に立つと感じています。
まとめ
デイサービスで中間管理職になった理学療法士に求められるスキルや価値観については、他職種協働の環境において求められる内容があります。
大切なのは、一般的な中間管理職の役割を果たす能力に加えて理念などの考え方の部分を共有する必要があるという感覚を持つことでしょう。
個人の能力や教育背景などに大きな差があるからこそ、それぞれを理解した上で組織をマネジメントをしていくことが重要になるのではないでしょうか。
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