【研修会レポ】脳卒中後遺症患者の歩行改善を目的とした評価と治療のコツとは?

リハビリセラピストの働き方を考える
※画像はイメージです。
脳卒中後遺症患者の歩行アプローチが苦手な理学療法士
脳卒中後遺症患者の歩行アプローチが苦手な理学療法士

脳卒中後遺症患者の歩行アプローチが上手くいかずに悩んでいる。機能レベルを向上させ、患者のニーズに応えたいが方法が分からない。そのため、今すぐ現場で活かせる技術を習得したい。

「治療にいき詰っていて解決の糸口が見えない」、「どうすれば患者のニーズにこたえられるのだろう?」など理学療法士でれば誰もが経験する悩みを解決する手段の1つに研修会への参加があります。

筆者は、歴12年の現役の理学療法士であり、あなたと同じように日々勉強を継続している1人です。

参加した脳卒中患者への歩行アプローチは今すぐ役立つ非常に興味深い内容でした。学んだ知識を現場で活かし、さらなる質の向上を共に目指しましょう。

記事のテーマ
  1. 研修会で学んだ知識や技術をそのまま現場で活かす
  2. 患者の生活に活きる治療を最優先にする
  3. 現存機能をフル活用した治療が必須
  4. 歩行の代償動作は早期改善が必要
  5. 歩行の介助量は最小限にとどめるべき

2019年1月に開催された研修会について

2019年1月に開催された研修会について

2019年兵庫県尼崎市で開催された「脳卒中の歩行の特徴に対する評価とリハビリ」の研修会に参加してきました。

脳卒中の歩行に対するアプローチを主とした研修会は全国各地で定期的に開催されていますが、これまで50回以上の講演に参加している筆者が最も興味深い講義、実技内容であると感じた研修会であったため共有します。

現役の若手理学療法士はもちろん、脳卒中の歩行に対するアプローチに悩む全ての理学療法士の「サポート」となる内容であるため、最後までご覧ください。

研修会のテーマ・ポイント

脳卒中患者の歩行機能を獲得するための評価方法とリハビリプログラムについての講義、実技をメインとし、現場で活躍する理学療法士の悩みを共有する時間もありました。

ポイントとなるのは「正しい評価ができているか」、「適切なプログラムを立て患者のニーズに応えられているか」の2つ。

全国各地から理学療法士を中心とした医療従事者が集まり、意見交換をおこないました。

実演も非常に魅力的でしたが、それ以上に「理学療法士としての考え方」を再確認することができましたので、その点を中心にご紹介します。

この研修会をおすすめするならどんな人?

治療技術を習得したい方はもちろん、勉強意欲のある若手理学療法士は、今回のような具体的なテーマのある講義に参加するのが良いですね。

特に、最も治療技術が必要となる回復期病院、リハビリテーション病院に勤務しておりの脳卒中患者を受け持つ経験の多い方、多くなることが予測できる方は、何より患者さんの未来のために参加するべきです。

質問があれば気軽にコメントください

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現場で活かせそうなこと

現場で活かせそうなこと

脳卒中患者の歩行獲得に対する評価や治療アプローチに悩む全ての方に必要な講義であるため、研修会で得た知識や技術はフル活用することができます。

今すぐ役立てることができるよう、講義で得た内容に加え、筆者の経験談も踏まえてご説明しますので、お見逃しのないようにしてください。

研修会で何を学んだか

研修会では、脳卒中後遺症患者に対する評価と治療をおこなう際の「考え方」を学ぶことができました。

治療技術の向上には必ず「正しい考え方」をする必要があり、患者のニーズに適した治療プログラムを組む必要があるということです。

患者への接し方や基礎的な評価方法など理学療法士として身につけておくべき知識を習得することができましたので、共有します。

現存機能を評価し、適切なプログラムを立案

患者さんが入院され、まずは現存機能の評価から入りますよね?

「麻痺のレベルはどの程度なのか」、「患者のニーズに応えることのできるプログラムは何なのか」の2点は必ず再考しながらリハビリに取り組むべきであるという主張から講義がスタート。

一見、当たり前のようにも感じますが、実は非常に大切なことです。

麻痺の程度を把握するための評価として「ブルンストロームステージ」や「MMT」、「ADL評価」などがありますが、これらはあくまで大前提の評価。

多くの理学療法士、特に若手理学療法士は評価項目をチェックしただけで評価が完成したつもりでいますが、それだけでは不十分です。

私たちと同じように患者にも今後の生活があり、生活にために必要な能力が異なります。

そのため、機能を回復させるための評価ではなく、生活を取り戻すための評価をする意識を持つ必要性があるのです。

例えば「現存機能で何ができて何ができないのか」、「できない項目はなぜできないのか」など、患者の人生にもっと寄り添うための評価が必要であると述べていました。

理学療法士は「機能の回復をする人」と考えられがちですが、正確には「患者の生活を取り戻すための機能を回復するサポートをする人」なのです。

現存機能の評価を上記のような考え方でおこなうだけでも、視野が広がりますよね。

この項目は技術というより考え方ですので、全ての理学療法士が意識するべきポイントではないでしょうか?

「評価によってプログラムが変わる」これは当たり前のことですが、上記のような評価ができていれば、患者に回復に本当に必要なプログラムを厳選して組むことができるようになります。

教科書通りの治療に意味はない!その人に合った治療こそが正解

若手理学療法士ほど教科書で学んだ内容を現場で活かそうとします。

決して悪いことではないのですが、果たしてその内容は本当に患者のためになっているのでしょうか?

確かに、教科書には脳卒中後遺症患者におこなうべきプログラムやおすすめのプログラムが記載してありますが、それらをそのまま使用しているようでは、いつまでたっても患者に合った治療をおこなう技術が身に付きませんし、あなたの成長がストップしてしまいます。

大切なポイントは「患者のためになる治療は何なのか」を明確な根拠をもとに導きだすことであると講義で述べています。

まさしくその通りで、治療内容を自らの考えで立案しなければ一人前の理学療法士になることができません。

正直、最初のうちは組むことができなくて当たり前です。経験が活かせることも多い職業ですから、分からなければ先輩に聞けば良いのです。

できなくても、分からなくても患者のための治療プログラムを組もうとする姿勢が最も大切であるという点を押さえておいてくださいね。

寝返り動作は頭部の立ち直りと体幹筋が重要

寝返り動作には上肢、下肢、頭頸部から開始する多様な運動パターンがあります。

また、背臥位と違い抗重力運動になるため、急激に筋出力を要求される難しい動作です。寝返り動作を遂行するためには頭部の立ち直りが必要であり、そのためには体幹筋の活動も重要です。多くの患者様は頭頸部・体幹筋の筋力低下により頭部の立ち直りが不十分となり、上下肢を努力的に使用する傾向があります。

そのため、寝返り動作の分析では頭頸部の運動が可能か、上下肢の運動は努力的ではないかに注目してください。

代償動作の出現は疲労の原因!早期改善が必須

少し踏み込んだ内容となりますが、脳卒中患者特有の歩行における代償動作、代表的なものでいうと「分回し歩行」や「跛行」(はこう)がありますが、これらの出現を見て、あなたならどのような対策をしますか?

中には「歩く距離を伸ばす方が優先」と考える理学療法士もいらっしゃることでしょう。

もちろん、患者のニーズに応えるために距離を優先するという考えにいたったのであれば、一概にその考えが間違いであるとはいえませんが、代償動作の出現によって患者に不要な負担がかかっているという認識は持っていなくてはなりません。

講義では「代償動作は疲労の原因であるため、早期改善が必要である」という主張が繰り返しされていました。

筆者も上記の主張に大きく賛同している1人です。その理由を以下に述べます。

  1. 代償動作を伴う歩行獲得により、別の部位に負担が生じ、新たな関節の痛みや代償が発生する可能性があるため
  2. 代償動作により、姿勢のアライメントが崩れバランス感覚の異常を生じる可能性がある

代償動作を早期に改善すること治療をおこなうことによって正常歩行に近づける方が、患者の将来を考えた際に、はるかにメリットが大きいのです。

「距離を最優先にしてほしい」、「とにかく早く歩きたいんだ!」という患者も多いですが、現状の歩行を継続するデメリットを分かりやすく説明することができれば「同意」を得ることができます。

患者との適切なコミュニケーションが取れていれば「リハビリプログラムに協力的」になってくださる方も実際に多いので、参考にしてください。

歩行介助は最小限にすることがポイント

若手理学療法士の悩みで最も多いのが「歩行介助」に関するものではないでしょうか?

「介助方法がイマイチ分からない」、「どこまで介助すれば良いのか分からない」など新人のころは筆者も毎晩のように悩んでいました。

結論から申しますと「歩行介助は最小限にとどめる」のが正解。

講義でも繰り返し主張されていましたが、現状の歩行能力を活かしてもらい患者自身に状態を理解してもらうことが最も効率の良い歩行介助であり、本来の目的です。

もちろん、リスク管理として必要以上の介助を要する場合もあるため、状況に応じて対応していただきたいのですが、最終的には介助無しで歩ける状態をつくることをゴールとしている場合がほとんどですので、過剰な介助をして「歩けている」という認識をするのはやめましょう。

装具の利用や物理療法によって改善を図ることができる場合もありますが、新人のうちはあまり経験がないかと思いますので、使用する際は先輩と相談した上で適切な選択をするようにしてください。

質問があれば気軽にコメントください

研修中にあった質問

研修中にあった質問

研修会の最後に必ず質疑応答の時間が設けられています。講義で疑問に思ったことはもちろん、現場での悩みや不安を解消する時間でもありますので、積極的に参加してください。

今回の講義で実際に挙がった質問内容と質問に対する答えを共有しますので、今後の参考にしていただければと思います。

患者のニーズと現状の機能に大きな差がある場合の正しい対処法は?

理学療法士であれば1度は経験されたことがあるのではないでしょうか?

研修会での答えは「ニーズを踏まえた治療をおこなうことを明言し、現状の機能の説明は必ずおこなう」でした。

多くの患者さんは身体が具自由であることにストレスを抱えています。目標は「以前の生活を取り戻すこと」としている場合が多いですよね?

仮に以前の生活を取り戻すことが困難であると感じても、その点を主張するのではなく、精神的負担を考慮して最大限の力を尽くすことが正解であるとのこと。

筆者も上記のような経験は何度もありましたが、患者さんの目標が高い分にはむしろプラスの効果を発揮できるのではないかという考えを持っています。

「もう歩くことができない」との診断を受けリハビリンにのぞんだ脳卒中後遺症患者が、患者自身の高いモチベーションと努力によって歩くことができた事例は実際に経験しているのです。

もちろん、講義でもあった通り「患者自身に現状を知ってもらう」ことは非常に大切ですが、スタッフの声掛けによって意欲や希望をなくしてしまってはマイナスな影響を与えてしまいますよね?

患者の状態を正しく理解し、モチベーションを保つもしくはアップすることができる声掛けをすることが正解なのではないかと考えます。

ステージの回復が見られません。在宅復帰が見込めなさそうな場合どうしたら良い?

思っていた以上に回復状態が良くない場合も実際にありますよね?

講義での答えは「本人、家族、各医療スタッフで相談のもと、適切な判断を早期におこなう」ということでした。

本人の性格や機能レベル、周囲の状況によっても判断が変わるため、何を正解とするかは非常に難しいことではないかと思います。

ただ、早期に決断することは非常に大切なことであり、理学療法士の腕が求められところであることは間違いありません。

方向性によって治療の手段や最優先におこなうべきことが変わりますので、どの状態になっても迅速に対応できるように患者とのコミュニケーションや各スタッフとの連携を図るべきであると考えます。

歩行が獲得できずに落ち込む患者の精神ケアについて知りたいのですが?

「リハビリに意欲的でなく、機能の回復が図れない」、「歩行に失敗し、気持ちが落ち込んでいてリハビリに前向きになれない」などの悩みを抱える患者は多いもの。

理学療法士は機能の回復だけでなく、患者の精神的サポートをすることも必要なスキルの1つです。

この質問に対する講義での答えは「傾聴を基本とし患者を取り巻く状況を判断する」ということ。

状況にもよりますが、無理にリハビリを遂行しようとするのではなく傾聴によって、まずは患者さんがどのようなことに悩みを抱えているのかを正しく理解することは非常に大切なことです。

経験上、特定のスタッフには状況を打ち明けてくれたり、家族の前だとモチベーションがアップする方もいらっしゃいます。

中にはリハビリ室が嫌い、他の患者に見られたくないという方もいらっしゃいますので、状況を判断した後に、複数の環境設定をして「どの環境なら意欲的になってもらえるのか」を試してみるのも解決の糸口になるのではないかと考えます。

まとめ

脳卒中後遺症患者の評価と歩行アプローチの方法を主とした講義内容、アドバイスを述べました。

筆者の主張をまとめます。

  1. 脳卒中後遺症患者のアプローチは機械的ではなく「患者のニーズ」から必要な評価をおこないプログラムを立てていくことが大切である
  2. 代償動作を伴う歩行はさらなる関節の痛みや姿勢の崩れを生じるリスクがあるため、早期改善が必要である
  3. 患者の歩行能力を最大限に活かすために介助量は最小限にとどめる
  4. 講義における質疑応答の時間は、抱えている悩みや不安を解消することのできる機会となるため、積極的に参加しよう

今回ご紹介した講義で筆者が学んだ内容を共有したように、読んでくださったあなたが別のスタッフに伝えることで、より良い医療体制を構築することができます。

チームの1員として、今できることを実践できる理学療法士を目指しましょう!

質問があれば気軽にコメントください

この記事を書いた人

沖田 直也

「今できることをすぐに実践」をスローガンに目の前の患者さんと家族のように向き合うことを大切にする理学療法士。大学病院、救急病棟を経て、現在は回復期病棟に勤務。

経歴

  • 2008年:大学病院の理学療法士をとして勤務
  • 2012年:大学病院からクリニックへ転勤
  • 2015年:救急病棟の理学療法士として勤務
  • 2015年:大学病院、クリニック、訪問、救急で得た全ての知識と技術を武器に再び回復期の病院へ転職

資格

  • 理学療法士

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