訪問リハビリには分業化が必要。利用者の状態によって使い分けられる訪問リハビリを目指して

リハビリセラピストの働き方を考える
※画像はイメージです。
維持期の訪問リハビリに悩む人
維持期の訪問リハビリに悩む人

訪問リハビリって、一度利用した利用者をずっと同じ人が担当するの?急性期を脱した人といわゆる維持期になった人がいるけど同じようなリハビリでいいの?

増え続ける要介護者やニーズの多様化とともに、訪問リハビリを実施する事業所は急激に増え続けています。訪問リハビリは、リハビリが必要な要介護あるいは要支援者を受け入れ、その人に合った治療を利用者の自宅で行います。

訪問リハビリの治療の成績は、担当者の技術や経験によるものが大きく、今まで未経験の疾患や症状であれば治療成績が上がりにくいという点も指摘されています。

そこで筆者はある特定の分野に特化した訪問リハビリを立ち上げました。今回は筆者が経験した分業化された訪問リハビリについて、その必要性や介入のポイントなどについて紹介します。

記事のテーマ
  1. 訪問リハビリには分業化が必要
  2. ゴールや目標設定が最も重要
  3. 利用者の信頼を勝ち取るためには結果を出すこと重要

訪問リハビリには分業化が必要

訪問リハビリには分業化が必要

病院では急性期や回復期など時期が分かれ、病院としての機能が細分化されています。また、病院でのリハビリは整形外科や脳神経外科など専門科目に分かれ、それぞれの分野での治療が行われています。

しかし、訪問リハビリには分野や時期が明確に分かれておらず、担当するセラピストがどの分野も対応しています。もちろん、担当の理学療法士や作業療法士等にも得手不得手があり、利用者の治療成績は担当者の経験に大きく左右されます。

筆者は専門性が高く、より治療効果が上がりやすいリハビリを行うためには訪問リハビリも分業化が必要であると考え、特定の分野に特化した訪問リハビリを中心に行ってきました。

理由①専門分野を明確にすることで専門性の高いリハビリを行うことが出来る

治療者が、特定の分野に精通をしていると知識だけでなく経験則からでも物事を考えられるようになります。利用者に対する評価もスムースで、予後予測も明確に行うことが出来るでしょう。利用者のニーズや目標が達成可能かどうかを判断することが出来、その目的に合った治療手段を様々な選択肢から選ぶことが出来るでしょう。

反対に、初めて対応する疾患や障害に対しては、まずその疾患の知識やリスク面から調べる必要があります。

その疾患に精通している理学療法士や作業療法士等が傍にいればよいですが、理学療法士1人体制で運営している事業所も少なくありません。文献から得られる情報には限りがあり、咄嗟の時にはうまく対応できないというリスクが生じます。

治療者がその疾患に対する理解度が高ければ、利用者も安心してリハビリに専念することができます。療養上の具体的なアドバイス、ADLを実施する際の注意点の指導等については、経験者と未経験者とではその質について雲泥の差があります。

理由②理学療法士や作業療法士等のレベルアップを図りやすい

分野が固定されていると、その分野に対する知識が飛躍的に向上します。繰り返し同じ疾患を持つ利用者を対応するので、リスクや回復段階に対する理解が深まります。

もちろん、利用者ごとに目的やニーズは違うのですが、根底となる知識は身につきます。その知識を踏まえた上で利用者の治療に当たるので、利用者の回復を促進しやすくなるでしょう。

他の訪問スタッフにも意見も求めやすくなるという特徴があります。他の理学療法士や作業療法士等も同様の疾患を持つ利用者に精通しているので、文献からは手に入らないより深い意見交換が出来るでしょう。より目的意識の高い集団の中で、利用者のリハビリに従事することが可能です。

理由③利用者数のコントロールが可能

専門分野を固定することは治療成績を高めるだけでなく、経営にも影響が現れます。専門性の高い訪問リハビリを行っていることを周りに周知してもらうことができれば、その分野での利用者の依頼が増えます。

特定の分野に特化した訪問リハビリは全国でもまだ稀な取り組みで、大きな宣伝効果が得られるでしょう。軌道に乗ると、ある程度訪問リハビリの開始と終了をコントロールすることが出来るので、利用者確保にさほど困らなくなります。

私が特定の分野に特化した訪問リハビリを運営していた時は、多くの利用者の方からケアマネージャーに当訪問リハビリを利用したいとの問い合わせがありました。私が運営していた訪問リハビリは比較的短期で卒業する人も多かったので、ある程度の訪問リハビリ利用者数のコントロールは可能となっていました。

回復期に特化した訪問リハビリの実態

回復期に特化した訪問リハビリの実態

それでは、筆者が勤めていた整形外科急性期~回復期に特化した訪問リハビリについて紹介します。特定の分野に限定して訪問リハビリを行ってきた結果、今までに行ってきた訪問リハとはまた違った視点でリハビリを行うことができました。

具体例①退院前より担当のセラピストと打ち合わせが出来る

私が行っていた事業所は整形外科に付属していた訪問リハビリテーションの事業所だったので、医師から訪問リハビリの処方が出されると医師はもちろんその時担当していた理学療法士からも情報を直接収集することができました。

担当する利用者は今どんな状態でどんな治療を行っているか、禁忌事項等も収集可能でした。時間が合えば実際の治療場面も見学し、その場での意見交換もしていました。

入院中から関われるので、画像情報、入院中の様子や心境の変化、ADLの変遷状況、目標の達成度などが事前にわかるため予後予測が立てやすく効率的に訪問リハビリに導入することができました。

具体例②機能回復に特化し比較的短期間でゴールが可能

入院中からの関われるため、訪問リハビリ開始以前よりADL状況を妨げる現時点での問題点やその原因を把握していました。

そのため、初回より利用者のための効果的な訓練を実践することが可能でした。退院後すぐの方を中心に担当していたため、回復に対するモチベーションの高い方も多かったです。

リハビリテーションの分野では、受症してから6か月が勝負と言われています。この間はいわゆる回復期と言われており、もっとも機能回復が進む時期だと言われています。この大事な時期にいかに迅速に効果的なリハビリを行うことで、その後の利用者の生活は大きく変わります。

具体例③他のサービスへの移行ができる

近年では訪問リハビリでも「卒業」の重要性が指摘されています。退院後は出来るだけ早期に適切なリハビリを行うことで、利用者のADLは格段に変わります。ADLが変われば利用者の生活環境が、ガラっと変わります。

そうなれば、もはや訪問リハビリは必要なくなり、よりその人にとって必要と思われるサービスに移行することが出来ます。

事前にケアマネージャーと打ち合わせをしておくと、スムースに他のサービスに移行することができます。訪問リハビリを卒業することで利用者は新しい「目標」を見つけることが出来るでしょう。

分業化訪問リハビリの介入のポイント

分業化訪問リハビリの介入のポイント

訪問リハビリを分業化して行うには、押さえておかなければならないポイントがいくつもあります。

分業化で行っていくためには、利用者のためにその利用者の状態に応じたリハビリを行うことはもちろん大切ですが、それ以外にも経営のことや連携のことなどの知識も必要となります。分業化で訪問リハビリを行う際に特に重要なポイントを紹介します。

具体例①介入する分野や利用者像を明確にする

実際に特定の分野で訪問リハビリを行っていくためには、どの分野でどのような利用者をターゲットにするかを明確にしておく必要があります。ただその分野が得意というだけで始めてはおそらく成功はしないでしょう。

自分だけでなく他のスタッフの得意分野を抑えることはもちろん、新しいスタッフが入っても汎用性が高くなくては事業として続いていかないでしょう。

地域によって需要があるのか、十分な利用人数を確保できるのかをリサーチしておく必要があります。また、ケアマネージャーや医師、相談員などに営業を行い、サービスのことを良く理解してもらう必要もあります。

具体例②個々の利用者のゴールや目標を明確にする(卒業を目指す)

その分野に特化した訪問リハビリと銘打っても実績が無ければ、他の訪問リハビリ以上には周りは評価してくれません。そのためには、結果を残すことが最も重要です。利用者個々の達成可能なゴールや目標を立てておかなければ、結果を残すことは出来ません。

理学療法士がいくら「良くなったね」と言っても、利用者本人が効果を自覚しないと良くなったとはとってくれません。利用者や家族が自覚することによってはじめて効果があったと言えるでしょう。

ただ単にリハビリを行うのではなく、「いつまでに」「何をどのように達成するか」を明確にしておく必要があります。

具体例③ゴールを達成した後のサービス利用についてケアマネージャーと事前に打ち合わせをしておく

訪問リハビリで立てたゴールを達成しても、それで終わりではありません。利用者にはその先の人生が待っています。

次の施設やサービスにつなげることが出来て、初めて訪問リハを卒業することが出来るでしょう。この移行がうまくいかないといつまでも訪問リハビリが継続することになります。

ゴールの達成の目途がついた時点でケアマネージャーとしっかりと打ち合わせを行い、次のサービスへ切れ間のない移行を目指しましょう。

実際に卒業した利用者の声

実際に卒業した利用者の声

今まで200人を超える人の訪問リハビリを行ってきました。訪問リハビリでは理学療法士と利用者はまさに二人三脚です。お互いに協力し合いながらゴールに向かって一歩ずつ歩んでいきます。

私が担当した利用者の中でも特に印象に残った方たちを紹介します。

具体例①両側人工骨頭置換術後で浴槽に入りたいと希望したA氏

A氏は、元々左側に人工骨頭が挿入されながらも元気に生活を送っていた80代女性です。

散歩中に転倒し、右側の股関節を強打し緊急入院。右側の大腿骨頸部を骨折し、右側の人工骨頭置換術を施行されました。退院後、お風呂に浸かることが大好きなA氏は浴槽に入ることを目的に訪問リハビリを希望しました。

「お医者様にも無理と言われていましたが、浴槽の中までしっかりと浸かりたいという希望を先生はじっくりと聞いてくれました。脱臼の危険がある私のために何度も試行錯誤をしながら福祉用具を選んでくれました。今では毎日お風呂に入れています。」

具体例②腰椎圧迫骨折後に地元での一人暮らしを望んだB氏

元々他県で1人暮らしていた80代後半の女性のB氏。野菜の収穫を行っていた時に転倒し、腰椎圧迫骨折と診断されます。退院後は娘夫婦とともに暮らしていましたが、他県の実家のことが気になります。実家に一人暮らしできるようにと訪問リハビリを希望しました。

「訪問リハビリでは、病院でも教えてもらえなかった圧迫骨折になった後の注意点を沢山教えてもらえました。普段何気にやっていたことが実は圧迫骨折を悪化させていたのですね。他県の実家は段差だらけ、先生はわざわざ他県にまで実家を見に来てくれました。」

具体例③ゴルフ復帰を希望した左人工骨頭置換術後のC氏

ゴルフ中に転倒し、左の大腿骨頸部を骨折した70代のC氏。何よりもゴルフが好きだった彼女は、退院後に再びゴルフに復帰することを希望していました。

「ゴルフのスイングは人工骨頭に負担を与えると医師に言われ、実は諦めていました。先生の厳しい訓練と、負担をかけないゴルフスイングを提案してくれました。初めは慣れなかったのですが、徐々にそのスイングにもなじんで今では、骨折前よりもスコアが良くなりました。」

利用者に信頼されるための最善の方法

利用者に信頼されるための最善の方法

訪問リハビリの分業化を行うにあたって、最も大事なことの一つは利用者の信頼を勝ち取ることです。利用者の信頼があってはじめてリハビリの効果を最大限に得られるでしょう。

初めから利用者の信頼を得ることは難しく、小さいことを繰り替えることで少しずつ信頼が得られてきます。

以下に利用者の信頼を得るための具体的な方法について紹介します。

具体例①結果を出す

シンプルかつ最も効果的な方法は、結果を出すことです。機能回復が出来たこと=結果を残すことではありません。機能回復が出来たことにより、本人のADLや趣味活動等の本人のニーズが達成され、本人及び周りが自覚することが出来て初めて結果が出たと言えるでしょう。

達成可能な短期の目標を立て、その目標を繰り返し達成することで利用者本人の信頼が得られるでしょう。小さいことの繰り返しです。しかし、おろそかにしてはいけません。

具体例②情報収集はきめ細やかに行う

情報収取はどんな小さい情報でも、治療につながるヒントがあります。また、しっかりと情報を集めることで、利用者は自分に興味を持ってくれていると感じます。

特にADLに関する情報や本人のニーズに関する情報は重要です。ただ聴取するだけでなく、うまく話をひろげると思いがけない情報が手に入ることがあります。

具体例③ケアマネージャーからの評価も大切

利用者にとって、ケアマネージャーはかけがえのない存在です。利用者のことを最も考え、相談に乗ってくれるケアマネージャーを利用者は信頼しています。

ケアマネージャーからの情報に利用者は耳を傾けています。ケアマネージャーと良好な関係を築くことは訪問リハビリを行う上でも重要な要素です。

まとめ

セラピストの分業化において、筆者が経験したことを交えて解説させていただきました。訪問リハビリの分野では、私は結果を出すことが一番重要だと考えています。

分業化はその分野や時期、患者層を限定することで、専門性の高いリハビリを行うことが出来るのではないでしょうか。

複雑かつ多様化する高齢社会の中で、より早期に結果を出せる分業化が今後必要になってくると考えます。

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この記事を書いた人

もしもし

独学での限界を感じ、専門的に理学療法を学びたいと感じ理学療法士の専門学校夜間部に入学。理学療法士および作業療法士として医療や介護、スポーツの分野にも携わる。現在は地域医療を担うクリニックのリハビリテーション部門の責任者として勤務する。オーストラリアへ留学経験もあり、現地の精神科デイケアで働きながらコミュニティサービスワーカーの資格を取得している。

資格

  • 理学療法士
  • 作業療法士
  • ケアマネージャー

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