
給料が高いことで有名な訪問リハビリと診療所での勤務。医療と介護の分野の違いはあるけれど一体どっちで働く方がお得なの?訪問リハビリと診療所ではどちらの方が働きやすいの?
給料が高いと人気の職場は訪問リハビリだけではありません。診療所での勤務も訪問リハビリと同等に給料が高くなります。働き方によっては診療所で働く方がより給料が高くなる場合もあります。
診療所と訪問リハビリに従事経験のある筆者がお互いの特徴と気になる給与事情について解説します。
- 訪問リハビリと診療所の勤務形態の違い
- どちらが稼ぐことが出来るのか
- 何を重視するかで働き方が変わる
訪問リハビリは子育て中の人も働きやすい
訪問リハビリは、短時間の勤務や勤務者の都合に合わせた働き方が出来ると子育て中の理学療法士や作業療法士にとって特に働きやすい業種とされています。
パートタイムで働くのはもちろん、常勤でも残業や休日出勤が少なく給与が高いとして人気があります。
理由①:空いた時間の有効活用が出来る
訪問リハビリは利用者個人との契約となり、訪問リハビリの時間に利用者宅に到着し、契約した時間内で訪問リハビリを行います。パートタイムで働く場合は利用者の訪問リハビリ1件ずつの報酬となるので、利用者の訪問リハビリと必要書類を記載さえすればその後は事業所で待機しておく必要がありません。
空いた時間に子供を保育園に迎えに行ったり、ゆっくりと自分の用事を済ませたりと空いた時間を有効活用することができます。
また、1日1件のみ訪問リハビリを行うという働き方も出来るので、1時間だけ出勤し後の時間は自宅での用事を行うこともできます。出産後、理学療法士としてのブランクが長く、いきなり長時間働くことに抵抗がある人がこういった働き方を選択している場合が多いです。
理由②:残業や休日出勤が少ない
訪問リハビリは残業や休日出勤が少ないことも特徴です。毎日の訪問リハビリとそれに付随する記録が行えていれば、残業する必要がありません。最近では業務効率アップのためにiPadを貸与している事業所も増えてきています。
iPadを使えば、オンラインを通じて利用者宅や屋外でも記録をつけることができます。効率良くいけば訪問中に一日に必要な業務を終えることが出来ます。
訪問リハビリは、平日の勤務であることが多いです。事業所によっては土曜日や祭日が出勤のことがありますが、その際は事前に知らされています。基本的に利用者の訪問リハビリの時間は決まっていますので、公休日に急遽呼び出されて仕事をすると言ったことはほとんどありません。
理由③:頑張れば頑張るだけ報酬が上がる
訪問リハビリや訪問看護ステーションでの事業所の多くは、出来高払い制となっています。パートタイムで働く理学療法士の場合は、訪問件数につき報酬が左右されます。常勤でもインセンティブ制を採用している事業所も多く、規定数以上の訪問リハビリを行えば、規定数を超えた分は別途報酬が加算されます。
訪問リハビリは、訪問件数が増えれば増えるほど給料に反映されやすいという特徴を持っています。短期間で報酬を増やしたい人や、ライフステージによって報酬を増減させたい主婦の方にはぴったりの業種かもしれません。
診療所は本気で稼ぎたい人には最適
診療所は医療系の施設で、多くの理学療法士等が働いている施設です。介護保険がスタートして以来、デイケアや訪問リハビリを併設する診療所も増え介護と医療の橋渡し的な役割も担っています。そんな診療所ですが、実は理学療法士が報酬アップするためのお得なシステムが用意されています。
理由①:元々給料が高く安定している
診療所は、病院と比べ報酬が高い傾向があります。個人経営で行っている診療所が多く、給料の裁量はトップである院長に委ねられています。多くの診療所では患者数に対する理学療法士の割合が少ないため、報酬を上げてでも理学療法士を獲得しようとします。
求人広告では、病院で働く理学療法士よりも診療所で働く理学療法士の方が50~100万円ほど提示されている年収が高い傾向があります。
また、診療所の給料は訪問リハビリのような歩合制でなく固定給となっているため、給料の変動が少ないのも特徴の一つとなっています。
理由②:中抜けの時間に副業が出来る施設も多い
診療所のシステムの大きな特徴として「中抜け」があります。診療所には午前の診療時間と、仕事帰りの人も通院できる午後の時間帯での診療があります。「中抜け」とは午前の診療時間と午後の診療時間の間の休憩のことを言い、3~4時間の休憩の後午後の診療時間に勤務を開始します。
この中抜けの時間は従業員一人一人が自由に使うことが出来、その時間を利用して仮眠をしたり、家の用事をしたりする人が多いです。また、最近では中抜け時間中に副業をすることを認めている診療所も多く存在しています。
私も現在診療所で勤務しており、この時間を利用して副業を行っています。副業を行うことで診療所の報酬に加え、副業による収入が加算されます。その結果、前職に比べ約1.5倍の年収を稼ぐことが出来るようになりました。
理由③:理学療法士として医療と介護の両面に関われる
診療所は医療系の施設でありますが、介護系の施設を併設しているところも多く存在します。診療所での理学療法を行いつつ、併設しているデイケアや訪問リハビリの業務を兼務することもあります。
医療だけでなく、介護の知識も同時に学ぶことが出来るので様々な分野で活躍したいと思っている人にはおすすめです。
また、訪問リハビリやデイケアの仕事を兼務すれば給与に手当として入ることも多いので、報酬アップを目指すことも可能です。私も以前働いていた診療所で、外来リハビリと訪問リハビリの兼務をしていました。
訪問リハビリに行くと、一件あたり2,000円の手当てがついたので月間平均で30,000円ほど給与に上乗せされていました。
理学療法士として働きやすいのはどちらの職場?
それでは、理学療法士として診療所と訪問リハビリとではどちらが働きやすいのかを事例を挙げて説明します。まずは、下記の表をご覧ください。
訪 問 リ ハ ビ リ | 診 療 所 | |
---|---|---|
訪問の必要性 | 必 要 | ほ ぼ 無 し |
天候の影響 | 有 り | 無 し |
利用者・患者数 | 少 な い | 多 い |
拘束時間 | 短 い | 長 い |
時間外労働 | ほ ぼ 無 し | 時 々 あ り |
年収 | 高 い | 高 い |
給与形態 | 出 来 高 払 い | 固 定 給 |
報酬の安定性 | や や 不 安 定 | 安 定 |
理由①診療所は訪問に出る必要がない
訪問リハビリと診療所でのリハビリの大きな違いは、リハビリを行う場所にあります。訪問リハビリは、その名の通り利用者の家に訪れて必要なリハビリを実施しますが、診療所では患者さんの方から診療所にリハビリを受けに訪れます。
そのため理学療法士は、移動する必要がなく慣れた環境と整った設備で患者に対するリハビリを行うことが出来ます。
一方、訪問リハビリは、自転車や原動機付自転車等で利用者の自宅に向かうため、移動に時間を要し、天候によっても左右されます。
理由②訪問リハビリは一日に対応する利用者の人数が少ない
訪問リハビリは移動に時間を要し、ほとんどの利用者に40分以上のリハビリを行います。そのため一日に対応する人数は平均すると6名ほどとなっています。診療所では、1人あたり20分という短い時間で、多くの患者のリハビリを行うことが特徴です。
1日に20人以上の患者を担当することが多く、担当患者以外でも松葉杖指導を行ったり、物理療法を実施したりと1日休みなく活動します。
訪問リハビリは1人の利用者に十分な時間を費やせるのに対して、診療所でのリハビリはポイントを絞って短い時間で多くの患者に対して効果を出さなくてはなりません。
理由③訪問リハビリは拘束時間が短い
診療所では一般的には午前診療と午後診療があるため、その間を休憩時間とする「中抜け」というシステムを採用しています。そのため、中抜けした後も午後診療に戻って来なくてはならないため、休憩といえどゆっくりと休むことはできません。
午後診療は19時以降まで続くため、自宅に戻ってゆっくりと過ごす時間が少なくなります。
また、月から土曜日までの6日を営業日とし、そのうち2日を午前診療のみの半日としている診療所も多くあります。この形態では、常勤であれば週6日間出勤する必要がありそのうち2日間が半日勤務となります。
そのため休みがとりにくく、疲労が蓄積してしまうかもしれません。
訪問リハビリでは、多くの施設で9時から17時30分くらいまでの勤務が多く、残業することもあまり多くはありません。そのため時間に余裕を持ちやすく、上手くマネジメントさえできていれば、休みも取りやすくなります。
理由④年収はどちらも高水準
訪問リハビリと診療所ではどちらも年収自体は高水準にあります。出来高払い制やインセンティブ制で頑張れば頑張るほど報酬アップが見込める訪問リハビリに対して、診療所は固定給料制ですが、元々の基準が高く副業を活用すれば高収入が得られます。
訪問リハビリでは利用者の状態によって訪問件数が増減すると報酬に影響しますが、診療所では固定給となっているため変動することはほとんどありません。
理由⑤診療所はより治療スキルの向上が図れる
介護系のサービスは、利用者の積極的な改善というよりも現状の能力をいかに長く保つことに焦点が集まるのに対して、医療系のサービスは治療に重点が置かれます。
診療所でも同様で、子供から高齢者まで幅広い世代の人が早期の回復を期待して診療所に訪れます。患者は理学療法士にも同様の期待を持って、リハビリに取り組みます。
しかし、患者が望むような効果や結果を示せなければ、あっという間に見限られてしまいます。そのため、理学療法士は常にプレッシャーを感じながら治療に当たるので自ずと治療技術が向上していきます。
具体的な給与事情
それでは、もう少し具体的な給与事情について紹介します。私自身が実際に働いていた訪問リハビリをメインにしていた時の給与と、現在勤務中の診療所での給与事情について紹介します。
具体例①:訪問リハビリで働いていた時の給与事情
訪問リハビリをメインに働いていた時は、診療所に併設された訪問リハビリ事業所に所属していました。固定給制ですが、月に100件を超えると1件につき2,000円のインセンティブが入っていました。当時はその地区の訪問リハビリ事業所は少なく、働き始めてからあっという間に訪問リハビリの枠がいっぱいになりました。
一日平均6~7人の利用者の訪問リハビリを行い、その当時年収は600万円を超えていました。残業することも休日出勤することもなく、比較的働きやすい環境でした。
自転車をメインに移動しており、雨が強い日など特別な場合には車の使用も許可されていました。その事業所で3年間働きましたが、年収600万円を下回ることはほとんどありませんでした。
具体例②:診療所勤務の現在の給与事情
現在は、診療所で外来理学療法士として勤務しています。デイケアや訪問リハビリなどの介護施設は併設していないので、診療所では兼業することなく、外来理学療法のみ行っています。
1日の平均患者数は20人ほどで、朝8時30分~12時、15時30分~19時までの勤務となっており、週6日勤務で水曜日と土曜日が半日勤務です。報酬は年収で約500万円、中抜け時間に副業を行っています。
副業に関して当初は別の事業所で、訪問リハビリを行っていました。しかし、時間的な制約もあり現在は、行政関係の仕事やPCを使って出来る仕事を中心に行っています。
現在、年収は750~800万円ほどとなり、訪問リハビリを行っていた頃よりも高収入が得られるようになりました。
働きやすい事業所を見つけるコツ
より働きやすい事業所を見つけるためには、注意しておかなければいけないポイントが沢山あります。ポイントを意識することによって自分に合った事業所を絞れることが出来てくるでしょう。安定を求める場合と、高収入を目指す場合に大別して紹介します。
方法論①:安定を求める場合
訪問リハビリにせよ診療所で働くにせよ、安定した職場で理学療法士として働くためには変動の少ない職場で働く必要があります。安定した職場とは時代や環境の変化に大きく左右されずに働ける職場のことを指します。
大きな法人で次々に施設を開設する法人は、安定せず異動のリスクも高くなります。所属する訪問リハの事業所が落ち着くと、新しく開設した事業所のヘルプに回されるかもしれません。
インセンティブ制のある訪問リハビリの事業所は、高収入を目指す人には良いのですがそれ以外の人には報酬が上がりにくいという欠点があります。インセンティブ制のない訪問リハビリ事業所は高収入が得られにくいですが、通常の事業所よりも給与水準は高くなります。
診療所は時代や環境の変化の影響を受けにくく、高水準の給与も保障され比較的安定した事業所だと言えるでしょう。しかし、拘束時間が長くなりがちなので自由は奪われるかもしれません。
方法論②:より高収入を目指す場合
より高収入の事業所を目指す場合は、インセンティブ制のある訪問リハビリ事業所がおすすめです。インセンティブ制の導入により頑張った分だけ報酬として還元されます。
しかし、インセンティブ制を導入している訪問リハビリ事業所であればどこでも良いという訳ではありません。いくらインセンティブ制を導入していても利用者が増えなければ、報酬が上がることはありません。
より報酬が上がりやすい事業所を探すためには知名度や実績がある事業所を選択しましょう。自社ホームページがある事業所は知名度が高い傾向があります。
大きい法人が経営する訪問リハビリ事業所では、キャリアアップが目指せます。訪問看護ステーションを全国展開している多くの法人は、深刻な管理者およびエリア責任者不足に悩んでいます。
実力が認められれば、管理者やエリアマネージャーという新たなキャリアを築く可能性もあります。給与にも役職手当が加算されるため、より高収入を獲得することが出来るでしょう。
診療所でより高収入を得るためには、副業OKの職場を選択しましょう。中抜けの時間を有効活用し、知識を付けるために勉強をしたり今まで経験したことのないことにチャレンジすることでより視野が広がってくると思います。
もちろん、短い時間でも報酬が得られる副業することも年収アップに貢献します。
まとめ
訪問リハビリと診療所でのリハビリは、リハビリの対象も実施場所、勤務形態等も大きく異なります。
子育て世代の人には訪問リハ、安定感やより治療技術の向上を目指す人には診療所の業務形態が合っているかもしれません。
報酬が高い事業所として知られる両者ですが、やり方次第で更なる報酬が得られる可能性があります。
どちらの事業所も何を重視するかで働き方が大きく変わってくるので、それぞれのライフスタイルに合った働き方を思案しましょう。
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