
訪問リハビリに興味はあるけど、なんか辛そうなイメージ。移動も大変だろうし、人の家に入るのは緊張する。訪問リハビリは他の施設や病院で働くよりも給料が高いって本当?いったいどれくらいもらえるのかを教えてほしい。
訪問リハビリは利用者の自宅に直接出向き、その方の生活に合わせたリハビリを行います。利用者の家に自転車やバイクで向かうことも多く、セラピストからも辛いと漏らす人も多いです。
しかし、多くの人は辞めずに何年も訪問リハビリの現場で働き続けています。
いったい、訪問リハビリにはどのような魅力があるのでしょうか?訪問リハビリを長年経験した筆者が紹介します。
- 訪問リハビリは確かにきつくて辛いけど、やり甲斐が十分
- 訪問リハビリにはリスク管理が重要
- 訪問リハビリは給料が高い
訪問リハビリの「ココ」がきつくて辛い
訪問リハビリは、医師の指示の下担当の理学療法士、作業療法士などのリハビリの専門家が、利用者の自宅に訪れその人の生活に即したリハビリを行う介護保険制度のサービスです。
利用者にとっては病院や施設に行かずに、自宅で今現在困っていることに対してピンポイントで指導や訓練を行ってくれる大変魅力的なサービスです。
しかし、サービスを提供するセラピスト側にとってはきつくて辛いサービスとして認識されていることが多いようです。一体どういったところに「きつさ」や「辛さ」を感じるのでしょうか。
理由①:時間に追われる
訪問リハビリを主として行う人にとって、特に意識するのが「時間」です。利用者の訓練時間だけでなく、移動する時間や担当者会議などの会議に参加する時間を考慮しなくてはなりません。病院や施設のように利用者が自ら訓練に赴いてくれるのではなく、こちらから利用者の自宅に伺います。
セラピストによっては一日に7~8件の利用者の自宅を訪問するので、少しでも時間が遅れてしまうと、全体の時間配分が大きくずれてしまいます。交通事情や突然の天候の変化で遅れてしまうこともあれば、訪問時間に利用者が自宅に戻っていなかったり、訪問リハビリ終了時間に突然家族が相談してきたりと様々な理由で時間にズレが生じてきます。
私も時間がおして少し焦っている時に、利用者から呼び止められてしまうことが度々あります。「いいですよ」と笑いながら対応しますが、心の中では「すぐにでも飛び出したい」と、いかに話を短く切ろうとしてしまうこともあります。
理由②:移動が大変
訪問リハビリが「キツイ」と言われている理由の一つに移動の問題があります。多くの訪問リハビリの事業者は、移動に自転車や原動機付自転車を利用します。小回りが利き、駐停車しやすいので、利用者の自宅の前に停めやすいという理由でよく用いられています。
おおよそ片道20分以内のところに伺うわけですが、場合によっては片道30分以上かかることもよくあります。特に自転車で移動する人は、一日に何十キロも自転車で移動することもあります。もちろん一日だけでなく毎日利用者宅に伺うので、慣れない間は筋肉が悲鳴をあげます。
訪問リハビリは、天候にも左右されます。雨が降ったからといって訪問リハビリを休む訳にはいきません。訪問リハビリ担当者は時間が来ると、合羽を羽織って濡れながら利用者の自宅に向かいます。私は台風の日でも利用者が求めれば、原動機付自転車に乗って利用者宅に向かっていました。
台風の中では操作を誤ると、転倒してしまうリスクがあるのでスピードを極力落としながらも利用者の自宅に向かっていました。雨に濡れ、強風にさらされながらの移動は正直「きつく」「辛く」感じていました。
理由③:突然の出来事にも一人で対処する必要がある
訪問リハビリは利用者の生活のスペースに原則一人で踏み込むため、ごく稀に突然の出来事に遭遇することがあります。私も今までに何度か訪問リハビリに伺った時に、利用者が倒れている場面に遭遇したことがあります。
初めての時は頭が真っ白になって、救急車を呼ぶ以外、何をしたら良いかわからずに途方に暮れた時もありました。
何度か同様な経験を積むことで、リスクのある方には前もって緊急連絡先を作成し、緊急時の手順書を作成することが有効であると学びました。その手順書を元に、利用者の最悪の状況を回避したこともあります。
しかし、何度経験しても緊急時の対応はきつく、神経を著しく消耗させ解決した後は、ぐったりと力が抜けてしまいます。
訪問リハビリはやり甲斐が十分にある
確かにきつくて辛い訪問リハビリですが、その苦労を上回るやり甲斐が十分にあります。以下に訪問リハビリをしていて良かったと強く感じたことを紹介します。
具体例①利用者の回復を一番身近で感じることが出来る
訪問リハビリは、病院や施設でのリハビリと違い、利用者の自宅という一番プライベートな場所でリハビリを行います。そのため、病院や施設ではどうしても利用者との関係に距離感がありますが、訪問リハビリではその距離感が格段に縮まります。
また、利用者が本当に自宅で困っていることをセラピストの目の前で評価することができます。例えば玄関の上がり框が登りにくくて困っている利用者に、現在の環境でどこをどのように使用すれば楽に登れるかをその場で実践しながら指導することが出来ます。福祉用具の利用を検討する際も、実際にその場で評価をしながら導入することが出来ます。
訪問リハビリ開始から終了までの間、利用者にとっても様々なドラマがあるでしょう。そのドラマの脚本の中に訪問リハビリの担当者も組み込まれているので、より身近な位置で利用者と回復の喜びを分かち合うことができます。
具体例②様々なスタッフと密な連携が出来る
訪問リハビリは単独サービスではなく、利用者に係るサービスの中の一つとして位置づけられています。サービスを開始する前にサービス担当者会議を行い、それぞれのサービス担当者が利用者のため担う役割を明確にします。
サービス開始後も、スタッフ間の連携は続きます。訪問リハビリでは利用者の回復につれ、利用者の現在の状況に応じた介助方法を他のスタッフに伝え実践してもらうことがあります。お互いに目的意識が一致していれば、抵抗感なくスムースに導入することも可能です。
訪問リハビリで気づいたことを伝えたり、別のサービス中に気づいたことを伝えてもらったりと、病院や施設とはまた違った連携の方法が訪問リハビリには存在します。
給与水準が高い理由
訪問リハビリは他のセラピストが働く府イールドよりも給与水準が高いと言われています。私も訪問リハビリに従事してから、前職よりも給与が大幅に上がりました。訪問リハビリの給与が高い理由について解説します。
理由①激務に対する補償
訪問系のサービスは訪問リハビリだけではなく、全体的に他のサービスに比べて給与水準が高い傾向があります。介護報酬も他のサービスと比べ割高であり、訪問リハビリ20分1回で290単位となっています。
これに対して病院で最も依頼の多い運動器Ⅰの20分が185点となっているので、報酬上も大きな違いが現れます。実際に私が整形外科病院で働いていた時は、運動器Ⅱで一日平均11人(各40分)を担当して3,740点、訪問介護で一日平均7人の利用者(各40分相当)を担当して4060単位と医療保険と介護保険の違いはあるものの、報酬は訪問リハビリの方が高く設定されていました。
この報酬の違いは移動時間も報酬に含まれているため、例え一日に関わる利用者の数が少なくとも報酬は訪問リハビリの方が多かったです。
介護報酬が高くなればなるほど、給与に反映されやすくなるので、報酬が高くなりやすい訪問リハビリの給与水準が高いのは当然の結果と言うこともできます。
理由②出来高払いによるインセンティブが入る
訪問リハビリ事業所ではインセンティブ制を導入しているところも多くあります。インセンティブ制とは、訪問件数が一定件数(事業所にもよるが月100件が目安)を超えると、訪問1件につき、数千円程度報酬に上乗せされる制度です。
このインセンティブ制により、年収380万円でスタートした新人セラピストが1年ほどで年収が500万円を超えてしまっているケースも珍しくありません。
実際私もこのインセンティブ制のおかげで、年収が前職よりも100万円以上もUPしました。訪問リハビリは、訪問件数が増えれば増えるほど管理が大変になってはいきますが、その分報酬が上がりやすいという特徴を持っています。
訪問リハビリで求められるスキル
それでは、訪問リハビリで働くにあたって求められるスキルについて紹介します。
その①予後予測
私が訪問リハビリを行うにあたって、最も必要なスキルと考えるのが、「予後予測できる能力」です。「予後予測できる能力」とは、利用者の疾患・現状の能力・伸びしろ・ニードなどの情報から利用者がどこまで回復もしくは、能力が向上するかを見極める能力です。
私はセラピストの最も大切な資質として捉えており、予後予測ができるようになるには、疾患や高齢者に対する知識、現在の能力を正確に分析する評価能力、利用者や家族のおかれている状況を把握する能力などが必要とされます。
訪問リハビリを始めるにあたり、予後予測がしっかりと出来ていないとゴール設定がブレます。「維持すること」を目的にするのではなく、ALSのように進行性の疾患でも必ず「伸びる」部分があります。
正確に利用者のことを把握し、「伸びる」部分を見極めて伸ばしていけるスキルは訪問リハビリには特に必要であると感じています。
その②リスク管理能力
「リスク管理能力」も「予後予測できる能力」と同じくらい重要なスキルです。「リスク管理能力」とは、利用者の置かれているリスクを正確に理解・管理し、急変の時に適切な対応が出来ることです。リハビリをしている最中に気分が悪くなったり、倒れてしまったりすることがあるかもしれません。
まずそのような状況を起こさないということが一番大切ですが、起こった時に冷静に対処できるスキルです。
これは、その場限りの能力ではなく、あらゆるリスクを想定し前もって準備しておくという事前の取り組みが出来る能力でもあります。緊急連絡先一覧など事前に準備出来るものを作成しておけば、緊急事態に遭遇した時も冷静に対処できるでしょう。利用者の安全を守るという意味でも必要不可欠の能力となります。
その③ケアマネージャーや他の職種との連携が上手くとれること
訪問リハビリは、セラピスト一人ではできません。ケアマネージャーをはじめ他のサービスの担当者や、利用者本人や家族と連携をとることにより初めて効果的に実施することができるでしょう。そのためには利用者本人だけでなく、日頃より関係職種や家族と密に連携を取っておく必要があります。
お互いに協力し合える関係を維持するためには、コミュニケーション能力も必要となります。自分一人で抱え込まず、困ったら相談できることも訪問リハビリでは重要となってきます。
給与水準が高い事業所を選ぶポイント
それでは、給与水準が高いと思われるポイントを紹介します。まずポイントとなるのが「インセンティブ制」の有無となります。インセンティブ制の有無によって報酬体系が大幅に変わってきます。
大きな事業所ではインセンティブ制を採用しているところが多いですが、小さな事業所だとインセンティブ制がなく、通常の事業所と同じように給与制となっています。給与制は訪問件数に左右されず安定した収入を得ることができますが、大きく収入を得ることは難しくなります。
インセンティブ制を採用していなくとも通常のサービス事業所よりも一般的に給与は高めとなります。
方法論①一人のセラピストの一日の平均訪問利用者数や月間の訪問数
訪問リハビリ事業所の面接の際、確認することをお勧めするのがセラピストの平均訪問リハビリ利用者数と、月間の訪問数です。一日の平均の訪問回数を聞くことで大まかに就職した時の平均訪問回数と最大数が確認できます。
月間の訪問数では、月間の収入が予測できるだけでなく、その事業所の地域における認知度も知ることができます。その際に、セラピストの所属人数やセラピストが休んだ際の代診の有無も聞いておくと良いでしょう。
方法論②インセンティブの基準
インセンティブをどのように規定しているかで、報酬内容が変わってきます。多くの事業所では月間訪問回数が100~120回を超えた時よりインセンティブが発生します。
インセンティブの額や、就職してから訪問回数が100件以上になるまでの予測月数も確認しておくと、将来設計が立てやすくなります。
方法論③事業所の規模
事業所の規模や地域における認知度も重要なポイントです。訪問リハビリはケアマネージャーから依頼が来ます。地域で認知度のある事業所であれば、訪問件数がすぐに増えてくるでしょう。反対に新しくできた事業所などは、実績が少ないのでケアマネージャーに認知してもらうには時間がかかることが多いです。
ホームページの有無も重要な要素です。可能な限り広報活動も積極的に行っている事業所に就職することが給与UPにつながるかもしれません。
また、訪問リハビリ事業所以外のサービスの有無にも着目しましょう。大きい法人の事業所であれば、法人内でケアプランセンターを運営している所も多いです。同一法人内であれば、ケアマネージャーからの依頼も期待できるので、すぐに訪問件数が増えることが期待できます。
まとめ
訪問リハビリは辛くてキツイと言われているサービスですが、その辛さに見合うだけの見返りややり甲斐が保証されています。特に給与水準の高さは、セラピストが関わる業種の中で最も高いでしょう。
訪問リハビリのセラピストとして働くためには、リスク管理や予後予測など様々なことを考慮する必要はありますが、新たな選択肢の一つとして考慮してみてください。
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