
理学療法士としての初就職が介護業界の場合、キャリアに不安を抱き、悩む方もいるのではないでしょうか。
大切なのは介護業界に入ったからこその強みを活かしてキャリア形成を行うことです。
医療業界に入った方々との違いはもちろんあるでしょう。しかし、介護保険の制度などの環境を活かし、自らをステップアップしていくことも可能です。道が閉ざされている訳ではありません。
今回は、初就職で介護業界に入った経験を持つ私の実体験を交えつつ、理学療法士のキャリアの描き方について解説します。
- 環境から強みを見出す
- キャリアをイメージした行動
- リスクとリターンを考える
介護業界の経験は強みになる
強みとは、相手に与えられるメリットのことです。介護業界で積み重ねた実績と経験は強みになる可能性があります。
日本理学療法士協会の会員の分布を確認すると、介護保険領域で働くリハビリ職の数は医療保健領域で働いている数より少ないことが確認できるでしょう。
その希少性もまた強みになる可能性があります。得られる環境を最大限活かしてキャリアアップを図ることが大切になるでしょう。
強み①:マネジメントを経験しやすい
私は新卒で医療法人の介護保険サービスに勤め、キャリア4年程度で中間管理職に抜擢されました。
介護業界に勤めることで全ての方が同じようなキャリアを辿れるかというと、そうではありませんが、介護保険の事業所の運営体制によっては比較的早くマネジメントを経験できる可能性があります。
介護業界のサービスは、事業所の形態によっては介護職や看護職と同じ現場でリハビリ職が働くことになります。
管理者は一般的に事業所の人員の中から選ばれるでしょう。その時、リハビリ職の強みや制度上の関係によって中間管理職に比較的に抜擢されやすいことがあるのです。
たとえば、デイサービスの場合、機能訓練指導員と呼ばれる枠に理学療法士として勤めることが可能です。デイサービスの人員が配置基準は、2015年に看護職と生活相談員において緩和され、看護職に至っては専従でなくても良いとされました。
さらに、ある論文の中では介護職と比較して理学療法士の意向がケアやサービスの方向性に強く反映されやすいとされており、理学療法士は比較的に発言力が高い立場になりやすいとされているのです。
つまり、制度と影響力の関係性によって、理学療法士が評価されやすい傾向になることもあるのです。
そもそも、デイサービスで機能訓練加算を取得しており、適正に機能訓練計画書を運用するのであれば、マネジメントの必要性が生まれます。
適切に職務をこなし、人事の決裁権を持つ上司からの評価を得られれば、管理職に就ける可能性は高い状況になり得るのではないでしょうか。
強み②:地域リハビリの経験を積める
地域リハビリテーションに携わると、想像と全く違った形で自身の生活を成り立たせている方に出会うことがあります。
IADLの部分を友人の助力によって成り立たせていたり、自宅内に専用のエレベーターを作って生活を自立させていたりする方も実際にいました。そこで得られた経験は大きいものがあります。
地域リハビリテーションを学ぶには、介護業界で働くことがメリットになることもあるでしょう。
地域での医療介護連携は、地域の現場にいるからこそ得られる知見があります。一時的ではなく、継続的に生活に関わることで、分かってくることは多くあるでしょう。
それは、生活動線など、本人に確認することで分かる情報とは違う要素を持ちます。
本人の生活リズムや、家族と家での交流、友人や隣人との親密度や交流頻度など、さまざまな関係性の上で生活は成り立っています。このような生活に即した情報は、地域で継続的に対象者と関わることによって、ようやく分かることでしょう。その経験は地域ケア会議など、地域作りの場に参加する上で貴重な経験になるはずです。
そして、地域リハビリテーションに携わる中で、理学療法士の関わるフォーマルサービスは対象者の人生にとっての一部分でしかないと私は感じました。人生の多様性を体感することは、自分自身の人生を考えるきっかけにもなります。
地域リハビリテーションの複雑さを感じることは、リハビリ職を成長に導く要素の1つになるのではないでしょうか。
強み③:多様なサービス形態を経験できる
介護保険サービスでリハビリ職が関わることのできるサービスは幅広く、通所系から入所系、訪問系に至るまでさまざまです。
私は、異動の多い職場環境で働いていたため、短期間で多くのサービス形態を経験することができました。それぞれの特色を体験し、経験することで今後のキャリアにも有益であると感じています。
たとえば、転職する場合であっても経験の有無で差が生まれるでしょう。
たとえ異動が頻繁でなくとも、介護保険サービスを多く抱えている事業所に所属し、交流を深める中で得られる経験も有益です。
どのように地域でサービスが関連し合っているかを学ぶことで、管理職に就く際に活かせたり、転職に活かせたりすることでしょう。
介護業界に入った理学療法士は次のキャリアはどう描くべきか
自ら目指すキャリアにもよりますが、介護業界ではマネジメント層を目指しやすい可能性が環境によってはあり得るでしょう。
地域リハビリテーションを含め、特化した理学療法のスキルを身につけていくのであればコネクションが必要になります。コネクションが作れれば医療や教育などの道も開ける可能性があるでしょう。
介護業界でキャリアアップを目指すのであれば、自らの目指すキャリアを明確にし、積極的に活動していくことが大切になります。
マネジメントをしたい考えがある人は、管理を学ぶべき
介護事業所のサービス形態によっては、管理職に比較的就きやすい傾向にあることをお伝えしました。理学療法士は、制度等の面からマネジメントキャリアを形成するのに優位な立場になる可能性があると考えられます。
しかし、資格や制度の優位性だけで管理職に就けるものではありません。マネジメント層に引き上げる決裁権を持つのは上司になります。
また、マネジメントを学べば管理職になれるというものではありません。上司の求める価値に応えられなければ、評価は上がらないからです。
上司は上司でありながら、自分自身の処遇を決めている顧客でもあるのです。つまり、適切な価値提供はサービス対象者のみでなく上司などのマネジメント層にも行わなければならないでしょう。
上司の求める価値は会社の理念や個人の思想にも影響を受けるでしょう。適切に把握して対応していくことが大切になります。
地域で活躍したいという考えがある人は、コネクションを作るべき
地域作りなどに参加して活躍していきたいのであれば、コネクションが必要になります。事業所によっては、地域包括支援センターなどの地域づくりに関与する部署とのつながりが強く、連携しやすい環境にある場合もあるでしょう。
しかし、全ての環境がそうではありません。自ら発信し、場に参加し、コネクションを作っていかなければ、自分を認知してもらえることをしなければ難しいこともあります。
地域ケア会議などに積極的に参加し、自分の影響力を高めたり、地域作りに貢献している方々と良い関係性を築いたりすることが大切になります。
また、状況によっては医療系や教育系の仕事をしている方々との関係性を築ける可能性もあるでしょう。そのコネクションによって、自分自身のキャリアの選択肢は幅広くなります。友人関係が転職に影響を与えている場合も大いにあるのです。
起業したいという考えがある人は、適正なリスクの取り方を考えるべき
起業したいのであれば、どのようなサービスを提供するかを考える必要があります。医療保険や介護保険サービスであるべきか、そうでないのかというところも考える必要があります。ただ、起業する際にはリスクとリターンについて考えなければなりません。
その事業をして得られる収益の予測と、支出の予測を立て、自らのリスク許容範囲内で事業を起こしていかなければ破綻してしまう可能性があります。
たとえば、デイサービスの管理者の運営基準は特に資格要件は定められていないため、理学療法士でも開業することができるでしょう。
その時、必要な土地や建物、人員の給料などの多大な支出が予測されます。そのリスクを許容した上で、顧客と契約し、収益を見込まなければなりません。得られる利益を完全に予測することは難しいでしょう。
他に起業の例としてブログを挙げます。ブログ起業にかかる支出はすでにパソコンを持っているのであれば、年間1万円程度で事足ります。ただし、こちらも収入のリターンは未知数です。
自分自身に背負えるリスクの許容範囲を理解した上で事業を起こさねば、支出と収入のバランスが崩れ、生活が破綻する可能性さえあります。
リスクとリターンについて、しっかりと理解した上で起業を行う必要があるでしょう。
まとめ
初就職で介護業界に入ったとしても、キャリア形成の方法はあります。介護業界に入ったからこそ活かせる強みがあるのではないでしょうか。
大切なのは、キャリアのイメージを明確にした上で、適切な方向性を持って積極的な行動を取ることです。
ただ、理学療法の技術などを向上させたいのであればメンターが必要になるため、その部分には注意しましょう。道を切り開くのは、常に自分の行動から始まります。与えられた環境を最大限活用して、より良いキャリアを描きましょう。
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