
マネジメントのチャンスがなかなか無く、キャリアに不安を抱いたり、悩んだりする方もいるのではないでしょうか。
これからの時代で大切になることは、自分の『強み』を持つことです。
マネジメントの職に就くことも強みにはなりますが、それのみに限らず、個人を活かしたキャリア形成をしていくことが大切になるのではないでしょうか。
今回は、マネジメント職の経験を持つ私の実体験を交えつつ、マネジメントのチャンスがなかなか無い理学療法士のキャリアの注意点について解説します。
- マネジメント経験はキャリアで強みになる
- キャリア形成の考え方
- キャリアアップは環境が影響する
マネジメント経験はキャリアで強みになる
一般的に管理職の転職は難しいとされています。それは、一般職と比較して席が少なく、求人倍率も少なくなるためです。
また、管理職のようなマネジメントの職種は、実績を証明していくのが難しいことも一因になるでしょう。
しかし、理学療法士の活躍できる場には多数の部下を抱える部署のみでなく、1人でリハビリ部門の管理を行うことのできる環境もあります。
経験談①:マネジメント職から1人職場PT(部門管理)へ
私は、1人職場(部門管理)の理学療法士として働いています。
デイサービスや訪問リハビリの中間管理職を経験しているというマネジメントの実績があったからこそ、部門管理の職であっても大きな問題なく転職ができたと感じています。
マネジメント職への『転職』となると、難易度が高いとされますが、選択肢の幅を広げることができたり、実績を強みとできたりするという面ではメリットになり得るでしょう。
選択肢の広さは、自分に合った仕事を選択しやすくなるというメリットを生み出します。
たとえば、マネジメント職として高い給与を望むのであれば、難易度が高いながらもマネジメントを経験したという実績が活きる可能性が生まれるでしょう。
また、リハビリ部門のみマネジメントをして自由な時間を増やしたいと望むのであれば、1人職場PTという選択肢もマネジメントの実績を活かして選びやすくなるでしょう。
マネジメントの経験は、知識の幅を増やし、転職の際の心理的な負担も軽減できるメリットがあります。
経験と実績は、キャリア形成や人生において重要な要素になります。
経験談②:転職時の不安感が軽減される
私は、マネジメントの経験によって転職時の不安が軽減されました。マネジメントの経験は、知識の幅を増やし、転職の際の心理的な負担も軽減できるメリットがあるのではないかと感じます。
マネジメントの職に就き、制度などを理解することによって、『やらなければならない仕事』と、『やった方が良い仕事』の違いが分かるようになったからです。
たとえば、機能訓練加算の要件を例にあげると、評価や実施方法、情報収集についての文言が厚生労働省によって提示されています。
加算を取得しているのであれば、加算の要件に明確に示されていることに関しては確実にこなさなければ、返戻扱いになるでしょう。
返戻とは、提出した介護給付費請求が国民健康保険団体連合会から事業所へ戻されることを指します。
その場合、サービスを利用者に提供しても適切に収益が発生しないという事態になるのです。
対処がなされれば返戻を避けることができますが、できれば返戻の対応は避けたいものでしょう。返戻の状況によっては事業所の存続に関わります。ミスなく確実に必要な物は揃えなければなりません。
理学療法士として、『やった方が良い仕事』ことはたくさんあるでしょう。しかし、確実にやるべきこととは分けて考える必要があります。
評価や実施方法については、管理者の理学療法士の采配によってさまざまな方法を必要とする場合があるでしょう。しかし、加算取得のために提出に必要な様式は決まっておいます。
しかし、事業所によって決めている評価様式や、利用者さんにとって必要な評価様式という面は、加算取得に必要な様式また違うでしょう。
『やらなければならない仕事』なのか、『やった方が良い仕事』なのかを適切に理解し、分配することが大切です。判断の間違いによっては、大きなミスが生まれる可能性があるでしょう。
制度面のみではありませんが、適切にリスクの振り分けのできるスキルが不安感の軽減に繋がります。
経験談③:セルフマネジメントスキルの向上
私がマネジメントの職に就いた時には、十分なセルフマネジメント能力が身に付いてはいませんでした。しかし、徐々に職場のマネジメントを行うと同時にセルフマネジメント能力も向上するのを実感しました。
一般職として『基本的に上司の指示に従い、個人で成果を出す』という仕事から、管理職として『経営や組織全体の視点を持って、全体で成果を出す』という仕事へ変化したことによって理解できたことが多くあります。
管理職になることによって組織マネジメントの必要性が生まれ、自らのキャパシティや時間などのコントロールを要求される場面が増えました。その経験によってセルフマネジメントの重要性を実感し、学ぶことができたのです。
セルフマネジメント能力は、マネジメント職として重要な能力であり、1人職場PTにおいても重要な能力もとなるでしょう。また、人生を豊かにするためにも有益な能力です。
自らのキャパシティを理解し、どのようにリソースを管理していくかによって、時間の使い方が変わります。
時間の使い方は人生をそのものと言えるでしょう。自らをマネジメントする能力は、人生にすら影響を与えるのです。
マネジメントチャンスがないPTはキャリアで何に気を付けるべきか
マネジメント職は一般職と比較すれば就ける数が少ないため、マネジメントに携わるチャンスがなかなか見つけ出せない環境は存在するでしょう。
そんな場合であっても、自らの強みを見つけ出していくことでキャリア形成をすることができます。強みを強化したり、強みを増やして掛け合わせたりする視点が大切になります。
また、マネジメント職にキャリアアップするためには環境が大きく影響するため、自らの所属する環境を変えていく視点もキャリア形成のためには重要になるでしょう。
その①:理学療法士の専門性をより強化する
理学療法士の専門性をより強化するのであれば、認定理学療法士や専門理学療法士を取得したり、修士号や博士号を取得したりすることによって、専門性を深めてく方法が分かりやすいキャリア形成の道筋となるでしょう。
厚生労働省は、リハビリ職の供給過多を予測しています。供給過多の時代を生きる時、個人の強みが必要になる場面が訪れる可能性が高まるのではないでしょうか。
リハビリ職の供給が少なく、需要が多い環境であれば、特に個人の強みを発揮せずともリハビリ職であることそのものが価値となるでしょう。
しかし、供給過多の環境になれば、リハビリ職が溢れている状況のため、より優秀な人材が求められます。
優秀な人材と認識されるには、自らの専門性を高め、アピールできるポイントを作っておくことが大切になるでしょう。そのため、一般的には専門職の専門性を高めていくことがキャリア形成として提示されることが多いでしょう。
その②:複数の強みを掛け合わせる
キャリア形成の1つの手段として、複数の強みを持ち掛け合わせていくという方法があります。
理学療法士のキャリアという面から考えれば、資格の強みを活かしてケアマネジャーやアスレチックトレーナーなどの別資格を取得したりして活躍するといったキャリアが一般的に考えられます。
強みを掛け合わせることによって、
- 理学療法士✖️ケアマネジャー
- 理学療法士✖️アスレチックトレーナー
といったような専門性の掛け合わせによる希少性が生まれるでしょう。どちらか一つの資格のみを持っている人とは違い、ダブルライセンスによって他の人と違う強みが作り出せるのです。
複数の強みを掛け合わせる上で、理学療法士という資格に囚われることはありません。全く別の業界であっても実績を作っていくことは可能です。
たとえば、webライターやプログラマーといった仕事は、資格の必要性の高い業界ではありません。資格が無くとも、個人でスキルを向上させ、実績を作ることができます。
実績を積み重ねれば、それが強みとなります。強みを掛け合わせることによって、
- 理学療法士✖️webライター
- 理学療法士✖️プログラマー
といった専門性の掛け合わせによる希少性が生まれるでしょう。実際、私は理学療法士でありながらwebライターとしても仕事を請け負っています。
webライター業では、理学療法士の経験という強みを活かすことによって仕事を受注することができている状況です。
リハビリ職供給過多の環境では、リハビリ職という肩書きのみで求められる数が減少するため、より希少性の高い人材が選ばれるようになります。そのため、個人の強みが必要となるのです。
『個人の強み』と考えた時、それはリハビリ職の領域のみとは限らないのではないでしょうか。
何か1つに囚われる必要はありません。強みはそれぞれの価値観によって変化するものであり、個人が伸ばしていくべき要素なのです。
その③:マネジメントチャンスの得られやすい職場への転職
マネジメントのチャンスが訪れる可能性の高い環境は存在します。制度や資格、職種の影響によって機会は変化するのです。
そのため、現在の環境でマネジメントのチャンスが得られにくいと感じているのであれば、転職などで環境を変えることによってチャンスを得られる可能性があるでしょう。
たとえば、機能訓練指導員としてデイサービスに所属した場合を考えます。制度上、常勤として1名以上必要とされているため、その枠に理学療法士として勤めたとしましょう。
デイサービスの看護師・生活相談員・介護職員の人員配置基準は環境によって変わり、専従でなくても良い職種も存在します。そのため、非常勤職員の多い職場環境になる可能性があります。
また、ある論文の中では介護職と比較して理学療法士の意向がケアやサービスの方向性に強く反映されやすいとされており、理学療法士は発言力の高い立場になりやすいと示唆されています。
つまり、制度や職種の関係性などが環境によって変動し、職員評価に影響を及ぼす可能性があるでしょう。
マネジメント職のチャンスを得られやすい環境に所属することによって、マネジメントキャリアを経験しやすくなることがあり得るのです。
制度や職種の影響がなく、立場が一律で同じような環境の場合、個人の能力で差別化を図るしかありません。
マネジメントのチャンスは環境によっても変わるものであるため、環境を活かすことを考えるのもキャリア形成の1つの手段になり得るのではないでしょうか。
まとめ
マネジメントのチャンスがなかなか無かったとしても、キャリア形成の方法はあります。
誰しも活かせる強みがあるのではないでしょうか。
大切なのは、固定観念を持たず、個人の強みを活かすという観点で行動することです。理学療法士という領域にこだわるべきかどうかは、個人の生き方によるのです。
リハビリ職供給過多の時代を理学療法士として生き抜くのであれば、専門性を高めていく必要があるでしょう。
マネジメントキャリアも強みになります。チャンスを得るためには個人の能力のみでなく、環境にも影響されます。キャリア形成には、環境を活かしたり、個人の強みを活かしたりする必要があるでしょう。それらを適切に考え、判断していく力が大切になるのではないでしょうか。
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