働く世代の健康寿命延伸に理学療法士はどう関わるべきか?現場が具体案を考えてみる

リハビリセラピストの働き方を考える
理学療法士
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日本の平均寿命は年々伸びているけど、健康に長く生きるためにはどうしたらいいのだろう。平均寿命だけでなく、健康寿命を伸ばすことだは大事だと思う。そのために、理学療法士ができることはなんだろう。

2020年10月12日、日本理学療法士協会は「コロナ禍において国民に適時適切な理学療法を提供し健康寿命を延伸するための要望」を田村厚生労働大臣に提出しました。

この要望書は「働く世代に対して健康寿命延伸のために重要な、栄養と運動の指導」や「コロナ禍における生活がどのような影響及ぼすか、実態調査すること」などに理学療法士の活用を働きかけるものです。

要望書の内容を踏まえ、健康寿命延伸に理学療法士がどう関わるべきか考えます。

記事のテーマ
  1. 平均寿命と健康寿命の差を少なくすることが大事
  2. 健康とは個人間で差があるが、生活に支障が出ているか否かが重要
  3. 医療・介護両分野に幅広く携わる理学療法士だからこそできることがある

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理学療法士協会が要望書を提出した意味とは?

理学療法士協会が要望書を提出した意味とは?

すべての人にとって、健康をいかに維持するかは永遠のテーマです。特に世界でもトップクラスの長寿大国である日本では、元気で長生きすることが重要です。

あらゆる世代に方に関わる機会の多い理学療法士だからこそ、できることがあります。ここでは理学療法士協会が提出した要望書をもとに、なぜ健康寿命延伸が大事なのか考えます。

平均寿命と健康寿命とは

健康寿命延伸について考えるためには、平均寿命と健康寿命の違いを理解する必要があります。平均寿命とは文字通り、何歳まで生きられるかという平均年齢になります。健康寿命とは、健康に生きられる年齢の平均です。国では「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義しています。

健康とはどのような状態でしょうか。健康の捉え方は個人の価値観で異なります。子どもであれば保育園、小学校などで活発に遊べること、仕事をする世代であれば仕事を継続できるだけの身体であること、高齢者であれば最低限自分のことが自分で行えることが大事です。健康の範囲は違いますが、日常生活が制限されているか否かが重要になります。

健康寿命の最新のデータは2016年に公表されており、男性72.14歳、女性が74.79歳となっています。これに対し平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳です。さらに2019年の平均寿命は男性81.41歳、女性87.47歳と過去最高を記録しています。平均寿命が延長する中で重要なことは、健康寿命を延伸させることです。

平均寿命と健康寿命の差を少なくすることです。長く生きられるようになっても、健康を損なっていれば充実した人生を送れません。そこで理学療法士の活躍が期待されます。

病院には健康ではない方が来る

病院で出会う患者さんは、健康とは言えません。何かしら不調を来たしたからこそ病院に来ているのです。理学療法士を含む多くの医療従事者は、健康を損なった方との関わりが多くなります。

しかし、少子高齢化に歯止めがかからず医療費が増える現状では、いかに健康を保つかということが重要になります。健康を保つためには、バランスの取れた食事、適度な栄養、十分な睡眠時間を確保するなど規則正しい生活を送ることが重要です。

生活習慣が乱れても、体調不良や肩、腰の痛みなどの症状がすぐに現れるわけではありません。症状が現れなければ不摂生を続けます。症状として現れ、生活に支障を来したときに病院を受診します。

病気や怪我は起こってから治療するよりも、起こらないように予防することが重要です。予防ができれば病院を受診する必要がなく、医療費も抑制することができます。どのように予防していくか考えたとき、理学療法士の役割が重要になります。

健康維持のためには運動が大事であり、運動をするためには適切に栄養を取ることが重要です。理学療法士は運動、栄養両面で豊富な知識があります。健康寿命延伸のためには高齢者だけでなく、働く現役世代から健康保持のための習慣をつけることが重要です。

理学療法士の知識と経験は病気の方だけでなく、そこに至る前の方々にも活かすことができます。今回の要望書は、健康増進に向けた取り組みにおいて、理学療法士の活用を望むものです。

理学療法士として健康寿命延伸のために取り組めることは何か?

理学療法士として健康寿命延伸のために取り組めることは何か?

理学療法士は解剖学、運動学、生理学の知識を活用しリハビリテーションに従事します。その知識は健康寿命延伸のために活かすことができます。

ここでは、理学療法士が健康寿命延伸のために取り組めこととして、「病気や障害の予防に向けた取り組み」「歩行の習慣をつけること」「感染予防をしながら活動量を維持すること」を挙げました。以下に解説します。

具体案①:病気、障害の予防に向けた取り組み

健康寿命延伸のためには、当然のことながら健康を維持することが重要になります。だれもが病気にはなりたくない、怪我もしたくない、健康でいたいと考えます。自ら進んで不健康になる方はいません。健康でいたいと思っているものの、生活習慣を変えるのは難しいことです。

それは厚生労働省が2020年10月に公表した、令和元年「国民健康・栄養調査」の結果から見ることができます。この調査で食習慣改善と運動習慣改善について「関心はあるが改善するつもりはない」とする回答の割合が約25%とされています。

健康でいたいとは考えても、習慣は変えられない、変えたくないと考える方が多いのが現状です。

また、食習慣や運動習慣を変えるつもりはあるものの、仕事や育児・家事が忙しく実践できないとする回答も多くありました。忙しくても行える方法を伝えていく必要があります。

具体的には、健康診断の活用です。仕事をしている世代では、職場で毎年健康診断を受ける機会があると思います。そこで食習慣や運動習慣の改善を望む方には、理学療法士がその方に合った方法を指導します。

例えば、仕事や家事の合間に行える運動を教えたり、時間の使い方の工夫をアドバイスしたりします。病院の外来患者さんに行うような感覚で、予防のための助言を行うのです。指導によって、少しでも習慣を改善させることができれば、成功体験から意欲が向上します。

悪い習慣が変えられないように、良い習慣も一度身につければ変えにくいと思います。そのきっかけに理学療法士の知識と経験を活かすことができます。

具体案②:歩行の習慣をつける

コロナ禍の現在では集団で歩くのは感染のリスクを高めてしまいますが、数人で距離を取って歩く、一人で歩くようにすれば対策は可能です。もちろんマスクをした上で、手洗いや消毒も重要です。感染対策をしっかりした上で歩行の習慣をつけることは活動量を維持し、免疫力も高めます。

仮に感染症にかかっても免疫力を高めていれば、重症化のリスクを減らすことができます。動かないことが感染症に対して良いことばかりではありません。動かないことで感染症に弱い身体にもなるのです。

また、歩行は骨粗鬆症予防に重要です。歩くことで骨に刺激が加わり、強くなります。また転倒しにくい身体も作れます。

どのように歩けばよいかわからない、どのくらい歩けばよいかわからない方には理学療法士が介入します。全く運動習慣のない方が、長い時間歩行すると腰や膝に痛みが出ることがあります。痛みが出るとやる気がなくなり、続けられません。それでは習慣になりません。理学療法士がその人にあった、量、時間などを考えて指導します。痛みが出たら、どんな歩き方がよいかアドバイスします。

歩ければ少々腰や膝が痛くても、日常生活は問題なく送れます。働く世代から始めることで、仕事をしなくなり高齢になっても続けることができます。良い習慣を作るためには、専門家である理学療法士を活用するとよいでしょう。指導してくれる人がいると意欲が増します。体調がよくなったと実感できれば、楽しく健康維持ができます。

具体案③:感染予防しながら活動量を維持することが大事

コロナ禍の今、働き方は変化しました。働く世代では在宅ワークが増加し、ほとんど自宅から出ない生活を送っている方もいるでしょう。通勤で駅まで歩いたり、営業先への移動で歩く機会が減りました。

自宅で過ごす時間ば長くなった分、活動量維持が難しくなっています。さらに在宅ワークではプライベートと仕事の境界が曖昧になりやすく、休憩も自由に取れるため完食しながら作業することも可能です。食習慣、運動習慣の乱れに繋がりやすい環境となります。

そこに理学療法士が介入し、生活改善へと導きます。

生活改善を目指す在宅ワークの方向けに、理学療法士がリモートで聞き取り調査をします。健康に対するお悩み相談のような形です。

例えば、食習慣の乱れを改善したい方であれば、食事の内容を教えていただき、バランスの良い食事が取れるように促します。運動不足を気にしている方であれば、自宅で特別な器具がなくても行える自重トレーニングをお伝えします。

病院に行くほどではないものの、肩や腰の痛みに悩む方であれば、仕事の合間に行えるストレッチを指導します。また、症状を聞いて病院に行くべきか、様子見でよいか問診である程度はわかります。

実現すれば理学療法士の職域を広げることにもなります。理学療法士は基本的にリモートで活動しにくい仕事ですが、この方法なら理学療法士の知識を活かせます。感染対策しながら、健康増進に向けた活動が可能になります。

健康寿命延伸の取り組みにおける課題と問題点

健康寿命延伸の取り組みにおける課題と問題点

健康寿命延伸に向けた取り組みは重要です。一方で実行に移すためには課題もあります。実行には理学療法士自身の意識改革が必要です。

また、どのように人材を確保するかという課題もあります。また、理学療法士が介入することで健康増進が図れているのか、効果を確認することも重要です。以下に解説します。

その①:どのように意識改革し、どのように実践するか

健康寿命延伸に向けた取り組みに理学療法士を活用することは、理学療法士にとっても職域を広げるチャンスです。理学療法士が地域住民に向け、健康体操や公開講座などを利用し障害予防をすすめている地域もあります。

しかし、理学療法士の本業は病院や施設の中という印象があります。この意識を改革しない限り、病気や障害予防につながらず健康寿命延伸に向けて十分力を発揮できません。まずは健康増進を考える理学療法士どの程度いるのか、調査する必要があります。理学療法士協会が厚生労働省に要望していても、実践するのは現場の理学療法士たちです。

実行に移すに当たって次の課題は、活動に参加する理学療法士に対する報酬です。無償ボランティアでは理学療法士を十分確保することは難しいでしょう。有償の場合、だれがどのような形で報酬を与えるか考えなくてはなりません。

また、地方行政単位で市役所などに理学療法士を配置して行うのか、国から指定された医療機関で働く理学療法士が行うのか、病院や施設で働く理学療法士がダブルワークのような形で実施するのか、フリーランスの理学療法士が登録制のような形で行うのかなど検討が必要です。

さらに、アドバイスや指導内容にばらつきが出やすいため指導マニュアルや研修なども必要になるでしょう。健康寿命延伸に向け理学療法士の活用は重要ですが、実践するためには内容を詰めていく必要があります。

その②:効果をどのように測るべきか

高血圧や糖尿病など持病をお持ちの方は、病院で定期的に血液検査をすることがあります。データで異常値が正常値に変化していれば生活改善の効果を測ることができます。

しかし、最も重要なことは、利用者本人が主観的に「体調が良くなった」「健康的な生活ができている」と実感することです。主観的に自覚できなければ、効果を感じることができず継続を断念するかもしれません。食習慣・運動習慣の改善が苦しいと思っている場合、簡単に楽な方に逆戻りしていまいます。

そこで、定期的に効果判定することが重要になります。健康診断におけるA判定、B判定のようなものです。アンケートを実施し、改善度を探ります。そこに主観的な効果を、どれだけ実感しているかも盛り込みます。

アンケートの結果をもとに、さらに改善が必要なポイントや継続できいない理由を探し適切なアドバイスをします。病院のリハビリでも定期的に測定・検査を実施し、リハビリ計画書の作成・説明義務があるため業務内容な似ています。

ここまでを計画的に行なっていくためには、理学療法士のマンパワーが必要です。病院や施設に働きながら、行政の仕事も行うには時間的余裕がありません。実践するためには、健康寿命延伸に向けた活動を専門的に行う理学療法士を確保する必要があります。

まとめ

理学療法士協会の要望書をもとに、健康寿命延伸に理学療法士がどう関わるべきか考えを述べました。少子高齢化が進む中で、健康寿命延伸に向けた取り組みは社会全体で考えていかなければなりません。

そこで運動や栄養に知識のある理学療法士の活用が重要になります。病気や怪我はなってしまってから治療するよりも予防が大事です。完全に防ぐことは難しいですが、適切な生活習慣を身につけること、運動をして転びにくい身体づくりをすることが予防につながります。

それは、高齢者になる前の働く世代から行う必要があります。若い世代から習慣を変えることで高齢になっても、良い習慣を維持できます。

具体的な方法として指導が必要と判断される人に対し、理学療法士が食習慣・運動習慣改善の方法を伝えます。正しい食習慣や運動習慣が身につくように助言・指導します。

さらに助言・指導した内容で生活改善ができているか、定期的に効果判定することも重要です。一方で実行に移す場合には、病院や施設で働くことが当然と考える理学療法士の意識改革が必要です。患者として来る前の人に目を向けなくてはなりません。

また、人材の確保や報酬をどのように与えるかも課題です。指導マニュアルの整備も必要でしょう。課題はまだまだありますが、実現すれば理学療法士の活躍の幅を広げることができます。今後の動向に注目です。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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