早期リハビリの重要性を問う。急性期病院の理学療法士の人手不足問題

リハビリセラピストの働き方を考える
※画像はイメージです。
理学療法士の人手不足に興味がある人
理学療法士の人手不足に興味がある人

急性期からリハビリが大事だと言われているけど、充実していないとニュースで見た。人手不足が理由の一つみたいだな。理学療法士はたくさんいるはずなのに、なぜ不足してしまうんだろう。急性期の理学療法士が少ないのは、重要視されていないのかな。本当のところが知りたい。

医療従事者だけでなく一般の方でも、リハビリという言葉を知っている方が増えてきました。

リハビリが一般的になった今でも、理想と現実にはズレがあります。その一つが急性期病院において、早期リハビリが充実していないということです。

理学療法士は、可能な限り早期からリハビリを行い、動作能力を回復させることが重要と理解しています。重要性が多方面に広く、伝わっていない現状があります。その結果、現場は人手不足に陥っています。以下に早期リハビリの重要性を改めて考えていきます。

記事のテーマ
  1. 理学療法士は、早期リハビリが大事なことを理解している
  2. 人手不足ではリハビリの質と量の確保が難しい
  3. 必要な場所に人員を集めるには、結果をアピールすることが重要

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急性期病院の理学療法士の人手不足問題

急性期病院の理学療法士の人手不足問題

急性期病院における理学療法士の数が、不足しているという記事が掲載されました。急性期から早期にリハビリを開始することは重要ですが、現場に活かされていない現状があります。理学療法は患者さんと1対1で行うため、人手不足では必要な方にサービスが行き届かなくなります。

ここでは、ニュースの概要を解説し、急性期病院に理学療法士が不足するとどうなるか、理学療法士の配置の重要性が理解されていない現状について考えます。

ニュースの概要

2020年8月10日の日本経済新聞で「急性期病院 理学療法士少なく」という記事が掲載されました。記事では、2020年5月の日本理学療法士協会による調査で、新型コロナ患者に理学療法を実施したのは290施設中、約3割と低い水準だったとの結果が示されています。

参考急性期病院 理学療法士少なく(日経新聞)

ICU入室時から早期リハビリが必要な患者がいても、体制が十分整っているとは言えない状況です。早期リハビリの体制が十分でない理由に人手不足を挙げています。

急性期から早期にリハビリを行うことの重要性は、理学療法士なら誰もが理解しています。

しかし、現実は少し違っています。日本理学療法士協会による医療機関を対象にした2016年の調査では、人手不足を感じる割合が回復期で約3割に対し、急性期では約7割との結果が出ています。現場の意見としても、急性期ほど人手不足を感じているようです。

回復期は文字通り、急性期の生命の危険を脱して、積極的に機能回復を図る時期です。患者さん、理学療法士がお互いに協力してリハビリを頑張れる時期です。そこで理学療法士の数が必要になることは容易に想像できます。一方で急性期は少数精鋭です。救命が最優先の現場では、リハビリのタイミングは非常に難しいものです。

理学療法士が少なくてもリハビリの処方数が少なければ、対応できてしまいます。必要性はあるのに、理学療法士の配置が少ないからリハビリ処方を最低限にしている状況もあります。

まずは、急性期の理学療法士の配置を増やす試みが必要と考えます。

急性期病院に理学療法士が不足するとどうなるのか?

急性期病院に理学療法士の数が十分ではない場合、1人の患者さんにかけられる時間は少なくなります。時間をかけられないことは量だけでなく、質も低下します。

例えば、重症肺炎で人工呼吸器管理を余儀なくされた患者さんの場合、換気効率の良い体位を取り、気道内分泌物の除去を促すことが重要です。人工呼吸器を装着した状態での体位変換は、抜管のリスクを伴うため看護師と協力して行います。

換気が改善しそうな体位を考え、体位変換し、痰の排出を促すだけで20分が終了することもあります。シビアなリスク管理をしながら、短時間で行えることは限られます。

時間がないからと言って手を抜いたり、雑な方法で行うと患者さんの状態を悪化させる危険もあります。時間がないことはミスが出やすくもなるため、急性期の理学療法士は高い緊張感を持って仕事しています。

次に脳出血の患者さんで考えてみます。脳出血発症早期は再出血予防のため、バイタルサインを何度も確認しながらリハビリを行います。特に血圧の上昇には注意が必要です。介入早期には電動ベッドでヘッドアップしながら座位に至るまで、適宜血圧を測定します。

さらに、意識レベルが低かったり、失語症などコミュニケーション障害を伴うと自覚症状を聞くことが難しくなります。他覚所見で判断するしかありません。人手不足の現場では、リハビリを進めるべきか現状に留めるべきかを短い時間で判断する高いスキルが求められます。

理学療法士を配置する重要性が広く理解されていない

理学療法士は、早期からリハビリを開始し、可能な限り廃用症候群を予防することの重要性を理解しています。

しかし、世間一般まで十分浸透しているとは言えません。一般の方には「リハビリ=運動」というイメージを持たれている方が多くあります。

また、リハビリ専門職以外の医療職でも一般の方と同様に考えている場合があります。理学療法は医師の指示のもと行う行為のため、医師からの処方が必要です。処方を出す医師がリハビリは運動ができる状態になってからという意識では、早期リハビリの重要度は高まりません。

理学療法士がいなくても救命はできます。人工呼吸器の管理もできます。リハビリの行い方次第では、患者さんの状態を悪化させる危険もあります。不安要素がある中では、医師もなかなか処方を出してくれません。

理学療法は、処方が出されて初めて介入することができるため、処方がないことには実績を積むことができません。早期リハビリで処方が出されたときには、リハビリを行うことで回復が早くなったり、ADLを早期に拡大するといった結果を出すことが重要になります。

人手不足のなかで、結果も出さなくてはならないのは大変なことです。それでも、結果を出すことで信頼に繋がります。急性期病院で早期リハビリを開始し、患者さんが回復すると広く認知されることが重要ではないでしょうか。

どうしたら早期リハビリの重要性を理解してくれるのか?

どうしたら早期リハビリの重要性を理解してくれるのか?

早期リハビリの重要性を理解してもらうには、とにかく結果を出すことです。早期リハビリの介入によりADLが拡大したり、入院期間が短縮するといった結果があれば重要性が認識されます。

急性期でリハビリ時間が短く、後方病院で入院期間が長くなれば医療費が大きくなります。短い時間で結果を出すためには、量と質の充実が重要です。重要性が理解されなければ、人員は増えません。以下に、どのようにするべきか解説します。

方法論①:急性期で結果を出すために、他職種との協力が大事

急性期からリハビリを開始することで、患者さんの動作能力が向上すれば早期リハビリの重要性が理解できます。人手不足で1人の患者さんに多くの時間を割けない現状はあります。

しかし、重要性が認められるためには、結果で示すしかありません。結果を出し続けることが重要です。

患者さんの回復を促進するためには、理学療法士の力だけでは不十分です。一人でできることは限られます。そこで、他職種との協力が必要です。呼吸器疾患であれば、理学療法士が直接介入していない時間でも看護師に換気効率のよい体位を指導します。

整形外科疾患であれば、骨折後で痛みが強い中でも痛みの少ない介助の仕方を指導します。また、介護福祉士を配置する病院であれば、役割分担をして病棟生活を拡充することも重要です。

具体的には、バイタルサインの不安定なリスクの高い患者さんであれば、看護師が業務に当たり、安定している場合のケア業務は介護福祉士が担当するという具合です。それぞれが役割に合わせた業務を行い、互いに連携しながらリハビリを行うことで患者さんの回復に繋がります。

このような過程は、回復期ではよく見られますが急性期では少ない印象です。急性期でも高齢化が進んでいるため、早期から医療・介護両面での関わりが重要と言えます。少ない人員で結果を出すためには、互いの協力を密にすることが必要と考えます。

方法論②:地域に向けて必要性をアピールする

早期リハビリの重要性を病院で理解してもらうためには、結果を出して医師の信頼を得ることが重要です。

しかし、医療業界だけでなく、世間一般にも理解を広げるためにはそれだけでは不十分です。世間一般の理解度が深まり、早期リハビリのニーズが増えれば理学療法士の配置も充実させる必要性が出てきます。

人が救急病院へ搬送されるということは、生命の危険があったり、動けない状態になっていたりと緊急事態が起こっています。その中で特定の病院を選ぶことは難しいです。ですがもう一歩踏み込むと、救命後のADL低下や骨折後の介護度の重症化なども可能な限り避けたいものです。

「生命が助かった。骨折の手術をした。でも寝たきりになった。」これでは、その方のQOLは上がりません。

そこで早期リハビリの重要性を、世間一般にもアピールすることが大事になります。アピールの方法は様々ですが、まずは少しでもリハビリに興味のある方に発信していくことが重要です。

興味のない方へのアピールは、ある程度認知されてからでなければ難しいと考えます。具体的には市民公開講座などの勉強会の開催です。私が以前勤務していた公立病院では、年に数回、市民公開講座を開催し情報を発信していました。

地域の理解度が深まり、それが全国に広まれば早期リハビリがもっと一般的になるのではないでしょうか。

方法論③:ADL評価で結果を見える化する

リハビリの効果が認められるためには、結果が目で見てわかることが大事です。数値で示すことで結果を感じやすくなります。回復期病棟では、アウトカム実績指数が2016年より導入されています。

回復期病棟への入棟時と退棟時のFIMの差と、在棟日数から算出される数値です。これにより短い期間で、ADLが上げられる回復期病棟がより評価されることになりました。

2020年の診療報酬改定では、回復期リハビリテーション病棟入院料1の実績指数が37以上から40以上へと見直されました。

回復期病棟では実績指数で評価されますが、急性期には導入されていません。リハビリの目的は可能な限り患者さんのADLを拡大させ、入院前の生活に戻ることです。その一翼を担う理学療法士の役割は、非常に大きいものです。

急性期の治療と並行して、早期よりリハビリを充実させることで、自然と実績はついてくるのではないかと考えます。リハビリの効果を上げている病院には、加算が追加されるようなシステムがあれば、急性期にも人員配置しようと検討すると思います。

患者さんの状態は日々変わります。「今日は昨日より活気がある」とか「座っていても顔つきが良くなった」とか感覚的な改善も大事です。リハビリの効果をすべて数値化することは難しいですが、数値化できるものはしていくべきです。

まとめ

急性期病院の人手不足問題のニュースより、早期リハビリの重要性について考えました。

急性期病院を利用する患者さんも高齢化が進むなかで、急性期治療をして即退院という流れは少なくなります。リハビリは急性期治療を終えなければ、行えないわけではありません。治療と並行して実施することで、廃用症候群を最小限に食い止めることが重要です。

早期リハビリが軽視されているわけではありません。重要性はある程度、理解されているものの、必要な方に必要なだけ行き届いていない現状があります。理学療法士全体の数はありますが、急性期病院の求人は少ないです。急性期病院への就職を希望しても、叶わない理学療法士が多数います。それを拾い上げて人員を充実させることが大事です。

そのためには、もっと早期リハビリの必要性をアピールしなければなりません。そこで急性期病院でも、ADL評価を利用して効果の見える化を進めることが重要です。

さらに、早期リハビリの重要性を広めていくためには、地域を巻き込むことも重要です。急性期病院は地域の中核病院であることが多いため、地域に与える影響力も大きいと思います。

急性期病院がリーダーシップを取って活動することで、早期リハビリへの理解度が深まるのではないでしょうか。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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