リスク管理に必要な整形外科クリニックにおけるフィジカルアセスメントとは?

リハビリセラピストの働き方を考える
※画像はイメージです。
整形外科クリニックで働くPT
整形外科クリニックで働くPT

リスク管理ではフィジカルアセスメントが大事だって話を聞いたことがあるけど、整形外科クリニックでも必要なの?そもそもフィジカルアセスメントという言葉は聞いたことがあるけど、どんなことをすればよいのかわからない。

理学療法士は勤務する場所によって関わることのできる患者さんが変わります。

しかし、総合病院でも老人保健施設でも整形外科クリニックでも患者さんに関わる以上、リスク管理は重要です。リハビリを行うにあたって患者さんには様々なリスクを伴います。

整形領域であれば、外傷後の炎症がどこにどの程度起こっているか、骨折の治癒がどの程度すすんでいるか、運動に伴うバイタルサインの変化やADLを拡大しながら転倒を防ぐことも重要です。

リスク管理とは幅広い知識の集合で成り立ちます。今回は、リスク管理の中でもフィジカルアセスメントに注目して解説します。

記事のテーマ
  1. フィジカルアセスメントはすべての理学療法士に重要なスキル
  2. フィジカルアセスメントをどのように進めればよいのか
  3. 整形外科クリニックで特に見るべきポイント

質問があれば気軽にコメントください

リスク管理を行うためにフィジカルアセスメントが大事

リスク管理を行うためにフィジカルアセスメントが大事

医療従事者にとってリスク管理は業務上必須となるスキルです。特に物理的手段や運動を治療に用いる理学療法士においてさらに重要になります。

整形外科クリニックでは患者さんの高齢化に伴い循環器・呼吸器の既往歴を持つ方も少なくありません。

そこで特別な機器を使用しなくても行えるフィジカルアセスメントのスキルを身につける必要があります。以下にフィジカルアセスメントの考え方、循環・呼吸状態の見方を解説します。

フィジカルアセスメントの考え方

フィジカルアセスメントとは文字通り「身体的な」「評価:情報を収集して判断すること」を意味します。具体的には問診・視診・触診・聴診・打診を通して様々な情報を収集し分析し、状態を判断することです。

高性能な医療機器を使わず理学療法士が自らの身体と知識を使って評価していきます。身体的な評価というと理学療法士が日頃から行なっていることと結びつきます。

また、特別な機器を必要としないため総合病院のように高度な設備が備わっていない環境でも十分行うことができます。フィジカルアセスメントを行うためには当然のことながら適切に実施するための知識が必要です。

その中でも問診が重要です。理学療法士なら毎日行なっていることでしょう。患者さんに「今日の調子はいかかですか?」「痛みは強くなっていないですか?」などその日状態を聞きます。

この一見何気ない会話の中で、コミュニケーションが適切に取れているかや質問に対する反応を見ます。認知症の既往があり、コミュニケーションが取りにくい患者さんもいらっしゃいます。

普段は、記憶障害あっても穏やかに会話できたり、簡単な指示には応えることができるにも関わらず会話が成立しなかったり、落ち着きがなく、何度も同じことを繰り返し言ったりする場合は心拍出量低下による脳血流の減少も考えられます。

問診で普段を異なる違和感があれば視診・触診へと他のフィジカルアセスメントへ繋げることができます。

循環状態を見るフィジカルアセスメント

整形外科クリニックでは総合病院ほど高度な医療機器は備えておらず、急変した場合は近隣の総合病院に転院することが多いです。そうなる前にどれほどのリスクがあるか推測しながらリハビリを進めることが重要です。

循環状態を見る上で、大事なことは安定している状態を知ることです。循環状態が安定している条件としては、①脈拍・血圧の日内変動が少ないこと、②脈拍・血圧が体位変換しても大きく変動しないこと、③不整脈がコントロールされていることが挙げられます。

これらは全て血圧計と脈拍の触知ができれば特別な機器がなくても測定することができます。不整脈に関しては心電図モニターがあればよりわかりやすいですが、モニターがなくても脈診で不整脈があることは概ねわかります。

高齢の整形外科疾患の患者さんであれば、高血圧の既往を持つ方も多くあります。正常でも血圧には日内変動があります。一般的に睡眠中がもっとも低く、起床前から起床後に上昇します。その後は、夕方から夜にかけて低下するという一定のリズムを刻んでいます。

そのため、リハビリを行う時間帯も意識する必要があります。特に朝一のリハビリは血圧が高くなる傾向があるため注意が必要です。

リハビリ以外の時間で病棟の検温表を確認するなどして、1日のなかでどの程度変動があるか確認しておく必要があるでしょう。30mmHg以上の日内変動がある場合は、高血圧がコントロールできていないことが考えられるため、主治医に相談するとよいでしょう。

呼吸状態を見るフィジカルアセスメント

呼吸の異常に気づくためには正常呼吸パターンを理解していなければなりません。

正常呼吸パターン関して「実践!早期離床完全マニュアル」では①呼吸数が12〜20回/分、②換気の70%は横隔膜が担う、③吸気は横隔膜と肋間筋の収縮によって行われ、呼気では筋収縮は伴わない、④吸気:呼気の時間比は1:1.5〜2、⑤吸気終末に呼吸運動の小休止がある、⑥胸郭と上腹部の呼吸性運動が協調し、胸郭の拡張性の左右差はないと記載されています。

この中で②については70%が横隔膜で行なえているか判断が難しく、③についても適切に行えているかどうか見えにくいところであります。その他の項目に関しては比較的見えやすいと思います。

特に、①の呼吸数に関しては1分間の回数を測ればよいのみですし、胸郭に手を当てながら呼吸数を数えていけば同時に胸郭の左右差は協調性を確認することができます。

さらに、詳細に換気のバランスを確認したい場合は聴診器を使用して肺の肺区域ごとに聞いていくと左右差を細かくみることができます。

整形疾患でリハビリを受けている患者さんであっても、既往にCOPDがあったり、脳梗塞後の片麻痺で胸郭の運動に左右差があったりする患者さんでは、呼吸のフィジカルアセスメントが特に有用です。

呼吸の評価に慣れていない理学療法士であれば、まずは呼吸数を数えることから始めるとよいでしょう。

ちなみに、呼吸数が1分間に25回以上であれば頻呼吸、12回以下であれば徐呼吸といいます。徐呼吸は意識レベル低下や頭蓋内圧亢進で起こることがあるため特に要注意です。

運動負荷が大きいと頻呼吸になるため25回以上になっていれば休憩の目安になります。

整形疾患のフィジカルアセスメントのポイント

整形疾患のフィジカルアセスメントのポイント

フィジカルアセスメントの概要が掴めたところで整形疾患に特に重要となるポイントを見ていきます。

1つ目は炎症の確認です。炎症がどの部位にどの程度起こっているか判断することは治癒過程を阻害しないよう進める上で重要なリスク管理です。

2つ目の痛みに対するアセスメントは患者さんとの信頼関係を築くためにもなくてはならない評価です。

3つ目の筋の触診で障害部位の同定や治療の方向性を判断します。以下にそれぞれ解説します。

ポイント①:炎症の確認

整形外科クリニックの場合、骨折後の固定や手術後の患者さんが多く見えます。

入院施設を持つクリニックでは総合病院で手術をして、リハビリ目的で転院した患者さんに関わる機会があり、回復期病院と同じような役割を担っています。

手術後2週間ほどで転院すると術後の炎症が残存していることがあります。そのような患者さんを担当した理学療法士が行うべきことは炎症の状態を把握することです。

炎症反応の特徴として、発赤・熱感・腫脹・疼痛があり炎症の4徴候と呼ばれます。炎症の把握には患部を注意深く観察することが大事です。

そのためには、患者さんの同意を得た上で直接観察することが重要です。例えば、大腿骨転子部骨折により髄内釘による骨接合術を施行された患者さんの場合、髄内釘挿入のための術創部が3箇所ほど残ります。

その周囲に発赤・熱感・腫脹・疼痛がないか観察します。多くの場合が健側よりも大きく腫れ上がっています。観察したら次に触診しながら少し動かしてみます。皮膚を切開している場所では癒着・瘢痕化によって伸張性が低下していることが多いです。

皮膚を摘んで動かしてみると、どの程度の伸張性があるか判断できます。強く動かしすぎると炎症を助長することがあるため、始めのうちは伸張性を確かめる程度にして、徐々に慣らしていきます。腫脹に関しては観察に加え、周計を測定しておくと変化が数値で追うこともできます。

ポイント②:痛みのアセスメント

整形外科クリニックでは痛みを訴える患者さんは多いです。骨折後や手術後の患者さんが多いため、ほぼ毎日のように「痛みはどうですか?」「どこが痛いですか?」といったことを聞きます。

痛みのアセスメントでは、痛みの部位、痛みの程度、どんなときに痛いかなどを問診します。痛みの部位に関しては、手術後の患者さんであれば患部をよく観察し炎症反応が強くなっていないか確認します。

下肢の骨折であれば、患部周囲だけでなく下肢全体の変化を見るようにします。痛みの程度に関してはアセスメントツールを使用すると数値化できます。

アセスメントツールとしてはVAS(Visual Analog Scale)、NRS(Numerical Rating Scale)、フェイススケールなどがあります。VAS最大の痛みから痛みなしまでを10cmの線にして、今の痛みに印を付けていただく方法です。

NRSは線ではなく数字を使用します。最大の痛みを10、痛みなしを0としたときに現在の痛みはどの程度か質問します。

患者さんに数字で答えていただくため、数字がどの程度の痛みを示すのか知っておく必要があります。目安として1〜3は「軽い痛み」、4〜6は「中等度の痛み」、7〜10は「強い痛み」となります。

フェイススケールは、顔の絵で痛みの程度を示すため、口頭理解が低下している高齢患者さんや認知症患者さんでも取り入れやすい方法です。患者さんに合わせて使用すると痛みの経過を追いやすくなります。

ポイント③:筋の触診

炎症部位がある程度把握できたら、筋の触診が重要です。炎症部位の周囲の筋には痛みを防御するため、過剰に収縮しスパズムを形成している場合が多いです。

筋スパズムは炎症部を守るため、身体が防御していると出現し二次的に起こっているものです。放置しているとそれ自体が痛みの原因になるため、触診し緩和していくことが重要です。

この過程はアセスメントしながら、治療にも繋がっています。先ほどの大腿骨転子部骨折の術後の患者さんを例にします。

まず、手術で外側の大腿筋膜は侵襲を受けるため、関連する大腿筋膜張筋や外側広筋はスパズムを生じやすくなります。それらの筋を触診して硬さや圧痛を確認します。

また、外側の筋が過緊張になっていると、拮抗する内転筋群にも影響を与えます。内転筋群の硬さや痛みも同時に確認します。

内転筋群に硬さがあると、外転筋群は拮抗的に活動しにくくなるため、柔軟にしておく必要があります。次に術部への負担を考慮しながら、慎重に動かしてどのような反応が起こるか確認します。

防御収縮が起こると運動の阻害となるため、軽い収縮と弛緩を繰り返してリラクゼーションを図ったり、筋膜を緩める操作をしたりすることが重要になります。どの筋を治療対象とするか判断するためにも、筋の触診が重要なアセスメントになります。

まとめ

フィジカルアセスメントの基本的な考え方から循環、呼吸状態の見方、整形疾患に特に重要なポイントについて解説しました。

どれも理学療法士なら日常的に行なっていることだと思います。患者さんの高齢化に伴い循環器、呼吸器系の既往歴をお持ちの方も増えました。そこで整形外科クリニックに勤務する理学療法士でも循環器、呼吸器の知識が必要になります。

フィジカルアセスメントでは、ただなんとなく血圧を測ったり、なんとなく患部を見たり、なんとなく痛みの程度を聞くのではなく、一つ一つの情報が整理できた状態で患者さんに関わることが重要と考えます。意識することでスキルが身についていくと思います。

意識していない状態で、痛みの程度を聞いて患者さんの痛みの程度が10から7になったとしても数字を追っているに過ぎません。

痛みの程度が減ったのであれば、同時に視診から炎症の度合いが軽減していそうか、動かしたときの痛みは、なぜ減ったのか筋の状態を触診し、理由づけをしていくことが大切です。

一つ一つのアセスメントが繋がりをもって理解できるようになると、患者さんの全体像が掴みやすくなり厚みのある「リスク管理」になると思います。

今回の内容を明日の臨床に活かしていただけたら幸いです。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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