
介護分野に転職を考えているけど、定年まで仕事を続けているのか心配。職位・給料の上昇はあるの?
新卒で人気の就職先といえば、病院やクリニックです。一方、デイサービスや老健、訪問系などの介護分野は、転職してから勤める方がほとんどでしょう。
介護分野は「経験が積めない」「キャリアアップしにくい」というイメージがありますが、介護分野だからこそ経験できることやキャリアの構築方法があります。
この記事では、介護分野で働く理学療法士のメリットや、医療分野では得られないやり甲斐をご紹介します。介護分野への転職を考えている方や、介護分野に興味のある方はぜひ参考にしてみてください。
- 利用者様に長期的なリハビリ介入ができる
- 人間関係が良い職場を重視するなら、介護分野がおすすめ
- 1人職場でも仕事をこなせるスキルが必要
理学療法士が介護分野で得られるメリット
私は新卒で病院に併設した介護老人保健施設(老健)に就職しました。給与や公休日の数を重視して就職先を決めたので、当時は介護分野での役割はよくわかっていませんでした。
これから10年以上、介護分野で働くことになるのですが、今では「あのとき、老健に就職してよかった」と思っています。ここでは、PTが介護分野で働くメリットを解説します。
その①:利用者様と長期的な関わりができる
介護分野では、利用者様と長期間な関わりができます。急性期や回復期病院では、入院中の3~6カ月しか関わりをもてません。
退院後にどのような在宅生活を送られているのか確認することは難しいでしょう。一方で介護分野は長い期間、リハビリの担当として関わることができます。
リハビリの効果を長期的なスパンで評価できるメリットはもちろん、最期まで利用者に寄り添えることは介護分野だからこそのやり甲斐だと思います。
その②:人間関係のトラブルが少ない
人間関係のトラブルが少ない環境を重視するなら、介護分野がおすすめです。リハビリのプログラムには、絶対的な正解はありません。
そのため「あのPTのアプローチは間違っている」「あのPTは勉強が足りない」など、スタッフに対する悪口を言う人がいますよね。特にリハビリスタッフが多い大規模病院や回復期病院は、リハビリ職種内での派閥の対立があったり、上下関係で人間関係に気を遣う場合あったりと、働きにくい環境も少なくありません。
介護分野はリハビリスタッフが少ないため、リハビリの知識や技術に関してのすれ違いや、トラブルが少ないです。
また、リハビリスタッフが少ないため、勉強会や症例検討会、学会発表の資料作りなどの残業はほとんどありません。プライベートな時間を使って勉強会の資料を作ることもないため、小さな子どもがいる方でも働きやすい環境です。
その③:余裕のある身だしなみや規則
介護分野は医療分野に比べて、身だしなみに関する規則が緩いと思います。特に大規模病院は明るい色の毛染め禁止、靴下は白色といった細かい規則があります。
私が勤務した介護施設では、茶髪程度なら髪を染めても問題ありませんでした。靴下の色も自由。20~30代はオシャレをしたい時期なので、身だしなみの規則が緩いことは良かったですね。
また、医療分野のほとんどは副業禁止に関する規則があります。こっそり副業をしているPTもいますが、副業がバレたときに注意されると嫌ですよね。介護分野は副業をOKにしている施設もあるため、理学療法士の仕事以外で収入を得たい方にもおすすめです。
その④:介護保険についての知識が学べる
介護分野で働くと、介護保険に関する知識が得られます。私はデイサービスに勤務していた際、よく担当者会議に出席しました。担当者会議ではリハビリ(機能訓練)に関する意見はもちろん、デイサービスの利用規則や料金について、利用者や家族へ説明します。
各加算がどのような内容なのか理解しておかないと説明ができないため、介護保険についてはかなり勉強しました。介護保険制度の仕組みを理解すれば、リハビリの実務だけでなく、書類を作成や運営にも携われます。
「この人はリハビリだけでなく、運営にも必要な人材だ」と評価されれば、職位や給与の上昇も可能だと思います。
また、新たに転職をする際にも介護保険に関する知識があれば、経験を考慮した給与交渉や内定をもらいやすい利点もあります。
その⑤:求人募集が多い・条件交渉しやすい
理学療法士の求人サイトでは、デイサービスや訪問看護ステーションなど介護施設の求人案件が多数掲載されています。介護分野は求人案件が多いため、転職時に複数の求人から選べることがメリットです。
私も2度の転職を経験しましたが、求人案件の少ない地方でも介護分野の求人案件は4~5件はありました。介護施設での勤務経験あれば、不採用になることも少ないと思います。
また、介護施設は給与や勤務形態の交渉をしやすいというメリットもあります。私は朝に子供を保育園に送迎するため、9時からしか出勤ができませんでした。
募集内容は8時半でしたが、面接で始業時間を交渉し、9時からの出勤で許可をもらった経験があります。リハビリスタッフの多い病院では、1人だけ労働条件を変えて採用される可能性は低いです。
しかし、介護施設はスタッフが少ないため、それぞれの事情に合わせて労働条件を考慮してくれる点も利点でしょう。
理学療法士に介護分野で求められる、必要なスキルとは?
介護分野は規則が緩く、とても働きやすい職場環境です。しかし、誰でも簡単に仕事ができる訳ではありません。介護分野で働くために、身につけておきたいスキルをご紹介します。
経験談①:自分で考えて行動できるスキル
介護分野の理学療法士は、自分でリハビリプログラムの一連を検討・実施し、介護や看護スタッフへの助言や指導をします。つまり「自分で考えて行動できるスキル」が必要です。
介護施設は同職種が少なく、いわゆる「1人職場」になることもあります。
私が勤務するデイサービスでは看護師も機能訓練指導員を担当しているため、理学療法士は私1人だけです。看護師の方へ評価や訓練のやり方の助言、介護職員へ移乗動作や入浴方法の指導を行っています。
私は理学療法士になり10年以上の経験がありますが、現在でも書籍や研修会の動画を見て自己研鑽を続けています。リハビリや介助方法について意見を求めてもらえるよう、日々知識を深めています。
経験談②:理学療法以外の業務に対応できるスキル
介護施設のほとんどは、慢性的に介護スタッフが不足しています。そのため、理学療法士でもトイレ介助や自動車での送迎業務など、理学療法以外の業務も対応できるスキルが必要です。
新卒で勤めたばかりの頃は「なんで自分がトイレ介助しないといけなの?」と思っていまいた。
しかし、現在は自分で介護業務ができるからこそ、介護職員への動作指導や助言ができると思っています。そのため、リハビリ業務がない時間帯は、介護業務にも積極的に参加するよう心掛けています。
経験談③:営業・接遇のスキル
介護施設は利用者を増やすために、営業スキルが必要です。待っているだけで患者様がやってくる病院やクリニックとは異なり、介護施設はサービスを利用してもらうための営業活動をします。
たとえば「この地域なら、あそこのデイサービスはリハビリが充実しているよね」と思ってもらえるよう、機能訓練の内容を工夫したり、パンフレットやホームページを作ったりして施設の特色をアピールできるよう活動しています。
理学療法士として、リハビリ業務ができるスキルは必須ですが、サラリーマンとして、会社に利益が出るよう活動できる点は介護分野だからこそできる経験だと思います。
また、利用者様や家族の方に信頼してもらえるように、言葉遣いやサービスの説明は丁寧に行うように常に意識しています。接遇のスキルは社会生活でもっとも大切なスキルなので、コミュニケーションや話し方に関する勉強も必要です。
まとめ
介護分野で働く理学療法士のメリット・やり甲斐をご紹介しました。介護分野は決して楽な仕事ではありません。介護分野だからこその苦労や困難事例も頻繁に発生します。
しかし、長い期間をかけて利用者様との信頼関係を築けることや、人間関係のトラブルが少ない職場環境はとても魅力的だと思います。私自身、これからも介護分野で働き、キャリアアップを目指していきたいと思っています。
これから介護分野で働きたいと思われている方は、今回の解説を参考にして、ぜひ介護分野への転職を考えてみてはいかがでしょうか。
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