
回復期病院で働いているけど、そろそろ別の場所でも経験を積んでみたい。介護分野に興味はあるけど、老健ってどうなんだろう?でも、実際に何をする施設か分からないし、転職して失敗するのも嫌だな。
回復期病院で働いているPTやOTの方の多くは、老健という名前は聞いた事があると思います。しかし、実際にどのような役割を担っている施設なのか説明できる方は少ないです。
老健でのPT・OTの知名度は決して高くなく、常に人手不足に悩まされていますが、実際は回復期病院の経験があるPT・OTにとって老健はとても働きやすい環境です。
そこで、今回は回復期病院から老健へ転職した筆者が、老健の魅力について解説して頂きます。
- 回復期病院からの転職を検討している人は、老健がおススメ
- 病院よりも残業が少なく、収入アップも見込める
- 老健での働き方にもメリットと、デメリットがある
回復期病院から老健へ転職した方が良い人とは?
私は新卒で回復期病棟のある病院で4年間勤務した後、老健へ転職しました。
元々は整形外科の病院への転職を検討していましたが、希望の求人がなく、何とか決めなくてはいけないという思いから、老健への転職を決意しました。
恥しいことに、老健についての知識は全くない状態での転職でしたが、結果的に老健への転職は私のような回復期病院の経験者にとって働きやすい環境でした。
ここでは、回復期病院の経験のあるPT・OTがなぜ老健へ転職した方が良いのか解説していきます。
回復期病院での経験を生かすことができる
老健の入所者様は骨折や脳血管障害を呈している方が多く、これは回復期病院の患者様の特徴と大きく変わりません。そのため、回復期病院で学んできた知識や技術は、そのまま老健で生かすことができます。
他の老健の特徴として、廃用症候群や認知症を呈している方が多いという特徴がありますが、これも回復期病院でのスキルがあれば、十分に対応する事はできます。
体力的に楽ができる
回復期病院では、病気や怪我を発症してから間もないため、障害の重たい方を担当する機会も多くありますが、老健では病院でリハビリを行い、ある程度回復してから入所する方が大半を占めるため、病院と比べると障害が軽く、その分体にかかる負担は少ない傾向があります。
給与と労働時間
私は新卒で回復期病棟のある病院で4年間勤務した後、老健へ転職しました。
私が回復期病院で働いていた時は、給与は理学療法士の平均よりも高かったですが、帰宅が21時を過ぎるのは当たり前で、休日も職場で仕事をしている日々でした。正直なところ、給与が下がってもプライベートの時間が欲しいと思っていました。
老健へ転職後、給与は僅かにアップし、残業もなく、プライベートの時間が大幅に増えました。ここでは、私の場合を例に、給与や労働時間について解説していきます。
給与は上がるのか?
私が回復期病院で働いていた時の年収は約450万円で、2017年の理学療法士の平均年収404万円と比べると、多めに貰っていました。
転職後の年収は約470万円で、ボーナスは僅かに少なくなりましたが、基本給が増えたことと、資格手当や皆勤手当て等の諸手当が増えたことで、年収アップに繋がりました。
労働時間はどれくらい変わるのか?
回復期病院で働いていた時は書類仕事や勉強会の開催・資料作りで帰宅は21時を過ぎる事が多く、休日も職場で仕事をしていました。また、今考えるとおかしな話ですが、残業という仕組みがなく、毎日サービス残業を行っていました。
老健への転職後は、残業はなくなり、定時の17時15分には退勤する事ができています。自宅には18時前には到着できるため、プライベートが充実する事が出来ました。
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多職種との連携はどう変わる?
回復期病院では、同じリハビリテーション科内のPT・OT・ST間のコミュニケーションや病棟の看護師とのコミュニケーションを取る機会が多いですが、老健では介護士とのコミュニケーションが重要になってきます。
また、デイケアでは外部のケアマネージャーや、利用者様の家族とのコミュニケーションが重要になってきますので、解説していきます。
介護士との連携が特に大切
老健では、病院と同様にリハビリテーション科内のスタッフとのコミュニケーションや、看護師とのコミュニケーションは重要です。
一方、老健特有の特徴として看護師よりも介護士の割合が多く、トイレや食事の介助等の日常生活の多くは、介護士の介助で行われている状況があります。そのため、利用者様の日常の援助を行なっている、介護士とのコミュニケーションは重要となってきます。
介護士は単に利用者様の日常生活を介助するだけの仕事ではなく、利用者様一人一人にケアプランを作成し、そのプランに基づいて生活の援助を行っています。プランの作成は多職種で協働して行う必要があるため、PT・OTの意見も求められます。
また、プラン達成のためには、介護士から利用者様の日常生活の様子を確認し、PT・OTの視点から利用者様の自立度の設定や、適切な介助方法の提案を行う必要があります。そのため、介護士とのコミュニケーションは密に図る必要があります。
外部との連携も求められる
多くの老健ではデイケア(通所リハビリ)が設置されており、介護認定を受けて、在宅で生活している方のリハビリを行っています。
介護認定を受けている方には担当のケアマネージャーがおり、利用者様の日常生活の様子や、リハビリの目標、進捗状況について連携を図る必要があります。
また、実際に自宅で生活している家族との連携も重要です。家族とは、自宅での利用者様の様子を聞き取り、実際の介助方法の指導や、家族の介護負担軽減のためのリハビリの目標の設定、リハビリの進捗状況を説明します。
そのときに注意するべきことは、家族に分かりやすく伝えるという事です。家族や利用者様は、私たちが考えている以上に医療や介護に対する専門的な知識が乏しい場合が多いです。
そのため、家族や利用者様の知識に合わせたレベルで会話をし、コミュニケーションを図る必要があります。
転職後に求められたスキルとは?
老健でのPT・OTの仕事は、スタッフの人数が少なく、外部とのコミュニケーションを図る機会が多いという特徴があり、スタッフ数に恵まれ、病院内でのコミュニケーションがほとんどの回復期病院とは異なったスキルが求められます。
ここでは、私が転職後に求められたスキルについて解説していきます。
コミュニケーションスキルが必要
先ほどの項目でも解説しましたが、看護師や介護士等の他の職種や、ケアマネや家族等とのコミュニケーションスキルが必要です。
他に、老健には認知症や難聴の方が多くおり、それらの方とのコミュニケーションを図るスキルも病院以上に重要となってきます。
PT・OT・ST全てのスキルが必要になる事もある
基本的に老健でのリハビリスタッフは不足しています。私の働いている老健でのリハビリスタッフはPT4人、OT3人ですが、一人の利用者様に対し、一人のリハビリスタッフが担当しています。
そのため、他の職種のリハビリのスキルを求められることもあります。
私はPTですが、必要に応じて作業療法士の仕事である、指先の細かい動作の練習や、STの専門である発語や発話の練習をすることもあります。
回復期病院から老健に転職して良かったこととは?
ここまで老健での給与や労働時間、求められるスキルについて解説してきましたが、それ以外にもリハビリの視野が広がったり、プライベートが充実したり良かったことがありました。
この項目では私が老健へ転職して良かったと感じたことを、ご紹介していきます。
リハビリの視野が広がった
回復期病院では、麻痺や筋力の改善等の身体機能の向上による、トイレ動作や歩行等の日常生活動作(ADL)の獲得に着目したリハビリが多くなる傾向があります。しかし、老健のリハビリでは身体機能の向上はある程度限界な方が多く、現在持っている能力で、どのような方法で動作を行っていくかという視点でリハビリを行っていく事が多いです。
また、デイケアの場合は畑作業や除雪、買い物、趣味活動等の日常生活関連動作(IADL)に着目したリハビリを行う機会が多くなり、回復期病院よりリハビリの幅が広がります。
スタッフの数が多い回復期病院では、医療報酬改定に一般職のスタッフが関わる機会は少ないですが、スタッフの少ない老健では、介護報酬改定の時には、スタッフ全員でミーティングを行ないます。
そのため、今まで興味がなかった法改正や、介護保険制度について興味を持つようになり、リハビリに関する視野が広がりました。
プライベートの時間が増えた
残業の日々だった私にとって、これが一番のメリットでした。
老健へ転職したことで残業がなくなり、18時には自宅へ帰る事が出来るようになりました。また、休日に出勤することもなくなったため、空いた時間を使って趣味活動や副業の時間にあてることが出来るようになり、プライベートの時間が増えました。
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回復期病院から老健に転職して後悔したこととは?
先ほどの項目では老健へ転職するメリットを紹介してきましたが、当然デメリットも存在します。
私が老健に転職して感じたデメリットは、スキルアップの機会が少ないことと、書類の量が病院と比べて多いということでしたが、それぞれに対処法があるので解説していきます。
スキルアップの機会が少ない
回復期病院では、週2回程度の勉強会を行っていましたが、現在の老健では研修会やリハビリ科での勉強会の機会が少なく、スキルアップの機会は少ないです。そのため、個人個人で目的を持って自己研鑽に努める必要があります。
私の場合は、老健に転職後にケアマネージャーと、福祉住環境コーディネーター2級の資格を収得しました。現在は認定理学療法士の取得を目指しております。
書類が多い
厚生労働省の方針によりデイケアで加算を取得するための書類が非常に多いです。特にリハビリテーション計画書に関しては、1人の利用者様に対して月5~6枚程度の書類の作成が必要となってきます。
また、書類自体もケアマネの居宅サービス書や介護士のプラントの連動が求められており、内容も煩雑です。
これに関しては、少しでも効率よく書類作成を進められるように、原本の計画書を多少アレンジしたり、エクセルの関数を利用したりすることで、入力を簡略化する事で対応しました。
また、少しでもサボってしまうと、どんどん書類が溜まっていってしまうので、少しでも空いた時間があれば、書類作成の時間に使うようにしています。
転職ノウハウ事例集
まとめ
今回は、回復期病院からPT・OTが老健への転職のノウハウの解説でした。
元々、老健はリハビリを行って在宅復帰を目指す施設のため、PT・OTにとっては働きやすい環境が整っています。
当然デメリットもありますが、それを上回るメリットがあり、転職を考えているPT・OTにはお勧めです。
転職を希望している方は、今回の解説をきっかけに、ぜひ老健への転職も検討してみてください。
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