
老人保健施設で入所と通所のリハビリを経験してきたけど、他の施設でも経験を積みたい。老健と医院の通所リハで違うところはあるのかな?医院や介護士等の他職種との関わりについても知りたい。
老人保健施設で働くPTは、入所と通所のリハビリを兼務するケースも多いでしょう。色々な症例に携われるものの、リハビリに追われて生活場面が見えにくい現状があります。
私は医院に併設した通所リハに勤務しています。訪問リハや家屋訪問で外出する時もありますが、フロアで過ごす時間が増え、生活場面を見る機会が増えました。利用者と深く関わるなら医院の通所リハはおすすめです。
今回は老健から医院の通所リハに転職した筆者が、その魅力について解説します。
- 医院の通所リハのPTは専任になる可能性がある
- 残業は少なく送迎手当等で収入がアップする場合も
- 送迎等、リハビリ以外の対応も担当する事も
老人保健施設から医院の通所リハへ転職した方が良い人とは?
私は新卒から老健で2年半勤務し、入浴と通所のリハを兼務。忙しい日々を送っていました。
当施設はリハ職同士で仲が悪く、新卒者は2年で辞める事が多く、私も2年半で退職。元々生活期のリハビリに興味があり、医院に併設した通所リハに転職。1日を通して通所リハに関わる機会が増えた為、転職して良かったと思いました。
日常生活や自宅での様子を深く知りたい人
医院で通所を開設していて、外来リハがない場合、通所リハは専任の可能性が高いです。医院は老健より通所リハの規模も小さい事が多く、同じフロアで利用者と過ごす時間が増えます。排泄、食事の提供、入浴、送迎等個別リハ以外の関わりも増えました。
利用者の日常生活や住宅環境を詳しく知りたい場合、医院の通所リハはおすすめです。ただ転職する際は外来リハがないか等は事前に確認しておきましょう。
他の施設との違いを学びたい人
病院急性期や回復期等の違いはあれど入院や通院に変わりはありません。
通所リハ、通所介護は現在沢山存在し、リハビリ、レクに特化するケースや、外出支援に力を入れている施設等様々で、施設ごとの特色の違いはより顕著です。1つの施設で長年留まるよりも色んな施設を知る事で、新たな視点を養う事が出来るでしょう。
給与と労働時間
理学療法士の初任給は23.5万と言われる中、私が最初に就職した老健の初任給は22万円と少々少なめでした。
担当が多い分書類業務が多く、17時半までの勤務の中18時半頃に退社しています。
現在も退社時間に変わりはないものの、給与は以前よりもUPしました。私の場合を例に給与と労働時間について説明します。
給与は上がるのか?
これは就職先によります。私の医院では通所の送迎でハイエースを運転する場合、送迎手当が支給されます。1回の運転で500円。月に大体1万5千円の底上げになります。
透析をしている医院なので、経営は黒字。福利厚生が充実しています。
以前は330万円だった年収は440万までUP。結婚して子どもがいるので扶養手当の底上げもありますが、それを差し引いても給与はUPしました。
労働時間はどれくらい変わるのか?
労働時間は医院の通所リハの方が長いです。退勤時間は以前と変わりないものの、介護的な業務に携わる事も増え、昼休みに書類業務が食い込む事もあります。
ただ老健も医院の通所も、回復期の病院に比べると勉強会等は殆どありません。どちらもプライベートは充実できるでしょう。
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多職種との連携はどう変わる?
回復期病院では同じリハ職や、病棟の看護師と関わる機会が増えます。老健も通所の医院も介護士とのコミュニケーションが大事です。
老健の時はリハ職と介護職と業務の線引きがありましたが、今の通所リハではデイルームにリハビリの機器やベッドがあるので、リハ職と介護職の距離は更に縮まったと思います。また医師との距離も近くなりました。
介護士との連携が更に大切になる
以前の老健ではリハビリはリハ室で行う事が多く、PTが何をしているのか、介護士が何に困っているのか等、互いに分からない事が多かったのです。
今は同じフロアでリハビリをしている為、介護士が何に困っているのか、リハビリで何をしているのか視覚的に分かります。互いの忙しさと専門性を尊重しつつ、移乗や食事等、介護士と連携する場面はより増えましたね。
医師との関わりも増える
通所リハには医師が配置されている事が条件です。利用者の多くは併設された医院の医師がかかりつけ医である事が多いです。
通所リハではリハビリ会議という、医師やリハ職、ケアマネ等が集まり話し合いをする事があります。老健の時とは異なり、主治医として会議に参加していただけるので、利用者や家族も気兼ねなく相談しているように思えます。
転職後に求められたスキルとは?
老健も医院の通所リハも、介護士は慢性的に不足がちです。
特に少人数で利用者の対応をする場合、「リハ職はリハビリだけ」という線引きは難しいでしょう。リハビリをしつつ、様々な場面でサポートに回る事は多くなります。
マルチタスク
私の通所では午前中に入浴、午後からレクがあります。午前中は介護士が入浴介助で手薄になり、PTはリハビリしながらフロアの見守りをしています。
マシンや体操を利用者にお願いしつつ、トイレ誘導や歩行の介助に入る等、マルチタスクのスキルが求められました。勿論転倒等は絶対にダメなので、常に周囲にアンテナを張るようになりました。
医療的な知識
医院の通所リハの利用者は主治医も同じ傾向があります。当院は内科と透析をしている為、利用者もその疾患を抱えている人が多いです。その為、内科で処方される薬の副作用やリハビリの中止基準、透析患者の体調の変化等の知識が最初から求められました。
また、褥瘡の処置等を外来からお願いされる事もあり、徐圧の指導等、リハビリ的に関わる場面も増えました。
老人保健施設から医院の通所リハに転職して良かったこととは?
ここまで医院の通所リハの給与や他職種との連携、求められるスキルについて説明してきました。大変な事もありますが、転職して良かった事も勿論あります。
1つは送迎に出て自宅内や周辺の様子を把握しやすい事、もう1つはケアマネからの電話対応をする機会が増えた事です。詳しく説明していきます。
自宅の様子を知る機会や、家族との関わりが増えた
現在通所リハでは定期的な家屋訪問が義務付けられていますが、入所も担当していると訪問時間の確保が大変です。
老健の頃は送迎の時間は入所のリハビリをしていましたが、現在は送迎も対応し訪問する機会が大きく増えました。
また家族と話をする機会が増え、何に困っているかを直接知る事が出来ています。畑に行くのか大変な場合に自分の目で見る事で、具体的なメニューも考案しやすくなりました。
外部との関わりが増えた
同じフロアでリハビリをしていると、外部ケアマネが来所した際に会う機会が増えました。電話対応の機会も増えた為、「以前にこんな事があった」等の利用者の状況を気兼ねなく話せるようになり、連携する場面は老健の頃も増えています。
生活期のリハビリでは徐々に能力が低下し、新たなサービスを導入する事もあります。切れ目ないサービスを提供する上で、家族やケアマネと話す機会が増えたのは良い事だと思いました。
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老人保健施設から医院の通所リハに転職して後悔したこととは?
今まで医院の通所に転職したメリットを紹介しましたが、当然デメリットもあります。
1つはリハビリと介護業務を並行する事と、研修の機会が少ない事です。
勿論私が転職した通所リハがそうだったというだけで、他の通所リハは違う事もあるでしょう。1つのケースとして考えていただけたら幸いです。
1つの症例にじっくりと向き合えない
先程もお伝えしましたがフロアでリハビリをしていると、排泄介助や歩行の付き添い等の対応も行います。
回復期の病院のように、1つの症例に40分等の時間をかけてリハビリをする事は難しいです。最初はリハビリの時間の確保が難しく戸惑いもありました。
個別リハビリの時間だけがリハビリなのではなく、通所リハで過ごす時間全てがリハビリの一環だと考えましょう。生活の場で過介助にならず、出来る部分と介助が必要な部分の線引きを判断し、リハ職と介護職が協力する体制が求められます。
研修の機会が少ない
老健の時も同様ですが、研修会や勉強会の機会は少ないです。回復期の病院は残業も多い代わりに理学療法士の知識はどんどん洗練されていくので、数年で大きく差がついてしまいます。
私は同期の友人と共に外部の研修会に参加し、自己鍛錬に励んでいます。年に2回までは研修費が下りるので、活用しています。勿論同僚へのフィードバックは必須ですね。
転職ノウハウ事例集
まとめ
今回は老健から医院の通所リハへの転職のノウハウの解説でした。どちらも生活期のリハビリなので、リハビリの視点に大きな違いはありません。
違いの1つは兼任か専任の違いですが、老健でもリハ職がたくさんいる場合は、専任で通所リハに関わる機会があるでしょう。その場合はフロアでの対応も大きく変わりはないかと思います。
老健と医院の大きな違いは、主治医との距離感だと思っています。主治医として、通所リハの医師として、その利用者に関わっていただける事は大きなプラスになります。
専任で通所に関わりたい場合は医院の通所リハに転職するのがおすすめです。勿論外来等に関わる事がないかは忘れずに確認しておきましょう。
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