
そろそろ新しい職場で経験を積みたいな。疾患やリハビリに対する知識・技術を活かして訪問看護ステーションに転職したい。
訪問看護ステーションでは、看護師による医療処置の介入もありますが、在宅や施設に関係なく生活期リハビリであり、利用者の生活環境を常に評価でき、家族等に対しても情報収集しながらリハビリができる利点があります。
今回は一般病院から訪問看護ステーションに転職した筆者が、その魅力について解説します。
- 一般病院からの転職を検討している人は、訪問看護ステーションがおススメ
- 病院よりも残業が少なく、収入アップも見込める
- 訪問看護ステーションでの働き方にもメリットと、デメリットがある
一般病院から訪問看護ステーションへ転職した方が良い人とは?
私は新卒で回復期病棟を有する一般病院に入職して13年間勤務した後、訪問看護ステーションに転職しました。転職先は生活期に関われる環境を検討していたところ、現在所属している訪問看護ステーションからお話をいただき転職をしました。
病院では病棟や外来によって、リハビリ目的や経過が異なるため多様な対応を行っており、訪問看護ステーションに転職しても、一般病院で培った経験を活かして働くことができると思います。
私も転職後、利用者のリハビリは不安なく対応することができました。
一般病院での多様な経験が活きてくる
私の働く訪問看護ステーションは、利用者の多くが基礎疾患等により、医療処置(点滴や褥瘡処置、内外科的疾患・ターミナル等による経過観察等)を行う必要があり、加えて通院の難しい方が多い状況です。
利用者個々で身体状況や生活環境は様々であり、家事などの家庭内役割や趣味を持ち、屋内等では基本動作が自立している方から、在宅や入居施設の環境に関係なく、長期的な臥床生活により介助量が大きい方まで多岐にわたります。
例えば病院であれば、回復期は患者の退院にむけた家屋調査や福祉用具の検討、外来また運動や動作指導、介護分野のデイケアであれば、介助量軽減や生活の質向上、また、療養型病棟では機能維持目的と、幅広い対応が求められます。
そのため、在宅や施設等の生活環境によって異なりますが、一般病院で学んできた基本的な疾患やリハビリに対する知識・技術を活かして働くことができます。
他の訪問看護ステーション利用者では、何らかの入院治療から退院された後や、基礎疾患等による医療処置(前述にも記載)を必要とされる方へのリハビリ、もしくはリハビリ対応をメインに希望される利用者が近年では多くなっている、という特徴があります。
利用者の実生活を確認しながらリハビリ対応ができる
一般病院では、一日の中で、回復期・外来・療養型・デイケアと、回復時期や経過が異なる患者を対応するため、カルテ等からも詳細な情報収集を行いつつ、入院期間等の制約がある中でリハビリ目標を立案、退院や終了に向けて対応する必要があります。
また、患者によって退院時期が早まったりすると、必要な評価視点や運動負荷量を変えたり、早々に退院先の環境整備等の対応に迫られるなど、変化に対する柔軟な対応力が求められました。
訪問看護ステーションでは、看護師による医療処置の介入もありますが、在宅や施設に関係なく生活期リハビリであり、利用者の生活環境を常に評価でき、家族等に対しても情報収集しながらリハビリができる利点があります。
リハビリ目標もその場で利用者や家族と共有し、明確にしてリハビリ対応ができるため、時間的なストレスは少ないです。
給与と労働時間
転職前の一般病院では管理職ポストに就いていたので、給与は年俸制で理学療法士の平均給与よりも高収入でしたが、業務は書類整理が主となっており、リハビリ対応となると他スタッフの代診が主でした。しかし、平日に代診が回ってくることがほとんどなく、多くの時間がデスクワークでした。
それでも帰宅時間が21時を過ぎることもあり、私のモチベーションが下がっていった状況でした。唯一、土日祝で交代出勤のローテーションに入っていたことと、平日に代休を取れることがメリットでしたが、平日は管理職同士が重複しないように休み希望を出すため、希望日に休めないこともありました。
v訪問看護ステーションへ転職後、給与が僅かにアップした上、残業も無くなり、土日は基本的に休みとなりました。また、祝日出勤した日分は平日に代休が取れ、プライベートの時間が大幅に増えました。
ここでは、私の場合を例に、給与や労働時間について解説していきます。
給与は上がるのか?
私が一般病院で働いていた時の年収は約450万円で、2018年の理学療法士の平均年収408万円と比べ、多めに収入を得ていました。
転職後、年収額は約470万円となり、ボーナスがない年俸制に変わりありませんが、基本給や資格・役職手当、皆勤・通勤手当の額が増え、コレらに加えて年度末には能力手当(賞与)を頂けるようになり、結果的に年収アップに繋がりました。
労働時間はどれくらい変わるのか?
一般病院で働いていた時は、自身の業務だけでなく、管理職の業務として書類やデータ管理、実習生や院内関連の連携業務、デイケアの管理運営など、必要に応じて同時進行で行っていました。そのため、帰宅時間は21時を前後することが当たり前でした。土日祝のローテーション出勤の際は、余計な雑務が少ないので治療の空き時間に書類業務を行っていました。
また、管理職には残業申請の仕組みが無く、毎日サービス残業といった状況でした。
訪問看護ステーションへ転職後は、残業がなくなり、基本的には定時である17時には退勤する事ができています。早い日であれば17時30分過ぎには帰宅している日もあり、土日も休みになっているので家族との団欒などプライベートな時間を充実させる事が出来ました。
訪問看護ステーションへ転職を考えているなら、まず最初に転職サイトへ登録しましょう。訪問看護ステーションの求人が多い「PTOTキャリアナビ」がおススメの転職サイトです。
多職種との連携はどう変わる?
一般病院では、同じリハビリテーション科内のPT・OT・ST間でのコミュニケーションや、医師、看護師、相談員とコミュニケーションを取る機会が多いですが、訪問看護ステーションでは看護師、介護士やケアマネジャー、利用者家族とのコミュニケーションが重要になってきますので解説していきます。
看護師との連携が特に大切
訪問看護ステーションでは、その名の通り看護師が主となって利用者に関わるため、看護師とのコミュニケーションは重要です。
看護師は、利用者一人一人に対して、必要な医療処置だけでなく、睡眠、食事、排泄、更衣、内服等、日常生活の状況確認・評価も行います。
また、利用者や家族に対して不安要素の聞き取り・傾聴をしながら業務にあたっており、利用者だけでなく、家族や介護士にも必要な指示を行い、医師や介護士、ケアマネジャーとの連携も密に行っています。
同じ訪問看護ステーションのリハビリスタッフからすると、利用者にも私達にも近い立場で色んな情報を持っている職種である事は間違いありません。ですので、必ず情報共有を行った上でリハビリ対応に向かうようにしています。
事業所外部との連携も求められる
訪問看護ステーションのリハビリは、主に介護認定を受けて生活されている方の自宅や施設を訪問してリハビリを行います。
リハビリで訪問した際の生活状況や、リハビリの目標・進捗状況については、利用者の担当ケアマネジャー、家族、かかりつけ医、介護士等と連携を図っていく必要があります。
例えば介助方法を例にすると、病院と異なり、自宅や施設の家屋環境や介護度、家族の協力体制等によって様々です。リハビリできる動作が、している動作では手段や方法が異なっていないか、努力的な方法になっていないか等、定期的に評価する必要があります。
さらに、毎日行われていることなので、家族・介護士の介護負担の軽減にむけて介助方法を再検討したりします。
転職後に求められたスキルとは?
訪問看護ステーションでは、リハビリスタッフ数が少ないことからリハビリ他職種の知識やテクニックも必要になってきます。
また、利用者に関わる内容については外部と連携を図る機会が多く、多職種や家族と円滑に連携していくためにはコミュニケーション能力が求められます。ここでは、私が転職後に求められたスキルについて解説していきます。
PT・OT・STのテクニックが必要なときがある
近年増えつつある、企業等が開設している大きな事業所等でない限り、基本的には訪問看護ステーションのリハビリスタッフは不足しています。私の働いている訪問看護ステーションのリハビリスタッフは理学療法士3名(2名が非常勤)、作業療法士1名です。人員的にも一利用者様に対して、一人のリハビリスタッフが担当しています。
そのため、他職種のリハビリテクニックを求められることもあります。
私はPTですが、必要に応じてOTで行う更衣動作や入浴動作練習や手指巧緻性練習、STの専門である間接嚥下練習や発声練習を行うこともあります。
自発能動的なコミュニケーション能力が必要
看護師や介護士等の他職種、ケアマネジャーや家族等とのコミュニケーション能力は必須になります。
訪問看護ステーションでは基本的には訪問先での対応となるため、リハビリ中は利用者と一対一でコミュニケーションを図ることが多く、利用者に対する難聴や認知症への配慮、会話内容の理解確認や誘導等、聞きたい情報を引き出すための能力も病院以上に重要となってきます。
また、共有すべき情報や緊急な連絡など、上司に指示や判断を仰ぐべき事例に対しての伝達は自発的に行う必要があり、日頃から気づいた点などについては積極的に発信していく能力が必要です。
一般病院から訪問看護ステーションに転職して良かったこととは?
ここまで訪問看護ステーションでの給与や労働時間、求められるスキルについて解説してきましたが、それ以外にもリハビリの視野が広がったり、プライベートが充実したり良かったことがありました。
この項目では私が訪問看護ステーションへ転職して良かったと感じたことを、ご紹介していきます。
メリット①:リハビリの視野が広がった
一般病院では、主に回復期や外来でのリハビリ対応が中心でした。患者の対象疾患を主要因として基本動作や衣食住に関連した日常生活動作(ADL)における課題を目標として、身体機能の改善を図っていきます。
また、多くの患者は在宅復帰することを目標として対応することがほとんどです。
私はデイケアにも携わっていたので、ADLだけでなく、実際の生活場面で想定される、買い物や洗濯、掃除等の家事動作や、散歩・手芸や園芸等の趣味活動といった日常生活関連動作(IADL)も視野にリハビリを行っていましたが、利用者からはやはり医療機関ということもあり、身体機能の改善に対する希望が強い印象でした。
転職した後、訪問看護ステーションからのリハビリは、利用者の多くが年齢的にも体力的にも身体機能の向上は難しいと思われる方が多い状況です。
しかし、居住環境の整備や家族・介護士等の介護者からの協力を得ながら、利用者の潜在的な能力を活かし、いかに安全な動作で日常生活を送っていくか、という視点でリハビリを行っていくと、身体機能に関係なく活動負担や介助量が軽減し、利用者の活動意欲の向上や家族の負担軽減につながります。
メリット②:プライベートの時間が増えた
日々の残業が当たり前だった私にとっては、1番のメリットでした。
訪問看護ステーションに転職したことで残業がなくなり、早い日には17時半過ぎには自宅に帰っている状況です。
また、祝日に出勤する日はありますが、土日に出勤することもなくなりました。空いた時間は家族サービスや趣味活動、副業の時間に当てるようにしており、プライベートな時間が充実しています。
一般病院から訪問看護ステーションに転職して後悔したこととは?
先ほどの項目では訪問看護ステーションへ転職するメリットを紹介してきましたが、当然デメリットも存在します。
私が訪問看護ステーションに転職して感じたデメリットは、自己研鑽の機会が少ない、ということと、直接的な患者相談が難しいということでした。しかし、それぞれに対処法があるので解説していきます。
デメリット①:自己研鑽の機会が少ない
一般病院では理学療法科の週2回の定期勉強会と月1回のリハビリテーション科勉強会、院内検診が行われていました。現在の訪問看護ステーションで勉強会は無く、自動的に新しい情報が入ってくる事はまずありません。
そのため、自己研鑽していくモチベーションや努力が必要です。私の場合、職場外から研修会情報が入ってくることも多く、看護師からも内服や病理学についてレクチャーを受ける機会もあるため、非常にありがたい環境にあります。
今後は介護予防推進リーダーや認定理学療法士の取得を目指しています。
デメリット②:直接的な患者相談が難しい
訪問看護ステーション、というくらいですから初回対応や特殊な時を除いて1人で訪問することが普通です。1日に多い時で6、7件の訪問をしているので、他のリハビリスタッフと顔を合わせて連携を取る機会が非常に少ないです。主には昼休憩等で事務所に戻った1時間弱程度の中で連携しています。
しかし、いまは電話だけでなく、メールやLINEなどのSNSなど連携ツールが身近にあるので、リハビリスタッフ間だけでなく、看護師やケアマネ等も含めて利用者の個人情報に留意しながら多様的に有効活用しつつ遠隔的な連携も行っています。
転職ノウハウ事例集
まとめ
今回は一般病院から訪問看護ステーションへの転職について解説しました。訪問看護ステーションからのリハビリは、看護師の代行としてリハビリ職種がリハビリテーションを行っています。同じ事業所の看護師が医療処置にあたり、常に連携を取れる環境にあるため、PT・OTにとって働きやすい環境だと思います。
また、最近ではリハビリ職種がたくさん在籍している訪問看護ステーションも見受けられます。
転職を希望していて生活期リハビリや介護予防分野に興味がある方は、訪問看護ステーションへの転職も検討してみてください。
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