リハノメ考察・レビュー「筋・筋膜性疼痛のメカニズムとそのアプローチ」痛みを一次痛か二次痛か判断することが重要

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痛みを主訴として病院に来る患者さんは多くいます。特に整形外科領域で働く理学療法士であれば、毎日のように患者さんが訴える痛みに頭を悩ませていることでしょう。私もその1人です。

そこで痛みに対して理解を深めることが重要になります。この講義では理学療法士が関わることの多い筋・筋膜性疼痛のメカニズムとアプローチの方法が解説されています。患者さんの痛みを理解するためには必要な知識となるため必見です。

以下に講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 筋・筋膜性疼痛のメカニズムとそのアプローチ
カテゴリ
難易度5.0
若手おススメ度4.0
講師 鈴木 重行先生
理学療法士
名古屋大学 名誉教授 朝日大学 客員教授
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年7月18日(土)
記事公開日2020年10月17日(土)
講義内容の要点
  1. 痛みを一次痛か二次痛か判断することが重要
  2. 痛みを強くさせずに改善させる方法を理解する

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

痛みは主観的なので正確に捉えることは難しいものです。患者さん自身よくわかっていない場合もあります。良かれと思って患者さんに行っていた行為が、逆に痛みを強くさせることもあります。

痛みという不明確なものに対応するためには知識が必要です。この講義を受けることで知識の整理ができ、理解が深まります。以下に講義のポイントを解説します。

その①:一次痛と二次痛

理学療法士が痛みについて学ぶことは重要です。整形外科疾患で病院に来院される患者さんの多くが痛みを訴えます。「痛くて肩が上がらない」「痛くて歩けない」「階段を登ると膝が痛い」「痛くてぐっすり眠れない」など、痛みの訴えを聞かない日はありません。

痛みの訴えを聞けば聞くほど痛みの場所が増えていくこともあるため、混乱しないよう知識を整理しておく必要があります。

痛みには一次痛と二次痛があります。一次痛とは、筋断裂、捻挫などの外傷、熱傷などにより瞬間的に感じる痛みです。痛みの部位を明確に示すことができ、痛みの程度は他の刺激に影響を受けません。伝導速度の速いAδ神経線維によって中枢に伝達されます。

一方、二次痛とは、慢性痛や一次痛に続く痛みであり、痛みの部位が不明確で「なんとなくこの辺り」という具合にぼんやりした表現になります。軽いマッサージや温熱によって痛みが軽減したり、ストレスによって痛みが悪化することがあります。

主に伝導速度の遅いC神経線維によって中枢に伝達されます。一次痛と二次痛の違いは伝導系にあります。一次痛は中枢で体性感覚野に伝達されますが、二次痛は大脳辺縁系に伝達されます。これが「痛みは感覚であり、情動である」と言われる所以です。

そして、リハビリで出会う患者さんのほとんどに二次痛が関係しています。そのため、理学療法士は患者さんの訴えをよく聞いて、一次痛と二次痛の判別し対応策を考えなくてはなりません。

講義を受けることで痛みに対する理解が深まり、整理しやすくなります。

その②:痛みを与え続けると余計に痛くなる

外来リハビリでは痛みを主訴とする患者さんが多く来院されます。痛みが慢性的になってしまう患者さんの特徴として痛みのコントロールが上手にできずに、痛みが強くなり、別の場所にも広がってしまうということがあります。

これは経験的に感じていたことですが、講義を受けることで、なぜそのようになってしまうのか納得できます。

講義の中では感作(sensitization)という用語で紹介されます。痛み刺激が続くことで①反応閾値の低下、②同じ刺激に対する反応性の増加、③受容野の拡大、④自発放電の増大の流れを辿ります。

これは、痛みを感じ続けるとさらに痛くなるという結果を示しています。臨床では痛みと関節可動域制限のある患者さんに対して、可動域運動を行う機会が多くあります。

この研究結果より、可動域拡大を図るため「痛いけど我慢して下さい」と言いながら可動域運動を実施すると、痛みが増してしまう可能性があります。痛みが増すと筋の緊張が上がり、可動域を拡大させるつもりが、むしろ制限を増やす結果になります。

患者さんをよくしたいと頑張った結果、悪化させているとしたら悲しいですね。理学療法士が行うことで悪影響を与えることを知らなければなりません。痛みを出さないようにアプローチすることの大事さを、この講義で理解できます。

その③:慢性痛は痛い経験ではなく、痛くない経験に目を向ける

理学療法士は腰痛や膝痛など慢性的な痛みに悩む患者さんに関わることが多いです。理学療法を実施することで筋の柔軟性が改善したり、可動域が拡大したり、筋力が発揮しやすくなるなどの変化があります。

明らかに変化がある場合でも、患者さんが実感できないことが少なくありません。慢性痛の場合は、症状の改善を患者さんに実感していただくことが何よりも大事です。少しでも変化を出せて、よくなった印象を持っていただければ、それを繰り返すことで慢性痛の改善が得られやすくなります。

慢性痛には情動が関わっていることがわかっているため患者さんの気持ちを変えられるかが重要です。痛みが続くと不安になり、ストレスが増します。不安やストレスが増えることで痛みをさらに増幅させてしまいます。痛いことばかり考えてしまいがちになります。

痛いことに目を向けるのではなく、痛くない経験に目を向けることが必要です。「座っても、立っても、歩いても痛い。寝ていたほうが楽」という思考になると、不動による廃用症候群を招きます。

「痛いから動けない」ではなく、「痛いけど動ける」という考え方に変わっていくと、慢性痛改善に向けて支援できるようになります。理学療法士には痛みがあってもできることを見つけるセンスが求められます。

そのためには、患者さんの話を聞き、不安やストレスを少しでも取り除くことが大事です。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

痛みに対して知識の整理ができたら、次は現場でどのような事を行うかが気になるところです。何をすれば痛みが減るのか、反対に何をすれば痛みが増えるのか考えることが大事です。

少しでも痛みを減らすことができれば、患者さんとの信頼関係が一気に深まります。

講義では臨床に繋がるヒントがたくさん盛り込まれています。以下に現場で活かせそうな事を解説します。

その①:固定中に動かさないと痛くなる

足関節の骨折後では、ギプス固定中にリハビリが開始される場合と、ギプスを除去してからリハビリが開始される場合があります。ギプス除去されたということは、ある程度骨癒合が進んでいることを意味をします。

荷重が許可され、いざ立位や歩行を行なってみると足に強い痛みを訴える患者さんがいます。損傷した骨は治癒が進んでいるのに、痛みが強いのはなぜか疑問に思うことがあります。

講義では、固定中に何も刺激を加えなかった群と、固定中でも足底に刺激を加えた群では固定除去後の痛みの反応が異なるとの研究結果が示されます。固定中に刺激がなかった群の方が、固定除去後も痛みが強かったのです。

このことから、ギプス固定中であっても、なんらかの刺激を加えておくことが重要とわかります。足関節の骨折では下腿から足部まで固定されますが、足指はギプスから出ています。固定中もギプスから出た足指を動かすことが、固定除去後の痛みを減らすことになります。

患者さんは固定中は安静にしなければならないと思っているため、説明と指導が重要です。足指を動かさなければ、固定を外してから痛みが強く残る可能性を説明すると患者さんの協力は得られやすくなります。

理学療法は患者さんの協力なしには行えません。説明するためには知識が必要です。今回の講義で得られた知識は、患者さんを良い方向へ導くために活用することができます。

その②:疼痛閾値を上げるDNIC

痛みを感じながら運動することは、さらに痛みを強く広範囲にする可能性があります。理学療法士が頑張れば頑張るほど患者さんの痛みが増していきます。痛みがある患者さんに対しては、まず痛みのコントロールが重要です。

痛みの閾値を上げることは、そのまま痛みを感じにくくさせることにつながります。痛みの閾値を上げるためには、温熱療法や電気療法などの物理療法を実施する方法があります。

それでも痛みの緩和が図れない場合の手段として、DNIC(広汎性侵害抑制調節)が紹介されています。DNICとは痛みを感じている部位とは別の部位に痛み刺激を与えることで、痛みの閾値が上がる生理学的反応を用いてコントロールする方法です。

講義では腰痛・股関節痛の症例に対するDNICが実技動画で紹介されています。症例は左股関節屈曲、SLRで股関節前面の痛みを訴えます。

これに対して大胸筋に痛み刺激を加えると、瞬時に左股関節屈曲とSLRの角度が増大します。別の部位の痛み刺激が当該部位の痛みを抑制し、筋の緊張が緩和されたことで結果的に可動域が拡大したのです。

臨床でも担当する患者さんに試してみましたが、確かに痛みの軽減と可動域の拡大を経験しました。他の部位に新たな痛みを加えることになるため、患者さんとの信頼関係が必要です。実施する場合は慎重にすすめなくてはなりません。

その③:過緊張になった筋をストレッチする

関節可動域の拡大のために、動かない方向に運動を繰り返すことは、痛みを増強し悪化させる可能性があります。ゴニオメーターで測定する可動域に囚われず、可動域を制限している原因にアプローチすることが重要です。

原因になっている筋を推測するためには、過緊張になっている筋を特定する必要があります。可動域制限の原因になる筋を考えたとき、多くは拮抗筋を考えます。例えば、肩関節屈曲制限がある場合は拮抗筋である三角筋後部線維、上腕三頭筋、広背筋などが考えられます。

しかし、可動域を制限するのは拮抗筋ばかりではありません。主動作筋の過緊張も可動域を制限します。筋が過緊張の状態になると短縮しにくくなるため、可動域制限の原因になります。過緊張の筋に対してストレッチを行うことで、過緊張が緩和され可動域改善が見込めます。

そこで、過緊張の筋を特定することが重要になります。触診で硬くなっている筋を探すため、解剖学的知識が必須です。硬くなっている筋を押すと痛みが誘発されます。講義で紹介されている別の方法としては、等尺性収縮の利用があります。

硬くなった筋を等尺性収縮させることで、筋の過緊張が緩和され可動域が改善すれば、その筋がターゲットになります。筋が特定できたらその筋を個別にストレッチします。

ストレッチすることでさらに可動域改善があればそれを繰り返すことになります。講義ではその流れを詳しく知ることができます。

まとめ

「筋・筋膜性疼痛のメカニズムとそのアプローチ」を受けて講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説しました。痛みを訴える患者さんには、臨床で毎日のように関わります。

痛みを訴える患者さんは「痛みを取って欲しい」という希望を言われます。私が新人のころは患者さんの痛みの原因がわからず、毎日悩んでいました。

よくわからない中で私にできることは硬くなった筋肉をほぐすくらいでした。それで痛みが緩和される方もいれば、強くなる方もいました。結果が安定しなかったのは、どのような痛みなのか判断が甘かったためです。

経験を重ねた今では新人の頃よりは、痛みを整理して考えることができようになりました。痛みという主観的な症状に対して理学療法士が行えることは、知識を元に痛みをコントロールすることです。

そのためには、痛みが炎症や外傷による一次痛なのか、一次痛に由来する二次痛なのか、または中枢の異常なのか判断が求められます。多くは一次痛と二次痛が混在しています。どこまでが一次痛でどこまでが二次痛なのか判断することは難しいです。

この講義を受けることで理解しやすくなることでしょう。患者さんの痛みに悩んでいる理学療法士には特に受けていただきたい講義です。参考になる情報が満載なので、是非ご覧下さい。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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