リハノメ考察・レビュー「めまい・平衡障害の評価とアプローチ」エビデンスに基づいた運動療法・徒手的介入の実際 導入編

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めまいは65歳以上では30%、85歳以上では50%以上が経験しているといわれており、めまいに悩んでいる人は多くいます。海外では理学療法士がめまいに対してアプローチすることもありますが、日本ではめまいに対する評価やアプローチがあまり知られていません。

この講義ではめまいの種類や原因を理解することができます。めまいの評価やスクリーニングをおこなえることで、Red flagsの判別ができ、ドクターへの紹介や相談、運動療法の提案をすることができます。

レビューした人:koheiさん
テーマ めまい・平衡障害の評価とアプローチ
~エビデンスに基づいた
運動療法・徒手的介入の実際 導入編~
カテゴリ
難易度3.0
若手おススメ度5.0
講師 松村 将司先生
理学療法士
杏林大学 保健学部 理学療法学科 講師
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年8月8日(土)
記事公開日2020年10月19日(月)
講義内容の要点
  1. めまいの種類や原因を理解できる
  2. めまいのスクリーニングと評価法を理解できる
  3. 前庭機能の低下があれば、前庭エクササイズが効果的

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

この講義ではめまいやふらつきの原因や種類、平衡機能の仕組みを理解することができます。めまいやふらつきの原因は多岐に渡るため、基礎知識がなければ、対応に難渋するケースも多くあります。

また、めまいには多くの種類があり、精神疾患を合併しているものや中枢が原因で、対応に急を要するものもあります。それらを踏まえ、講義のポイントとして以下に解説します。

その①:めまいの主な原因は三半規管や耳石器や前庭神経の急性障害

めまいやふらつきは三半規管、耳石器、前庭神経、脳神経系、筋骨格系など平衡を維持する末梢感覚装置から中枢神経までの全システムのいずれの障害でも生じるもので、基礎知識が無いと対応に難渋することも多いです。

めまいは回転性のめまい(Vertigo)に伴う異常感覚で錯視体験の一つ(周囲が回って見えるなど)で多くの原因があるが、主には三半規管や耳石器や前庭神経の急性障害によって大きな眼振が生じると言われています。

前庭に関わる反射として、前庭動眼反射(VOR:Vestibulo Ocular Reflex)があります。前庭動眼反射は前庭からの情報が前庭神経核を経由し、動眼神経核、滑車神経核から外眼筋を支配して眼球運動を助けています。

例えば、画面を見ながら頭を振ったときに眼球を動かしてふらつきが生じないように調整しています。前庭頚反射(VCR:Vestibulo Collic Reflex)は前庭からの情報が前庭神経核を経由し、内側前庭脊髄路を通って頚髄に至り頭部を安定させます。同時に頚眼反射とともに眼球のブレを調整しています。

体が傾いたときに頚部の立ち直りを誘発させている反射です。前庭脊髄反射(VSR:Vestibulo Spinal Reflex)は前庭からの情報が前庭神経核を経由し、腰髄まで軸索投射して、前庭脊髄路として姿勢保持と平衡維持に関与しており、体が倒れた時に抗重力筋を活性化して立ち直る際に働いています。

ふらつきは非回転性めまい(Dizziness)に伴う異常感覚で視覚運動体験(体が左右前後に揺れて感じる)の一つです。主には脳神経系や筋骨格系の異常や三半規管の障害で生じると考えられています。

その②:めまいの種類は大きく5種類あり、評価により鑑別可能

  1. 末梢性めまい
  2. 頚性めまい
  3. 中枢性めまい
  4. 心因性めまい
  5. 持続性知覚性姿勢誘発めまい

末梢性めまい

末梢性めまいの原因は前庭性と内耳性の2つに分かれます。2つの違いは内耳の蝸牛が障害されている有無です。障害されている場合には難聴を伴います。前庭性めまいは良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎などの診断をされることが多いです。

めまいが原因で病院を受診した場合最も多く症例数が多いのは良性発作性頭位めまい症です。内耳性はメニエール病、突発性難聴などの診断をされることが多いです。

頚性めまい

頚性めまいは頚部に原因があり、多くの場合頚部の回転または伸展により生じるめまいです。原因に関しては頚部の骨、筋、靭帯の異常によるもの、椎骨動脈、椎骨動脈周囲の交感神経線維の異常などです。

特に椎骨動脈は小脳や前庭へ分岐し、小脳はバランスの中枢で前庭もバランスの関与するため、椎骨動脈の血流が確保されているかはポイントになります。

中枢性めまい

中枢性めまいは小脳脳幹梗塞、出血、腫瘍、脳神経腫瘍、髄膜炎、多発性硬化症、脊髄小脳変性症などから生じることが多いめまいです。

心因性めまい

心因性めまいは狭義では、うつや不安障害、身体表現性障害などの精神障害によって生じためまいと言われています。広義では器質的前庭疾患がうつ、不安障害などの精神疾患によって増悪しているものといわれています。

めまいと精神疾患との相関関係は非常に大きく、547名のめまい患者のうち、約半数が精神疾患を合併していたとの研究データもあります。めまいが長期化するほど精神疾患のリスクも増大するため、めまいと精神疾患との相関関係を理解しておくことは重要です。

持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)

持続性知覚性姿勢誘発めまいは立位、能動的あるいは受動的な体動、動くものや複雑な視覚パターンを見たときに誘発されるめまいです。主訴としては3か月以上持続する浮遊感、不安定性、非回転性のめまいです。

発症機転としては何らかの急性めまい疾患に続発し、他の器質的前庭疾患や精神疾患を合併することもあるが、それらでは症状を説明できないものです。

その③:身体の平衡を支えるしくみ

健常者の立位姿勢のバランスは、開眼時には視覚が70%、体性感覚が20%、前庭器官が10%です。閉眼時には視覚が0%となるため、体性感覚や前庭器官からの入力情報が向上します。

高齢者等で視覚機能や体性感覚からの入力情報が少なくなったときには前庭からの感覚入力が最も重要な役割を果たします。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

めまいの評価方法や前庭機能低下に対するエクササイズを知ることで、めまいを訴える患者様にアドバイスや運動療法などのアプローチをおこなえます。

日本ではめまいに対するアプローチはあまり知られていませんが、スクリーニングをおこなうことで、対応できるか否かの判別ができ、ドクターへの相談や紹介を検討することができます。

その①:めまいの評価方法

前庭動眼反射の評価方法にはhead impulse test(HIT)があり、急性めまいにおける末梢性か中性化の判断に用いることが多いテストです。

方法としてはセラピストが対象患者の頭部を急速に左右に揺らした際に、眼球のみセラピストを見続けられるかを確認します。感度は45%、特異度は91%のため、陽性だった場合には、前庭機能の異常が高確率で認められます。

眼球運動の評価では、滑動性眼球運動(スムーズな眼球運動)を診ます。方法としては顎を軽く固定し、指先またはボールペンを動かして注視してもらいます。この際裸眼で実施して下さい。

チェックする項目としては、急速な眼球運動(サッケード)が出たり、スムーズでない場合、眼振が認められる場合は異常と判断します。注視眼振は中枢性めまいで生じるサインで、左右一方だけに注視眼振がみられたときは、その側の脳幹障害を疑い、上下で注視眼振がみられるときには小脳または、中脳の障害を疑います。内耳性のめまいは、注視眼振は生じません。

めまいの鑑別で最も重要なことは医学的なスクリーニングで、重篤な疾患や頸椎は安全かのRed flagsの確認です。Red flagsは麻痺や失語、視野欠損などの症状です。

めまいを訴える患者様の問診のポイントとしては、めまいやふらつきなどの症状は患者様の主観的な訴えで、問診だけでははっきりと判断しかねるため、一度傾聴し受容した上で、フィジカルアセスメントを確認する必要があります。

その②:前庭リハビリテーションは時期により調整が必要

めまいに対する運動療法において、適切な負荷の設定が非常に大切です。不適切な前庭エクササイズや難しすぎる、または簡単すぎるエクササイズは機能回復を遅らせます。難しすぎる負荷量の目安は運動後に寝込んでしまうような負荷量で、簡単すぎる負荷量の目安は運動後に疲労を全く感じない負荷量です。

また、急性や亜急性の前庭機能低下患者では、1日3回、合計1日12分以上のエクササイズを、慢性の前庭機能低下患者では、1日合計20分のエクササイズを目安におこなうと効果的です。効果的なめまいへのアプローチのためには、前庭エクササイズに加えて日常生活を想定した歩行やバランストレーニングをおこないましょう。

補足ですが、頭部運動を伴わない、眼球運動のみのエクササイズではめまいの改善効果が少なかったとの研究があり、頭部運動を伴わないと前庭に刺激が入らないことが原因として考えられます。

その③:前庭リハビリテーションには段階があり、病期に応じたリハビリが必要

前庭リハビリテーションには3つの種類があります。

  1. 適応化(adaptation exercise):前庭動眼反射の機能低下に対しておこなうエクササイズ
  2. 習慣化(habituation exercise):動きの感受性異常(特定の動作で生じるめまい改善)に対しておこなうエクササイズ
  3. 代償(substitution exercise):バランス機能の低下に対するエクササイズ
    一側の末梢前庭障害に対して、前庭リハビリテーションは安全で効果的であるという中~強い質のエビデンスを有するとの研究結果もあります。

前庭リハビリテーションの段階

速い眼球運動(サッケード)は顔の45°左右に親指を立て、頭部の位置は固定したまま、左右交互に注視するエクササイズです。バリエーションとして、上下でもおこなうと効果的です。サッケードは極度近視の方、既往に網膜剥離や硝子体剥離、円孔がある場合には要注意で、剥離や網膜の歪を誘発する可能性があります。

滑らかな眼球運動のエクササイズは、親指を顔の前に立てた状態からスタートし、左右交互に動かした親指を頭部の位置を保ったまま、眼球運動のみで注視するエクササイズです。左右が可能であれば、上下でもおこなって下さい。

頭部運動の段階

次の段階は頭部運動です。親指を顔の前で立て、注視した状態から頭部を左右に動かします。可能であれば上下や側屈でもおこなって下さい。前庭障害がある人では、ふらつきが生じることが多いため、まずは座位でおこなって下さい。

頭部運動が問題なくおこなえるようになれば、次は座位で体全体を動かした前後運動、左右運動、回旋運動、立位での前後運動、左右運動、回旋運動、バランスボード上で前後運動、左右運動、回旋運動と段階的におこなうと効果的です。

更なる負荷の向上のためには、閉眼でおこないましょう。

まとめ

「めまい・平衡障害の評価とアプローチ~エビデンスに基づいた運動療法・徒手的介入の実際〜」の講義のポイントと現場で活かせそうなことについて解説しました。

臨床において、めまいやふらつきを訴える患者様は多くいます。日本ではまだめまいやふらつきに対するアプローチは一般的でないため、具体的なアプローチやアドバイスなど、対応に難渋することも多いです。

めまいには多くの種類や原因があるため、対応できるめまいなのかの評価とスクリーニングが重要になります。

この講義を受けることでめまいに対する理解が深まり、適切な評価と対応を実践しやすくなります。めまいに対してセラピストができることも多くあるため、めまいの知識と実際のアプローチを知ることで、めまいで苦しんでいる患者様の手助けをすることができます。

是非、参考にしていただければ幸いです。

この記事を書いた人

kohei
さん

理学療法士7年目。20代の男性で一児の父。理学療法専門学校卒業後は、整形外科クリニックに入職し、変形性疾患やスポーツ傷害のリハビリテーションを経験。その後リハビリテーション特化型デイサービスに施設長として転職。

整形外科クリニック入職後から、スポーツトレーナとして、学生からプロチーム、年代別の県代表などに帯同し、現在もスポーツ現場に関わる。

経歴

  • 2010年~2013年:理学療法専門学校時代
  • 2013~2018年:整形外科クリニックに就職
  • 2018年~現在:リハビリテーション特化型デイサービスに転職

資格

  • 理学療法士

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