リハノメ考察・レビュー「【全5回】脳の構造と機能 第1回 総論」脳の再組織化と神経回路の発達から必要なリハビリを想起

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この講義から脳の構造と機能の総論を理解することができます。脳の進化の過程と神経回路の発達を知ることで、脳卒中を始めとする中枢性疾患の患者様に対し、脳の再組織化と神経回路の発達と最適化のためのリハビリテーションを提供する重要性を理解できます。

目標に対して、同一課題の反復をすることで運動の自動化を図るのか、それともさまざまな課題をおこなうことで、大脳皮質全体への感覚入力と活性化を図るのかを考えることができるようになります。

レビューした人:koheiさん
テーマ 【全5回】脳の構造と機能 第1回 総論
カテゴリ
難易度2.0
若手おススメ度5.0
講師 森岡 周先生
理学療法士
畿央大学 健康科学部 理学療法学科 教授
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年6月13日(土)
記事公開日2020年10月21日(水)
講義内容の要点
  1. 脳の進化と大脳皮質の構造を理解できる
  2. 脳の再組織化と神経回路の発達を理解できる
  3. 脳の再組織化と神経回路の発達から必要なリハビリを想起できる

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講義のポイント

講義のポイント

この講義では、脳の構造と機能についての総論として、脳の進化、神経回路の発達、脳の再組織化、大脳皮質の構造について教授されています。

脳や神経回路の発達過程を理解することで、中枢疾患のリハビリテーションで、構造自体が萎縮や機能低下を防ぐ重要性と、神経回路を繋げていくための感覚入力の方法を考えることができます。

その①:脳は爬虫類脳、旧哺乳類脳、新哺乳類脳と進化してきた

ポール・マクリーンは仮説として脳を原始爬虫類脳、旧哺乳類脳(四足歩行動物)、新哺乳類脳(霊長類)に分けました。

すなわち、人間にも爬虫類から進化していない領域があると考えました。爬虫類脳は人間の脳幹(中脳、橋、延髄)にあたり、無意識化でコントロールしている呼吸などはエラ呼吸や肺呼吸どちらでも意識せずとも活動しているため、爬虫類とも変わらない領域です。

次に旧哺乳類は子育てをするため、感情が存在しており、旧哺乳類脳は人間でいう感情、情動をコントロールする大脳辺縁系にあたります。新哺乳類脳は人間が最も発達している領域であり、大脳皮質にあたります。

大脳皮質は物事を考えたり、本能をコントロールする働きがあります。運動機能の発達から考えても、赤ちゃんはずり這いから四つ這いでのハイハイ、2足歩行と成長していきます。その過程はワニのような爬虫類のずり這い、猫のような四つ這いと類似する部分は多くあります。

ロビン・ダンバーは、大脳皮質は大きな群れで生活する種ほど大きくなり、からだの大きさや行動範囲、食べているものといった物理的要因ではなく、社会的な要因(群れの大きさ)によって決定されていると提唱しています。

他の要素で考えられるのは、密接な関係(心理社会的な絆)、社会的技能の程度、戦術的駆け引きの頻度、社会的遊びの頻度、生活の複雑さやプレッシャーなどが要因として考えられます。

大脳皮質の発達は環境にも依存しており、身体が成長する過程で、家族だけとの関係から、友人関係、恋人関係と関係性が変化し、必要とされるコミュニケーションスキルも向上するため、このことからも大脳皮質の成長に環境や社会的要因が影響を与えていると考えられます。

補足ですが、人間の大脳皮質の大きさから考えると150人の集団が限界のため、現代社会では法律で秩序が保たれています。ラットなどの動物は一次運動野、一次感覚野でほとんど構成されています。人間を始めとする類人猿に進化するにつれて高次感覚野、高次運動野、高次連合野の占める割合が大きくなります。新生児は環境に依存して発達する高次連合野、高次運動野の割合が高いです。

神経細胞単位で考えると、神経細胞(ニューロン)は他の神経細胞とシナプス形成することで髄鞘化(ミエリン形成)し、神経細胞のピークは胎児の頃で、シナプスを形成しない神経細胞は徐々に死んでいきます。

ちなみに、一次視覚野は生後8か月がピーク、一次聴覚野は11か月がピークとなります。成長に対して順応し、自動化してしまうとシナプス形成が進まなくなり、シナプスの刈込み(使う機能と使わない機能の仕分け)が生じます。

順応化の対策としては順応しないように難易度を変えることで、シナプスの分枝を促進できます。胎児のシナプス形成を促進するためには多様な課題を与えると良いです。例えば一次聴覚野のピークである11か月までにネイティブな英語に多く触れておくことで、大人になってからもネイティブな英語の発音を聞き取れることがあります。

ちなみに自閉症スペクトラム児では、シナプスの刈込みが行われない結果、過剰に刺激に反応してしまいます。それにより通常知覚しない感覚も感受してしまうため、過剰なこだわりが生じたり、サヴァン症候群のように一点の才能に秀でたりします。

その②:脳損傷後のリハビリテーションで活動領域が回復する

部分損傷させた運動野の領域に対して、積極的な経験(リハビリテーション)の有無での変化を観察した研究によると、積極的な経験をすることで、運動野の活動領域が増加(回復)したとの報告があります。神経活動の活性化には弁別した刺激を入力する必要があります。

その③: 神経回路の最適化されることで筋緊張がコントロールされる

発達期における神経回路の編成過程として筋緊張のコントロールは、抑制系GABA回路の発達が重要です。

未熟期には抑制系GABA回路の発達が進んでないため、使うところだけ興奮させ、使わない所を抑制させるコントロール系統が混線しているイメージで、筋緊張のコントロールが上手くいきません。

それより細かい動作や巧緻性を必要とする動作は、重度の脳卒中患者や小児には困難です。成熟期になると抑制系GABA回路の発達により、使わない筋肉には抑制をかけることで、運動に対する筋緊張が最適化されます。脳卒中のように中枢性の疾患になると、一度未熟期に戻るようなイメージで、小児の発達の過程と類似しています。

大きな違いとしては、中枢性疾患は不可逆的な損傷により、回復しない回路もあることです。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

中枢疾患の患者様のリハビリテーションを円滑に進めるためには、脳の進化の過程や神経回路の発達、大脳皮質の構造を理解し、適切な感覚刺激を入力することです。適切な感覚刺激は脳の再組織化を促進することができます。

また、運動学習においても脳の構造や機能を知り、運動の頻度や種類を決定することで効果的な運動学習を進めることができます。それらを踏まえ、講義のポイントとして以下に解説します。

その①:中枢神経系の再組織化には神経細胞の活性化が必要

中枢神経系が再組織化(中枢神経が回復、再組織化)していくためには、マスキングしているものの普段働いていない神経細胞を活性化させる必要があります。

神経細胞に普段働いているシナプスと普段は活動性の弱いシナプスがあり、働いているシナプスが断たれたときには、代わりに働く作用があります。

普段働いていない神経細胞に対して、脳卒中後にシナプスが繋がっていない場所は2次的にニューロンが死んでしまうため、マスキングしてある神経細胞に感覚刺激を入力することが重要です。

その②: 神経細胞の伝達効率向上には長期増強が必要

神経細胞の伝達には活動電位の発火が必要です。伝達効率の向上のためには、何度も繰り返し活動電位が発火することで長期増強を生じさせる必要があります。

例えば神経細胞Aと神経細胞Bがシナプス結合して直ぐには神経細胞Bへの反応が少ないですが、連続的に入力される時間的過重や他の細胞からの入力が加わる空間的過重により活動電位が向上します。

最終的には細胞Bとのシナプスが強化されます。神経細胞が障害された後にもこのような反応を増強することにより神経細胞の反応の向上が見込めます。

また、シナプス形成にはネガティブな一面もあり、痛み刺激などが繰り返し加わることで、長期増強され痛み刺激のシナプスが過敏になり、痛みを感じやすくなってしまうことがあります。

その③:脳のネットワーク形成には回復させたい領域に対する刺激が必要

皮質下が梗塞された場合においては、回復していく過程で歩行機能改善に伴い感覚運動野の活動が対称的になります。中大脳動脈領域の広範囲な梗塞では、歩行機能改善に伴い、運動前野の活動が増加します。

自動的な歩行が可能になると感覚運動野の活動が低下しますが、それは、小脳による学習で内部モデル化・自動化され無意識化でおこなえるようになるからです。自動化が進まないと、常に考えながら動くことになるため、脳の疲労が進んでしまします。

脳損傷後のネットワーク形成の過程(生理学的モデル)は、脳損傷直後から、皮質脊髄路の働きが一気に減弱します。できるだけ早期に刺激を入れないと皮質脊髄路の減弱がどんどんすすんでしまうため、脳卒中後早期からのリハビリテーションが重要となります。回復期には交連、連合線維が活性化してきます。

交連線維は右脳と左脳を繋ぐ線維で両側を協調させる作用があります。連合線維は皮質の中でネットワークを形成しており、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉を繋いでいます。

運動を考えながらおこなうと前頭葉の反応が高まり、複数同時に感覚入力すると頭頂葉が反応し、記憶を思い出しながら運動すると側頭葉が反応するため、感覚入力をするときに同じような刺激を入力するのではなく、連合線維を介して活性化したい脳領域に対して、意識的に刺激を入力するための課題を設定する必要があります。

その④:運動神経は交差性、非交差性皮質脊髄路の2つでコントロールされている

通常は対側の交差性皮質脊髄路が活動していますが、運動野が損傷されることで交差性皮質脊髄路が活動しなくなると、それを補うように、同側の非交差性皮質脊髄路が活性化されます。

すなわち、脳卒中で運動野が損傷され、対側の上下肢に運動障害が生じても、同側の非交差性皮質脊髄路が活性化されることで、その機能を代償する作用があるということです。しかし、元々非交差性皮質脊髄路は、体幹や頚部、近位の関節をコントロールしているため、近位部の運動機能の回復は進んでも遠位部の回復が進まないことが多々あります。

また、中枢の損傷側の上下肢も体幹部や近位部は障害されており、脳卒中は一側のみの障害ではないことを頭に入れておかなくてはなりません。従来の患側、健側の考え方を改める必要があります。

まとめ

「脳の構造と機能」の講義のポイントと現場で活かせそうなことについて解説しました。脳の進化の過程と神経回路の発達の過程を知ることで、中枢疾患の患者様のリハビリテーションに生かすことができると思います。

感覚入力1つをとっても何を目的にするかで、課題設定や関わり方が大きく変化します。また、どこの脳領域に感覚入力を図るか、どの伝導路を活性化するかなど、対象とするところの違いでもリハビリテーションの内容が大きく変化します。

中枢疾患のリハビリテーションに携わる機会のある理学療法士、作業療法士、言語聴覚士には臨床の基礎となる内容なので必見の講義です。是非参考にしていただければ幸いです。

この記事を書いた人

kohei
さん

理学療法士7年目。20代の男性で一児の父。理学療法専門学校卒業後は、整形外科クリニックに入職し、変形性疾患やスポーツ傷害のリハビリテーションを経験。その後リハビリテーション特化型デイサービスに施設長として転職。

整形外科クリニック入職後から、スポーツトレーナとして、学生からプロチーム、年代別の県代表などに帯同し、現在もスポーツ現場に関わる。

経歴

  • 2010年~2013年:理学療法専門学校時代
  • 2013~2018年:整形外科クリニックに就職
  • 2018年~現在:リハビリテーション特化型デイサービスに転職

資格

  • 理学療法士

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