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Praimary stabilizerとして体幹を安定させる筋肉は腹横筋の他にも腰部の多裂筋が働いています。多裂筋の機能を評価し、働きやすいように促通することは、さまざまなスポーツでの障害予防に重要となります。
しかし、多裂筋は深層で小さい筋肉のため、評価方法や促通方法が難しいといわれています。この講義を通して、体幹機能向上のための多裂筋評価と段階的なエクササイズ方法を理解することができます。
テーマ |
パフォーマンスの基盤となるコア! 体幹機能障害からおこるスポーツ傷害 ~上肢・下肢の関連性を考えた スポーツリハビリテーション評価&実践編~ |
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カテゴリ | |
難易度 | |
若手おススメ度 | |
講師 |
金子 雅明先生 理学療法士 株式会社 KINETIC ACT 取締役 日本スポーツ協会 公認アスレティックトレーナー |
配信URL | https://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/ |
動画公開日 | 2020年11月21日(土) |
記事公開日 | 2021年1月8日(金) |
- Praimary stabilizerの機能と評価を理解できる
- 体幹筋のトレーニングの紹介
- 段階的なトレーニングの紹介
講義のポイント
この講義では体幹機能の評価方法を多裂筋に特化して理解することができます。多裂筋を1つの筋肉として評価するのではなく、付着する腰椎の高さや部位に分けて評価できることで、適切で個別性のあるエクササイズを処方することができます。
それらを踏まえ、評価方法とそのポイントを以下に解説します。
その①:腰部多裂筋の鑑別評価
Praimary stabilizerの構築のためには腰部多裂筋がポイントになります。多裂筋はインナーユニットとしての働きに加えて骨盤を介して下肢とのリンクもあるため重要な筋肉です。
主には腰椎分節の支持あるいは安定化させる筋肉です。
筋繊維によって動作や機能も異なります。主には縦のラインと、斜めに走るラインがあります。
腰部多裂筋機能テスト1
体幹を直立位にしたまま左右傾斜します。→傾斜が崩れた反対側のweeknessあり
腰部多裂筋テスト2
片脚ヒップリフトをおこない、片側の膝を伸展しキープします。伸展側の骨盤回旋ありなしを確認します。→骨盤同側回旋がみられた場合は同側weaknessあり
※手の位置で重心位置が変化するため、腰椎のレベルを鑑別できます。
→両手を組む:下位腰椎レベル/両上肢前方位:上位腰椎レベル
腰部多裂筋機能テスト3
腰部多裂筋4パート検査
骨盤前傾・後傾運動を行い、両PSISラインと仙骨正中ラインにて4分割し腰部多裂筋の各部分を触知します。→骨盤前・後傾運動時の収縮の度合いを確認します。
腰部多裂筋機能テスト4
腰部多裂筋6パート検査
座位にて股関節肢位を変化させ骨盤前傾・後傾運動を行い、両PSIS下部・ヤコビー線上部と仙骨正中ラインで6分割し腰部多裂筋の各部分を触知します。
→骨盤前・後傾運動時の収縮の度合いを触知します。※股関節肢位により、部位の鑑別が可能です。
上位では股関節内転位での骨盤前後傾/中位では股関節中間位(肩幅)での骨盤前後傾/下位では股関節外転位での骨盤前後傾
その②:多裂筋の立位回旋テスト
足は肩幅にて回旋を行います。
触診Point:回旋時の腸骨稜の高さを確認します。
良好な場合は、回旋方向側の腸骨稜の高さは立位側と変化はありません。骨盤が下制する場合には中殿筋前方線維・小殿筋のタイトネス+多裂筋機能低下の可能性があります。
それにより股関節は屈曲・足関節底屈・内反の代償動作をとります。
骨盤が挙上する場合には、大内転筋と長内転筋のタイトネスと内腹斜筋・腹横筋機能低下の可能性があります。代償的に腰椎伸展・回旋と足関節背屈・外反の代償姿勢となります。
その③: 骨盤側方移動テスト
足は肩幅で行います(足位は前額面に垂直)ミクリッツラインを意識します。体幹は直立位を保ち体重移動を行います。
良好な場合は骨盤の並進運動がみられますが、多裂筋の機能不全がある場合には骨盤の傾斜や回旋の代償動作が認められます。
骨盤側方移動テストからの動作予測としてローディングレスポンス時の骨盤帯・股関節を確認した場合に、骨盤下制と水平シフトや体幹の傾斜が認められるケースが多いです。
その④: 立位側方荷重回旋テスト
一側に荷重し肩幅にて立位回旋します。その際に、足部は足長軸で位置させます。
触診Point:左右荷重回旋時の骨盤回旋量を確認します。
良好な場合には荷重回旋時に同側・反対側との同等回旋運動となります。骨盤同側回旋が増加している場合には大腿筋膜張筋(大転子部)・小殿筋のタイトネス+同側腰部多裂筋機能低下が認められます。
代償動作として股関節屈曲・足関節底屈・内反が認められることが多いです。
骨盤反対側回旋が増加している場合には、大腿筋膜張筋(ASIS部)・大腿直筋付着部のタイトネス+同側腰部多裂筋機能亢進が認められます。代償動作として腰椎伸展・同側、足関節背屈・外反の代償パターンが多いです。
現場で活かせそうな事
スポーツ障害や運動機能の改善、スポーツパフォーマンスを向上させるためには、体幹機能が重要となります。多裂筋は特に、機能低下が生じることで左右の回旋バランス不良や体幹の支持性低下から怪我のリスクが向上してしまいます。
講義では、エクササイズの実技が多く紹介されており、明日から使えるものばかりです。以下に現場で活かせそうな事について解説します。
その①:PMT exercise
- 肩幅より広めでの膝立て位となり大腿中央にバンドを巻きます。
- 片方は保持して骨盤は動かさずに一方の膝をゆっくりと広げます。
※腰部多裂筋:PSISより下の仙骨部繊維/股関節外旋筋:大腿方形筋・下双子筋
- 肩幅より広めでの座位になります。
- ゆっくりと骨盤前後傾を行います。
※臀部下にタオルを敷くことで坐骨支部を意識しやすくなることや座面を狭くさせ腰部多裂筋への出力を高めさせる効果があります。
- 左右踵外側に1~2mm程度のパッドもしくはティッシュを置きます。
- 骨盤からの踵外側へ体重移動を行います。
- 両下肢をセラボール上にのせます。
- 両膝をつけて股関節屈曲伸展を繰り返す。
※伸展方向をゆっくりと行うことがポイントです。
- バランスボール上に座り、大腿上1/3にバンドを巻きます。
- 体幹を直立位でバウンドする。
※鍛えたい部位によって足の位置を変化させます。仙骨下方:肩幅よりも広くする/PSIS:肩幅/ヤコビー線:足を閉じる
- 足をしっかりと組んだ座位になります。
- 下になった足の臀部に体重をかけ、頭上から上方に引っ張られた意識を持った座位をとります。
- その状態からゆっくりと骨盤前後傾を行います。
※足は股関節近位にある内転筋を意識して閉じることがポイントです。
その②:腰部多裂筋と下肢筋リンクに特化したエクササイズ
- 手をかさね、上方にしっかりと伸ばします。
- 上に伸びあがる意識をもちつつ息を吐きながらゆっくりとおじぎをします。
※股関節で曲げるように意識することがポイントです。
- 頭からお尻まで棒が入っているイメージで行います。
- 足を組んで下の足のお尻に体重をかけます。
- その状態で立ち上がります。
その③:体幹と他部位の可動性を意識したエクササイズ
Secondary Stabilizer&Mobilizer ex(体幹と他部位の可動性を意識したエクササイズ)
- バランスボール上に両下腿部を置きます。
- 両下腿および大腿後面にてボールを挟みます。
- 臀部をベッドに接するようにしつつ、息を吐きながら大腿部を挙げます。
- 戻すときには背中がベッドや床から離れないようにゆっくりと戻します。
- タオルもしくはボールを舟状骨部or踵部に挟みます。
- その状態で脚のアップ、ダウンを行います。
- 臀部をベッドに接するようにしつつ、息を吐きながら大腿部を挙げます。
- 戻すときには背中がベッドや床から離れないようにゆっくりと戻します。
- 足のダウン時には背中を話さないように行います。
- スタートは膝が臍部のライン上にいる位置にします。
- タオルもしくはボールを舟状骨部or踵部に挟みます。
- 下肢をサイドに倒します。
- 両上肢は水平に保つもしくは腕組みして行います。
※移動時には膝が臍部のライン上にいる位置にします。
- ももの中央にセラバンドを巻き、板の上で片脚立ちをします。※この時は頭のてっぺんから上に伸ばされているような意識を持つ
- 手を突き出しながら足も後ろに伸ばし、床と水平になるまで倒してきます両上肢は水平に保つもしくは腕組みして行います。
- 足長軸に半月バーを位置し、左右体重移動を行います。
- オープンスタンスでの下肢および体幹の安定化を図ります
まとめ
「パフォーマンスの基盤となるコア!体幹機能障害からおこるスポーツ傷害~上肢・下肢の関連性を考えたスポーツリハビリテーション評価&実践編~」の講義のポイントと現場で活かせそうなことについて解説しました。
理学療法士が臨床でスポーツ障害の選手をみる時に、障害予防のリハビリテーションの結果パフォーマンスアップにつながることも多くあると思います。
本講義では、体幹筋のなかでも多裂筋に着目した評価方法とエクササイズを紹介してあります。特に評価に関しては多裂筋を部位別に選手や患者様の個別性をもった評価方法を説明してあります。
また、詳細な評価に則した部位別のエクササイズも実技を中心に紹介してありますので、スポーツ障害を始めとする運動器疾患のリハビリに携わる機会のある理学療法士には臨床に活かせる内容ばかりです。是非参考にしていただければ幸いです。
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