リハノメ考察・レビュー『リハスタッフのための解剖学の再学習・再構築(解剖学・上肢編)』解剖学への苦手意識を克服

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解剖学を学ぶ重要性はセラピストなら誰でも理解しているでしょう。私は学生のころは解剖学が好きではありませんでした。暗記は苦手ではなかったのですが筋の起始停止を覚えてそれが臨床でどのように活きるのかイメージが湧きませんでした。

しかし、臨床実習で解剖学の重要性を知ることになります。整形クリニックに実習に行ったときのことです。そこには解剖学の知識が豊富な先生方がたくさんいました。先生方に食らいついていくため実習中は解剖学の勉強を頑張っていました。

知識が増えると患者さんを見られる範囲が広がります。解剖学の重要性を知った初めの経験でした。それは今に繋がっています。この講義を受けることで解剖学の重要性をさらに実感することができます。

レビューした人:yasuoさん
テーマ リハスタッフのための解剖学の再学習・再構築
~いまさら聞けない解剖学・上肢編~
カテゴリ
難易度 3.0
若手おススメ度 4.0
講師 町田 志樹 先生
了徳寺大学
健康科学部 理学療法学科・医学教育センター 講師
理学療法士・認定理学療法士(学校教育)
博士(医学)
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日 2020年6月1日(金)
記事公開日 2020年7月7日(火)
講義内容の要点
  1. 解剖学はセラピストにとって基本の学問
  2. 解剖学を学ぶことで評価の幅が広がる

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

この講義に興味を持たれる方の中には解剖学の重要性を理解している方、解剖学は苦手だけど患者さんをしっかり見ていくには必要と感じている方、教科書を読むだけでは理解できない深い知識を学びたい方など様々でしょう。

解剖学は難しい。勉強したいけど自分だけで学習するには限界がある。そんな学習意欲はあるのに効果が上がらない悩める理学療法士のために非常に参考になる講義です。

2時間以上の長い講義ですが興味深い内容ばかりで、講師の町田先生の説明もわかりやすく時折ユーモアを交えながら楽しく学ぶことができます。講義のポイントがわかるとさらに理解しやすいと思います。以下に解説します。

その①:解剖学はとにかく重要

理学療法士にとって解剖学は一生学んでいかなければならない学問の一つです。患者さんを目の前にして体表から組織をイメージして見て触れてどこに障害があるのか探っていくのが理学療法士の日常です。

深い解剖学の知識がなければ外側から見てなにがどこにあるのかわかりません。学生のころより解剖学の重要性はだれもが感じることですが、その反面苦手意識がある理学療法士も多いのではないでしょうか。

私もその一人です。

解剖学の重要性はしっかり理解できていますが得意ではありません。しかし、この講義を受けることで苦手意識が少なくなることでしょう。私は整形クリニックで勤務していますが患者さんをみながら疑問が生まれるたびに解剖学書を開きます。疑問がなくなることはなく、疑問が解決されれば新たな疑問が生まれ、勉強の繰り返しです。

学習しても忘れてしまうため、ほぼ毎日解剖学書を開きます。もちろん、自己学習は大事です。それでも患者さんに使える知識になるためには自己流の方法では限界があると感じます。

この講義を受けて自己学習で理解していた知識はより深いものになり、知らなかった知識は新たな発見があり新鮮です。臨床に直結するような情報が満載で明日から活かせるものばかりです。解剖学の重要性を再確認できる講義内容です。

その②:構造を踏まえた上で評価の選択肢を増やす

町田先生は解剖学を学ぶことで「構造を踏まえた上で評価の選択肢を増やすことができる」と言います。

これを自分なりに解釈すると解剖学の知識を深めることで患者さんの治療効果に直結するかどうかはわからないが、少なくとも自分の評価の幅が広がるということになります。引き出しは多いに越したことはありません。

自分の持っている知識の中でしか患者さんの障害は把握できません。患者さんの病態が自分の知識を越えたところにある場合、治療をしても自然回復以上の効果は得られないばかりか、むしろ回復の邪魔になることもあり得ます。

患者さんの回復を促すために行なっている理学療法が逆効果になっては元も子もありません。

そうならないためにも解剖学の知識を深める必要があります。講義のなかでは「鎖骨は上肢を大きく動かす動物にしか存在しない」と紹介されています。

鎖骨は胸骨と胸鎖関節を、肩甲骨と肩鎖関節を形成します。胸鎖関節と肩鎖関節は肩甲胸郭関節として上肢の動く舞台のように運動します。鎖骨があることで肩甲胸郭関節の運動が起こり、そこに上腕骨の運動が加わることで大きな可動域となります。

鎖骨一つとってもその形は、胸骨側が丸みを帯びており、肩峰側は扁平で幅広です。触診するときにはその形状をイメージする必要があります。構造を理解すること正確に触診できると関節や筋の状態を掴みやすくなり評価の幅が広がります。

その③:名称ありきでは本当の解剖学はわからない

学生のころに勉強する解剖学は筋肉や靭帯の名前を覚えるところから始まります。学校の解剖学の試験には「肘関節屈曲作用がない筋はどれか?選択肢:①上腕二頭筋②上腕筋③上腕三頭筋④腕橈骨筋⑤橈側手根屈筋」という問題が出されます。

まだ知識の浅い学生は肘関節屈曲に作用する筋、伸展に作用する筋を必死に暗記します。私はそこに特に疑問を持たず試験をクリアするために暗記していました。

しかし名称を丸暗記するだけでは臨床で活かせる知識にはなりません。筋がどのように走行しているのか。その筋の表層にはどんな組織があり末端部にはどんな組織が絡んでいるのか。神経はどの筋の間を通過しており、どんな運動でストレスを受けやすいのか。そんな深い知識がなければ試験には合格しても患者さんを評価することはできません。

講義の中で、町田先生は「筋の名称で長頭と短頭がある筋があるが、この長と短は筋のサイズや長さを表しているのではなく関節をまたぐ数を表している」と解説しています。

長や短という字面だけを見るとサイズや長さのことに思いがちですがそうではなく、二関節筋か単関節筋かという違いだったのです。その情報を知らなくても筋の走行を理解していれば問題はないのですが名称だけで知識をつけようとすると名称に引っ張られ本当の姿が見えづらくなります。

知識を整理するためにも講義を受ける価値があります。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

この講義では解剖学の重要性を再確認することができます。講義では臨床につながる内容がたくさん紹介されます。解剖学の知識が深まることで患者さんの評価の幅が広がります。

整形領域で働く理学療法士にとって上肢の疾患をみる機会は非常に多くあります。

私は整形クリニックに勤務していますが毎日のように肩関節疾患や上肢のしびれや痛みの訴えをお持ちの患者さんが来院されます。上肢をまったく触らない日はないほどです。ここではこの講義で解剖学の知識を深めることで、現場でどのように活かしていくか解説します。

その①: 棘下筋は線維方向を意識する

肩関節は整形疾患に携わる理学療法士であればお馴染みの関節です。肩関節で重要なポイントはいくつかあります。その中でローテーターカフは重要な部位です。

肩関節周囲炎や腱板断裂などローテーターカフが機能不全に陥り上肢の挙上制限やインピンジメント症候群が起こる患者さんが多くいらっしゃいます。ローテーターカフとは肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の停止腱からなる肩関節を安定させるために重要なインナーマッスル群です。

講義では棘下筋に注目しています。棘下筋は一つの筋でありながら線維の走行が上部、中部、下部の3つに分かれています。

そのため、MMT的に肩関節外旋が棘下筋の作用であると先入観をもってしまうと3つの線維方向があることを見落としやすくなります。棘下筋は名称としては一つの筋です。大菱形筋、小菱形筋のように名称が違えばそのように意識しますが残念ながら名称が分かれていません。

線維方向が3つに分かれているということは肩関節の外転の角度によって作用する線維が異なります。上肢下垂位の外旋では上部線維線維が優位に働き、肩関節外転角度を大きくして外旋すると下部線維から小円筋にかけて作用しやすくなると言われます。

これは臨床で外旋の筋力を検査する際、肩関節のポジションを変えて行うことが重要であることが解剖学的に示されている例です。

その②: 烏口腕筋が正中神経障害に影響する

整形クリニックで勤務していると上肢のしびれを訴えて来院される患者さんも来院されます。その中でも正中神経領域のしびれを訴える方は特に多い印象です。

診断名は頚椎症であったり、手根管症候群であったり、正中神経損傷であったり様々ですが正中神経がどのレベルで損傷や絞扼を受けるかどうかが評価、治療の最大のポイントです。頚椎の変形による正中神経障害であれば理学療法でその構造自体を変えることは難しく手が出せません。

しかし、姿勢による正中神経の伸張や筋の絞扼であれば介入手段があります。この講義では烏口腕筋と筋皮神経の関係が示されています。具体的には「筋皮神経は約95%で烏口腕筋を貫通し、その後に上腕二頭筋と上腕筋に筋枝を与え、最終的に前腕外側の知覚を司る神経、外側前腕皮神経へと移行する」と解説されます。

前腕外側にしびれを訴える場合は筋皮神経の絞扼を疑いますがそれが正中神経とも関連があります。

講義ではさらに「筋皮神経は烏口腕筋を高頻度で貫通するだけでなく、50%以上に正中神経への交通枝が存在する。さらに烏口腕筋を貫通後正中神経へ交通枝を出すものが7.7%、貫通前後に交通枝を出すものが7.7%存在する。」と解説されます。

筋皮神経が烏口腕筋貫通後に正中神経への交通枝を出す場合には烏口腕筋の緊張が正中神経領域への症状を出すことがあると言えます。正中神経障害をみる場合、円回内筋や手根部のみでなく烏口腕筋の状態も確認する必要があるのです。

その③:前腕は層構造をイメージすると理解しやすい

前腕部が苦手という理学療法士の方は少なくないのではないでしょうか。私もその一人です。前腕部の解剖学は何度も見返して学習しますが記憶が定着せずに自分のものになっていない感じがありました。

この講義ではそんな苦手意識がどこから来るのか解説しています。前腕や手部、下腿、足部は肩や上腕部よりも明らかな層構造があり二次元で見る解剖学書を頭の中で三次元に変換してイメージしなければなりません。

二次元で学んだ内容を三次元にすることは前腕以外の部位でも同様ですが前腕部は層構造になっていることでさらに難易度が増していたのです。

講義では前腕部の覚え方としてまず屈筋側と伸筋側にわけ、屈筋側に関して解説しています。

前腕屈筋群は上腕骨内側上顆から起始するものが多く、表層・中間層・深層に層構造を成しています。浅層に円回内筋・橈側手根屈筋・長掌筋・尺側手根屈筋、中間層に浅指屈筋、深層に深指屈筋・長母指屈筋・方形回内筋が存在しています。

浅層、中間層の筋は内側上顆に起始を持ちますが深層の筋は内側上顆には付着しません。これだけの情報でも前腕の筋を触っていく際の手助けになります。前腕屈筋群を三層に分けてイメージすることで、三次元で構造を理解しやすくなるのではないでしょうか。

まとめ

「リハスタッフのための解剖学の再学習・再構築~いまさら聞けない解剖学・上肢編~」の講義を受けて講義のポイントと得た知識を現場でどのように活かすか解説しました。

解剖学は経験の浅い理学療法士でも経験豊富な理学療法士でも学び続けなければならない学問です。タイトルに「いまさら聞けない」とありますが個人的には参考になる情報ばかりで聞いてよかったと思います。

解剖学の知識が浅い理学療法士には新鮮に感じ、解剖学の理解が十分にある理学療法士にとっても確認になり知識が定着しやすくなるのではないでしょうか。

構造が理解できると骨や筋の触る際に意識が変わります。実際に講義を受けてからの私は以前よりも評価の選択肢が増えたと感じます。この講義を受ければ解剖学の勉強は終わりではありません。

むしろ、新たな疑問が生まれ以前よりも解剖学書を開く回数が増えるかもしれません。疑問が解決されては新たな疑問が生まれる。その繰り返しで知識が増えていきます。まさに再学習と再構築です。

この講義は解剖学の学び方の基礎が理解できるという点でも有用です。できることなら学生時代に受けたかった講義でもあります。

丸暗記するだけの知識ではなく生きた知識が学べ、その学習自体が国家試験対策にもなります。臨床に出てからもそのまま使えます。

とはいえ時間は戻せないのでいまさらでも日々の積み重ねを継続したいと思います。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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