リハノメ考察・レビュー「【前編】運動器超音波解剖ハンズオン概論~上肢編~」

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運動器の分野において、超音波画像診断装置(以下エコー)を利用する施設は増えているのではないでしょうか。私の勤務する整形外科クリニックでも、最近導入されました。この講義ではエコーを使いたいと思っている方、またはすでに使っていて知識を向上させたい方に有益です。

今回は、エコーの概要と上肢のエコーを学びたい方向けの講義です。下肢のエコーを学びたい方は下肢編の視聴をオススメします。以下に講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 【前編】運動器超音波解剖
ハンズオン概論~上肢~
カテゴリ
難易度4.0
若手おススメ度5.0
講師 林 典雄先生
理学療法士
運動器機能解剖学研究所 所長
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年8月15日(土)
記事公開日2020年11月19日(木)
講義内容の要点
  1. 超音波画像を使用して、体表解剖を可視化する
  2. 上達するためには、解剖学の知識と熟練が必要

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

レントゲンやCT、MRIで骨、靭帯の状態はわかりますが、理学療法士が直接介入することは難しい検査です。エコーは理学療法士が扱うことのできる唯一の画像検査です。軟部組織の状態を可視化することができ、運動療法に必要な多くの情報を得ることができます。

この講義を受けることでエコーの有用性を理解することができます。以下に講義のポイントを解説します。

その①:なぜエコーが必要なのか

理学療法士は筋肉や靭帯などを体表から触診し、評価、治療をすすめます。この筋が硬くなっているだろう、炎症を起こしているのだろうと予想して実践しています。

しかし、組織が見えているわけではないため、本当に狙った組織に刺激が与えられているか確信が持てません。エコーを使うことで損傷している組織、柔軟性が低下している組織を可視化することができます。目で見えたら評価、治療に自信を持って実施することができます。自身が予想したことと異なることがエコーでわかれば、治療の変更も可能になります。

また、死体解剖ではなく、生きた人間をリアルタイムに理解することができる点もエコーの魅力です。死体解剖で組織の重なりを理解することは重要です。

しかし、理学療法士の治療対象は生身の人間です。死体解剖のみで臨床に落とし込むことは限界があります。エコーを使用すれば、臨床に繋がる有益な情報を得ることができます。

エコーの利点は静止画だけでなく、動画も見えるということです。エコーを当てながら運動を行うことで、運動時の筋活動や軟部組織の滑走性を動画で見ることができます。これを使わない手はありません。この講義では、エコーの概要を理解することができ上肢のエコーをどのように臨床で活かすか学ぶことができます。

その②:エコーの原則

エコーを学ぶためには超音波の原則を理解する必要があります。超音波は空気や水、ゼリーなどは減衰しないまま通過します。軟部組織は一部通過し、一部跳ね返ります。

骨はほぼ全て跳ね返します。跳ね返りが強いものは白く、跳ね返りが少ないものは黒く映ります。超音波に対する反射と通過の度合いで画像が作られています。

画像の描出の仕方には短軸像と長軸像があります。組織の線維に直交する形で作る画像を短軸像といい、組織の線維に沿って作る画像を長軸像といいます。

例えば、上腕二頭筋長頭部において、大結節、小結節、結節間溝との関係性を知りたい場合は結節間溝に直角にプローブを当てます。これが短軸像です。

一方で長軸像の場合は、上腕二頭筋長頭に対して平行にプローブを当てます。上腕二頭筋を動かして、周囲の組織との滑走性を見たい場合に使用できます。どの組織をどんな形で、どのような動きを見たいかによって画像の出し方が変わります。

エコーを使いこなすためには、プローブを当てる技術が必要です。さらに重要なことが解剖学的知識です。プローブが当てられても、画像に描出される組織が何かわからなければ意味がありません。解剖学的知識が十分にあり、エコーが使用できれば評価・治療もレベルアップさせることができます。

その③:上肢のエコーを見る意義

上肢は日常生活動作を行う上で多様な動きが求められます。1つの関節に可動域制限があると、動作が行いにくくなります。無理をして使っていると痛みが強くなったり、他の部位に機能障害が出たりすることがあります。

例として肩関節周囲炎の症例で考えてみます。

肩関節周囲炎では、発症早期より安静痛、夜間痛など炎症による強い痛みが出ます。リハビリでは炎症部位を把握し、痛みが増悪しないように介入する必要があります。

しかし、肩関節の内側で起こる炎症は体表から判断しにくく、不用意に動かして炎症を助長してしまうことがあります。エコーを使うことで、炎症部位を目で見て確認することができます。

可視化できれば、炎症を助長せずにリハビリをすすめやすくなります。エコーは骨折後の患者さんにも有効です。骨癒合の程度はレントゲンで見ることができますが、筋や靭帯などの炎症や滑走性の低下は見られません。

骨折後の拘縮や筋力低下は骨そのものよりも、軟部組織が原因となっていることが多いです。エコーを使用することで原因となる組織の状態を知ることができます。拘縮の原因がどこにあるのか目視できれば、適切に運動療法を進めることができます。

また、レントゲンのように放射線被曝がなく、手術により金属を挿入された場合でも使用可能です。この講義を受けることで、上肢のエコーに必要な知識を深めることができます。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

エコーの概要が掴めたら、次はどのように活用するのかということです。講義では、上肢の特徴的な部位のエコー画像、動画が詳しく解説されます。

その中で「肩関節の拘縮の原因について」、「肘関節の屈曲制限、伸展制限について」、「前腕屈筋腱と骨間膜について」特に重要と感じました。以下に現場で活かせそうな事として解説します。

その①:肩関節の拘縮の原因をエコーで確認し治療する

肩関節のエコーでは前方では結節間溝を指標に画像を作ります。内側に小結節、外側に大結節があります。小結節に付着する代表的な筋として、肩甲下筋があります。肩甲下筋を見るときには、小結節のどのレベルで見るかが大事です。小結節は見る位置によって形状が異なります。

中央部では台形、頭側部では三角形の形をしています。小結節の形状により肩甲下筋の上方部か下方部か見えるものが変わります。エコーを描出しながら、外旋運動を行うことで、肩甲下筋の滑走を見ることができます。筋の動きが乏しければ肩甲下筋由来の外旋制限と考えられ、治療対象が決まります。

肩関節では腋下部を見ることも重要です。肩関節を屈曲した肢位で、腋窩部から上腕骨頭の下側を狙ってエコー画像を作ります。この部位では下方の関節包を支える、大円筋、上腕三頭筋長頭、小円筋が描出されます。

これらの筋は肩関節周囲炎や腱板損傷で、拘縮の原因になりやすい部位です。柔軟性、滑走性の低下は肩関節屈曲時に上腕骨頭の受け入れを困難にします。

その結果、肩峰下インピンジメントを起こすこともあります。また、腋窩神経が通過するため、神経由来のトラブルも起こりやすい場所です。腋窩部の痛みを訴える症例において、エコーで小円筋の硬さがわかれば、そこを治療すればよいのです。可視化することで治療対象が明確になります。

その②:肘関節の屈曲制限と伸展制限に対するエコーの活用

肘関節の肘頭周囲では、上腕三頭筋の内側頭と外側頭との関係を見ることができます。内側頭は肘頭で腱に移行する部分と肘頭窩で関節包に付着する線維があります。関節包に付着する線維が瘢痕化した場合、屈曲制限の原因になります。

肘関節周囲の骨折において、瘢痕化が起こりやすい部位でもあります。骨折部の固定性が良好であれば、早期より内側頭の収縮練習を行うことで屈曲拘縮の予防になります。エコーで確認することで瘢痕化の有無を見ることができます。

肘関節伸展制限については、肘の前面で腕橈関節周囲を観察することが重要です。ここでは上腕骨小頭のレベルで、長橈側手根伸筋と上腕筋が観察できます。長橈側手根伸筋は手関節の主要な背屈筋であるとともに、肘関節では屈曲に作用します。

そのため、腕頭関節において、肘関節伸展制限の原因となる筋です。肘関節伸展の最終域では上腕骨小頭は腹側に突出します。この突出を可能にするためには、長橈側手根伸筋と関節包の間の柔軟性が必要です。

そこで肘関節伸展制限予防のためには、長橈側手根伸筋の収縮練習を行うことが重要です。エコーで肘関節伸展時に長橈側手根伸筋と関節包の間の瘢痕化が見られる場合、滑走性を改善させるための治療が必要になります。治療後に肘関節伸展で上腕骨小頭の突出が許容されれば、治療の有効性が示されます。

その③:前腕屈筋腱と骨間膜の観察

前腕掌側の観察では屈筋腱を見ることができます。屈筋腱を見るときには、腱に対してプローブを直角に当てることがコツです。腱に直角に当たっていない場合、黒っぽい画像になり上手に描出されません。直角に当てると腱が白っぽく映り観察しやすくなります。前腕掌側の橈側では長母指屈筋を観察できます。長母指屈筋腱を短軸画像で描出できたら、腱を基準に長軸画像を作ります。

そこで母指の屈伸運動を繰り返します。エコーを用いて動画で長母指屈筋腱が方形回内筋の上を滑る様子が見えます。同様に2~4指の深指屈筋腱も順に見ていきます。

こちらも手指の屈伸運動を繰り返すと、方形回内筋の上を滑る様子が見えます。この滑走性が低下すると手指の屈曲、伸展ともに制限の原因になります。

前腕遠位掌側では、方形回内筋の深層に白く映る線維状の骨間膜を見ることができます。回外すると線維の距離が伸び、回内位では縮みます。骨間膜が硬くなると回外制限が起こります。

中間位での背側からの骨間膜を圧迫すると、骨間膜が伸張される様子が観察できます。橈骨遠位端骨折など前腕中間位で回内外の運動は制限されている場合、背側から骨間膜を圧迫することで回外制限の予防になります。

回外制限があると物を持ち運ぶときなどに不便になります。可能な限り予防していくことが大事です。

まとめ

「【前編】運動器超音波解剖ハンズオン概論〜上肢〜」を受けて、講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説しました。

理学療法士は解剖学的知識と触診技術を武器に、評価と治療を行います。そこには、毎日の学習と経験が必要です。エコーを使うことで画像、動画として可視化することで運動療法の可能性が広がります。

体表からの触診が本当に目的する組織なのか、刺激を与えるべき組織に実施できているのか。エコーの活用によって、手探りで行なっていたことが、確信を持って治療に当たることができます。

講義では1症例をとにかく丁寧に見ること、それを積み重ねることが大事だと言われます。初めはエコーを見ていても、どこにどんな組織があるのかわかりません。

しかし、解剖学書を見ながら、繰り返し講義を受けることで理解が深まります。これが、実際の現場で可能になれば、患者さんに与えられるものは確実に増えます。

エコーを扱うためには、上達に時間がかかりますが諦めずに継続することが重要です。この講義はエコーを知るきっかけになり、すでに使用している方には復習になります。興味のある方には、是非受けて頂きたい講義です。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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