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肩関節の拘縮の治療に悩まれる理学療法士は多いのではないでしょうか。整形クリニックに勤務する私もその一人です。
肩関節周囲炎や腱板損傷など肩関節疾患の患者さんに関わるたびに自分の未熟さを感じずにはいられません。
この講義では肩関節拘縮でも特に関節包性拘縮に着目しています。関節包性拘縮の治療を学ぶということは関節包に対する知識が深まることは当然ですが皮膚性、皮下組織性、筋性との鑑別も必要になるため結果的に関節包性以外の知識も深まります。肩関節の拘縮治療に悩む理学療法士の助けになる講義です。
テーマ |
肩関節拘縮の見方と運動療法 ~関節包性拘縮に着目して~ |
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カテゴリ | |
難易度 | |
若手おススメ度 | |
講師 |
赤羽根 良和 先生 さとう整形外科・理学療法士 |
配信URL | https://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/ |
動画公開日 | 2020年6月1日(月) |
記事公開日 | 2020年7月13日(月) |
- 関節包性拘縮をどのように評価するか
- 関節包性拘縮の治療の手順
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講義のポイント
肩関節拘縮の見方として重要となるのが関節可動域制限の原因を探っていくことです。この講義では関節包性拘縮に着目した内容となっていますが関節包性か判断するためにはその他の制限因子を排除する必要があります。
講義では関節包に至るまでのそれぞれの組織をどのように評価していくかという情報が豊富に解説されています。
一つ一つが理解できると患者さんの評価は格段に広がります。以下に講義のポイントを解説していきます。
その①:可動域制限の原因の見極めが大事
理学療法士は臨床で毎日のように関節可動域の制限のある患者さんに出会います。関節可動域制限に対する治療目的は可動域を拡大させることにあります。
そのためには、可動域制限の原因を探っていく必要があります。可動域制限の原因となっている組織が確定できて、その組織に対する治療技術を持っていて患者さんに適切に実施することができれば可動域は拡大します。
理屈は単純ですが実際の臨床では簡単ではありません。可動域制限の原因はなにか探っていくこと自体に難しさがあります。特にそれが関節包による制限であった場合さらに難しくなります。
なぜなら、関節包とは文字通り関節の周りを覆う膜であり深層にある組織だからです。外側からは皮膚、皮下組織、アウターマッスル、インナーマッスルがあり、さらにその深層に関節包や靱帯が存在します。関節包に至るまでの表層の組織すべてが関節可動域制限の原因になります。表層の組織に対する治療が行えて始めて関節包性の拘縮であると判断できます。
講義のなかで赤羽根先生は「関節包の表層には皮膚があり、皮下組織があり、筋肉がある。それらの治療をすすめたあとに残るのが関節包でありすべてのケースに適応になるわけではない」と述べています。
つまり関節包性と決めてつけて治療するのではなく関節包性拘縮であると見極めることが大事であるということです。
その②:可動域制限と痛み
関節可動域には痛みが絡んでいる場合が多いです。臨床でも可動域の制限はあるものの全く痛くない患者さんは少なく、痛いから動かせない、動かさないから硬くなる、硬いからさらに痛くなるといった具合に負のループに陥ってしまいます。
講義では関節包性拘縮と痛みについても解説されています。そもそも関節包が硬いから痛いのか、硬くなくても痛いのかという疑問が生まれます。なんとなく硬いと痛いようなイメージがありますがそうではないようです。
講義の中では「関節包が全体的に硬くなった場合は痛みを出しにくく、関節包の一部が硬くなった場合は痛みを出しやすい」と解説されます。関節包全体が硬い場合には伸張されても全体的に伸ばされ、圧が分散されるため閾値を超えず痛みは発生しません。
一方で一部硬いところと硬くないところが伸張された場合伸びない部分と伸びる部分に差があり圧が集中する箇所があり閾値を超えて痛みが発生します。肩関節の関節包にはそれぞれ腱板筋群が付着します。
関節包の柔軟性が少なくなり、それを伸張させようとすると痛みが出ます。痛みが出ると同じ領域の腱板筋が防御収縮を起こし筋の緊張増してさらに痛みを発生させやすくなります。関節包へのアプローチは筋の防御収縮を抑えながら実施することが重要なポイントになります。
その③:運動方向によって関節包が伸張される部位を理解する
関節包性拘縮を理解するためにはどの運動方向で関節包のどの部分が伸張されるかを知っておく必要があります。肩関節の関節包は肩甲骨の関節窩と上腕骨頭との間を広く取り囲んでいます。
関節包が関節を全体的に取り囲んでいるものとするとイメージしにくいかもしれませんが部位を分けると頭に入りやすいです。具体的には関節包を前面と後面に分けて考えると理解しやすいかと思います。
単純に考えて関節包の前面は肩関節外旋すると伸ばされます。反対に後面は肩関節内旋すると伸ばされます。これが考え方の基本になります。次に前面・後面をさらに上部、中部、下部に分けます。
前面であれば肩関節の外転角度を変えることで伸張される関節包の場所が変わります。肩関節外転せずに外旋すると前面の上部が、肩関節45°外転で外旋すると前面の中部が、肩関節90°外転で外旋すると前面の下部が伸張されます。
後面であれば屈曲角度を変えて内旋を組み合わせることで伸張される関節包が変わります。肩関節屈曲せずに内旋すると後面の上部が、肩関節45°屈曲で内旋すると後面の中部が、肩関節90°屈曲で内旋すると後面の下部が優位に伸張されます。
伸張されるのは関節包だけでなくその表層の腱板筋群も緊張します。関節包の伸張方向を合わせて腱板筋群がどのように位置が変化するか理解すると評価と治療につながりやすいです。講義ではさらに詳しく解説されています。
現場で活かせそうな事
関節可動域制限の治療に対してはその原因となる組織がなにか判断することが重要です。それが出来れば、治療の半分は終わったようなものではないでしょうか。
しかし、そこに難しさがあります。患者さんは様々な要因で可動域制限を来します。患者さんの訴えは症状に対して順序立てて評価することが重要です。この講義の後半で実際の治療の方法が紹介されています。その中で現場ではどのように活かしたらよい解説します。
その①:表層から深層への評価が重要
講義のポイント①でもお話ししましたが関節包性拘縮を見ていくときに重要なことが関節包に至るまでの表層の組織の状態を確認することでした。関節包は深層にある組織のためその手前の表層の組織が硬くなっている場合はまずそちらからアプローチしなければなりません。
具体的には皮膚、皮下組織、アウターマッスル、インナーマッスル、関節包の順に行います。赤羽根先生曰く表層から深層に向かって評価していく際に重要なことが圧のかけ方や触診の仕方を組織ごとに変えることだと解説しています。
圧のかけ方で優位に動く組織が変わるということで理学療法士の手から伝わるセンサーを研ぎ澄まして行う必要があります。皮膚であれば最表層の組織でありその深層には脂肪があります。皮膚と脂肪の間を動かしことになるため圧はそれほど必要ありません。軽く指を置いて動かしたり、つまんだり、引っ張ったりして皮膚の伸張性を確認します。
皮下組織であればアウターマッスルとの間のため少し圧をかけて動かします。アウターマッスルは筋のレリーフがはっきりしているので体表からでも触診しやすいと思います。
筋のレリーフにそって触診しながら筋線維の方向に平行移動や垂直移動させて筋の柔軟性を見ます。インナーマッスルはアウターマッスルの深層にあるためその筋の全容を触診することは困難です。
骨への停止部やアウターマッスルの深部に指を入れ込みながら一部を触診していくイメージです。運動しながら緊張の度合いを見ていきます。そこまで行ってようやく関節包の評価に移ります。
その②:腱板筋をリラクゼーションしながら関節包の治療へすすめる
講義のポイント②でも少しお話しましたが関節包の治療をしていくには関節包に付着を持つ腱板筋のリラクゼーションを行いながら実施する必要があります。腱板筋の緊張が高い状態で関節包を操作しようとしても筋が防御し操作の妨げになります。
そこで強引に関節包を伸張しようと試みても痛みが発生しやすく緊張が増して治療前より硬くなることもあります。そのため腱板筋のリラクゼーションが重要となります。講義では実際にどのような手順で行なっていくか解説されています。
前方の関節包の伸張性低下を評価するためには肩外転と外旋を組み合わせてみていきます。外転と外旋で伸張される腱板筋といえば肩甲下筋です。肩甲下筋は前面の関節包に付着します。
そのため肩甲下筋の緊張が高くなると前方関節包の伸張性を低下させる原因になります。そこで肩甲下筋を触診しながら筋の緊張を確認し、緊張が高い場合はリラクゼーションをさせる必要があります。
肩甲下筋は肩関節内旋作用を持つ筋であるため内旋方向への等尺性収縮を行うことでリラクゼーションを図ります。当該筋の等尺性収縮を行うことで筋緊張を亢進させるⅠa線維の活動が低下し結果的に筋のリラクゼーションにつながります。肩甲下筋のリラクゼーションが得られたら関節包の操作へとすすめます。
その③:関節面を意識して操作する
関節包の治療は関節包のどの部分が硬くなっているか評価から判断し、硬くなった部位に対して伸張する操作を加えることです。講義のポイント③でお話したように前方と後方に関節包を分けて伸張性が低下した部分を探します。
硬くなっている部位が特定できたら実際に伸張操作をしていくわけですが、操作する上で重要となるのが上腕骨頭を動かす方向です。適切な方向に動かすためには肩甲骨の関節窩面を意識して行うことがポイントです。
上腕骨頭と肩甲骨関節窩の位置関係は上面から見たときには肩甲棘と垂直に関節窩があり、外側から見たとき肩甲骨の関節上結節は肩鎖関節の延長、関節下結節は肩甲骨下角の延長線上に存在します。
したがって、臨床では肩甲棘の位置、肩鎖関節と下角を結んだラインから関節窩の面をイメージすることが重要になります。赤羽根先生曰く最低限ここができなければ関節包の治療は行えないと強調されているほど重要なポイントです。
この位置関係を意識して上腕骨頭の操作をすることが重要になります。これが意識してできればあとは関節包が伸張されるポジションに肩関節の角度を変化させて上腕骨頭を硬くなっている方向に押し込むだけです。
実際の詳しい操作方法は講義のなかで解説されています。明日の臨床にすぐに活かせます。
まとめ
「肩関節拘縮の見方と運動療法~関節包性拘縮に着目して~」の動画より講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説しました。
肩関節疾患の患者さんで可動域制限の治療で悩む理学療法士は多いと思います。この講義を受けることによって肩関節の可動域制限に対する知識が深まり患者さんの見方が変わります。
講義の主要なテーマは関節包性拘縮ですが、関節包の治療を行うたまには関節包の知識のみを追求しても不十分です。関節包に至る前にどんな組織が存在しているのかイメージすることが大事で、すべての制限因子を解決していくことで可動域が拡大していきます。
関節包に対する評価、治療という枠を超えて肩関節の可動域制限にどのように向き合っていくかを指南した内容といってもよいです。私は早速臨床で活用していますが肩関節疾患の患者さんを順序立てて見ていくことができるようになったと感じます。
まだまだ結果に繋がらないところもありますが、以前よりは肩関節疾患に対する苦手意識は少なくなりました。また表層から深層に向かって評価していくという手順は肩以外の部位でも変わらず応用ができます。肩関節の知識をつけたい、適切に評価できるようになりたいと思われる方には必見の講義です。
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