リハノメ考察・レビュー【前編】「股関節拘縮の評価と運動療法」〜機能解剖学に基づいた病態解釈から実際の治療まで〜

リハノメPT・OT・ST

このページは現役の理学療法士や作業療法士がリハノメの講義動画を見て、レビューするコンテンツです。講義動画の見るべきポイント現場で活かせることを発信しています。

股関節の痛みや可動域制限に悩む理学療法士は多いでしょう。私が勤務する整形外科クリニックでも、股関節に機能障害を持つ患者さんと関わることがあります。同じ診断名の患者さんでも、股関節の前面が痛い方、殿部が痛い方、たくさん歩くと痛みが出る方、立っているだけで痛みが出る方など症状は様々です。個々の患者さんによって行うことは異なるため、幅広い知識が必要です。

この講義を受けることで、股関節拘縮に対してどのように考え、評価と運動療法を実践していくか理解できます。以下に講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 【前編】股関節拘縮の評価と運動療法
~機能解剖学に基づいた病態解釈
から実際の治療まで~
カテゴリ
難易度3.0
若手おススメ度5.0
講師 熊谷 匡晃先生
理学療法士
三重県厚生連
松阪中央総合病院
リハビリテーションセンター 主任
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年9月19日(土)
記事公開日2020年10月11日(日)
講義内容の要点
  1. 股関節の機能と運動を理解する
  2. 股関節拘縮に対するアプローチを学ぶ

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

この講義では股関節の構造、機能といった総論的な話から、股関節前面のインピンジメント、変形性股関節症など疾患に対する知識を学ぶことができます。講義のなかで有益な情報は多くあります。

その中でも、股関節に求められる機能を理解すること、本来の運動を知ること、変形性股関節症への理解を深めることが特に重要と考えます。以下に講義のポイントを解説します。

その①:股関節に求められる機能とは

講義では股関節に求められる機能として、①無痛でしっかり支えられること、②無痛でしっかり動くことの2つが挙げられています。これは股関節だけではなく、下肢の関節すべてに求められる機能でもあります。下肢は体重を支えて、立位や歩行で必要な運動ができることが重要です。

さらに、これが痛み無く行えなければなりません。体重を支えるとき、動かすときに痛みがあれば適切な運動は行えません。病院に来院され理学療法士が関わる患者さんは、多くが痛みを伴っています。立つとき、歩くときに股関節に痛みがあるという訴えを多く聞きます。

そこで理学療法士はまず痛みを軽減させることを求められます。痛みを軽減させるためには原因がどこにあるか探る必要があります。

痛みの原因がメカニカルストレスか、ケミカルストレスかによって対応が異なります。メカニカルストレスによる痛みは、筋の柔軟性・滑走性の低下や筋力低下、関節の不適切な運動など機械的な刺激が原因になります。原因となる機械的刺激が除去できれば、痛みが軽減するため理学療法の適応となります。

一方、ケミカルストレスによる痛みは、機能的な問題よりも炎症の沈静化を優先しなければならないため、理学療法では対処不可能です。痛みの原因によっては理学療法を行うことで悪化する場合もあるため、しっかり見極めなければなりません。メカニカルストレスが原因の場合に、どのようなアプローチがあるか講義で紹介されています。

その②:本来の股関節の運動を理解する

講義では日本人の股関節屈曲角度の健常者平均133°に対し、遺体では93°で骨性の制限が出るとの研究結果が示されています。実際には股関節軟部組織の影響もあり約70°が股関節固有の屈曲角度となります。

これは理学療法士がゴニオメーターで測定し、股関節屈曲120°であった場合、腰椎と骨盤の可動域も含めた角度ということになります。

股関節屈曲で前面の痛みを訴える患者さんに対してさらに屈曲を強制することは、本来の可動域を超えた運動をすることになります。それでは、可動域が拡大しないばかりか、痛みも増強してしまう危険があります。

股関節本来の運動が70°と知っていれば、次に確認するのは腰椎、骨盤の運動です。股関節のアプローチで症状が改善しない場合は腰椎、骨盤の運動を制限している腰部、殿部の筋の硬さを確認する必要があります。腰部、殿部の筋に硬さがあれば、その部位の伸張性が改善したらどうなるか想像します。

そこまで考えを巡らせることができれば、あとは硬くなった筋を緩めるだけです。そこで結果が出れば股関節の問題ではなく、腰椎や骨盤の問題だったと言えます。まずは、股関節本来の運動範囲を知ることが重要になります。股関節を見る上では必須の知識になります。

講義では腰椎・骨盤を制限した股関節本来の可動域の見方や、腰椎・骨盤の硬さの評価なども紹介されています。

その③:理学療法で変形性股関節症の悪化のリスクを減らす

変形性股関節症(以下股OA)は整形外科領域に携わる理学療法であれば、関わることの多い疾患の一つです。股OAは末期になると、人工関節等の手術療法が適応されることもあります。

しかしながら、手術療法の前に保存療法が適応されることが多く、改善が見られない場合に手術を検討するケースが多いです。股関節症診療ガイドラインでは、患者教育や運動療法、薬物療法などで短期的な疼痛軽減や機能回復が認められていますが、長期的な関節症進行抑制の効果は明らかではありません。

いずれにしても、理学療法士が股OAの患者さんのリハビリに携わる際には、状態に合わせた対応が必要です。講義では股OAのリスク因子として、発症のリスク因子と悪化のリスク因子が解説されています。発症のリスク因子には「臼蓋形成不全、先天性股関節脱臼、肥満、過度のスポーツなど」があり、悪化のリスク因子には「年齢、股関節の痛み、関節腔の狭小化、骨棘、大腿骨外側偏位など」があります。

理学療法士が股OAの患者さんと関わるときには、すでにOAを発症している状態のため、悪化のリスク因子を抑えることが重要です。進行を少しでも抑えるために、悪化のリスク因子である痛みや軟骨・骨の変形の元になっている要因に介入することが必要です。

その要因が筋や軟部組織にあるのであれば、理学療法で対応可能になります。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

講義では臨床で実技を交えて様々なアプローチの方法が紹介されます。どれも臨床で実践しやすい内容になっています。講義で紹介される実技の中で、腰椎後弯を拡大する方法、外閉鎖筋に対するアプローチ、臼蓋被覆率を上げるアプローチが特に重要と考えました。

臨床でどのように治療すればよいか悩む理学療法士に、参考になると思います。以下に現場で活かせそうな事を解説します。

その①:腰椎後弯可動域を拡大するアプローチ

股関節屈曲の本来の可動域は70°程度と述べました。70°以上の可動域を獲得するためには腰椎後弯の可動域が必要になります。腰椎の可動域が制限されている場合、股関節は過度の屈曲を強いられることになります。

その結果、痛みや可動域制限などの機能障害を引き起こします。股関節疾患を見る上で重要なことは、股関節自体の問題か腰椎・骨盤の問題か見極めることです。

講義では腰椎・骨盤の評価として腰椎後弯可動性テスト(PLF test)が紹介されます。これは、側臥位にて股関節屈曲45°とし、上方脚の股関節を他動的に屈曲し、抵抗なく胸部に接すれば陰性、胸部に接しない場合は陽性というテストです。

このテストにより簡便に腰椎の後弯可動性を評価することができます。陽性になった場合は腰椎・骨盤後弯を制限する因子にアプローチします。

腰椎・骨盤の後弯を制限する因子としては、講義では腸腰靱帯による影響が解説されます。腸腰靱帯とは第5腰椎の肋骨突起と隣接する腰方形筋線維束の下面から、腸骨稜内側唇の後端をつなぐ強靭な靱帯です。

腸腰靱帯は前方と後方の線維があり、特に後方線維は仙骨の後傾とともに骨盤の後傾を制動します。靱帯はそもそも、伸びない組織ですが、靱帯の伸張と弛緩を繰り返すことで周囲組織との癒着を剥がし、組織間の滑走性改善を図ります。講義では実技でアプローチの方法が解説されています。臨床ですぐに実践できる技術です。

その②:外閉鎖筋に対するアプローチ

股関節自体の問題として、深部外旋筋群の過緊張があります。深部外旋筋群が過緊張の状態になると大腿骨頭を前方に押し上げます。大腿骨頭が前方に押し上げられると股関節屈曲で、関節の本来の軌道にズレが生じます。

運動の軌道がズレることで、前方インピンジメントなどの鼠径部痛が出やすくなります。深部外旋筋群の中でも、特に外閉鎖筋が重要です。

外閉鎖筋は閉鎖孔の前方から後方に向かい、大腿骨頸部の関節包遠位部を折れ曲がって頸部に巻きつくように走行します。外閉鎖筋の攣縮や柔軟性低下によって、早期に大腿骨頭の前方偏位が起こると言われます。そこで臨床では外閉鎖筋に対するアプローチが重要になります。

講義では、実技で外閉鎖筋に対するアプローチが解説されています。まずは、外閉鎖筋の圧痛所見を取ることです。圧痛があるということは、筋が圧変化を伴うストレスに対する障害があることを意味します。外閉鎖筋は股関節軽度屈曲・外旋位で触診します。恥骨結節を触れた指を、末梢に移動し閉鎖孔を確認します。そこに圧を加えたとき、指が沈み込まずに跳ね返りや、痛みがあれば外閉鎖筋の攣縮が考えられます。

外閉鎖筋を触診できたら、外旋への自動介助運動を繰り返すことでリラクゼーションを図ります。実施後に再度圧痛を確認し、軽減していれば外閉鎖筋の攣縮が改善したと言えます。講義では詳しく解説されていますので、是非参考にしてください。

その③: 臼蓋の被覆率を上げるためのアプローチ

日本では臼蓋形成不全や先天性股関節脱臼などに伴う二次性の股OAが多いとされていますが、臨床では一次性の股OAの患者さんも少なくありません。一次性の股OAは加齢変化とともに、股関節の変形や炎症が進行するものです。そこには姿勢変化が大きく関連しています。

加齢による脊柱の後弯化によって、骨盤が後傾します。骨盤が後傾した状態で可能な限りまっすぐ立とうとすると、股関節は相対的に伸展位になります。伸展位では大腿骨頭の前面は臼蓋に覆われていない状態になります。

これが臼蓋の被覆率が低下した状態です。被覆率が低下することで股関節前面の痛みが出ている場合は、被覆率を上げることが重要です。被覆率を上げるためには腰椎前弯、骨盤前傾方向へアライメントを修正する必要があります。

腰椎前弯、骨盤前傾を作るために重要な筋として多裂筋と腸腰筋があります。どちらか一方が働くだけではアライメントの修正はできません。両者が協調して働く必要があります。講義では多裂筋と腸腰筋の評価とアプローチについて解説されています。端座位で骨盤を前傾させたときに、多裂筋か腸腰筋どちらに機能不全があるか検査します。

例えば、多裂筋をアシストしたときに骨盤前傾が良好に行えるようになれば、多裂筋の機能不全が考えられます。評価の応用が治療に繋がります。多裂筋をアシストしながら骨盤前傾を反復し学習します。講義では、実技で詳しく解説されており、臨床に活かせる内容になっています。

まとめ

「【前編】股関節拘縮の評価と運動療法~機能解剖学に基づいた病態解釈から実際の治療まで~」の講義を受けて、講義のポイントと現場で活かせそうな事について解説しました。

理学療法士は股関節疾患の患者さんに関わる機会が多くあります。高齢者だけでなく、現役世代でも股関節の痛みに悩む患者さんは少なくありません。そのような患者さんに理学療法士として何ができるでしょうか。

重要な視点は上述したように「無痛で支えられる」「無痛で動かせる」ということです。無痛がポイントです。痛みがあれば十分に筋力を発揮することができず、痛みを回避するため歩容が悪化します。痛みの原因が機能的な問題にあれば、理学療法で改善の余地があります。痛みの原因が構造的な問題であれば、構造を修正することは困難です。

しかし、多くの場合、機能的な問題と構造的な問題が混在しています。理学療法士に対処できるところはどこか考え続けることが大事です。今回の講義では股関節疾患に対してどのように考え、アプローチしていけばよいか知るきっかけになります。

股関節関連の診断名ではない方でも、腰痛や膝痛の原因が股関節にあることもあります。股関節に興味のない方でも参考になる情報が多いため、オススメの講義です。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

質問があれば気軽にコメントください

コメント一覧

タイトルとURLをコピーしました