リハノメ考察・レビュー「【後編】体幹・股関節に着目した解剖学と運動学」筋や神経の周りの結合組織に目を向ける

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このページは現役の理学療法士や作業療法士がリハノメの講義動画を見て、レビューするコンテンツです。講義動画の見るべきポイント現場で活かせることを発信しています。

今回の講義は、以前動画レビューした「体幹・股関節に着目した「なぜ?」を紐解くために必要な解剖学と運動学」の後編です。

前編では、体幹に対する内容でしたが、後編では股関節に着目した内容となっています。体幹と股関節は、hipーspine syndromeと言われるように互いに関連し合っています。

切っても切り離せない関係にあり、体幹を評価するためには股関節の評価も合わせて行う必要があります。

この講義で、どのように股関節の評価とアプローチをすすめるか学ぶことができます。以下に講義のポイントと現場で活かせそうな事について解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 体幹・股関節に着目した「なぜ?」を紐解くために
必要な解剖学と運動学 後編
~運動器疾患に対する評価と
アプローチの考え方を中心に~
カテゴリ
難易度5.0
若手おススメ度4.0
講師 工藤 慎太郎 先生
森ノ宮医療大学 保健医療学部
理学療法学科 准教授・理学療法士
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年8月1日(土)
記事公開日2020年10月9日(金)
講義内容の要点
  1. どんな組織を狙って治療するか意識する
  2. 筋や神経の周りの結合組織に目を向ける

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

この講義では、前編で解説された評価の3ステップを元に股関節の評価やアプローチの方法が解説されます。理学療法士が関わる上で、変化させられる組織と変化させられない組織があります。

その中で、自分の行なっている行為がどの組織を対象にしているか、明確にすると評価や治療が整理しやすくなります。

この講義では、参考になる情報が多く紹介されています。以下に講義のポイントを解説します。

その①:理学療法士が変えられるところはどこか

講義の前編で、理学療法の評価は3ステップで、考えることが重要であると解説されました。3ステップとは、1段目に姿勢や動作から力学的ストレスの明確化をすること、2段目にどこが損傷・障害されているのか知るために解剖学的評価を行い、3段目でなぜ損傷・障害されたのか、なぜそのような動作になるのかを考える運動学的評価です。

理学療法士は、ただ硬くなったところを柔らかくするだけでは不十分です。3ステップの頂点である問題となっている不適切な姿勢や動作を改善できて最終目標が達成でき、再発予防につながります。

評価の3ステップでは、理学療法を行う上で考えなければならないことは、理学療法士に変えられるところはどこかということです。理学療法で、運動や物理的刺激を加えることで、変化する組織はどこか理解しておく必要があります。

例えば、骨折部に対してマッサージやストレッチなどを行っても骨癒合をさせることはできません。骨癒合するためには固定と安静が必要です。

そこに、運動を加えることは骨癒合を妨げる危険性があります。靭帯はどうでしょうか。靭帯の役割は運動を制限することです。運動を制限するためには伸びないことが大事です。靭帯が伸びることを靭帯損傷と言います。

可動域を改善させようと、靭帯を伸ばすことは靭帯損傷をさせることと同じ意味です。

一方で、筋は変化させやすい組織です。ストレッチすることで柔軟性が改善し、収縮させることで筋力が向上します。筋に注目することが患者さんを理学療法で変化させられる近道です。

その②:硬くなっているのは筋だけではない

筋は、理学療法士が介入することで変化させやすい組織のため、そこに注目して理学療法を展開することは重要です。その上で、さらに踏み込んで筋だけでなく、筋の周りにある組織にも注目すべきです。

筋線維の周りには、筋膜が取り巻いています。同様に、神経線維の周りは、神経周膜が取り巻いており、集まった線維束がさらに神経上膜で包まれています。血管も血管内膜、外膜のように膜が取り巻いています。

このような膜組織は、結合組織と呼ばれコラーゲンの密度によって密性結合組織と疎性結合組織に分かれます。講義では、筋線維に対するアプローチだけでなく結合組織に対して、アプローチすることの重要性が示されています。

筋と筋の間、筋と靭帯の間、筋と神経の間には結合組織が空間を埋めています。間にある結合組織が炎症や侵襲などにより、動きが悪くなると隣合う組織は円滑に動くことができません。

筋と筋の間が滑らかに動くことによって、柔軟に伸張することができます。そのためには、結合組織の十分な柔軟性と滑走性が求められます。そして、結合組織に対しては理学療法士が介入できる予知があります。臨床においても結合組織を意識して、治療を実践していくと可動域改善や筋力の発揮が向上することを経験します。

講義では、結合組織に対してどのようにアプローチしているか、研究結果と実技動画で詳しく解説されています。臨床につながる内容になっており即実践できます。

その③:筋の硬さや弱さには神経が関係する

筋は伸張、短縮、収縮、弛緩などの機能を持っています。筋が力を発揮するときには収縮します。収縮するためには筋の柔軟性が重要です。硬くなった筋は、収縮しにくくなり力を発揮しにくくなります。

その状態を放置すると収縮しにくい状態から、さらに進み筋力低下が起こります。一部に筋力低下が起こると代償が働くようになり、過剰に働かなければならない筋には、新たな障害が起こります。

このように1つの機能障害が、次々と広範囲に波及していきます。評価の3ステップの頂点である運動学的評価では、いかに問題となる姿勢や動作を改善していくかが重要です。その目標に到達するためには、まずは硬い筋の柔軟性を改善させることが必須です。

筋が硬くなっている場合、その周りの結合組織にも目を向けることが大事だと述べました。そこで筋の周りの結合組織を柔軟にするようアプローチします。

しかし、それだけでは不十分です。忘れてならないことが、そもそも筋は神経に支配されて収縮を起こしているということです。そのため、硬くなった筋を支配する神経にも目を向ける必要があります。いくら筋をほぐして、柔らかくしても神経の動きが悪くなっていてはまた硬くなってしまいます。

そして、結合組織は神経の周りにも存在します。講義では、神経の周囲の結合組織にどのようにアプローチすべきか、実技動画を交えて解説されています。私は、これまで神経周囲の結合組織には注目できていませんでした。この考え方を取り入れると臨床で結果につながります。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

講義では実技を交えた動画で評価やアプローチ方法が学べます。実際の治療場面やエコー動画、研究結果も多く紹介されており、自身の担当する患者さんに置き換えて考えやすい内容になっています。

その中でも、私が特に参考になると感じた大腿外側部の痛みに対するアプローチと、大腿直筋に対するアプローチ、小殿筋に対するアプローチを現場で活かせそうな事として解説します。

その①:大腿外側部の痛みに対するアプローチ

股関節の代表的な疾患として、大腿骨転子部骨折があります。高齢者に多い骨折の1つで多くが、髄内定やプレートによる骨接合術が行われます。大腿骨転子部骨折術後に起こることが多い症状が、大腿外側部の痛みです。骨折部の炎症や骨癒合不全、手術による侵襲など術後1ヶ月程度であれば痛みが出ることは想定内です。

しかし、術後2ヶ月を経過しても、歩行時の大腿外側部の痛みが消失せずに、難渋するケースを経験します。痛みがあると筋力を十分発揮することができず、歩行時にも健側より早期に疲労が起こります。

また、痛みを我慢して歩行を続けることで歩容が不良になり、腰や膝の痛みを誘発することもあります。講義を受ける前の私は、大腿骨転子骨折後の大腿外側部の痛みに対して術創部の皮膚や皮下組織の滑走を出したり、筋力低下した股関節外転筋の筋力増強などのアプローチをすることが多かったのですが、症状が改善しないケースもありました。

講義で、外側大腿皮神経の周囲結合組織に対するアプローチが紹介され、通常の運動療法に追加して実施することで、痛みの軽減や歩行速度の向上が得られたとの研究結果が示されています。

大腿骨転子部骨折術後で大腿外側部の痛みが残存している患者さんに対して、講義で紹介されている方法を実施すると痛みの消失と歩容の改善が見られました。講義を受けなければ改善できなかったため、この講義との出会いを貴重に感じました。

その②:大腿直筋に対するアプローチ

講義を受けることで結合組織に目を向ける重要性が理解できます。大腿直筋は表層の内側に縫工筋、外側に大腿筋膜張筋、深層は腸腰筋が囲まれています。各筋は筋膜で覆われています。

隣接している筋が多いということは、結合組織も多いということになります。大腿直筋を覆う結合組織が硬くなれば、当然筋の柔軟性を制限し、収縮力も低下します。股関節疾患や腰部疾患の患者さんで、大腿直筋が硬くなっているケースは多いです。

そのような患者さんに対して、大腿直筋のストレッチをすることがあります。筋線維自体が硬くなっている場合は、ストレッチで改善するでしょう。

しかし、結合組織にも注目したとき硬くなっているのは、筋線維だけでなく結合組織も同様に硬くなっていると考えることができます。入れ物が固ければ、中身の動きも制限されます。大腿直筋の硬さがある患者さんに対してストレッチだけで改善しない場合は、大腿直筋周囲の結合組織に対するアプローチを取り入れることが重要です。

実際に伸展型腰痛で大腿直筋が硬くなっており、骨盤前傾している患者さんに対して実施したところ、大腿直筋の柔軟性が改善し腰部の痛みが緩和されました。ストレッチの前に取り入れることで、効果的に柔軟性を改善できることを実感しました。

アプローチの方法は講義のなかで詳しく解説されています。ご覧いただくと臨床に役立ちます。

その③:小殿筋に対するアプローチ

今回の講義の前編である体幹編では、骨盤の前傾を造ることが重要であると解説されています。骨盤の前傾を造るためには股関節屈筋と外閉鎖筋、小殿筋が重要です。

ここでは、小殿筋に対するアプローチを紹介します。講義では外転時に股関節外側部でコキコキ音が鳴るというバレエダンサーのケースを提示しています。外転時のエコーを撮ると、外転最終域で小殿筋と中殿筋の間で異常な盛り上がりを生じていることがわかります。

それに対して、小殿筋のアプローチが有効であったという症例です。小殿筋は中殿筋の深層にあり、普段の臨床では意識しにくい筋という印象があります。私自身、中殿筋に対するアプローチはよく行いますが、小殿筋に対するアプローチはほとんど考えたことがありませんでした。

中殿筋のオーバーユースになることで、小殿筋との間で障害を起こしやすくなると考えられます。ここでさらに、深掘りすると中殿筋はなぜオーバーユースになったかということです。小殿筋の働きが低下したことで、中殿筋がオーバーユースにならざるを得ない環境になったと考えると、治療対象は小殿筋になります。

小殿筋は股関節内旋位で、働きやすくなると解説されます。この症例以外にも歩行時に股関節外旋が強い患者さんでは、小殿筋の活動が不十分になっていることが予想されます。具体的な方法については、講義のなかで実技を交えて解説されています。

まとめ

「体幹・股関節に着目した「なぜ?」を紐解くために必要な解剖学と運動学後編〜運動器疾患に対する評価とアプローチの考え方を中心に」の講義を受けて、講義のポイントと現場で活かせそうな事について解説しました。

前編で解説されていた評価の3ステップの重要性を再確認できる内容になっています。理学療法士が介入して、変えられるところはどこか考えることが重要です。

また、後編では前編で解説されていかなった結合組織へのアプローチが解説されています。筋であれ、神経であれ組織と組織の間を埋めている存在が結合組織です。

結合組織に注目することで、評価や治療の幅が広がります。股関節周囲の組織である大腿直筋や外側大腿皮神経、殿部の筋に対する評価とアプローチが多く紹介されています。

腰部疾患や股関節疾患の患者さんに関わる機会の多い理学療法士にとっては、役に立つ情報が豊富です。講義は股関節中心の内容になっていますが、ここで学んだ知識は他の部位にも活かすことができます。

それは、結合組織は全身に存在するためです。この講義を受けてからは筋と筋に間の組織を意識して理学療法を展開するようになりました。

今後の患者さんとの関わり方が大きく変わることにもつながる講義です。是非、ご覧ください。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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