リハノメ考察・レビュー【後編】「股関節拘縮の評価と運動療法」〜機能解剖学に基づいた病態解釈から実際の治療まで〜

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股関節疾患は大腿骨近位部骨折、変形性股関節症など入院・外来を問わず関わる機会が多くあります。股関節疾患の患者さんに対して、痛みが持続したり、歩行能力が低下したり自立度が上がらずに悩む理学療法士も多いことでしょう。

今回は以前レビューした「股関節拘縮の評価と運動療法」の後編です。後編では、大腿骨近位部骨折の評価と治療、股関節機能障害による跛行に対する運動療法の2つで構成されています。以下に講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 【後編】股関節拘縮の評価と運動療法
~機能解剖学に基づいた病態解釈
から実際の治療まで~
カテゴリ
難易度3.0
若手おススメ度5.0
講師 熊谷 匡晃先生
理学療法士
三重県厚生連
松阪中央総合病院
リハビリテーションセンター 主任
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年10月3日(土)
記事公開日2020年11月21日(土)
講義内容の要点
  1. 骨折の程度や手術方法から適切な運動療法を計画する
  2. 股関節由来の跛行の原因とアプローチ方法を理解する

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

大腿骨近位部骨折は、整形外科領域で働く理学療法士の多くが経験する疾患です。関わることの多い疾患だからこそ、基礎が大事になります。

講義では大腿骨近位部骨折で画像所見から得られる情報を理解すること、手術により侵襲を受けた組織の修復過程を考慮すること、患側への荷重困難に対する評価など臨床に活かせる知識が満載です。以下に講義のポイントを解説します。

その①:レントゲンでは近位骨片と遠位骨片の位置関係が重要

講義では大腿骨転子部骨折のレントゲンから骨折型の分類が紹介されています。

レントゲンの軸位像で近位骨片が前方にあるものをsubtype A、軸位像で近位骨片が解剖学位にあるものをsubtype N、軸位像で近位骨片が後方にあるものをsubtype Pと分類します。この分類の仕方が大事な理由としては、腸骨大腿靭帯がポイントになります。

subtype Aでは腸骨大腿靭帯の付着部が近位骨片にありますが、subtype Pでは腸骨大腿靭帯の付着部が遠位骨片になります。これによりsubtype Pでは過剰な短縮を起こす可能性があり、骨癒合不全やカットアウトのリスクが高まります。そこで整復操作は術中subtype Aを目指して行われます。

髄内型・髄内型とも表現されます。どちらの型になるかで荷重したときの影響が異なります。髄内型とは骨頭側が大腿骨皮質骨の内側にあり、髄外型とは骨頭側が大腿骨皮質骨の外側にあります。荷重をかけたときに髄内型では骨頭が髄内に押し込まれ短縮しますが、髄外型では皮質骨に支持されることで短縮しにくい型となります。

髄外型の整復が良好に行えなかった場合、遷延治癒や骨癒合不全、髄内釘のカットアウトなどが起こるリスクがあるため、荷重時期は考慮する必要があります。

また、大腿骨近位部には多くの筋の付着部があります。大転子に付着する梨状筋、小転子に付着する腸腰筋などがあります。大転子や小転子の固定は手術でされないため、筋が働けば転位のリスクがあります。転位すると付着する筋は機能不全に陥ります。最低でも術後2~3週間は注意が必要です。

その②:手術方法による皮切と侵襲組織を理解して運動療法を進める

大腿骨近位部骨折は手術適応になることが多い骨折です。手術によりどの組織が侵襲を受けるか理解しておく必要があります。

人工骨頭置換術の股関節後側方アプローチでは、大転子を頂点に大殿筋を切開し、大腿筋膜を分け、中殿筋を切開し、双子筋・閉鎖筋などの外旋筋を切開します。さらに後方関節包を切開し骨頭と脱臼させて置換します。

大腿骨転子部骨折に対する外側アプローチでは、大腿筋膜を切開後、外側広筋を切開し骨折部まで到達します。ガンマネイルの場合は、中殿筋を切開し髄内定を挿入します。

皮膚に侵襲が加わった結果、皮下の滑走性が低下します。滑走障害を起こすと拘縮や筋機能低下の原因となるため、手術後可能な限り自動介助運動を行う必要があります。

手術後の運動療法と進める上で、侵襲が加わった組織が、どのような修復過程を辿るか理解することが重要です。受傷・手術直後から2週間は、炎症が強く起こる時期で損傷部位は十分修復していません。

可動域制限ありますが、まだ固まってはいない時期です。2週〜4週では、損傷部位の瘢痕化が進みます。4週以降では、拘縮が起こります。それぞれの時期によって、可動域制限の原因が異なるため、修復過程に合わせてアプローチすることが大事です。

その③:荷重困難の原因追求のための評価

大腿骨近位部骨折後で良好な固定性が得られれば、早期に全荷重が許可されます。全荷重が許可されていても、患側に十分荷重できない症例は少なくありません。患側への荷重困難は、立位バランスや歩行に影響します。荷重不足の歩行では患側の立脚期が短縮し、跛行が起こります。

そのため、荷重困難の原因を探ることが重要です。

荷重困難の原因としては、創部の疼痛、筋攣縮、関節内の炎症、可動域制限、小転子骨折、内側骨皮質の不整合、外転筋の筋力・筋出力低下など様々です。理学療法士は、原因を見極めるための評価を行います。講義では評価の方法が解説されています。

まず、重心移動を患者さん自身に行っていただきます。その結果患側への荷重がどの程度可能かわかります。

しかし、これだけでは現状把握ができるだけで原因はわかりません。そこで、次に行うことは重心の側方移動を理学療法士が誘導することです。誘導した際に患者さんの反応を観察し、そのような反応がなぜ起こるのか仮説を立てます。

仮説を検証するための検査を行い、原因を追求していきます。

例えば、患側に荷重した際に、大腿内側の痛みが出現し荷重できない症例で考えます。仮説として小転子骨折や内側骨皮質不整合が考えられます。検査としては荷重量を減少させる、骨盤を前傾して腸腰筋の活動を抑制するなどがあります。

この検査で痛みが軽減すれば原因が特定されるため、荷重を調整する歩行補助具を考えます。講義では、さらに詳しく解説されています。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

講義では股関節の可動域制限の原因と、そのアプローチ方法について説明されています。股関節の可動域制限があることで跛行が出現します。痛みがあると跛行が起こり、跛行がさらに痛みを強くします。

理学療法士には、跛行の原因を探り、改善させることが求められます。そこで股関節伸展制限や内転制限が歩行にどんな影響を与えるか考え、評価とアプローチ方法を理解することが重要です。以下に現場で活かせそうな事を解説します。

その①:股関節伸展制限の原因とアプローチ

股関節伸展可動域は歩行の立脚後期を作る上で重要です。股関節疾患の患者さんでは股関節伸展制限による跛行が出現することが少なくありません。

股関節伸展制限の原因として、腸腰筋・恥骨筋・大腿筋膜張筋の伸張性低下による関節可動域制限、腸腰筋・恥骨筋など股関節屈筋群の攣縮や炎症、関節内圧上昇に伴う疼痛、臼蓋と骨頭の不適合、筋収縮タイミング不良、精神的要因などがあります。

さらに、高齢者に特徴的な脊柱の後弯姿勢による影響もあります。脊柱が後弯化することで骨盤が後傾します。骨盤が後傾すると、腸腰筋・恥骨筋は持続的な伸張と遠心性収縮を余儀なくされます。その状態が続くと筋内圧が上昇し血流障害を起こし、筋の変性により柔軟性が低下します。

講義では伸展制限の原因となる筋として、腸腰筋・恥骨筋のアプローチを紹介しています。

腸腰筋の柔軟性改善の方法は、背臥位にて大腿骨頚部の軸に合わせて股関節屈曲、外転、外旋方向に自動介助運動を行います。最後まで腸腰筋の収縮を意識して行うことが重要です。

恥骨筋の柔軟性改善の方法は、開始肢位を外転、伸展位とします。

そこから屈曲、内転、外旋方向に自動介助運動を行います。こちらも恥骨筋を意識して最後まで収縮させます。講義では、実技でわかりやすく解説されています。

その②:股関節内転制限が原因の跛行

臨床ではトレンデレンブルグ跛行や、デュシャンヌ跛行を呈する症例は珍しくありません。学生のころから、どちらも支持脚の股関節外転筋の筋力低下により起こると習います。

しかし、講義ではトレンデレンブルグ跛行、デュシャンヌ跛行ともに股関節外転筋力の強さに関係なく出現し、股関節内転制限があるとデュシャンヌ跛行と呈するとの研究結果が報告されています。

片脚立位を取るときは、重心を支持側に移動させる必要があります。そこで重要な運動が股関節内転です。デュシャンヌ跛行を見た場合には、股関節外転筋力だけでなく、内転制限も確認することが重要となります。

デュシャンヌ跛行では、股関節内転制限について体幹を支持側に側屈させることで代償します。このような症例には、自覚的脚長差を訴える方が多いと言います。

臨床では「歩いているときに片方の足が、長い気がする」と言われます。内転制限を改善させないまま、アライメントを整えようとすると別の代償が出現します。体幹の側屈が起こらないようにすると、患側の膝関節が屈曲します。

膝関節を伸展させると今度は健側の踵が挙上します。口頭指示のみでアライメントを修正しようとしても、原因が内転制限にある場合には修正できません。まずは内転制限を改善させる必要があります。

講義では、内転制限の評価やアプローチについて解説されています。

その③:股関節内転制限の評価とアプローチ

跛行の原因となる内転制限を改善することが重要と述べました。内転制限を評価するためには、正確に測定ができることが重要です。股関節内転の可動域を測定することは臨床でもあります。

しかし、どれだけ意識して測定できているでしょうか。内転の可動域測定で最も意識するポイントは骨盤の傾斜です。骨盤が傾斜すると正確に測定ができません。上前腸骨棘を固定しながら内転し、可動域を測定することが重要です。内転可動域が10°以下の場合、跛行の原因になります。

内転制限が存在すれば、次はどのように改善させるか考えます。内転制限の原因となる筋としては大腿筋膜張筋、中殿筋、小殿筋があります。講義ではこれらの筋に対するアプローチが紹介されています。

大腿筋膜張筋は股関節30°屈曲位から外転、内旋方向への自動介助運動を行います。患者さんには最終域までしっかり収縮させることを意識していただきます。そこから内転、外旋方向にストレッチします。中殿筋は内外旋中間位で外転方向への自動介助運動を行います。

小殿筋では、股関節45°屈曲位から外転、内旋方向へ自動介助運動を行います。

筋のリラクゼーションが図れたらストレッチして柔軟性を高めていきます。治療後は再度内転可動域を測定し、効果判定を行います。講義では実技で詳しく解説されています。

まとめ

「【後編】股関節拘縮の評価と運動療法~機能解剖学に基づいた病態解釈から実際の治療まで~」の講義を受けて、講義のポイントと現場で活かせそうな事について解説しました。

理学療法士は股関節疾患に関わる機会が多くあります。

また、股関節は腰や膝の機能障害とも関連が深い部位です。股関節に対する評価や治療の理解を深めることは、臨床で結果を出すために重要です。

股関節の拘縮は、立位や歩行能力に大きく影響を与えます。股関節の伸展制限があれば、歩幅が狭くなり体幹が屈曲するか、逆に腰椎の前弯を強めて歩幅を確保しようとします。

いずれも股関節や腰の痛みの原因になります。股関節の内転制限があれば、歩行時に側方への動きが大きくなり効率の悪い歩容になります。悪い歩容で歩行を続ければ、痛みの原因になります。

この講義を受けることで、日頃の臨床で悩む股関節の症状を理解できます。また、それに対する評価と治療方法を学ぶことができます。

理学療法士にとって、患者さんの痛みが減り、動きを改善させることが一番のやりがいにつながります。「股関節の知識をつけたい」「しっかり治療できるようになりたい」と考える理学療法士にオススメの講義です。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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