リハノメ考察・レビュー「【前編】ボバース概念に基づいた中枢神経疾患へのアプローチの基本的な考え方」~ボバース初学者のための、姿勢コントロールの考え方とその重要性~

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理学療法士は臨床上、中枢神経疾患による片麻痺の患者様へ介入することが多くあります。この講義を聞くことで、ボバース概念での運動の捉え方や考え方を理解でき、介入の幅が広がります。

また、整形疾患での動作変容を促すためにも重要な考え方を知ることができるため、中枢、整形を問わず動作に関わる全ての理学療法士に理解してほしい内容です。

レビューした人:koheiさん
テーマ 【前編】ボバース概念に基づいた中枢神経疾患
へのアプローチの基本的な考え方
~ボバース初学者のための、
姿勢コントロールの考え方とその重要性~
カテゴリ
難易度 3.0
若手おススメ度 5.0
講師 小野 剛先生
作業療法士
上賀茂神経リハビリテーション
教育研究センター KNERC(ネルク)
理事センター長
ボバース国際認定インストラクター
配信URL https://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日 2020年9月26日(土)
記事公開日 2020年11月27日(金)
講義内容の要点
  1. ボバース概念の概要を理解する
  2. 随意運動と姿勢コントロールの関係性を理解する
  3. 脳卒中患者の障害範囲を知る
リハノメとは?
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講義のポイント

講義のポイント

この講義ではボバース概念を理解し、姿勢コントロールの重要性を理解することができます。

脳卒中片麻痺の患者様をみるときに随意運動のコントロールに目がいきがちですが、前提として随意運動は姿勢コントロールの元成り立っています。それらを踏まえ、講義のポイントとして以下に解説します。

その①:ボバースは治療法ではなく、概念

ボバースは治療手技やテクニックではなく概念的なものあり、思考過程にボバース概念を用いることで、臨床の助けとなります。ボバース概念では随意運動のみを改善対象とするのではなく、姿勢コントロールできるからこそタスクを達成することができると考えており、随意運動と姿勢コントロールは相互に依存していると考えます。

また、ボバースのハンドリングや感覚入力では、感覚をいかに操作して多くの経験をさせるかを目的としています。

ボバース概念を臨床で実践するにあたって3つの側面が鍵となります。

  1. タスクパフォーマンスの動作分析
  2. 姿勢と運動の相互依存性
  3. 運動制御における感覚情報の役割

タスクパフォーマンスの動作分析

ボバース概念の目標は、「課題パフォーマンスの容易さ、リズム、協調性、特異性、多様性、再現性、スピードといった側面で運動戦略を改善することであり、介入はすべての身体文節が課題の文脈において互いに調和的に協調するように、運動の質を向上させるためのクライアント、セラピスト、および環境に応じた巧妙で論理的な文節プロセスである。」と定義されています。

また、ボバース概念におけるタスクの選択は、クライアントにとって意味があるように、クライアントの姿勢制御と選択的な随意運動を最適化するために、速度、方向、負荷、大きさに関して具体的に選択する必要があります。

姿勢と運動の相互依存性

臨床的にボバース概念では、姿勢と動きは切り離せず相互依存していると見なされます。特定の活動の間、適切な姿勢の背景を維持しながら運動の質と動きを調整する能力はボバース概念の中心的焦点です。

ボバース概念は、機能的な動作の効率を向上させるために、上肢および下肢の機能と体幹および下肢の機能と体幹および頭部の制御を統合することを目指しています。

運動の質、つまりクライアントがタスクをどのように達成するかがボバース介入の効果の1つの決定要因になり、動作の達成のみを目標とするのではなく、より質が高く、持続的である必要があります。

運動制御における感覚情報の役割(どのようにハンドリングするか)

ボバース概念における促通とは、セラピストとクライアントの身体間の熟練した対話と捉えています。

詳細には自分で運動を開始、終了することをできるようにするため、クライアントがまだ一人ではできない運動を経験するために必要な条件を作り出すために、治療的なハンドリング、環境の操作、タスクの選択、言語的・非言語的手がかりを適切に使用するのがボバースでいう身体間の対話であり、促通です。

環境を変えることで感覚情報を変える、タスクの難易度を変えることで感覚情報を変える、声掛けをする、もしくはしないことによって感覚情報を変えるなど、さまざまな感覚情報を入力することで促通していきます。

ボバース概念では、支持面および重力に関連して運動活動や身体文節のアライメントを選択的に適応できることが重要と考えています。

それが情報を適切に受け取り、統合し、応答する個人の能力にとって決定的な情報を生み出すと考え、姿勢コントロールの習得と発達の基本であると捉えています。

その②:随意運動には姿勢コントロールの獲得が重要

随意運動といえば皮質脊髄路ですが、脳卒中では皮質脊髄路だけではなく、同側の姿勢コントロールも障害されます。運動は姿勢コントロールと随意運動の組み合わせから起こるので随意運動の獲得のためには姿勢コントロールが重要です。

神経線維の数から考えても随意運動は100万本で姿勢コントロールに関わる神経線維は1000万~2000万本で姿勢コントロールは目には見えにくいですが、神経線維は常に働いています。運動を氷山と捉えると、氷山の一角が随意運動で、姿勢コントロールは氷山の見えていない部分だが、常に働いています。

臨床上随意運動に問題があるように見えていても、実際には姿勢コントロールを改善することで、随意運動が改善するケースが多々あります。

サルの損傷実験によると腹内側系(姿勢コントロール)を損傷されたサルは40日間起き上がれず、体幹や四肢は屈曲傾向になりました。最終的に歩けるようになったが、狭い支持基底面では不安定で、四肢は外転位、コースから外れないように歩くことが困難で、障害物を避けることができませんでした。

それに対して、背外側系(随意運動コントロールシステム)を損傷されたサルは足を曲げることができず、個別の指の運動が障害されました。

しかし、支持なしで座ることや立つこと、歩く、走る、よじ登ることができ、基本動作の能力では腹内側系の障害の方が重度です。随意運動ができていない原因は背外側系だけが障害されているのではなく、腹内側系の姿勢コントロールが上手くいっていない可能性があることがこの研究からはわかります。

その③:ヒトの姿勢制御は進化の過程で2足歩行に特化している

ヒトは進化の過程で直立2足歩行を獲得しましたが、これは4足歩行に比べ不安定で狭い支持基底面上に伸展したアライメントで高い重心をキープして保たなければなりません。

ヒトは2足歩行を高度に発達した神経系で精密に制御しており、それにより大脳皮質の姿勢制御に対する役割が増大し、予測的姿勢制御(APAs)を用いてコントロールしています。

その結果、多様な機能を獲得できており、手指の巧緻動作、移動効率の良い2足歩行、言語や高度な日常生活動作からなる社会性を獲得しています。

ヒトは進化の過程で骨格構造も変化し、骨盤と胸郭の間が広がり、回旋の能力が高くなりました。その結果歩行の効率が非常に良くなりました。足部の構造も踵骨が大きくなり、アーチ構造が生まれたことで、足部が強固になり、前足部で強く蹴ることができるようになりました。

ヒトの姿勢コントロールの神経システムは直立2足姿勢、直立2足歩行のために進化(発達)してきています。おそらくヒトは座位や臥位のための別の神経システムを持っているわけではなく、立位の姿勢コントロールの神経システムを流用しているだけと考えられます。

この考え方は治療アプローチにも流用できて、座位が上手く取れないクライアントに対して座位のトレーニングだけではなく、立位のコントロール能力を高めることで、座位の姿勢コントロール能力が向上することがあります。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

ヒトの進化の過程や制御システムを知ることで、姿勢コントロールの重要性が理解できたと思います。

臨床で脳卒中片麻痺の患者様をみるにあたって、損傷部位やどの伝導路が障害されているかを理解することで、臨床での介入ポイントの幅が広がります。以下に現場で活かせそうな事について解説します。

その①:皮質橋網様体脊髄システムの促通が随意運動の獲得に重要

我々のすべての姿勢活動は、理想的には抗重力伸展活動(運動学的な伸展とは一致しない)のみで成り立たせることができ、抗重力伸展活動が姿勢コントロールの観点では優れています。安定した抗重力伸展活動には、皮質橋毛様体脊髄システムと前庭脊髄システムがバランスよく働くことが重要です。

抗重力伸展活動は安定している環境でないと代償的に屈曲活動を利用します。他にも課題が難しいことや代償的な屈曲活動の結果、かたさや過緊張、筋の短縮、不安定性、回復の遅れが生じます。代償的な屈曲活動を減らすためには皮質毛様体脊髄システム(フィードフォーワード制御)と前庭脊髄システムが機能的に働いている必要があります。

皮質毛様体脊髄システムでは、予測可能な外乱に反応し、先行的に姿勢制御に働いています。これは予測的姿勢制御機構(APAs)といい、例えば手を挙上するときに重量物が前方に偏位することで重心が前方に移動しますが、予測的に姿勢制御することで後方に重心偏位させ、重心のバランスを保っています。

これは、基本的には随意運動に先行して働いています。安定した身体環境で抗重力伸展活動ができると良いが、不安定では屈曲方向でバランスをとってしまい、結果として筋肉の硬さや過剰な緊張を生み出してしまいます。

また、APAは学習された活動のため、感覚のフィードバックによって修正を受けます。麻痺によって身体環境が変わると、APAも再学習されます。これには負の学習もあるため、注意が必要です。皮質毛様体脊髄システムは、橋網様体脊髄システムと延髄網様体脊髄システムとに分かれ、体幹のコントロールに強く働き、運動連鎖による筋活動は前もってプログラムされた筋活動パターンを元にして働いており、これはAPAの働きです。

前庭脊髄システム(予測不能な外乱)は身体外から引き起こされる乱れに反応しています。外乱後の感覚フィードバック制御で代償的姿勢調整(CPAs)ともいわれています。立ち直り反応もここに入り、前庭入力は急速時でも持続的に活動しています。前庭系の中枢処理は反応が非常に速く、内側前庭核は、頚部を安定させ、外側前庭系は同側の四肢の伸筋をコントロールしています。

脳卒中患者では前庭脊髄路の興奮性の増大が歩行中の上肢の屈曲と下肢は突っ張りを引き起こしています。(連合反応を引き起こす)前庭脊髄システムはバランス制御に非常に重要ではでありますが、過剰に働くと過剰な緊張を引き起こしてしまう原因になります。皮質毛様体脊髄システムの範囲内で姿勢コントロールできることが重要です。

その②:片麻痺の機能改善には体幹機能が最重要

脳卒中片マヒの患者様をみるときには麻痺側のみでの問題ではなく、非麻痺側体幹も障害されているため、麻痺側のみのトレーニングでは随意運動の獲得には不十分です。

体幹の機能は脳卒中後の機能予後の重要な指標となり得ます。脳卒中により、身体の対側と同様に同側も障害されています。体幹筋は身体を直立に保つこと、体重移動を調整すること、常に重力に抗して運動をコントロールすることを可能にしています。

四肢末梢の運動、バランス、歩行、機能的活動のために体幹の近位安定性は先行的に必要です。脳卒中では両側の体幹の屈筋、伸筋、回旋筋の弱化が、急性期から認められるため早期からの介入が重要となります。

その③:支持基底面と感覚受容器として足部が働いている

APAsが働くためには足関節戦略が働く必要があり、足関節戦略の程度はAPAsの状態によって決まります。(相互に依存関係)足部は多くの関節と多自由度を持つ複雑な構造で、静的な姿勢コントロールからダイナミックな活動まで重要な役割を担っており、フットコアシステムの働きが重要です。

フットコアシステムは神経サブシステム、アクティブシステム、パッシブシステムからなり、これらのサブシステムの相互利用は、腰椎骨盤のコアとよく似ているため、フットコアシステムと名付けられています。

足部の内在筋はフットコアシステムによって重要な役割を果たしており、足部の局在的な安定筋としてや足部の変形に対するセンサーとして働いています。足部の内在筋が床反力を受け取る感覚入力の鍵となっています。

バランス制御としての足関節戦略は動揺が小さく支持面がしっかりしているときに外乱に対して初期に働いています。足関節戦略はフットコアシステムの働きがあることで、機能的に活動します。

まとめ

ボバース概念を理解することで、中枢神経疾患への基本的なアプローチの考え方や見方を理解することができます。

中枢神経疾患では、見た目に分かりやすい随意運動へアプローチの比重をおいてしまいますが、随意運動の根幹は姿勢コントロールの上成り立っているため、姿勢コントロールへの介入が非常に重要になります。

この講義では、ボバースの概念と進化の過程や脳の機能構造から姿勢コントロールの重要性を理解することができます。

この記事を書いた人

kohei
さん

理学療法士7年目。20代の男性で一児の父。理学療法専門学校卒業後は、整形外科クリニックに入職し、変形性疾患やスポーツ傷害のリハビリテーションを経験。その後リハビリテーション特化型デイサービスに施設長として転職。

整形外科クリニック入職後から、スポーツトレーナとして、学生からプロチーム、年代別の県代表などに帯同し、現在もスポーツ現場に関わる。

経歴

  • 2010年~2013年:理学療法専門学校時代
  • 2013~2018年:整形外科クリニックに就職
  • 2018年~現在:リハビリテーション特化型デイサービスに転職

資格

  • 理学療法士

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