リハノメ考察・レビュー「内臓ストレッチ内臓アプローチによる運動療法の新しい考え方」内臓の重要性を認識

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理学療法士は、筋骨格系の学習に対しては熱心ですが、内臓に関しては後回しにしがちです。私は臨床実習で運動器疾患でも、内臓の機能が重要であることを指導者から伝えられ衝撃を受けました。

理学療法士が内臓を触るとはどういうことなのか、当時は自分の理解の範疇を超えていて思考が追いつきませんでした。

それから数年後、臨床に出ると筋骨格系や神経系の勉強はするものの、内臓に関する学習は深められていませんでした。

今回の講義では運動療法のおける内臓の重要性を認識できます。以下に講義のポイントと現場で活かせそうな事を解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 内臓ストレッチ
内臓アプローチによる運動療法の新しい考え方
~内臓を利用して深層筋群へ直接アプローチ~
カテゴリ
難易度3.0
若手おススメ度5.0
講師 神谷 秀明 先生
株式会社 Performance Reha 代表取締役
いちゃりば鍼灸治療院 院長
理学療法士、鍼灸師、アスレティックトレーナー、
内臓ストレッチ(R)マスターインストラクター
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年9月5日(土)
記事公開日2020年9月17日(木)
講義内容の要点
  1. 理学療法士は内臓を見ることが重要
  2. 体が動けば内臓も動く
  3. 内臓を利用して骨格筋にアプローチする

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

この講義を受けることで、理学療法士が内臓の知識をつけることに、どのような意義があるのか理解することができます。運動療法を行うためには、それ以前に全身状態や体調管理をする上で内臓機能が重要なことは言うまでもありません。

しかし、内臓機能が重要なことを理解していても、アプローチする方法がわからなければ対応することができません。

講義のポイントは内臓をみるための基本的な知識や考え方を理解することになります。以下に解説します。

その①:内臓をビジュアライズする

講義では、まず内臓がビジュアライズできることが重要であると解説されます。ビジュアライズとは「可視化」という意味であり、見えないものや見えにくいものを見える化するということです。

とは言え患者さんをその場で解剖するわけにはいかないので、患者さんの身体を目の前にして解剖を自身の頭の中でイメージして投影します。

イメージが大事ですが、そのためには解剖学的な位置関係を知っていなければなりません。位置関係を知るためには、基準となる指標が必要です。講師の神谷先生は、基準となる指標を地球儀の緯度・経度に例えて表現しています。

地球儀では緯度・経度が何度の地点かでどの国のどの都市か示すことができます。人体もそんなイメージで行うと理解しやすくなります。基準となる指標に関しては、鎖骨の中間部を通過する鎖骨中線、胸骨柄と恥骨結合の中点である幽門平面、臍を通る面とそれを左右に分け、腹部を4部位に区分けして臓器を見つける臍平面+正中面などが紹介されています。

位置関係を意識しながらのアプローチは、内臓に対してでなくとも、理学療法士が日常的に行なっていることです。

筋の触診をするときには、基準となる骨の付着部を触診し、その筋なのか同定しています。

また、動かすことでさらに触診しやすくしています。この場合基準となる指標は骨になります。繰り返し練習が必要ですがイメージを膨らませることで、ビジュアライズしやすくなるでしょう。

その②:姿勢が悪いと内臓の位置も悪くなる

理学療法士が、臨床で姿勢を見る機会は非常に多いです。私は患者さんの姿勢を見ない日はありません。見ることでどの関節に負担がかかりやすいか、どの筋が短縮位になり、どの筋が伸張位になるか考えます。

例えば、立位姿勢が円背で胸椎の後弯が強くなり、腰椎前弯が減少し、さらに体幹の右側屈・回旋になっている高齢患者さんで考えてみます。
この姿勢では背部、腰部の脊柱起立筋や多裂筋は伸張位になり過緊張になりやすく、体幹前面の

大胸筋や腹直筋は短縮位になります。右の腰方形筋は短縮位になります。

右の内腹斜筋は、短縮位になり外腹斜筋は伸張位となり、働きにくくなります。体幹が屈曲することで、椎間関節には離解するストレスがかかり、椎間板には圧縮するストレスがかかります。

このように姿勢から筋や関節にかかるストレスを考え、詳細な測定、検査をして治療対象を決めていきます。私を含め、運動器のみに焦点を当てることが多いと思われます。

ここに内臓の繋がりを加えると、評価が一段階レベルアップします。円背姿勢では胸椎後弯が増強し、胸郭の広がりが少なくなります。

このとき、横隔膜の右下には肝臓があります。呼吸に伴い肝臓も動きますが、不良姿勢では動きを制限してしまいます。

また、上記の姿勢では、腹部臓器である小腸、大腸の位置が下がることになり、消化や排便にも関わってきます。運動器だけでなく、内臓も合わせて考えられると評価、治療の範囲が広がります。

その③:筋骨格系だけでは対応できない症状にも対応できる

自宅で自立した生活を送っていたときには、便通がよかったのに、入院して活動量が低下すると便秘になり、3日おきに下剤を飲まないと排便がないという患者さんに出会うことが多くあります。

便秘に対して、理学療法士ができることとしては、離床を進め活動量を上げ、循環を改善させることを考えていきます。

しかし、骨折後早期や脳卒中後でコミュニケーションが、取りづらい患者さんなど活動量を上げるのに時間がかかります。食事で栄養と取り入れて余分な物を排泄することは、生命維持において必須の機能です。

これに対しては、行われることは便通を柔らかくする薬を飲んだり、下剤や浣腸で強制的に排便させたりすることです。内臓に対してアプローチすることができれば理学療法士にも行えることが増えます。

また、入院中に食欲不振を訴える患者さんもいます。食欲不振に対しては、食事の内容を変更したり、栄養を確保するためドリンクタイプの栄養剤が処方されたりします。

しかし、食欲のない人にとって「頑張って食べてください」と言われても苦痛でしかありません。理学療法士は、運動療法を行うため患者さんの摂取カロリーが少ないと患者さんはさらに消耗していきます。リハビリどころではありません。活動量も上がりません。

ここで、食欲にかかわる胆嚢や消化にかかわる胃、腸に対するアプローチができれば、改善に繋がるかもしれません。講義では臓器の機能とともに、どのような患者さんに適応になるかも解説されています。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

講義のポイントで内臓機能に対する基本的な考え方を理解できたら、次にどのようにアプローチしていくかが重要になります。

内臓は中空臓器と実質臓器に分けられ、それぞれ動かす際の考え方が異なります。さらに講義では、実技でどのようにアプローチするか紹介されています。

その中でも、呼吸と関連の深い肝臓と腰痛と関連の深い腎臓が、個人的に重要性を感じました。以下に現場で活かせそうな事として解説します。

その①:中空臓器と実質臓器で動かし方が違う

中空臓器とは、胃、腸などの消化器系や膀胱、子宮などの臓器を言います。実質臓器とは肝臓、腎臓など中身が詰まっている臓器のこと言います。

中空臓器は、伸びたり縮んだり、広がったり小さくなったりと身体の状態や姿勢によって大きさが変わります。実質臓器は、身体の状態によって臓器の位置は動きますが、臓器自体の大きさは変わりません。

アプローチする臓器の特徴を理解して、操作することが重要になります。中空臓器の場合は臓器の伸びや広がりを意識して、三次元的に運動することでアプローチします。様々な方向への操作を加えることで、その臓器が本来持っている動きを促していきます。

一方、実質臓器の場合は、隣接する筋膜との繋がりを意識しながら、組織と組織の間で滑走性が改善するように動かしていきます。ストレッチという言葉だけで理解しようとすると、腸を伸ばしたり、肝臓を揉んだりするようなイメージが湧きますがそうではないようです。

内臓ストレッチでは、臓器自体の柔軟性を獲得するのではなく、臓器と深層の筋が筋膜を介して、連結を持っている場所に対してアプローチしています。

臓器を使って、周囲の筋や筋膜に対してアプローチしていると考えると、腑に落ちやすいのではないでしょうか。講義では多くの実技を交えて、テクニックが紹介されています。興味深い技の数々を見るだけでも、学習の幅が広がります。

その②:肝臓へのアプローチ

肝臓は最も大きな器官であり、第7〜11肋骨の奥で正中を横切り、左乳頭まで至ります。肝臓は、呼吸に伴い吸気で尾側へ、呼気で頭側へ上下運動をします。

運動の範囲は、右鎖骨中線で6〜12cm、正中線で4〜8cm移動します。肝臓は左右を分ける肝鎌状間膜が、横隔膜との付着部を持っています。その横隔膜は、心臓の線維性心膜との結合を持っています。このことから肝臓の動きは、膜で連結する横隔膜の動きに関わります。

例えば、円背姿勢で肝臓が肋骨の中で潰れた状態になると、横隔膜が動こうとしても下の肝臓が動かないため動きにくい環境になります。講義を受ける前は、内臓の動きが、呼吸に影響を与えるということを考えたことはありませんでした。

講義では、複式呼吸やドローインなどの呼吸を使った運動をする前処置として、肝臓にアプローチしておくことが重要であると解説されています。

私も実際に臨床でも行なってみました。背臥位で膝屈曲位にして、腹膜を緩ませた状態で右第7肋骨の下縁から指を呼気とともに、指を滑り込ませるように肝臓の頭側への移動を促します。

吸気では、反対に尾側に押し下げるようなイメージでアプローチします。実施後は胸郭の運動が改善し、複式呼吸やドローインが行いやすくなる印象がありました。私の未熟な手技でも少し変化を出すことはできたため、熟練すればさらに効果が上がるのではないかと考えます。是非習得したい技術です。

その③:腎臓へのアプローチ

腎臓は腰痛との繋がりが深いと解説されます。腎臓には腎筋膜と呼ばれる膜が存在します。筋膜と言うからには、何かに繋がっているような印象を持ちます。

講義で見られる画像では、腎筋膜を腎被膜という名称で解説されています。腎皮膜を腹側から背側に向かって追っていくと、腹横筋に繋がり、続いて腰方形筋から胸腰筋膜へ、さらに大腰筋から腰筋膜へと繋がっていきます。ここから腎臓を腰痛との繋がりが見えてきます。

腰痛の患者さんに対して、腰部の過剰な筋緊張を緩めようとするとき、表層の筋群から緊張を落とし、徐々に深層の筋にアプローチしていくことがあります。

腎臓へのアプローチができると、腎臓に連結を持つ深層筋群へ直接アプローチすることができます。表層から深層への手順を踏まずに行えるため、治療時間の短縮になります。

こちらも臨床で行なってみました。第12肋骨を基準に背側と腹側で、両手で挟みパックするような形の手を作ります。呼吸に伴って腎臓の上下運動を促します。

腎臓は深層にあるため、しっかり触診できているかどうか感覚を掴むのは困難です。講義ではしっかり触診できているかどうか、確信が持てなくても第12肋骨を基準にして経験を重ねて、結果を出すことで少しずつ上達すると解説されます。実際に行なっていて、上手く動かせている感覚はまだないのですが、腰部の筋の緊張は緩和されるため、結果で効果判定できます。

まとめ

「内臓ストレッチ内臓アプローチによる運動療法の新しい考え方〜内臓を利用して深層筋群へ直接アプローチ〜」の講義を受けて講義のポイントと、現場で活かせそうな事について解説しました。

「内臓に興味があるけど何を学べばよいかわからない」「骨格筋へのアプローチで結果に繋がらないが、他にどのようなアプローチがあるのか知らない」「便秘や食欲不振、排泄の問題による体調不良にも対応できるスキルが欲しい」などの考えを持つ理学療法士には、是非この講義を受けていただきたいと思います。

また、臨床で行うことの多い呼吸や体幹に対する運動療法においても、内臓の理解を深めることでアプローチできることが増えます。私はこの講義を受けるまで、呼吸に伴って肝臓がどのように動いているか考えたことはありませんでした。

運動に伴って腹圧を上げることは、内臓の位置を固定するように働いていることも知りませんでした。内臓に対する知識がある方には、さらに理解を深めることができ、知識がない方には新たな気づきが多くある講義内容になっています。

実技も多く紹介されており、現場で実践しやすくなっています。講義の最後には、内臓に興味を持ち、内臓ストレッチをもっと学びたいと考える方に向けて、内臓ストレッチインストラクター養成コースの紹介もされています。講義を受けるだけでも勉強になりますので多くの理学療法士に見て頂ければと思います。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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